麒麟がくる、遂に最終回が放映されましたね。
全44話を通して紡がれてきた明智光秀さんの軌跡、織田信長さんとの主従愛を超えた絆と相剋、光秀さんを見守る人々、ピュアに演出クオリティの高い本能寺襲撃描写、過ぎ去る室町幕府と新たな時代の行方等々、まことにかんたんしてしまう出来ばえでお慶び申し上げます。
以下、ネタバレや妄言を様々含みますのでご留意ください。
人が死んでいるのに良いとか言うのもあれなのですが、良い本能寺の変でしたね。
ドラマ終盤の明智光秀さんは、他のどの登場人物よりも「公」「世論」「平らかな世」「麒麟カムヒア」オリエンテッドで素敵でした。
戦国時代に詳しい方であれば、本能寺の変の動機について様々な説が頭に浮かんだりすると思うのですけど、このドラマの明智光秀さんは一貫して「世を支える声」へ真摯に耳を傾けていたのが何よりも重い動機であり、何よりも美しい人柄だったと思います。
麒麟がくる光秀さん、「世を具体的にこうしたい」という意味での主体的な志は薄く、そのときそのときの状況によってけっこう言うことやることが変わるので、その点では一貫していないのですが、「大事に思う人の気持ちを受け止める」という意味ではずっとブレていなかったですよね。
その「大事に思う人」が、当初は家族や帰蝶さんだけだったのが、だんだん足利義輝さんや織田信長さんや足利義昭さんになって、更には朝廷やオリキャラ民草まで広がっていって、光秀さんの世界が成長していったのが純粋に格好良かったです。
単なるポピュリズムではなく、織田信長さんへの責任感も家族や家臣への思いも何もかもを背負った「世の声を受け止め、平らかたるを目指す」。
そんな光秀さんを表現しきった長谷川博己さんの演技を、私はずっと忘れないと思う。
そんな風に思っていたところに、最終話のセリフ「覚悟には果てはありませぬ。」は、麒麟がくるの明智光秀さんを象徴するような言葉で最高でした。
対比的に、細川藤孝さん(眞島秀和さん)の、覚悟の分量を見積もろうとする演技もすごい良かったです。
足利義輝さんの見限り方といい、このドラマの細川藤孝さんは、光秀さん目線でも視聴者目線でも「ものすごく誠実そうに見えるのに……」という演技がいぶし銀で大好き。いまが任侠モノ全盛期なら、裏で組長を売る若頭役とかで大成功できると思う。
ドラマを通じて多くの役者方が好演されておりましたが、特に印象に残った男性俳優はこの眞島秀和さんと、佐久間信盛さんを演じた金子ノブアキさんですね。
麒麟がくるの佐久間信盛さんは、媚びもへつらいもなくて超よかった。
女性陣だと、煕子さんを演じた木村文乃さんと、駒さんを演じた門脇麦さんかな。
木村文乃さんは、個人的な印象ですが、男性に裏切られるような役が多くてしかも似合っている印象があったので、煕子さんの真っ当なヒロインっぷりが想像以上に清々しかったです。木村文乃さんの清潔な女性役いいじゃん、と。
駒さんは、脚本の都合でヒロインと京の民草と新興富裕層と足利義昭さん身内と、一人で何役もやるような存在だったので大変だったと思いますし、視聴者からも何やかやと評せられていた様子ですが、全ては門脇麦さんの強い存在感あってこそだと思うんですよね。
彼女の存在感の強さが、明智光秀さんの「民草の思いを強く受け止めている」に繋がっていて、私は良かったと思っています。逆に、最終話ラストは、民草も明智光秀さんを受け止めていたぞ、という演出なのでしょう。
門脇麦さん、派手なムーブも強いセリフもないのに、どうしてこんなに存在感があるんだろう。彼女はこれから、更にすごい役者になりそうな気がします。
駒さんのことを書いていて思いましたが、麒麟がくる各登場人物の配役や演出は「明智光秀さんから見て」というコンセプトで揃えてはったんですかね。
斎藤道三さんは、上司としては面倒な面もあるけど才覚は半端ない。
足利義輝さんは、ただただ美しい。直視できないくらい。
三好長慶さんは、山路和弘さんの年齢含め、威厳のある存在だけど「遠い」。
織田信長さんは、ころころと可愛くてポテンシャルありまくり。育てたい。(なお育てた結果)
徳川家康さんも、信長さんとかなり同じ方向。
羽柴秀吉さんは、得体が知れない。凄い奴だけど明確に自分とは人種が違う。
足利義昭さんは、守ってあげたくなるタイプ。(なお脱ぐとスゴイ)
松永久秀さんは、ひとつ前の世代の、明智光秀さんと似たような役割を果たしていた人物として描かれていました。
光秀さんほどストイックではない代わりに、光秀さんにはない愛嬌がある感じで。
ただ、最終話を見ていると、本能寺を襲撃する明智軍が「青色」だったために、足利義輝さんを襲撃する三好軍とハモっていたじゃないですか。
(尺的に剣豪将軍よりも奮闘していた織田信長さんが好きだぞ)
あれを見ていると、松永久秀さんは三好時代と織田時代を繋げられていい感じなんだけど、前時代の人物で本当に光秀さんと似ているのは三好長逸さんなんじゃないかな、と思わなくもないですね。長逸さん、朝廷からも好意的に見られてたっぽいし。
今回の麒麟がくるリスペクトで、将来、足利義輝さんと三好長逸さんの間にあった人知れぬドラマ、からの永禄の変、からの行方不明(生きている?)みたいな創作が見たくなりました。誰かつくってほしいぞ。
最後に、麒麟がくる、メインテーマBGMも大好きでした。
歴代大河ドラマの中でも一番好きかもしれない。
ジェイク・シマブクロさんのウクレレアレンジも大変良かったです。
そんな訳で、大河ドラマで初めてですがサントラ予約しました。
思いつくままに様々書きましたが、語り足りない気がするような、話の合う人といつまでも話していたくなるような、嬉しい大河ドラマでしたね。
こういう大河ドラマが増えてくれると嬉しいです。
渋沢栄一さんのドラマもよい塩梅に盛り上がってくださいますように。
おまけ:1話視聴時点の展開予想答え合わせ
1話を視聴した時点で予想していた展開と、その答え合わせは次のとおりです。
予想①:三好長慶さんは相当アゲられる
◯。
直接描写は少なかったとはいえ、松永久秀さん等登場人物のセリフで相当アゲられておりましたし、足利義輝さん帰京時に「首を長くして~」と仰っていたので暗に「この人はキリンさんです」と製作陣も思っておられたのでしょう。多分。
予想②:松永久秀さんはグチを吐きつつ長慶さん大好き
◯。
「だーい好き」みたいな直接描写はなくとも、言わずもがなでしたね。
予想③:明智光秀さんは三好長慶さんに麒麟味を見出す
×。
暗殺計画を阻止しましたが、特段その後は絡みませんでした。尺的な意味で、ドラマ的には絡まない方が良かったようにも思いますね。
予想④:明智光秀さんは足利家が大事、故に三好愛に葛藤
×。
「足利ラブと言いながら三好を忘れられないとは、身体は正直だな」みたいな場面はありませんでした。なくて良かったと思います。
予想⑤:明智光秀さんが三好家・足利家の和睦(1558)に貢献
×。
いっときの大河ドラマのように、不自然でファンタジー過ぎるような主人公活躍はなかったですね。なくて良略。
予想⑥:長慶愛をこじらせた光秀さんが三好残党絶許マンに
×。
ここまでくると、我ながら何を妄想していたんだろうという気持ちになります。
予想⑦:光秀「長慶再び主義」と、信長「長慶反省主義」
×。
いや、結果的に近いような意見の反目になってはいましたが。
予想⑧:久秀さんは「信長と長慶の違い」を指摘し爆ぜ散る
×。
指摘はしていませんし爆ぜ散ってもいませんね。久秀さんの内心という意味では間違っていない気もしますけど。
予想⑨:本能寺の変=三好長慶解釈違い原因説
×。
すみません、悪ノリが過ぎました。
予想⑩:明智光秀、三好長慶、細川藤孝が結託
×。
予想⑤とあわせてイメージしていたんですけどね。
これくらいならあり得るかなあとは思っていましたがそんなことはなかったぜ!
予想⑪:細川晴元が畿内混迷の主因扱い、足利義輝はセーフ
×。
そもそも細川晴元さんの出番が驚くほどありませんでしたし、足利義輝さんは意外と作中でディスられていました。
細川晴元さんに関しては、諸事情でドラマの放送回数が減ったことも地味に影響したような気もします。本来はあと1回くらい畿内回があったんじゃないかなあ。
予想⑫:駒の命の恩人は三好長慶(あるいは木沢長政)
×。
いいんだ、きっと三好長慶さんや木沢長政さんは、アナザー駒さんのような子どもたちをたくさん救っていたんだ。
予想⑬:畿内戦国史にミニバブルが訪れる
×。
や、多少はニュースや雑誌で特集もされていましたけど、バブルと呼べるような勢いは来ていない気がしますね。
来てもいいのよ。
予想⑭:足利義昭は明智光秀の生き方を強力に縛る
◯。
最終話の回想モノローグ入りしていたので、マルでいいと思います。
予想⑮:明智光秀は徳川家康に何かを託す
◯。
どうやら三好家が絡まないと冷静に予想できていたようです。
以上、4/15という正答率でした。
素人予想としては上出来だ、うんうん。
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