じゃりン子チエのスピンオフ猫漫画「どらン猫」シリーズ、今回は関西人におなじみの灘・有馬を舞台にした快作でかんたんしました。
「ジュニアが帰って来ん! きっとまた小鉄のせいや!」いつものように大騒ぎの百合根さん。濡れ衣を着せられた小鉄は、しぶしぶ一匹旅に出たのだが…。『じゃりン子チエ』の名脇役、猫たちが主役になって大活躍するスピンオフストーリー第2弾!!
たどり着いた酒蔵の町で、幻の酒「呑鬼」をめぐる猫たちの抗争に巻き込まれてしまった小鉄。だがジュニアとの合流を経て、ようやく懐かしの旧友猫・ノンキと再会する。「呑鬼」ブランドの独占を企む二大勢力が対峙する戦場のまっただ中で、ノンキが語る「呑鬼」誕生秘話とは…。
以下、ネタバレを含みますのでご留意ください。
あらすじにある通り、幻の日本酒「呑鬼」をめぐってヤクザまがいの猫たちが抗争する灘・有馬に、小鉄やジュニアが訪れて巻き込まれる……という筋になっています。
じゃりン子チエシリーズですので猫たちが二本足立ちで竹槍を片手に抗争するのはもうなんら違和感を覚えることもなく、今回も「猫って日本酒好きなんやなあ※」という間違った常識が流布されている気がしなくもありませんが誰もツッコむことなく話が進んでいくのがそれだけでもう面白いですね。
※猫にお酒は厳禁です
以下、各登場人物の名ゼリフを。
チエちゃん&小鉄
「ほんまに居らん
小鉄はさっき旅に出たんやから」
↓
ワシの一番の楽しみはチエちゃんと
居ることなのだが
そのことが迷惑になるなら仕方がない
人を好きになるとゆうのはつらい
好きになればなるほど
いろんな気遣いから
自分を正直に出せなくなってしまうのだ
小鉄のせいでジュニアが非行に走ると、お好み焼き屋のオッちゃん(百合根)から絡まれるチエちゃんがとっさについたウソ。
チエちゃんが言ったことをウソにせんために、しぶしぶ旅に出る小鉄の哀愁がさっそくかわいいです。まあ小鉄が旅立たんことには話が始まらんのですけど。
アントニオジュニア
「おもろなって来たやんけ
どうせやったら製造元ごと
オヤジにプレゼントや」
小鉄の旅立ちに先立ち、幻の酒「呑鬼」の噂を聞きつけ灘を訪れ、「吞鬼」のニセモノを売るヤクザ猫たちをシバきながらオリジナル呑鬼の製造元を探し始めるジュニア。
このフットワークの良さと、小鉄とはまた違う巻き込まれ属性がジュニアの魅力です。
モブ猫(アル中)
「なんじゃ~
そらどうゆう意味じゃ~~
ちゃんと猫語でしゃべらんかい
分からん言葉使う時は
だまそとしてる時やど~~」
呑鬼製造秘話にて。
小鉄の旧友ノンキが、小鉄でも楽しく飲んでくれる酒を目指して鰹節エキス入りの酒を開発。小鉄に再会する前に噂が噂を呼び、「呑鬼」は大人気に。
人気過ぎて、ノンキの弟子たちが「無料試飲キャンペーンは終了」を告知したところ、上記セリフとともにモブ猫(アル中)たちが暴動を起こします。
「分からん言葉使う時はだまそとしてる時」というのが庶民目線での真理過ぎて、こういうフレーズがパッと出てくるあたりがはるき悦巳先生のネームやなと唸りますね。
ノンキ(小鉄の旧友)
「オレもうこの仕事やめよと思うんや」
「オレは仕事せんのが生きがいで……
いつからか呑むヒマけずって仕事猫……
これやと女王さまのいない働き蜂
いつまで続くの延長戦
まるでズンベラボンのにらめっこ」
「呑鬼」が大ヒットするも、もともと働くのが嫌い、呑むのが好き、小鉄に会いたい、というノンキは酒造りをやめ、弟子たちに呑鬼製造を引き継ぎます。
しかし、弟子たちは分裂・抗争し、本編のバトルシナリオへ……という流れ。
ノンキの呑気な行動・セリフがいちいち味があっていいんですよね。
戦の最中でもごはん時にはごはんを優先したりするとことか。
アントニオジュニア
「ノンキ師匠の足が地に着いた自然体を見てると
自分のやってることはただの元気の空回り……」
ノンキの呑気な姿勢につきあっていて、自分のメンタル弱さが響き始めるジュニア。
かわいい。
小鉄
「こ…これやとワシも呑めそう」
「ノンキ…
ワシこんなええ気分になったん初めてや」
抗争終了後、オリジナル呑鬼を呑んだ小鉄。
日ごろは下戸な小鉄がスイスイ飲んでくれて、ノンキの感激もひとしおです。
ツバクロ(ラスボス)
「オレはそうして生きて来たんだい
ここでハッキリ決着をつけておかなきゃ
オレはオレでなくなっちまうんだい」
「運が良かったなんて言うんじゃねえだろうな
オレだってシュラ場をくぐって来た
生き残った奴が強いってことくらいは
分かっているぜ」
抗争終了後、小鉄との決着をつけるために一匹で現れたツバクロ。
詳述はしませんが、その実力は小鉄を凌駕するほどの実力派でした。
その上で確かな知性や格やイケメン力もお持ちで、これまで登場したじゃりン子チエキャラクターの中でも最上位クラスに位置する猫だと言えましょう。
ピュアな力やスピードでは後れを取りながら、ベテランゆえの経験値で相手を上回る小鉄もまことに格好いい。
本当に昔の時代劇や西部劇の良さを感じる作劇です。
かように「帰って来たどらン猫2」は関西人に馴染みのある街・特産品を舞台に猫たちが痛快な活躍を見せる任侠映画的作品でして、小鉄・ジュニア好きなら強くおすすめしたいところですね。
毎々のことながら、大阪に戻った小鉄とジュニアがそれぞれの飼い主のもとでのんびり過ごせていますように。
「帰って来たどらン猫(じゃりン子チエスピンオフ) 感想」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ
「じゃりン子チエ 文庫版32巻 感想 百合根の禁酒、チエちゃんの仇討ち」 - 肝胆ブログ
「じゃりン子チエ 文庫版33巻 感想 集合絵が終わりの近さを感じさせて寂しい」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ
「帰って来たどらン猫3上下 感想 なかなかの怪作だと思う」 - 肝胆ブログ