肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「僕とロボコ 19巻 感想 作者の画力と文芸力」宮崎周平先生(ジャンプ)

 

私がいまでも紙の単行本を買い続けている数少ない漫画、僕とロボコが19巻を迎えまして、作者さんの画力と文芸力がここにきて更に一段レベルアップしているのを実感してかんたんしました。

 

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いま注目しているギャグマンガは、万人向けだと僕とロボコ、一部の大人・タフ好きには女子高生除霊師アカネ!です。(タフ読者は、現在発売中のグラジャンむちゃ9月号を読みましょう。単行本だと面白さが半減するかと思います。アカネは龍を継ぐ者だった……?)

 

 

ロボコはパロディギャグや単行本表紙がしばしば話題になりますが、丁寧に読むと少年読者にピタリと目線を合わせたストーリー展開や題材選び、確かな画力表現など、作者の実力の高さに驚けるんですよね。

 

この19巻で、特にその技量がいかんなく発揮されたのが釣り回(187~189回)でして、渓流釣りなんてやったことのないジャンプ読者少年たちは具体的かつ手触り感のある釣り解説にもうアガることアガること。

一方、いい年の読者である私は釣りキチ三平矢口高雄先生)への惜しみないリスペクトっぷりにかんたんしまくるのであります。”猿喰岩魚”"石化け"といったネーミングセンス、魚の弾むような生命力表現、センターカラー表紙や決めゴマの釣りキチ風ボンドの格好よさ等、もう読み手的にもグイグイ釣られてしまいますわ。

(話はそれますが今どきの子どもたちに矢口高雄先生のエッセンスを与えてくれること自体が私は嬉しい。子どもたちにはいずれ釣りキチだけでなくマタギも見つけて読んでもらいたいっす)

 

 

で、ジャンプ本誌を読んでいた時も釣り回すげーなと思っていたんですが、単行本ベースで再読したとき、かんたんしたのが作者さんのオマケページコラムなんですよね。

何かというと”石化け”に関するご自身の体験談をエッセイ風に1ページ書いているというものなんですけど、その「読ませる」文章力がとてもハイクオリティなんですよ。エッセイ風おまけページというか売れるレベルのエッセイやんという。

 

以前の単行本でも「20巻」に対する深い気持ちを書かれていて「読ませるねえ」と思ったものですが、今回の石化けコラムは更に文章力上がってはるなあと。

 

思い返せば、僕とロボコという作品自体、パロディや画力の方に目を向けられがちではあるも、それに勝るとも劣らないのがネームの構成や一つひとつのセリフあたりにあるんじゃないのという気がしてきます。

19巻でもMCバトル回やダイナミックパンティ回など、独特のワード選び、面白い場面の切り出し力を感じますよね。

 

あまり褒められたり注目が集まったりして作者さんの自尊心がロボコ的な方面に暴走するとよくないのでしょうけど、なんというか作者の宮崎周平先生は漫画家としても現に活躍している上に原作者や脚本家やプロデューサー的な素質もあるんじゃないの? と思った19巻でしたわ。

漫画作品としての僕とロボコをガチで論評したような文章をあまり見たことがないので、熟練の読み手さんの意見や感想も聞いてみたいものです。

 

 

なにはともあれ目指す20巻も目前、僕とロボコもまた、新たな才能ある若手漫画家のよき目標になっていきますように。