「アクタージュ13巻。
大河ドラマ編が始まりましたね。
渋谷(NHK)に集結する特級女優に特級スタッフ。
アクタージュ版呪術廻戦渋谷編のワクワク感に
かんたんしました」
とか今頃言っているはずだったんですけど……。
アクタージュの連載終了決定から四十九日が経ちましたので、己のアクタージュファン心が漏出して澱のように積み重なり呪霊となってしまわないよう、自分なりに追悼して気持ちを祓っておこうと思います。
原作者の性犯罪については残念でなりません。
報道以降、色々頭の中に思い浮かぶものはありましたが、原作者に対しては
「君の原作は凄かった!!」
「でも 子どもを傷つけたことは許さない」
としか言いようがないなあと。
いちファンとしての「連載終了を惜しむ気持ち」と、
いち庶民としての「性犯罪者が一人減った安心感」。
等価、いや、後者の方が優勢、というのが正直な気持ちです。
著名人が逮捕されたことで。
罪を犯せば罰を受けるという、当たり前のことが当たり前であるとあらためて周知され、類似犯の撲滅に繋がっていけば、ですね。
被害を訴えた方の勇気、捜査に携わった方の精励。
いずれにも賛辞と敬意をお送りしたいと強く思います。
一方で、アクタージュファンがアクタージュを愛していた気持ちを否定しようとも思いません。
連載中止は当然の判断だと受け止めておりますが、生みの親の罪を受け、子である作品が同罪かというと、それは違うのだろうと。
作品が罪を負ったのではなく、罰として連載終了が科せられたのでもなく。
連載中止は判断、自制、姿勢と言われるべきものであって、罰ではないと思うのです。
作者の人格から切り離されて、作品が愛され続ける事例は枚挙にいとまがありません。
作者の固有名詞は出しませんけど、
不倫(姦通罪)常習者の文豪の小説、
DV・モラハラ常習者の陶芸、
殺人犯の絵画、等々。
様々な意見があるとは思いますけど、芸術作品は、公開された時点で作者の手から離れて、作品を愛でるファンのものになっている面が強いと思うんですよね。
原作者の罪、作品の連載中止を受けて、「そういう作品を愛してしまった自分の気持ち」までが無下に扱われたかのように傷ついたファンがいれば、それは悲しいことだし、適切なことでもないと感じるのです。
原作者の罪はしっかりとした裁きを受けるべき。
作品の連載も中止されてしかるべき。
でも、アクタージュという作品は間違いなく傑作だったし、それを愛したファンの心は歪むことなく癒されていくべき。
そんな風に思っています。
大事な人の死と同じように、四十九日、一年、三年……と、せめて時の経過がファンの慰めになってくれることを祈ります。
で、未練を成仏させるために、「連載が続いていたらどうなっていたんだろうなあ」という空想を軽く書いておこうと。
以下、いちファンによる駄文ですのでご留意ください。
気を悪くされた方には申し訳ございません。
自分の思いを率直に言えば、連載が続いていたとしても、原作者との同一性をうっすら感じる「黒山墨字」「夜凪父」あたりのキャラについては、ちょっと引いてしまう気持ちを否めません。
彼らの掘り下げについては関心が激減したと言わざるを得ない。
一方で、「夜凪景」「百城千世子」等のヒロインについては、素直に更なる活躍を望みたいですね。
連載中止が「羅刹女編」終了後だったのが、せめてもの彼女たちの救いなのかも。
(詳細時系列を知りませんが原作者事件は早期の解決が望ましかった前提で)
夜凪景さんなんて、作品内の父からも、作品そのものの父からも、二重に酷い仕打ちを受けていて本当に気の毒ですから、連載終了後もどこかの世界で幸せに役者を続けてくれていればなあと思いますね。
一番掘り下げを見てみたかったのは星アリサさんで、彼女の過去編を読みたかった。
大きくはメソッド演技を極め過ぎて役から抜け出せなくなったということなのかと想像していますが、そのリスクは作品内で明神阿良也さんが既に克服している訳ですから、メタ的には星アリサさんにはもっとパネェ何かがあったんだろうと思いたいじゃないですか。
なので、アクタージュが連載継続していた場合の嘘バレを書くとですね。
20巻くらい
夜凪景さんが絶望の悲鳴をあげるシーン。
彼女の没入とシンクロするかのように、失神してしまう観客や共演者が続出。
評論家
「これはまさか、“アリサ・シンドローム”!?」
27巻くらい
星アリサ
「千世子。景。覚えておきなさい。
メソッド演技には、その“先”がある――」
(過去編突入)
28巻くらい(過去編)
作品:ロミオとジュリエット(演出:巌裕次郎)。
主演女優:星アリサ。
全盛期星アリサの演技、それに伴い失神していく観客・共演者。
薬師寺真美
(あれは――領域展開。
演技力で構築した生得劇場内で
必殺のクソデカ感情を
必中必殺のクソデカ感情へと昇華する
私の到達できなかった演技の極致)
29巻くらい(過去編)
星アリサの演技は、自身の感情だけでなく、共演者、更にはスクリーンを通して観客たちの感情をも強制的に揺さぶる次元に到達していた。
頻発する失神、精神荒廃、後追い●●未遂。
巌裕次郎や薬師寺真美ら、演出家・共演者が対策を完成させる前に。
星アリサは表舞台から姿を消した。
星アリサの引退後、ウェルテル効果等の指摘もあり、星アリサ映像作品の放映や流通は行政から厳しく制限された。
(夜凪景さんが星アリサさんのスゴさをいまいち知らないのはそのせい)
40巻くらい(最終巻)
ぶつかり合う夜凪景と百城千世子の"領域展開”。
“領域”はいまや質量をまとい、衝撃を起こす。
砕ける機材、裂けるスクリーン。
観客
「このままでは劇場がもたない!!」
……だが。
"貴女がいたからここまで来れた”
"貴女がいるから演じることがこんなに楽しい”
共鳴りし始めるヒロイン二人のクソデカ感情。
多幸感。
しわしわのお婆ちゃんになっても続く永遠。
一体化した領域が劇場を覆い、東京を覆い、日本を、世界を覆っていく。
やがて――
全人類が、健康になった。
これには星アリサさんもニッコリ。
fin!!
みたいな展開にきっとなっていたんじゃないでしょうか。
なんて連載終了後のあれこれを好きに想像できるくらい、魅力あるキャラクターに富んだ作品でしたね。
本当に素敵な作品でございました。
ありがとうございました。
惜しいけれども、だんだんと気持ちを消化していければと思います。
宇佐崎しろ先生をはじめ、アクタージュに携わった方々やファンの方々みんなに、今後もイイ感じの人生が待っておりますように。
「アクタージュ12巻 感想 名ゼリフ・名シーン連発の総決算巻」原作:マツキタツヤ先生 / 漫画:宇佐崎しろ先生(ジャンプ) - 肝胆ブログ