じゃりン子チエの文庫版10巻が、いよいよ各登場人物がしっくりと円熟してきてそれぞれの魅力を充分に発揮する中、主人公のチエちゃんがキレッキレな彼女らしさで活躍していてかんたんしました。
収録されているお話は次のとおりです。
- ヒネクレ男のスキヤキ
- きたないきたない一日
- コケザル始動
- 気になるお化け屋敷
- テツの就職!?
- お化け屋敷に向かって
- 生き残りお化け合戦
- レイモンド飛田の残したもの
- 借金取りのソロバン
- おバァはんのソロバン
- レイモンド飛田 余話
- 考えるほど解らない二人
- そんなふうな秋
- アントニオJr.マフラーとったらアントニオ
- 堅気屋の逆さ三日月
- 堅気屋襲撃
- 少女小説家 竹本チエ
- 落とした財布は聞くのもこわい
- 拾った財布はなおこわい
- ウナギ弁当の食べ方
- テツに来た手紙?
- 正月にカセットがやって来る
- カルメラの決心
- 揺れるカルメラ
- あの時の「泣き別れ法善寺」
- 「泣き別れ法善寺」をうたいたい
- カルメラは何処に
カルメラ弟が帰ってきて始まり、カルメラ兄が曇って終わる巻になっています。
その間では、コケザルとレイモンド飛田というトラブルメーカー二人が組んでしょうもない企てをし、結果としておバァはんや花井センセらの株を上げて終わる感じですね。
細かなネタバレはいたしませんが、この巻は主人公のチエちゃんがいつも以上に多方面へのセリフがキレていて素敵ですので、チエちゃんのセリフに絞って紹介させていただきます。
「あんなことせんでも
テツなんかドブの水飲ましたら一発やのに…」
便秘に苦しむテツについて一言。
のっけから切れ味が半端ないです。
「えらい勝手やな
今までそっちからなんやかんや言いに来たくせに
不利とか敵とかそれなんやねん
どうせまたテツのことなんやろけど
イザとなったらウチはテツの子なんやからな
忘れんといてや」
レイモンド飛田の舎弟に対して。
元ヤクザの大人に対して、良心を抉り取るような直球啖呵をブン投げるチエちゃんが素敵です。
相手の舎弟も、もともと人がいいタイプなので、身の破滅を覚悟している姿がいいんですよね。
「おバァはん ウチの店来る客は根性あるゆうとったけど
かせぎの悪い根性なしがウチの店に来るんやなぁ」
「おおきに また来てや~~」
店の常連客をなじっておきながら、お帰りの際は愛想よく笑顔を向けるチエちゃん。
チエちゃんの「おおきに また来てや~~」はアニメ版の声がかんたんに脳内再生されますね。
「ウチ今まで店ジャンジャンもうかったらええなぁと思てたけど
こんなにもうかってまたもうけるために昼寝だけしてる生活なんて……
シヤワセっていったいなんなのかしら」
ある事件でめっちゃ儲けた時のセリフ。
極貧もあぶく銭も小学生にして経験しているチエちゃんの達観がスゴイ。
「テツのことをまともに考えるとお母はんのことまで
全然解れへんようになるねん」
「ああ…ウチは日本一親のことが解らん少女や」
お母はんに対して。
あんな父親の何がよくて結婚したん? という問いかけは非常に重いものがあるはずなんですけど、この家庭の場合はいい意味で諦めが漂っていて平和ですね。
「あんたなんでも出来るからゆうて勝手にノコギリなんか
使たらあかんゆうてるんや」
「あんたは自分が猫やゆうの忘れたらあかん」
小鉄に対して説教するチエちゃん。
説教の内容は誤解に基づくものなので、詰められた小鉄がスネてしまって四ツ足で歩き始めるのもかわいいのです。
「少女竹本チエ物語
ははは 調子出てきたど
良い子少女竹本チエは
生まれた時から日本一不幸な少女でした
不幸な不幸な……
………
………
なんや……
どうしてウチが落ち込まないかんのん」
小説を書いてみたチエちゃん。
思いのほか自分に対してキレッキレ。
自伝はヘコむので書くのを諦め、お好み焼屋のオッちゃんとアントニオJr.についてノンフィクションを書き始めるのもいいんですよ。
「ほんまに
ウチも気がついたら両手に下駄持ってたわ」
しっかり者のチエちゃんが、珍しく財布を落とすという失敗をしてしまい、落ち込むという印象的なエピソード後に。
財布をたまたま拾ったヤクザが、テツ怖さに財布を届けられず、結局スリ盗ったんだと勘違いされてチエちゃん含む皆からボコボコにされたのが大変気の毒です。
こんな感じに、他の登場人物もいろいろ楽しく活躍されるのですけれども、主人公のチエちゃんが真ん中でイキイキしていると読者的にはやっぱり満足度がひとしおですね。
こうゆう元気な子どもにいいことがある世の中でありますように。
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