NHKで松永久秀忠臣説フルスロットルなヒストリアを放映していてかんたんしました。
放送はざっくり次のような内容でした。
- 松永久秀は三好家の家老として天下を動かした、最強のナンバー2なんだよ。黒田官兵衛とか竹中半兵衛的な存在だと思ってくれてもいいよ
- 応仁の乱以来の戦乱の中、頭角を現し始めた三好長慶を天下人に押し上げるため、側近として超がんばったよ
- 足利義輝の権威を削るため、義輝が下した裁判の判決を覆して三好長慶の方が頼りになるとアピールしたよ
- 寺社が支配する難治の国 大和(奈良)を平定するため、イケてる城(多聞城)を築いて民にアピールしたりもしたよ
- でも、肝心の三好長慶が病死しちゃったよぉ……
- 久秀、負けない! めげずに三好家の忠臣として、長慶の養子である三好義継を支えることにしたよ
- 足利将軍家の家宝を取り上げたりして三好義継の権威を高めて、義継を次期将軍に就けようと企んだよ
- でも、三好義継が唐突に足利義輝を襲撃して殺してしまったよ。諸大名は激おこだよぉ……
- 久秀、負けない! 義輝の弟 足利義昭を保護して諸大名の怒りを和らげ、三好義継を守ったよ
- でも、三好三人衆とのお家騒動が勃発してしまったよ。阿波三好家まで向こうの味方について、このままだと義継もろとも滅ぼされちゃうよぉ……
- 久秀、負けない! 織田信長と同盟を結んで、足利義昭とともに上洛してきてもらったよ。三好義継を将軍にする計画は頓挫したけど、まずは生き延びないとね
- でも、織田信長は比叡山を焼き討ちしたりする怖い人だったよ。怒った三好義継は織田信長と手切れして戦うことにしたよ。三好家忠臣の久秀ももちろん義継と行動をともにするよ。武田信玄も上洛するみたいだしきっと勝てるはずさ
- 武田信玄が上洛途中で病死しちゃったよぉ……
- 続いて三好義継も敗死しちゃったよぉ……
- 久秀、負けない! 四国にはまだ三好長慶の甥が残っているし、耐え忍べばいつかは三好家再興も叶うはず。死に急がず、再び織田信長と手を組むことにしたよ。
- でも、織田信長め、久秀の大事な大事な大和をよりにもよって興福寺筋の筒井順慶に与えてしまったよぉ……。三好長慶のもとで新しい武家の時代を築くために大和を攻略してきた久秀にとって、寺社支配に復古するような処置はとても許容できる話ではないんだよ
- 再び織田信長と戦うため、久秀は足利義昭や上杉謙信と手を結び、信長包囲網を結成したよ。さっそく上杉謙信が手取川で織田軍に勝利してくれて幸先いいよ
- でも、上杉謙信がなぜか越後に帰っちゃったよぉ……
- 久秀、負けたよ。火炎渦巻く信貴山城に死す。享年70歳!
- その死を、明智光秀も見届けていたよ
- 明智光秀の手で、織田信長も炎の中で生涯を閉じたよ
- 江戸時代に入ってからは、松永久秀のような(低い身分から成り上がった)者は悪人扱いされるようになって、足利義輝を殺害したとか東大寺大仏殿を燃やしたとかの話がクリエイトされたよ
- 再評価が進んで、さいきんの奈良市民は松永久秀を慕っているよ。松永久秀は茶人、文化人の面もあるし、本当にイケてるよね
……なんかスゴイですね。
松永久秀さんの研究が進んで、これまでも「三悪は無実」系の番組が放送されることはありましたが、今回のヒストリアは「加減しろ莫迦!」なくらい先鋭的な説を盛り込んだ内容になっておりました笑。
三好長慶さんの忠臣だった、有能な側近だった、紆余曲折がありつつも三好家復興を企図していたきらいもある、等はその通りだと思いますけれど、「三好義継次期将軍候補説」等はさすがに飛躍しすぎではないかという印象ですね。
まあ、長慶さんのやってきた事績を踏まえれば、数世代をかけて足利家と三好家の融和・一体化を図り新たな天下分裂の火種を防ぐ、くらいは長慶さんが長生きしていたら構想していたかもしれませんが。結果論とはいえ、実際に義継さんは義輝さんの妹と結婚していますし。義興さんが同じく長生きしていたら、義輝さんの妹と結婚するのは彼の役目だったかもしれず、義興さんなら足利兄妹と一層上手くお付き合いできていたんじゃないかなあとも思ったり。
「麒麟がくる」のストーリー補完的な面もあるのでしょうし、久秀さんは先鋭的な説を採用する一方で他家の登場人物は一般的なイメージを踏襲している等、全体的にかなり「見せたい要素だけを見せる」構成だったのは否めない気はいたしますが。
ひとつの松永久秀解釈物語としては大変優れた出来ばえで面白かったです。
未見の三好ファンは'20/6/16の再放送を待ち望みましょう。
なお、番組ではもちろん松永長頼さんは出てきませんでしたが。
「麒麟がくる」の後半、明智光秀さんが丹波攻略に向かうとき、松永久秀さんがしみじみと弟も苦労したんだよな的なコメントをしてくれたらいいなあと思っています。
松永久秀さんのコンテンツが、従来イメージの否定や最新研究の披露に留まらない、新たな次元に踏み込み始めたのかもしれないなあと。
感慨深い内容でございました。
引続きドラマはドラマ、研究は研究で、それぞれが発展していきますように。
個人的には、三好家への注目だけがこのまま突出していくよりは、他の畿内史関係者にも同様に光が当たって、相互の視点で理論やコンテンツの強度を増していっていただいた方が、結果として息の長い人気が得られるんじゃないかなあなんて思ったりも。