じゃりン子チエ26巻、ここまでの長期連載を経て、遂にテツとヨシ江はんの馴れ初めの一端が明らかになってかんたんしました。
若い時のヨシ江はんが、まさにチエちゃんと現ヨシ江はんのあいだくらいの容貌で私はいいと思う。
このカバー絵好き。
文庫版26巻に収録されているお話は次の通りです。
- マジメになりそな梅雨の日々
- あぶないオッサン
- お見合いの相手は誰
- マジメな話は本名から
- カルメラの本名で大騒ぎ
- マジメな話はヨシ江さんから
- いろいろ気になる夏休み
- テツの避暑地
- サイは投げられた
- その日テツは消えた
- 合同見合い「3対2」結末篇
- 資格の裏目
- 虎穴に入らずんば虎子を得ず
- 虎穴に突撃Part1
- 虎穴に突撃Part2
- 真実の旅
- 二人で一人 二人でも一人ぼっち
- 作文「岡山旅行」前篇
- 作文「岡山旅行」後篇
- 夏の整理
- コピーの研究
- さまざまの友情
前半~中盤がカルメラ兄弟の見合い話、
後半が岡山のサッちゃんとの交流話になります。
以下、各キャラクターの名ゼリフのご紹介を。
ネタバレも含みますのでご留意ください。
カルメラ兄
「お…お見合いとかデートとか
そうゆう話はちゃんとワシの本名
分かってからにせんかい」
お好み焼屋のオッちゃん(百合根)がカルメラ兄弟にお見合いの話を持ってきたところ、内心喜びつつ、「ワシの本名もお前ら知らんくせに」という態度を取るカルメラ兄。
ここまで誰も彼らの本名を知らないこと自体がウケますね。
いちおう話が進むと本名が紹介されますが、いちおう伏せておきます。
Wikipediaに載ってますけど。
ナレーション&小鉄
「猫の悲しい性だ
動いてる物を見ると
すぐ手をだしてしまう」
「ニャ!?
ニャニャッ
なんじゃ………こらっ」
人の手紙を読みたくて、小鉄を利用するテツ。
ぴらぴら動く封筒にとびかかり、つい封を切ってしまう小鉄がかわいい。
お好み焼屋のオッちゃん&おバァはん
「こうなるともうイケイケドンドンですな」
「そらもうバックスクリーン三連発ですわ」
カルメラ兄弟の本名が分かり、お見合いを上手く組めそうで喜ぶ二人。
会話がまさに当時の大阪でいいですね。
アントニオジュニア&小鉄
「おい……
チエちゃん完全に
自分を見失のうとるやないか」
「なんでやねん」
「なんでて
チエちゃんはどんな時でも
テツの面倒と店の仕事とを両立させてるから
チエちゃんじゃないのか」
夏休みにチエちゃんとヒラメちゃんが岡山のサッちゃんの家に遊びに行くことになり、「その間、テツが野放しになるやないか」と焦り始める登場人物一同。
ジュニアの解説がいちばん辛辣かつ的確で面白いです。
テツ&ヨシ江はん
「お…おまえなぁ
こうゆう大問題を
冗談半分のデート気分で」
「デート!!
よろしいなぁ
久しぶりにそうゆうのも」
花井家に行くテツについていこうとするヨシ江はん。
テツがはずみで出した言葉を拾ってデートに持ち込むあたりが上手ですね。
この巻は全体的にヨシ江はんが久しぶりに優遇されている感じでいいと思います。
ミツル
「オレはテッちゃん
立派やったと思てるよ」
カルメラ兄弟のお見合いの余波で、花井センセにテツのプロポーズを暴露され、神経が衰弱してしまったテツ。
混濁した記憶を幼馴染のミツルに確かめると、ミツルからは意外な高評価コメントが。
テツとミツルの友達関係、決めるところは決めるタイプなので私は好きだな。
若い頃のテツ
「ボ…
ボ…
ボクと結婚して下さい」
花井センセとミツルを同伴して、ヨシ江はんとの初デートの際に、緊張して眼を回しながらいきなりプロポーズした若き日のテツ。
頬を赤らめて驚く若き日のヨシ江はんもかわいい。
こういう甘酸っぱい話を楽しそうにチエちゃんやカルメラに話して聞かせる花井センセもかわいい。本当にテツのことを大事に思っているのが伝わってきます。
チエちゃん
「金魚と金魚のフンは友達とちゃうど」
ヒラメちゃん
「男の友情はしゃべりやな」
ともにマサルとタカシに対して。
日ごろのマサルがマサルだけに、躊躇せずえげつないストレートを投げる二人。
小学生の口ゲンカというのもお互い残酷なものです。
サッちゃん
「わたし
岡山のチエちゃんなのよ」
遊びに来てくれたチエちゃんとヒラメちゃんに、チエちゃんのように家のラーメン屋を手伝っていることを教えるサッちゃん。
その話を聞いたテツが、棍棒を振り回してタチ悪い客の頭を割ってるサッちゃんを想像していてウケます。
サッちゃん
「………
もう帰っちゃうのね
いつまでも居てくれればいいのに」
チエちゃん
「……
なんかウチ読む気なくなってきた」
「ウチ
サッちゃんのこととか
帰る日のこと思い出したら
なんか淋しなって来たわ」
「あとはみんなで勝手に読んで」
岡山旅行の作文を家族に読み聞かせていたものの、旅行の終盤になって読むのをやめてしまうチエちゃん。
こうした心情描写の丁寧さが、じゃりン子チエを名作たらしめていると思います。
最初期のチエちゃんの父親作文もすごい良かったですもんね。
サッちゃんからの手紙
「……
本当におどろいてしまいました
わたしの住所と写真のコピーだけで
よく来れたと思います」
チエちゃんの岡山写真を一枚くすね、近所のコンビニ(!)でコピーし、それを手がかりに岡山まで行ってしまった小鉄とアントニオジュニア。
この二匹、やろうと思えば海外でも宇宙でも行けるんちゃうかというバイタリティを感じてしまいます。相変わらずすごい。
岡山まで行った目的が、サッちゃんの飼い猫ロックのダイエットに協力するためというのもイケてるんですよ。
全体的に作者の筆が乗っているような印象のある、充実した巻ですね。
テツとヨシ江はんの若き日、
チエちゃんとヒラメちゃんとサッちゃんの淋しさをはらんだ夏、
それぞれが胸に残りました。
先行きが作品内で描かれることはないと思いますが、チエちゃんとヒラメちゃんとサッちゃんがそれぞれ立派な大人になり、また、友情がずっと続いていますように。
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