「貸出妻M」が単行本となり、まとめて読むとまことに倒錯した味わいが素晴らしい作品となっていてかんたんしました。
以前1-3話までを取り上げたこともあります。
「貸出妻M 1-3話」松本救助先生(ゴラクエッグ) - 肝胆ブログ
かつての浪漫美に富んだ時代の日本を舞台に、不倫不貞寝取られを繰り返しながら愛を確認し合う夫婦の物語。
作者はモーニングで「眼鏡橋華子の見立て」が話題になっている松本救助さんです。
眼鏡橋華子の見立て/松本救助 【第1話】 王様のメガネ - モーニング・アフタヌーン・イブニング合同Webコミックサイト モアイ
あの漫画もズレた価値観と華子さんの艶美が注目されていることかと思いますが、掲載誌がモーニングということもあって華子さんのいかがわしい情事のような直接的なシーンは出てこないですよね。
フェチズム的角度から焦らしてくる類の構成ですから困っている人も多いことかと。
大丈夫です。
松本救助先生のエロを読みたい方はこの「貸出妻M」を読みましょう。
単行本1冊を通してずっとエロいので安心してください。
4-6話は急展開の連続で面白かったですよ。
本筋の退廃もたぶん狙ってやっている笑える場面も優れた“勢い”を感じます。
4話では主人公の鳴子さんがついに偽物であることが明らかとなり。
5話では旦那側の竹本さんが鳴子(偽)さんが他の男に抱かれているのを見ながら
「ありがとう」
「私をわかってくれて…」
「ありがとうございます……!」
と歓喜の涙に咽んだり。
最終話の6話では1-5話までの流れがまさしく倒錯して陰陽太極図のような密結合夫婦に行き着いたりと。
(ミチ子さん登場時背景の黒太線で描かれた薔薇が好き)
もともと単行本1冊分の構成を踏まえて全6話がつくられているようで、昭和前中期の傑作映画を1本見終わったかのような完成度を味わえました。
松本救助先生ならではのやや狂った美しさに彩られた画面作りの効果が絶大で、これはいかがわしい耽美愛の物語として語り継がれるべき作品になっている気がします。
発行部数も少なさそうですし、早めに確保しておくことをおすすめしますよ。
単行本おまけの変態編集者木次(きすき)さんのエロ漫画も楽しかったです。
妙なリアリティと人間臭さがありまして。
モデルでもいるんでしょうかね。
いろんな愛があろうことかと思いますが、
「君じゃないと私は救われない」
「私は狂ってしまったわけではなく本当の私に出会っただけだった」
ようなありようにまで行ってしまうと満足度高そうだなあ。
まあ狂ってるんですけどねこの夫婦。
愛とは、夫婦とは、救いとは、解放とは。
そんな視点を深掘りたい人にもおすすめです。
松本救助先生の短編いいですね。
また何かしらの媒体で尖った作品を発表してくださいますように。