肝胆ブログ

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小説「日本の副王、百鬼を追う 感想 三好主従ファン必読」真弓創さん(茶話歴談 第五号)

 

歴史・時代小説アンソロジー「茶話歴談」第五号に収録されている三好長慶松永久秀・松永長頼題材の短編小説が素晴らしい作品でかんたんしました。

 

このレベルの作品が生まれるようになったのなら、三好長慶さんや畿内戦国史のコンテンツはもう先行き安泰だと思います。

 

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戦国大名三好長慶が出会った怪奇譚『日本の副王、百鬼を追う』

 

三好長慶さんが夜の京で“百鬼夜行”に遭遇」という一見?????なあらすじから繰り広げられる、三好長慶さんの生涯や畿内戦国史の推移への確かな理解に基づく歴史小説っぷりに驚愕しましてね。

 

 

短編小説であることを踏まえてネタバレや引用はいたしませんが。

 

 

等々を短い文章のなかで思いっきり摂取させていただけるのです。

もう読んでいてニマニマしっぱなしになる。

 

唸らされるのが、三好長慶さん&松永兄弟の解像度の高さ。

場面場面における一つひとつのセリフ、一つひとつの行動が、「この三人なら確かにこうなりそう!」と三好ファンが絶頂すること請け合いの描写力でね、マジすごいの。

 

その上で、単に「最近の研究から導かれる人物像を踏まえているよ」に留まっていなくて、小説としての軽妙なテンポ&構成、二転三転する展開の面白さ、あったかもしれない/あってほしいと思わされる創作エピソード、結果として浮かび上がってくる三好長慶・松永兄弟の人間的魅力と、創作力が冴えわたっているのでありますよ。

 

ビールで言えばキレもコクも最高な感じ。

というか三好家ファンが待ち望んでいた乾杯ビールそのものだわ。

乏しいコンテンツ供給に乾いていた身体に浸みこみまくる甘露ですわ。

あまねく三好主従ファンにおかれましてはぜひこの短編小説を入手して一気に飲みほしていただきたいところよ。

 

 

著者の真弓創さんは、あとがきによれば「へぇ、あの作品に参加してはるんや……!」とびっくりするような実績をお持ちのシナリオライターさんとのことです。

やっぱりプロってすごいんやな……と、嫉妬する気も起きんくらいに恐れ入りました。

こんな小説、少なくとも私には書けんもん。

 

だんだん畿内戦国史界隈に優れたクリエイターが目を向けてくれるようになってきて、創作作品の完成度も玉が磨き合うかのようにレベルアップしてきているような実感があります。

まことにありがたいし嬉しい。マジ嬉しい。

 

 

この歴史・時代小説アンソロジー「茶話歴談」、掲載作品がいずれも完成度の高い作品ばかりで、そういう点でもびっくりしましたね。

500円でこんなに面白い小説たくさん読めるの? いいの? と。

 

『日本の副王、百鬼を追う』以外だと、巻頭の『真夏の夜の鎌倉綺談』が特にハイレベルに映りましたね。

和田義盛さん、梶原景時さん、大江広元さん、源頼朝さん等々、初期鎌倉幕府の面々が活躍? するお話でして、コメディ風の掛け合いが楽しい作品でありつつ、各登場人物の魅力や尖ったところがしっかり描かれています。

近年の大河ドラマのように「とっつきやすいけど実は本格派」というのが幅広いお客様を念頭に置いている感があって、著者さんの卓越した実力と歴史愛を感じさせてくれますよ。

 

そのほかの作品のなかでは、巻末の『大自然の贈物』に特に惹かれました。

中華一番!ファン的にたまらん内容です。

人間の素朴なあたたかさを感じさせてくれる文章も好き。

 

 

 

読んだとたん「好き!」「すごい!」「みんなに知らせたい!」になる小説に出会えたってのはほんま幸せです。

 

これからもこんな僥倖がときどきありますように。