肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「商人の戦国時代 感想 こんな本を待ってた」川戸貴史さん(ちくま新書)

 

戦国時代の経済・経営史を取りまとめた本が出版されていてかんたんしました。

こういう本が私は大好き。一般的な戦国時代の書籍は武将たちの軌跡を取り扱ったものになりますので行政や戦や組織運営や外交が重点的に語られますけれども、商業、農業、文化・芸能、あるいは宗教等、せっかくその時代に関心を持っているのだから世界観の幅を広げてくれる栄養を積極的に摂取していきたいところなのです。

 

 

www.chikumashobo.co.jp

 

↓少し詳しい内容紹介

www.webchikuma.com

 

 

 

中央権力が衰退し秩序と自由がせめぎ合う乱世を
あの手この手で乗りこなす――
天下は銭で回ってる

中央権力が衰退し混迷する戦国時代、旧来の秩序を破る新興商人を、権力者たちは取り締まることが困難になった。新旧商人の縄張り争い、金融業の出現、拠点都市の建設、利権ビジネスと借金トラブル、御用商人の暗躍、世界貿易への参入、「楽市・楽座」の実態――。幕府、朝廷、大名、寺社、海外勢力、様々なプレイヤーが乱立する時代に、商人たちは何を頼り、秩序と自由の狭間を生き延びたのか? 史料に現れる、余りに人間的なエピソードの数々から、乱世を生き延びる戦略を学ぶ。

 

概要は上記引用の通りですが、オフィシャルHPで目次を詳細に教えてくださっていますのでそちらも引用させていただきます。

 

『商人の戦国時代』目次
プロローグ──戦国時代の商人とはどういう存在だったのか?
商人たちの訴え/戦国時代の利権ビジネス/中央権力の衰退で揺らぐ秩序/実は流動的だった「商人」という身分/中世商人はどこから来たのか?/特権を与えられた商人たち/「座」の盛衰

第1章 戦国金融道 ──京都商人の栄枯盛衰
戦国時代のサービス業/様々な職人と売り子たち/船で運ばれた商品たち/塩の戦国時代/中世最大級の淀魚市/大坂湾を掌握した三好氏/塩の利権をめぐる争い/戦乱の時代の樹木需要/京都にはすべてが集まる/室町幕府のぜいたく三昧/戦国金融道――金融業者の登場/戦国時代の利子はどれくらいだったのか?/ついに不満が爆発する/比叡山延暦寺の抵抗活動/権門経営は守護代アウトソーシング/幕府財政に関わった「野洲井」/野洲井と賀茂社との密接な関係/悪銭混入という社会問題/悪銭とは何か?/金融業者たちが躍動した京都/天皇家の資金管理を担った商人/土倉とは何か?

第2章 ほんとうの「楽市・楽座」──兵庫・堺・博多・伊勢大湊
流通拠点での商業/瀬戸内海運の重要湾口都市「兵庫」/アジアとの貿易港「堺」/大名権力の支配下へ/「講」による自治/戦国時代の堺商人たち/「納屋」の正体/堺商人の家から大名になった小西行長茶の湯鉄炮を広めた堺商人たち/信長・秀吉と堺の関係/武家勢力による博多争奪戦/日本を代表する貿易窓口の盛衰/伊勢神宮の外港から太平洋海運の重要拠点へ「伊勢大湊」/角屋と北条・徳川家のつながり/そう単純ではない「楽市・楽座」/復興策・特権排除・治安維持/軍事戦略としての「楽市」/有名な織田信長「楽市・楽座」の実態/豊臣秀吉による「楽座」の完成

第3章 新興商人vs.特権商人 ──利権だらけの中世
「特権商人」対「新興商人」――新旧商人の競合/四府駕輿丁座の形成/巨大な特権商人集団の誕生/米の権益を独占した駕輿丁座/米商人への統制/四府駕輿丁座の弱体化/既得権益を揺るがす新興商人集団/利権の張り巡らされた中世/偽文書による紛争決着/偽文書が通ったのはなぜか?/相互不干渉と先例主義/今度は通行権を争う/商売は実績が物を言う/意外な判決/保内商人の戦いは続く/枝村商人の反論/保内商人の再反論/保内商人の苦しい主張/証拠文書か実効支配か/六角氏による意外すぎる判決/斎藤道三の台頭/判決には裏がある!/癒着の決定的証拠か/戦国時代に賄賂は当たり前/木綿運送をめぐるさらなるトラブル

第4章 御用商人たちの暗躍 ──商人的活動を担った大名家臣
石見銀は誰が運んだのか?/「銀山屋敷」と尼子氏の御用商人/毛利氏商人的家臣/交通の要衝「赤間関」の支配/返礼使として来日した宋希璟/瀬戸内海の水先案内人「東西の海賊」/宣教師ルイス・フロイスが遭遇した海賊/大名に仕えた因島村上氏/公権力から距離を置いた能島村上氏大内氏がこだわった瀬戸内海/漂流物は誰の物か?/戦国大名と癒着した商人/キーワードは「商人司」/織田信長の商人司「伊藤宗十郎」/今川氏の商人頭「友野氏」/中央集権体制の消滅/伊勢神宮の布教活動/遍歴する修験者と商人

第5章 大名たちの経営戦略 ── 「資源大国」日本
軍事力を維持するために必要なもの/衣服をめぐる経済学/苧麻を独占した「苧座」―― 越後長尾氏/特権にしがみつく手管/滞った特権収入/そして特権は別の手に移ってゆく/実は資源が豊富だった戦国時代/武田信玄の金山開発/上杉謙信の金山開発/世界的規模を誇った石見銀山/銀山をめぐる戦い/誰が銀山を支配したのか?/戦国時代の城下町/越前朝倉氏の城下町「一乗谷」/地方都市には珍しく医師が住んでいた/朝倉氏による商業の統制/北海道の物流拠点「勝山館」/アイヌと和人の交易/大分土着守護の城郭都市「大友氏館」/南蛮貿易キリスト教/権力は秤の規格を決める/硫黄・火薬・鉄炮

第6章 世界史の中の戦国時代 ── 貿易を担った商人たち
戦国時代はグローバル化の時代だった/石見銀山で世界に参入/多国籍化する東アジア/「倭寇的状況」―― 治安の悪化と貿易/倭寇討伐と日本への渡航禁止/堺商人が主導した日明貿易/細川と大内、遣明船同士の武力衝突/博多と堺、遣明船派遣合戦/貿易の中心を担った堺商人「日比屋了珪」/謎に満ちた経歴/南蛮貿易=東南アジアを介した貿易/今井宗久と堺の貿易/京都の名商人「角倉吉田氏」/角倉了以南蛮貿易/豊臣政権の貿易統制

エピローグ──新旧の秩序がせめぎ合った戦国時代
秩序と自由のせめぎ合い/自由から鎖国

 

 

どうです、この地域や業種の網羅性!!

詳しい人であれば目次を眺めてピンとくる案件も多いと思います。各地の戦国時代大名研究の文脈で取り上げられるような経済トピックスを、こんなんにも大集合させて総観させてくれるとアガりますよね。

 

 

地域という視点では、この手の武将以外本は畿内を無視、逆に畿内(京や堺)のことしか書いていない、のどちらかになりがちですけれどもこの本に限ってそういう心配はございません。細川家や三好家などのややマイナー気味な大名勢力圏も、各地のメジャーな大名勢力圏も、ばっちり模様が記されております。三好ファンや堺ファンにももちろんおすすめですよ。

しいて言えば瀬戸内海関係以外の四国がちょっと寂しいくらいでしょうか。四国の中世・戦国時代研究がもっと注目・投資されてほしいぜ。

 

業種や事業活動という視点でも、農地管理(荘園)、金融、業界団体による政治交渉、鉱山経営、海運および海外交易、大名御用商人、地域公共財への投資等々、様々な事例が紹介されますので読んでいて飽きません。

滋賀県の某地域の新興商人衆が偽文書を活用して勝訴しまくっていた事例が取り上げられるなど、プリミティブでパッションあふれる経営活動っぷりを堪能できるのが読みどころ。戦国時代は商売であれ武術や芸能であれ「道」が体系化・一般言語化される以前の時代ですので、ふつうのビジネスパーソンがそのまま朝礼やスピーチのネタにとり入れられるような逸話は少ない※のですけれども、秩序が再構築される過程の混沌期にあってがむしゃらに生存・発展を図っていくバイタリティ、知恵の絞り出しや飛び込む勇気や司法行政・宗教団体との癒着折衝といった経営上のセンスはばっちりインプット可能です。歴史好きのビジネスパーソンにはもちろんおすすめですよ。

 

※とはいえ「正直屋」という商人が存在したくらいですので、商売する上で「正直が大事」という価値観自体は当時から存在したのでしょう

 

 

 

本の内容からは少し離れますが、巻末に著者さんも「ビジネスパーソンって歴史本けっこう好きだよね」と書いてくれていましたので雑感を。

 

たしかに経営者って歴史や古典が好きな人が多くて、従来から戦国時代のウンチク本であったり歴史小説や歴史ゲームであったりを通じて有名な逸話(真偽は問わない)を学び、そのことを判断力の涵養に活かしてきたという文脈は存在すると思います。

有名な逸話、真偽は問わない、という点では史学を学ぶ人にとって残念なことではあるのですけれども、有名な逸話=人の情緒に訴えるところが大きいですので、「人間を知る」「感情の動きを知る」「間を学ぶ」等の点でロールプレイ・ケーススタディ的な研鑽効果も実際あるのでしょう。

軽い内容の雑学本や楽しい歴史コンテンツはとっつきやすいですしね。

 

一方、この10年くらいでかなり増加した一次史料ベースのちゃんとした研究を一般人に教えてくださる系の書籍群、この読者層にもけっこうビジネスパーソンって含まれている感覚があります。研究者や学生、クリエイター、土地の人々等のしっかり研究したい方々だけでなくて、ビジネスパーソン的な一般人も買い支えているからこその盛り上がりに映っているんですよね。

学術的な研究成果についても、史実ベースということはすなわち良質なドキュメンタリーであるわけですから、「英雄的個人の逸話」ではないぶん分かりにくいところはありつつも、確かな説得力、「人間とはこういう行動を取るもの」「こういう行動にはこういう結果が伴うもの」ということを学ぶにはとてもよい事例集なのであります。歴史小説とはまた違う角度ではありますが、やはり判断力を伸ばすという点では有意義なのでありましょう。大げさに言えば基礎研究の成果が社会で役立っている! です。

 

たぶん当書籍の読者層は、先に戦国時代研究が好きで、そこから周辺的世界として商業史にまでスコープを広げていく、的な方が多いと思います。

でも、今でも茶道や武道のルーツを知りたくて戦国時代に詳しくなる人もいることですし、これから商業史の研究・周知が進めばそこから入って戦国時代に興味を持つ人も出てくることでしょう。そのためにも、このように良質な研究成果を集約したような本が出てくれることは大歓迎ですし、未来は明るいと感じ取れて嬉しくなるものですね。

 

 

商業史にかぎらず、その時点の研究成果を広く集約したような本が好きです。

あまり出ていないジャンルであればなおさら!

こういった良著をベースに、研究や注目がますます進展していきますように。

 

 

小説「折れた岬 感想 会社引退後の暮らしは消化から……」有栖川有栖さん(日経夕刊小説)

 

日経新聞の夕刊で連載されていた有栖川有栖さんの小説「折れた岬」がめでたく完結いたしまして、そのミステリの皮をかぶってすらいないミステリ風小説における会社退職後のおじさんの精神的な次のステップへの移行ぶり描写にかんたんいたしました。

ミステリ的なトリックや真相解明を期待して読んでいた方からすると???かもしれませんけど笑、私にとってはなかなか口に合いました。

 

www.nikkei.com

 

 

大手出版社で還暦過ぎまで勤め上げた滝原文典は南伊豆の「風伏」という町に移住した。そのわけは約十年前に失踪を遂げた、作家・苅田琉介の謎を追うためだった。滝原は探偵のように近くの食堂や喫茶店を回りながら、琉介についての情報を集める。かつての後輩編集者や探偵業を営んでいる友人らの協力を得ながら可能性をひとつひとつ疑ってみるが、確証はつかめない。

 

 

あらすじは上記の通り。

ミステリ小説の編集者として活躍した主人公滝原さんが会社を去り、かつて担当していた作家の失踪事件の謎を追いはじめる……というものです。

 

詳細なネタバレは伏せておきますが、以下にさっくりとした読みどころは書いてありますのでご留意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この主人公の滝原さんというおじさんが、いい感じにリアリティがあるといいますか、小説の登場人物として多面的な部分を丁寧に描いてくれておりまして、

  • 仕事はよくできたのであろう感
  • でも、もしかしたら自分もミステリの探偵みたいな活躍ができてしまうんじゃないかと期待している青臭い感
  • 多くの人々から信頼を得てきたのであろう感
  • でも、恋や愛といった概念に対して見え隠れする青臭い感

 

と、まっとうに過ごしてきた社会人らしい面と、妙におぼこい面が混ざり合っている人物でして、それがリアルなおじさん味に繋がっている気がいたします。

 

 

そんなおじさんが作家失踪事件に取り組むのですが、これがまったくうまく進展いたしませんの。あの人ともしかしたら揉めたんじゃないかとか、あの人ならこういう犯行が可能なんじゃないかとか、ミステリっぽい展開パターンに当てはめながらああだこうだと推理したり探ってみたりするのですけど、これがもうことごとく空振りなんです。

ミステリ小説として期待するとカタルシスはゼロ!

 

一方で、そんなおじさんが南伊豆の豊かな自然に触れたり、好きな本のページをゆるりたぐってみたり、先行きが楽しみな若者に出会って交流したり、昔なじみの友人の親切が身に染みたり、周辺の登場人物も介護などの年相応の悩みを抱えていたりと、退職後の日々の暮らしを過ごしているなかで、作家失踪事件の謎はさっぱり解けないんですけれども、確実におじさんのなかでは事件=現役時代の最大の心残りがすーっと消化されていく……謎は謎のままであること、自分に物語のような探偵展開は起きないことを受け入れられていく……空いた胃袋のスペースに退職後のささやかな楽しみ喜びが埋まっていく……のを、よき文体で長々と追っていけるストーリーになっておりまして。

そんなおじさんの微細でゆっくりした精神上の変化ぶりが、なぜか心地よいのです。

これが短編小説だったら完全に???ですけれども、1年以上にわたる連載のなかでおじさんの心理のうつろいを追ってきたゆえに、読み手としてもおなかに負担なく消化していくことができましたわ。

 

 

ちなみに、作家失踪事件についてはちゃんと最後に解明されます。

が、こういう小説ですので終盤まで読み進めた読者としてもミステリ的な驚き・逆転・予想当たった外れたとかにはならないんじゃないですかね。著者の読者サービスとして事件のオチは一応ちゃんと置いといたよ、という印象でした。

それよりも、主人公のおじさんの心情変化を追っていくところに妙味がある小説じゃないかなーーと思いますね。

 

終盤の主人公のおじさん、自分自身の暮らしに物語的な展開が起ころうが起こるまいが、それでも人間には物語が必要だと確信してはるところに、本好き・元編集者な人物としての精神性の結晶のようなものを感じましたし、共感しましたわ。

 

 

日経新聞というメジャー媒体で連載されていた割に、アーティスティックというかシュール寄りというか、人を選ぶ面白さに富んだ小説でした。私は好き。

 

「折れた岬」というタイトルと場景描写にも通じる気がいたしますが、年経るごとの変化の積み重ねが豊かな景観と味わいを人にもたらしてくださいますように。

 

 

 

 

岐阜県「江馬氏館跡、神岡城、帰雲城……特に江馬氏館は国衆ごっこにおすすめ」

 

岐阜県の飛騨高山や白川郷あたりを訪れまして、これまで訪れたことのなかった城跡へいくつか伺ったところ、整備のされようや町の雰囲気も含めた趣がとてもよろしくてかんたんしました。

 

とりわけカミオカンデで有名な神岡町の江馬氏館跡は国衆館としての再現具合が素晴らしく、国衆になった気分でロールプレイするには最適な場所だと思います。国衆願望がある方には特におすすめですよ。

 

 

江馬氏館跡

www.city.hida.gifu.jp

 

姉小路家とのあれやこれやで知られる江馬氏。

信長の野望でも姉小路家はけっこう人気の勢力で、それだけに以前はよく「江馬氏は姉小路家の家臣じゃない!」と突っ込まれておりました。最新作の信長の野望・新生では江馬氏が遂に国衆として独立いたしまして、全国の江馬氏ファンが歓喜したことも記憶に新しいところですね。

 

 

 

さて、江馬氏館跡。

 

ご覧の通り、堀や門構え、会所・庭園がきれいに復元されておりまして、200円払えば会所内の主人の間・接客の間にすわって庭園を眺めながら、国衆として客人や使者の接遇ごっこができるのです。

すごくない? こんなイケてる施設は全国にもそうありませんよ。ぜひ室町時代好きや戦国時代好きの方同士で連れあって訪問いただき、「次は旅の連歌師役やる~」「私はお公家さん~」とかキャッキャ盛り上がっていただきたい。

じっさい、江馬氏館には万里集九さん(下呂温泉メジャー化でも有名な歌人)が訪れた記録も残っておりますしね。シチュエーションという意味でも、みやこから離れた良き鄙の風情という意味でも大変よろしきです。よくこんな風に施設を再現してくださったものですわ。

 

 

 

神岡城

www.city.hida.gifu.jp

 



こちらも江馬氏のお城跡で、現代になって模造天守がつくられました。

天守の寄贈はこの地で採掘に励んでいた三井金属さんによるものとのこと。太っ腹! 一部の人にしか刺さらないかもしれませんが私のなかでは企業好感度が上がりました笑

 

お城の隣には鉱山資料館がありまして、かつてこの地が屈指の亜鉛採掘地として栄えた歴史を堪能できますのでそちらもおすすめです。

歴史、地学、素粒子に宇宙学と、神岡町は知的好奇心を刺激してやまないぜ。

 

 

 

帰雲城

www.vill.shirakawa.lg.jp

 

 

戦国時代後半、内ヶ島一族や家臣郎党、そして地域の住民を襲った地震の悲劇で知られる帰雲城

こんなに白川郷から近いところにあったんですね。

 

城跡というよりは鎮魂碑としての意味合いが強い場所かと思います。

通りがかった際には手を合わせてひとときの祈りを捧げてみましょう。

 

 

 

 

 

飛騨高山の山里はそのまま過去と繋がっているような味わいがあって、歴史散歩という意味でも魅力的な土地ですね。

上でご紹介の通り、史跡を丁寧に整備されている姿勢も素晴らしいです。

白川郷下呂温泉だけにとどまることなく、岐阜県山間部の尽きない魅力がますます世に知られてまいりますように。

 

 

 

 

 

大相撲「2025秋場所感想 横綱対決いいですね&ちいかわ(うさぎ)に心を持っていかれた」

 

大相撲秋場所横綱2人が場所を引っ張り、三役以下は引続き番付争いが激しいという相撲界の新陳代謝的には非常に健全な場所になってかんたんいたしましたね。

十年以上も横綱同士の千秋楽優勝争いがなかったと聞いてあらためてしみじみ。流動的であることが常の角界ではありますが、このよき形をもうしばらく見ていたいものです。

 

www.sumo.or.jp

 

www.nhk.jp

 

 

今場所、幕内の勝ち越し力士は次の通りです。

 

13勝 大の里(優勝)、豊昇龍

12勝 隆の勝(敢闘賞)

11勝 安青錦(技能賞)

10勝 王鵬、宇良、正代、獅司

  9勝 琴櫻、若元春、欧勝馬、美ノ海、翔猿、
   友風、竜電

  8勝 伯桜鵬(殊勲賞)、平戸海、草野

 

おめでとうございます。

 

 

大の里関はお見事でしたね、横綱という地位にもしっかり馴染んできた印象です。

先場所まで見せていた真っすぐ引いてしまう悪癖は相当克服され、むしろ両腕の使い方に更に磨きがかかった印象です。勝ち方がなんせ「強い!」「力強い!」という映えがありますので、どんどん記録を伸ばしていっていただきたいところ。

 

豊昇龍関は悔しい千秋楽・終盤戦となりました。

彼の立ち合いなどを見て眉をひそめる方も多いと思いますが、私個人としては豊昇龍関の執念、どんなことでもやりかねない泥臭さ、気持ちの入った取組と反射神経が好きなのでこれからも大の里関とともに並び立っていただきたい。大の里関と豊昇龍関はお互いが存在することでお互いの長所が輝く関係だと思いますの。

 

 

隆の勝関もすっかり実力者としての評価が定着しましたね。

安定性が増してきたのが何より。大栄翔関や阿炎関が調子を落としているさなか、上位に君臨して壁になってほしいし本人もまだまだ上を目指していただきたいっす。

 

 

安青錦関はもうなんというか貴方すごいねとしか言いようがなくなってきました。

上位陣があの手この手で対策を取るのを見ると、逸ノ城関が入ってきたころのことを思い出しますし、当時の逸ノ城関よりも高位安定している気がする……。ケガにだけは気をつけていただきつつ、早々に大関挑戦でしょうかね。

 

10勝勢のなかでは、王鵬関が地味によかったと思います。最上位陣に土をつけつつ星数が増えない、というのが今場所はなくて、隆の勝関同様に安定性が増してきた印象。小さくまとまらずにもっと強くなっていただきたいものです。

獅司関もばたばたしているところはありますが、ようやく幕内慣れしてきた感じがしますね笑。一所懸命なところがかわいくも力強いので、しっかり地ならしをしていただきたいと思います。

 

そして宇良関。毎場所魅せてくださいますのでちょっとやそっとでは「今場所はよかった」と言いにくい御仁なのですが、今場所は特にキレがよございました。

ちいかわコラボは反則やと思います。こんなん目が離せなくなるし一生現役続けて一生化粧まわし見せ続けてほしい……思いついた人、天才っすわ。

togetter.com

 

 

9勝勢のなかでは若元春関が序盤から終盤までずっとイケてましたね。

9勝勢のなかでも一番意味のある9勝やと思います。

8勝勢の三人も全員よございました。やがて君たちの時代が感がありますわ。特に草野関が千秋楽勝ち越したのは自信になるはず。

 

 

今場所は推していた力士が負け越したり、負け越しつつも多くを魅せてくれたりもしたりで、星数に限らない面白さがありました。総じて良い場所だったのではないでしょうか。

 

関係者の皆さまがまずはお身体を休めていただき、九州でもよいコンディションで熱戦を繰り広げてくださいますように。

 

 

 

 

東京駅・新大阪駅・名古屋駅の「おすすめのり弁」※2025年9月現在

 

この数年来のり弁人気が高位安定傾向にあります中、新幹線の主要駅である東京駅・新大阪駅名古屋駅のマイベストのり弁が出そろってきてかんたんしておりますのでご紹介を。

 

 

東京駅:新幹線18/19番のホーム厨房米’n「旅海苔弁」

www.jr-plus.co.jp

 

※画像はオフィシャルHPから引用

 

東京駅は駅弁屋「祭」さんやグランスタが著名すぎて新幹線ホームで弁当を買う人は少数派かと思いますが、こちらホーム厨房米’nさんののり弁をあえて狙ってみるのがおすすめです。

 

東京駅の利用客はなんやかんやで舌が肥えているので、幕の内系でも一品特化系でも高品質の駅弁がしのぎを削っておりますが、こちらののり弁も総じて一品一品のクオリティが高いのです。

鮭(銀鱈より個人的におすすめ)、唐揚げ、玉子焼き、キンピラ、海苔ごはんに加え、梅干しが入っているのも魅力的。

 

祭やグランスタが激混みなのをかわして、悠々と新幹線改札に入り18・19番ホームのすいているこちらのお店でシュッとのり弁を買うの、スタイリッシュだと思いませんか。

 

 

新大阪駅:新幹線改札内の「海苔弁 極」(ニコニコのり)

prtimes.jp

※画像はオフィシャルHPから引用

 

関西人におなじみニコニコのりさんののり弁。

新幹線改札内の、駅弁専門店ではなく、中央改札近くのデカい土産物屋さんや在来線改札近くのデリカステーション等で販売しています。とん蝶も売っているので、お腹が空いているときと小腹を満たしたいときで使い分けるといいでしょう。

 

鮭(銀鱈より個人的におすすめ)、だし巻き、レンコンキンピラ、揚げなす煮びたしいんげんに加え、合鴨! さつまいも! といった個性派が並びます。いずれもおいしいの。

加えて、こののり弁の最大のポイントは、のりが「刻みのり」であること。地味にのり弁界におけるイノベーションなのではないでしょうか。板のりがべローンとはがれることなく、ノンストレスで食べ進められるイージーモードなおいしさに驚嘆せよ。

 

 

 

名古屋駅名鉄百貨店デパ地下 仕度屋ののり弁

www.kk-kotobukiya.jp

 

最後に名古屋駅

新幹線ユーザーからすると少し遠いのですが、近鉄名鉄利用者も多いと思いますので名鉄百貨店デパ地下の推し弁当を。

 

こちらのお店はコストパフォーマンスに優れる総菜屋さんでして、のり弁は定番商品ではなく、日替わり弁当的なラインナップのひとつとしてよく並んでいる感じです。

焼きサバのり弁の日もあれば、豚しょうが焼きのり弁の日もある感じ。

そのため、画像を貼ってこのおかずがいいのよとかは一概に言いにくいのですけど、いつ行っても安心感のある「うまい!」そして「安い!」が超魅力的なのですよ。

デパ地下の総菜屋さんというと、サラダをちょっと2-300g買っただけで1000円超えてくるイメージもあるかと思いますが、こちらのお弁当は総じて700円前後。その割におかずはたっぷりで味もよくて感謝しかないのです。

いまどき駅弁もランチも1000円超が珍しくない中で、デパ地下という好立地で700円前後の弁当を売ってくれるなんてすごくない? 大根煮とか筑前煮を単品追加してやっと1000円くらいなんですよ。わざわざ足を運ぶ価値がありまくりです。

 

いちばんの問題は、名鉄百貨店がリニューアルで26年2月末に閉館予定なこと。

食べて感激できるうちにこのハイコスパをぜひ体験してみてください。

近くには御座候もあって、マジで満足度の高い一角になっております。

 

 

 

 

のり弁っていいですよね。

そのまま単体で食べてもおいしい。

ビールやハイボールを買って、おかずをアテにして総ざらいしたあとにノリごはんだけで食べてもおいしい。

この融通が利く感じがとてもよいと思います。

 

いっときのブームで終わることなく、ハイバランスなのり弁がマーケットに根付いてまいりますように。

名鉄百貨店の人気惣菜店がリニューアル後もなんらかのかたちで営業継続してくださいますように。

 

 

「中原中也詩集 感想」編:大岡昇平さん(岩波文庫)

 

さいきん周りに文豪ストレイドッグスにはまった人がおりまして、中原中也推しということで私もつきあいで中原中也詩集を久しぶりに読んでみましたところ、ある程度年齢を重ねたからこそ分かったり共感したりするものが増えていて、若者向けの詩人と言われがちですが大人にとっても良いものだとかんたんしました。

 

www.iwanami.co.jp

 

 

 

私は本を読むの好きですけれども、詩というのはいまだに味わい方や読み方が正直よく分かっておりません。

さはさりながら、詩からでしか得られない栄養のようなものは確かにある気がしており、同じく分からんながら美術館に行ったりするのがまあまあ好きなのと同じようなジャンルに受け止めております。

 

 

中原中也さんは超有名人ですので特に説明はいたしませんが、若者特有のナイーブさであったり、お子様や弟さんを失った悲しみであったり、人生全体にたゆたう哀しみであったりのフレーバーで語られることが多い感じでしょうか。

 

今回久しぶりに詩集を読んでみましたら、時々出てくる「畳」モチーフの温かみであったり、地味に本人がNTR属性をお持ちであったりと、以前は気づかなかったような味もたくさん見つかりましたので、名作いうのは時間をあけて再読するのも悪くないむしろいいものですね。

 

 

今回、特に気に入った箇所をいくつかご紹介。

汚れつちまったとかゆあーんとかは省略です。

 

 

羊の歌より

彼女は畳に座つてゐました

冬の日の、珍しくよい天気の午前

私の室には、陽がいつぱいでした

彼女が頸かしげる

彼女の耳朶 陽に透きました。

 

 

六月の雨より

お太鼓叩いて 笛吹いて

あどけない子が 日曜日

畳の上で 遊びます

 

 

残暑より

畳の上に、寝ころぼう、

蠅はブンブン 唸つてる

畳ももはや 黄色くなつたと

今朝がた 誰かが云つてゐたつけ

 

 

……畳シリーズの描写よくない??

 

 

 

春宵感懐より

かくて、人間、ひとりびとり、

こころで感じて、顔見合せれば

につこり笑ふというほどの

ことして、一生、過ぎるんですねえ

 

 

また来ん春……より

おもへば今年の五月には

おまへを抱いて動物園

象を見せても猫(にゃあ)といひ

鳥を見せても猫(にゃあ)だつた

最後にみせた鹿だけは

角によつぽど惹かれてか

何とも云はず 眺めてた

 

 

詠嘆調より

「夜は早く寝て、朝は早く起きる!」

 

 

夏より

とある朝、僕は死んでゐた。

卓子に載つかつてゐたわづかの品は、

やがて女中によつて瞬く間に片附けられた。

――さつぱりとした。さつぱりとした。

 

 

などなど。

 

戦前の作品集でありながら、色褪せぬ魅力がある、むしろ現代的な感性すら読み取れる気がいたしますね。

 

導線が文庫であれ文ストであれ、先人のよき文章に触れる機会がこれからも若い衆のまわりにたくさんございますように。

 

 

ニッポン城めぐり「世論調査 三好三人衆、最も有能だったのは?」

 

ニッポン城めぐりアプリの戦国世論調査というコンテンツで、唐突に三好三人衆のなかで貴方は誰推しですかという調査が始まってかんたんしました。

マジで!?

 

cmeg.jp

 

 

論より証拠で、まずはこちらをご覧ください。

 

どうよこれ……

  1. 頻繁な軍事活動で勢力を拡大した「三好宗渭(政康)」
  2. 山城国を中心に信長や久秀と鎬を削った「石成友通」
  3. 一族の長老として大きな影響力を持った「三好長逸

 

 

いや本当に。

ニッポン城めぐりはマイナーな武将やお城にも光を当てているコンテンツではありますが、ユーザーの大半はライトな歴史ファンが多い印象でした。

 

従来の戦国世論調査の内容は

 

などなど、信長さん以降の有名人・有名エピソードに注目した内容が多く(というか有名事案を対象にしないと世論調査が成り立たないですよね)、三好家のみの字も出ていなかったのでめっちゃびっくらこいた次第です。

 

 

三人衆とか四天王とか四名臣とかのなかで誰がいちばん? 的な調査をするにしても、武田家とか徳川家とか織田家軍団長とかいくらでもネタはあるじゃないですか。

 

まさかの三好三人衆…………歓喜!!

 

 

皆さんなら誰に投票します?

 

戦国武将に限らず「有能」の定義がそもそも難しいんですけれども。

 

出世力や裏表なさという点では石成友通さんじゃないですか。

求心力やアートの才能という幅広さでは三好宗渭さんでしょ。

実績や重みという点ではそりゃ三好長逸さんでしょうけど。

 

これは悩みますねえ。

まさしく推しに何を求めるのかが分かってしまう、自分自身を鏡に映すかのようなアンケート!

 

 

そういう訳で、三好三人衆の強火担におかれましてはインストールしてご意見を表明いただくと祭に参加した感があっていいと思います。

なお、調査開始時点では石成友通さんが苦戦しているようですので友通さんファンはなおさら応援してあげてくださいませ。

 

 

世論調査というのは定点モニタリングが大事だと思いますので、これからも三好三人衆の評価を測るアンケートが継続的になされ、人物理解の浸透と愛着の広がりがなされていきますように。

三好兄弟や松永兄弟の人気も均等に割れるような時代になってほしいなあ。