じゃりン子チエの文庫版32巻、ギャグが豊富でケラケラ笑えるイイ感じの巻なんですが、その中で久しぶりにシリアスな面を見せたチエちゃんが男前すぎてかんたんしました。
当巻に収められているお話は次の通りです。
- 建て直しはどこ…?
- 今年の一年をふり返る
- 新聞記者と用心棒
- 聞け!! 市民の声①
- 聞け!! 市民の声②
- 正義の交番調査団
- 危険な保証人
- 最後の保証人
- 百合根 禁酒日記
- 祝・交番本日開店
- 旅へ逃げる
- 春に向かってスッキリと
- いつもと違う春休み
- 春休みの迷宮
- なぜか静かな日々
- 静かな街には理由がある
- 商売上がったりの店
- フトンの中の福笑い
- フトンの中の探偵
- 仇討ち・貸切チエちゃん
- テツの全快祝い
- 有料公開裁判
序盤はミツルの交番の建て直しに伴う庶民の嫉妬、
中盤はお好み焼き屋のオッちゃんの禁酒、
後半はテツを闇討ちした人物へのリベンジ編、
となります。
以下、ネタバレを含みつつ、各キャラの名ゼリフを。
チエちゃん
「建て直しゆうても
別にウチとこの
家庭の建て直しとちゃうで」
のっけからブラックなネタを堂々と小学校で話すチエちゃん。
本当にタフな小学生であります。
おバァはん
「トシは今年三十三才
ある男生んだ時から
わたいの人生は止まってしもたんで
そのあとトシとりまへんのや」
「三十三……
カブでゆうたら思案六ボですな
やめたら良かったのに
もういっちょで札めくったら
インケツが出ましたんや」
めちゃくちゃなボヤキを吐きつつ、三十三歳でテツを産んだことが分かる貴重なシーンです。おバァはんの若い頃、おジィはんとどんな夫婦やったんかとか、地味に過去編が気になる人物ですよね。
カルメラ兄弟
「なに考えとるんじゃ
なんで交番建て直しせなあかんのじゃ」
「あいつあの交番の
どこが不満なんじゃ」
「だいたいあいつに交番なんかいるかい」
「ダンボールの箱で充分やないか」
「だいたい誰の金で建て直しする気じゃ」
「みんなワシらからかすめた税金やんけ」
ミノルの交番建て直しの話をテツから聞いて、煽られるままにねたみ根性まんまの文句を言いまくるカルメラ兄弟。
この連載当時は不況のドン底、いま以上に公務員への風当たりが強かったような気もしますが、こういう素直過ぎるセリフを素直に載せるじゃりン子チエのおおらかさが好きですよ。
お好み焼き屋のオッちゃん(百合根)&ヤクザ×2
「ワシを誰やと思とるんじゃ~~
ガタガタゆうてたらばくだん呑んで
お前らの組 壊したるど~~~」
「あ…
な…
スンマヘン………」
「も…
もう一枚食べて帰らしてもらいます」
ヤクザ(テツの被害者)に貫禄勝ちするオッちゃん。
まあオッちゃん自身が元ヤクザなんですが。
テツ
「ワシ
昔から酔っぱらいはなにしてもセーフゆう
日本に怒りを感じてたんや」
酔っ払って警官(ミツルと人違い)を襲撃したカルメラ兄弟、
カルメラ兄弟を助けようと酔っ払って交番に殴り込んだ百合根、
それらを前に見捨てようとするテツ笑
もうなんかダメな大人だらけで最高ですね。
花井センセ
「早よ交番完成させ~~~
ミツルの交番がないから
事件が表ザタになるんじゃ」
カルメラ兄弟・百合根に禁酒を誓わせ、保証人として警察から救出してくれた花井センセ。(比較的)まともな大人がこの人しかいないというか、花井センセがいてくれるからこの街がギリギリのところで崩壊していない感はありますね。
お好み焼き屋のオッちゃん(百合根)
「こ……
こら~~
ジュニア 窓閉めんかい~~
部屋中蝙蝠が飛んどるやないか~~」
禁酒の禁断症状であぶない幻覚を見始めるオッちゃん笑
お好み焼き屋のオッちゃん(百合根)
「人生って素晴らしい」
「竹本君 一緒に職安にでも行ってみないか」
禁断症状を乗り越え、反動で「人間が持つ無邪気な尊さ」を得たオッちゃん。
まあ、この後、更に大きな禁断症状のヤマがくるのですが……。
テツ&ヨシ江はん
「おまえらにつらい思いさせるのも
ワシつらいからその……
良かったら一緒にどう……」
「エッ!?」
「そやからどこか……
誰も知らん土地でその…
一家水いらずでやり直しを」
「あの……」
「おまえが行くゆうたらきっとチエも」
「とにかく早よ帰って
晩ゴハンの用意しませんと」
うっかりお年寄りを殺めてしまったと勘違いし、夜逃げを図るテツ。
なんやかんやでヨシ江はんとチエちゃんとは一緒にいたいんやな、ということが分かる良いシーンだと思います。
一方、話のスジをすべてスルーするヨシ江はんもイケてますね。こういう妻でないと成り立たないわなというのが伝わってきます。
テツ&ヨシ江はん
「うぷっ」
「わ…わたしが切ったんですけど
どうですか」
「ドングリみたい」
チエちゃんが(ジュニアとテツのせいで)散髪に失敗し、幼女みたいな短髪になってしまいました。
ショックで寝てしまったチエちゃんを眺めながら、夫婦で話すテツとヨシ江はん。
地味やけどすごい好きな場面です。
チエちゃん&テツ
「大丈夫か……
早よ元気にならなあかんで」
「やさしい言葉かけんといてくれ
気合いが抜けるわい」
「気合いが抜けてもええ
ウチがついてる」
「ウッ…」
「心配せんでええ
テツはウチが守ったる」
「うっ…ううっ」
ヤクザ嫌いの元刑事に闇討ちされ、テツが重傷を負う事件が発生。
一人静かに仇討ちを誓うチエちゃんと、フトンの中で涙するテツ。
なんやかんやで父親を大事に思うチエちゃんがマジ男前で目頭が熱くなりますね。
チエちゃん&闇討ち犯
「テツて誰のこと」
ボコッ
「はが~」
「だ…誰や~~
お客さんどついた奴は~~」
闇討ち犯の元刑事が来店。
チエちゃんはじっくり仇討ちしようとしていたみたいですが、ヨシ江はんやお好み焼き屋のオッちゃんが来たので慌ててプラン変更、犯人が他に気を取られた隙に一升瓶でぶん殴って一発KO…………パネェ。
誰の邪魔もなかった場合、どんな仇討ちを考えていたのかが気になりますね……。
チエちゃん
「し……静かに
みんな落ち着いて
訳はあとで説明するから
まずこの荷物をオッちゃんとこに運ぼ」
動揺するヨシ江はんやお好み焼き屋のオッちゃんをなだめ、「荷物」の運搬を指示するチエちゃん…………怖えよ!
チエちゃんを怒らせたらアカン、ということを久しぶりに思い出させてくれましたね。
この後、元刑事の過去の悪事がどんどん明らかになりますので、結果としてチエちゃんはヤクザ含む街を救ったことになるのですが。
なお、表向きは小鉄とジュニアが元刑事を捕えたことになっているのですが、「猫が犯人を捕まえた」に誰も疑問を持たないあたりも最高です。
笑いあり、チエちゃんの本気ありと、濃厚な巻でございました。
竹本家の仲良さ・絆深さが底流しているのがいいですよね。
世のご家族方も竹本家に負けず劣らず仲良く平和でありますように。
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