六角氏の風を受けている気分だったので滋賀県の草津・栗東を訪れ、六角高頼さんが活躍した鈎の陣跡地と六角義賢さん由来のうばがもちを初体験し、いい年末だなあという気分になってかんたんしました。
鈎の陣跡
草津駅から1号線をひたすら歩いて45分くらいのところにあります。
手原駅とかバスとか使えばもう少し楽に行けるのですが、せっかくなので東海道を歩いてみようかと。
1分ですべてを見渡せるような、ささやかな史跡です。
でも、六角家や足利義尚さんに多少なりとも興味がある人ならばジーンと感慨に耽ることもできると思います。
鈎の陣とは。
15世紀後半、応仁の乱後。
近江で寺社領を押領したりして調子に乗っていた六角高頼さんを、室町9代将軍の足利義尚さん率いる室町オールスターズが征伐しに行った出来事であります。
そして、この地こそ足利義尚さんが陣を構えていた場所なんですね。
細川政元さん、斯波義寛さん、畠山(尾州家)政長さん等、錚々たるメンツに攻められて困った六角高頼さんは、観音寺城を放棄して山中に潜伏、甲賀忍者を駆使してゲリラ的嫌がらせを展開。
一方の足利義尚さんは陣中で歌会や政務をこなす等、それなりに滋賀ライフを楽しんでいたようですが、在陣が長期に亘るうちに病気になって陣没してしまうという。
結果だけ見れば気の長い釣り野伏をしかけて現職将軍の命を奪ってしまうという、非常にロックな六角家の事績でございます。
ちなみに、足利義尚さん陣没後に再度六角家を征伐しに行かはったのが「1年かけて大河ドラマ化しても視聴者がその生涯を理解できなさそうな征夷大将軍ナンバー1」こと室町10代将軍足利義材(義稙)さんなんですよ。
鈎の陣は、後の戦国時代に繋がる出来事としても、
- 将軍親征の頓挫による足利幕府権威の動揺
- 荘園押領等、実力主義・やったもん勝ち主義の拡がり
- 足利義材さんの予定外登板、明応の政変・足利分裂へのフラグ立て
- 六角家のジョセフ・ジョースター的「逃げるんだよォ!」戦術の完成
- 戦国期ニンジャ伝説の始まり
等々を評することができるのではないでしょうか。
足利義尚さんの死因だって、純粋な病気の他、甲賀忍者による暗殺やの毒殺やの色仕掛けやののロマンシングな想像をすることも可能ですし、実に奥深い事件です。
……こうして書くと、六角家もたいがい戦国時代を招いた原因に思えてきますね笑。
ちなみに六角高頼さん、信長の野望・蒼天録では策戦「混乱」「破壊」を使いこなす有能人材なので初期シナリオでプレイする際はオススメですよ。
鈎の陣跡地では、足利義尚さんの歌がかわいいフォントで石碑となっております。
中納言さんの「早く帰っておいでよ」という歌がストレートでいいですね。
この史跡、遺構はほとんど残っていないのですが、実際に現地へ行ってみると地勢がよく分かって楽しいです。
国道1号線、すなわち旧東海道のすぐそばに陣地がございまして。
古来から交通の要衝であったこの地、大津や石山や草津が近く、六角氏の本拠観音寺城までは程よい距離。
六角高頼さんの都方面への物流を邪魔しつつ、足利義尚さん的には政務や文化的交流がしやすいロケーション。陣中でもワークライフバランスを保ちやすそうです。
滋賀県の平野部なので、周囲の見晴らしもよく、逆に六角高頼さんからすれば奇襲を仕掛けるのは難しそうな印象でした。
甲賀忍者による襲撃伝説、事実なのだとしたら闇夜や嵐に紛れて実行したのかしら。
あるいは内通者の手引きとかがないとしんどいんじゃないかな。
草津宿はその後もずっと交通の要衝として栄えましたし、現代でも日清食品さんの滋賀工場があったりしますし、本当に交通の便がよい、優れた土地ですねえ。
陣にしても城にしても工場にしても立地はまこと大事であります。
うばがもち
存在を知ってからずっと食べてみたいと思っていたうばがもち。
やっと本店を訪れ、ゲットすることができました。
六角義賢さんにちなむ由緒。(見づらくてすみません)
おもちとご対面。
あんこの中は、非常になめらか柔らかい羽二重もちになっております。
一口サイズの赤福で、あんこがもう少し軽くサラサラとなった感じの食べ味。
あんこ、丁寧に漉しているんだろうな。おいしいな。
1万歩以上歩いた身体に優しい。
一口サイズなのが本当に嬉しい。
これ、食卓に置いてたら絶対家族が幸せになるやつや。
つまみ食いもついで食いも乳母はんが慈悲の心で受け入れてくれるやつや。
いい名物ですね。
草津駅でも売っていたのでおすすめですよ。
なお、非常に柔らかい食感、そして乳母の乳を模したというビジュアルで。
脳内で漫画太郎のババァが「タトゥーー!!」と叫び出しそうになるのに困りました。
食べものは予備知識や連想がない方がいいことも多いかと思います。
旧草津宿の散歩
江戸時代の草津宿の史跡がいろいろと残っていて、散歩が楽しかったです。
本陣は年末で閉まっていて残念でした。また今度ですね。
デビルマン終盤の美樹ちゃんみたいな像があったり。
企業のSDGsアピールも目にする機会が増えてきましたね。
以上、草津、そして滋賀はいいなあという感想でした。
滋賀の歴史はディープで膨大なのでなかなか手を付けられていませんが、引続きちょくちょく訪れてみたいですね。
鈎の陣界隈や六角氏の視点で深掘りした中世史論文がどんどん出てきますように。
もっと勉強してみたい。
「六角定頼 感想」村井祐樹さん(ミネルヴァ書房) - 肝胆ブログ