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麒麟がくる「第四十回 松永久秀の平蜘蛛 感想 久秀さんの意地と罠」

 

麒麟がくる第40回、松永久秀さんがとうとうお逝きになられて、なかなかえげつないものを織田家明智光秀さんに遺されていてかんたんしました。

 

www.nhk.or.jp

 

 

ネタバレを含みますのでご留意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

松永久秀さんが本願寺攻囲の陣から抜け出し、反信長方に寝返り。

そのさなか、明智光秀さんと密会して、「自分が死んだら」平蜘蛛釜を託すと約束。

松永久秀さんは史実通り10月10日に自刃。

だんだん様子がおかしくなってきた織田信長さんに「平蜘蛛釜どこ行ったか知らんか」と詰められて、思わず「知らねっす」と答えてしまう明智光秀さん。

おうちに帰ったら届いている平蜘蛛。

「……これ、久秀さんの罠なんじゃね?」

 

明智光秀さん(と佐久間信盛さん)が着実に追い詰められている、えげつないシナリオになってきましたね。

 

 

吉田鋼太郎さんと長谷川博己さんの長会話演技、

吉田鋼太郎さんの自刃演技、

いずれも大変よございました。

さすがの声の通り、メリハリの効いた表情と所作。

 

吉田鋼太郎さん、各種インタビューで「久秀にとって真に天下人たりえたのは三好長慶さん」と思いながら演じてくださっていたそうで(あくまで松永久秀さんの私情としてですよ)、確かにところどころでそんな感情が滲み出ているようで、私としてはたいへん感慨深いものがございました。

 

三好長慶さんと織田信長さんの比較、

近頃の織田信長さんの様子の危うさ、

大和統治を巡る筒井順慶さんとの確執、

本願寺上杉謙信さんという反信長の受け皿の存在、

かつて天下の一角を担った自尊心とさいきんの不遇、

かつて克服したつもりだった「家柄・血筋」の逆襲、

確実に実感する自らの老い。

 

それらすべてを意地に変え、寝返って戦うことを決めた松永久秀さんは、何代も前から武士やってきた家の人よりも、よっぽど熱い武士ソウルを発揮していたように感じ取りました。

それでこそ我々が愛する松永久秀さんですよ。

本当にありがとうございます吉田鋼太郎さんとスタッフの方々。

 

 

そして、そんな自分自身の意地を大事にしつつ、一方で、気に入っていた明智光秀さんにたいして第1話ばりに酒を酌み交わしながら涙ながらに心情を伝えているのがね、超エモいよね。

 

平蜘蛛釜を明智光秀さんに託すという行為は、

自分自身の明智光秀愛をはっきりと形に表しつつ、

明智光秀さんに天下の方向を担う覚悟を迫りつつ、

織田信長さんに対して激しくザマァする行為でありつつ、

織田信長さんと明智光秀さんの間によく燃える火種を仕込み、

結果として織田家崩壊のきっかけになったら笑ったるわボケェ、という、

松永久秀さんにとって何重にも戦略目標を達成できるえげつないプレゼントな訳です。

これは知略93・外政91(大志基準)も納得の謀略だわ。

 

従来伝説のように単に爆死するよりも、よっぽど松永久秀ドラマとしてアガりましたね私は。単身自爆よりも、織田家に時間差自爆テロ喰らわして死んだ方が三好家遺臣としても格好いいじゃん。

きっとあの世で長慶さんに三好家崩壊を詫びつつ、「でも、ちゃんとやることやってから死にましたさかい!」と笑顔で報告して苦笑いされていることでしょう。

これには三好三人衆もニッコリ。

 

まあ結果として光秀さんの人生も追い詰めることになってしまうんですけど、きっと久秀さんは「まあ十兵衛なら大丈夫やろ」と信頼しきっちゃってたんでしょうね。

 

 

明智光秀さんを大河ドラマにしてくださったおかげで、新たな解釈の松永久秀さん物語が誕生した訳で、こんなに嬉しいことはありません。

明智光秀さんドラマとして明らかに必要量以上の畿内史愛をブチ込んでくださっていて、感謝に堪えないっす。

 

 

そういえば、松永久秀さんと明智光秀さんといえば、後に関ヶ原の戦いあたりで筒井家旧臣の島清興(左近)さんが「あの二人みたいに果断な武士が減ったよね」とボヤいたみたいな伝説があるじゃないですか。

(ソース元が怪しいのでたぶん創作だとは思っています)

 

あの逸話、従来だったら「松永久秀明智光秀=超謀反型野望野郎」みたいな解釈前提だったのでしょうけど、いまだったら「松永久秀明智光秀=政権の一角を担った人物が、己の信念や意地を通すために兵を挙げたんだよ」的な解釈も出来そうで、そしてそれは既に先行評価されてきている島清興さんの上司の石田三成さんにも通じることで、なんだか味わい深いですね。

 

 

 

あと数話でいよいよ麒麟がくるもフィナーレです。

これまで散っていった数々の武将たち以上に、明智光秀さんの最期が煌めくものでありますように。

 

 

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