文学・一般書
青空文庫で徳富蘆花さんの「不如帰(ふじょき、あるいはほととぎす)」を初めて読んだところ、個人的にとても好きなタイプの夫婦の悲恋ものでかんたんしまして、明治期・日清戦争前後独特の社会情勢描写と相まって感じ入りました。 好きあっている夫婦がずっ…
陰陽師シリーズの絵物語「瘤取り晴明」を読みましたら、昔話の瘤取り爺さんアレンジで面白いなあと思っていたところに終盤はひたすらの源博雅さんの笛が無双していてかんたんしました。 このシリーズの源博雅さん、もはや存在がデウスエクスマキナ過ぎて尊い…
密漁の実態にせまるルポルタージュ本として話題になっていた「サカナとヤクザ」を読んでみましたところ、幅広い視点や魚種で渾身の取材を続けられたことが伝わってくる文章で実に読みごたえがあり、かんたんいたしました。 www.shogakukan.co.jp 食べてるあ…
古代ローマの哲人セネカさんの著作を初めて読んでみたところ、収録作品のうち「生の短さについて」「心の平静について」はいいこと言ってくれていてかんたんしましたし、「幸福な生について」は後半が一所懸命言い訳している感じなのが完璧超人ならぬ人間ら…
アメリカの有名なサスペンスフィクション大河小説「警察署長」を読んでみたところ、想像以上に骨太なストーリーライン、登場人物たちの骨太な人格っぷりが読み応えありすぎてかんたんしました。 久しぶりにのめり込んで小説を読んだ気がします。 警察ものの…
ワンピースの過去編等で破壊されがちな「尊厳」という言葉、最近耳にすることが増えたなあと思い、岩波新書の「尊厳」という本を読んでみたら思いのほかガチな哲学本で難しくて濃厚でしたが、書いてあることはいい内容でかんたんしました。 www.iwanami.co.j…
三重県がらみの友人から昭文社の「三重のトリセツ」という本を贈呈いただきました。 てっきり「ことりっぷ」的なライトで眺めていると楽しい系の、あるある地元ネタが並んだ内容の本だと思って読み進めてみたら、中身は地図・地形・交通・歴史・産業への濃厚…
昨年に発売されていた松永久秀さんの小説が、さいきんの史実研究をベースに松永久秀を等身大の好人物として描いておられてかんたんしました。 www.gentosha-book.com じわじわと松永久秀さんのコンテンツも増えてきているような印象があります。 松永久秀さ…
貞観政要の全訳注を読んでみましたら、古来から読み継がれてきたことも納得の素晴らしい本であることがひしひしと実感できてかんたんしました。 人の上に立つ人、あるいは人の上に立つ人に物申す立場にある人にとっては、座右の書とする価値が充分にあると言…
西田幾多郎さんの「善の研究」を読んでみましたら、めちゃくちゃ難しくて笑いましたが書いてある内容は善意が溢れていてかんたんしました。 www.iwanami.co.jp 真の実在とは何か,善とは何か,宗教とは,神とは何か――.主観と客観が分かたれる前の「純粋経験…
あけましておめでとうございます。 みなさま本年もよろしくお願いいたします。 今年は三好長慶生誕500周年ですね。 年末年始に関係情報を検索していたら、三好長慶・松永久秀主従が主役、しかも面白さという点でも最新研究の反映という点でも素晴らしい小説…
バタイユさんの経済? 書「呪われた部分」が、難解ながらも個性ある文章展開に読み惹かれ、なおかつ通常の哲学や経済学や各種オピニオンとはちょっと違った視点を与えてくれる楽しい内容で、かんたんしました。 バタイユさん、「エロい」ということしか知り…
小説「陰陽師 太極ノ巻」を読んでいましたら、安倍晴明さんの人前での源博雅さんへの態度が職場恋愛的匂わせ・逆匂わせに富み過ぎていて、凄みにかんたんしました。 books.bunshun.jp 以下、ネタバレはほとんど含みません。 「太極ノ巻」に収められているお…
タイトルのアクが強い児童文学「地獄たんてい織田信長」がアクの強いギャグ&歴史小ネタがまんさいでかんたんしました。 歴史好きのパパママが子どもと一緒に読んであげるといいかもしれない。たぶん。 tsubasabunko.jp 内容としましては、 小学六年生の男の…
昭和期に人気を博した薬師寺管主高田好胤さんのベストセラー「心」を取り寄せて読んでみたところ、当時の人気も納得の語り口、中身の充実っぷりにかんたんしました。 薬師寺の再建を成功に導いたというのもさもありなんという感じがいたします。 高田好胤さ…
「天下一品Walker」という頭のキレたムック本が出版されていてかんたんしました。 収録されている「こってり」をはじめとした各メニューの写真が極上過ぎて、思わず天一に行ってしまいました……なんて危険な本なんだ。 tenkaippin-media.com 京都の某書店で平…
陳舜臣さんの小説「耶律楚材」を読んでみましたら、ユーラシア大陸を股にかけたりイスラム出身者等々多様な人々を受け入れたりするモンゴル帝国のスケール感、その中で活躍する耶律楚材さんのお志や契丹人兼中国文化出身者としての味わい等々、読み応えがあ…
ヴォルテールさんの寛容論を読みまして、18世紀としてはそうとう先進的で啓蒙的な内容と文章のキレッキレっぷりにかんたんいたしました。 一方で、この本では当時のフランスで少数派だった新教徒を傷つけた旧教徒の方々の無自覚で多数派な攻撃性を思いっきり…
二葉亭四迷さんの「浮雲」を読んでみましたら、主人公の高学歴&女性経験ゼロからくる謎の上から目線感ですとか、ヒロインの流行に流されてそれっぽく生きている感ですとか、ライバルの典型的な世渡りうまい嫌なやつ感ですとか、ヒロインのお母ちゃんの典型…
宗教幻想劇「ドン・フワン・テノーリオ」を読んでみましたら、いい意味でキリスト教らしい救済のされようが美しくてかんたんしました。 「紀州のドンファン事件」の報道を見て軽い気持ちで読んでみたんですけど、想像以上に内容がよかったので何事もきっか…
室生犀星さんの金魚擬人化幻想小説「蜜のあはれ」を読みましたら、70歳の著者が書いたとは思えないくらいぶっ飛んだ性癖描写が盛りだくさんでかんたんしました。 ふるさとを遠きにありて思ふことで定評のある室生犀星さんのイメージがガラリと変わってしまい…
陰陽師シリーズ「龍笛ノ巻」を楽しく読み進めて満足していたところ、最終エピソード「飛仙」のオチがイッてる内容で一層かんたんしました。 books.bunshun.jp 以下、ネタバレを含みますのでご留意ください。 当巻に収録されているお話は次の通りです。 怪蛇…
フランシス・ベーコンさんの随筆集を読んでみましたら、けっこう実際的というかイギリス貴族っぽい経験知に富んでいてかんたんしました。 日本で言えば戦国時代末期くらいの人物ですが、現代の上級マネジャー層に求められる素養に通じるようなことをたくさん…
中島敦さんの南洋もの小説「光と風と夢」を読んでみたところ、はじめは西洋人の日記文学エミュレーターっぷりすげぇなと感心していたのですが、後半に進むにつれ主人公の自我の起伏がえらいことになってそれがまた大層美しいなとかんたんいたしました。 www.…
鈴木大拙さんの著作を久しぶりに読んでみたところ、相変わらずの奥深い思索・弁舌ぶりにかんたんしました。 www.iwanami.co.jp キリスト教神秘思想を代表する修道士エックハルト、中国、日本の禅僧の問答、真宗の念仏者の極点・妙好人の信心の世界、これら東…
吉村昭さんの小説「破船」を読みまして、例によって救いに乏しい過酷な展開を淡々刻々と描写する筆致にかんたんするとともに、帰属する集団に自己が埋没する人間のありようがリアリティあり過ぎてぞくぞくしました。 www.shinchosha.co.jp 二冬続きの船の訪…
星野道夫さんのエッセイ「旅をする木」をあらためて読んでみたところ、一つひとつの命を見つめるやさしい視線と、吉村昭さんの小説にも通じるような透徹とした姿勢とを感じてかんたんしました。 books.bunshun.jp 広大な大地と海に囲まれ、正確に季節がめぐ…
中公新書、高橋睦郎さんの「漢詩百首」が、漢詩の味わいや各詩人のプロフィールに気安く親しめる良著でかんたんしました。 日本人・日本語の歴史に対して、漢詩がいかに重要な役割を果たしてきたかを論じてくださっている熱量も素敵ですね。 www.chuko.co.jp…
青空文庫で夏目漱石さんの草枕を再読しましたら、昔読んだときは高尚な芸術論的作品のように思えたのに、今読んだら「これは一種のTo Loveるとして読んだ方が面白いのではないか」という風に思えまして受容体たる己の精神的変化にかんたんしました。 www.aoz…
「アイデンティティが人を殺す」というエッセイを読んでみたところ、まこと現代世相にフィットした考察や意見が記されていてかんたんいたしました。フランス語の原文には触れていませんが、小野正嗣さんによる訳もすごくいい気がいたします。 このテキストは…