じゃりン子チエの文庫版が21巻まできまして、ここ数巻で今は亡きアントニオの生前のエピソードが様々語られ、更にこの巻ではとうとうアントニオの霊を口寄せする展開まで出てきてかんたんしました。
憑依合体まで繰り出すとは、じゃりン子チエってのは本当に自由でネタが豊富な漫画であります。
21巻に収録されている話は次の通りです。
- 失業保険のパイナップル
- みんなトイレ仲間
- 追放者の行先
- お好み焼屋突撃
- 一ツ目入道の怪
- イチコロ・ラーメン
- 一ツ目入道 現る
- 渉の通訳
- ひょうたん池の再会
- ビチビチ天丼
- ひょうたん池 爆発寸前
- ひょうたん池 大爆発
- ノレンは たたる
- 呪われた就職
- 女神・ヒミコ様
- ヒミコのお告げ
- 恐怖の猫の霊
- 小鉄の災難
- イタコ猫を捜せ
- 天井裏の太鼓
- 太鼓が呼ぶモノ
- 呼び合う霊
- 忍び寄る愛
- 愛しのグラミーちゃん
以下、ネタバレを含みますのでご留意ください。
前半は20巻からの続きで、ハワイからやって来た地獄組の刺客とテツやお好み焼屋のオッちゃんが戦う話、
後半は霊媒師やイタコ猫が登場して騒動になる話、
となります。
ハワイ勢との戦いでは、渉先生が久しぶりに活躍したり、お好み焼屋のオッちゃんがあぶないセリフを吐いて戦ったりという見どころがあります。
後半のオカルトコメディでは、本筋ではありませんがアントニオの霊が登場するのがめっちゃウケましたね。アントニオのキャラクターが複雑になればなるほどジュニアが混乱していくのもかわいいです。
以下、各キャラの名ゼリフを。
チエちゃん
「………静かや
宿題がどんどん出来るど
おかしい………
ひょっとしたらウチかしこいんとちゃうんか」
テツがハワイ勢とのいざこざで不在のため、宿題がはかどるチエちゃん。
成績は悪いけれども地頭がよいタイプなのは誰もが納得でしょう。
コケザルもそういうタイプな感があります。
何らかのきっかけで彼らの成績が急上昇する可能性もあると思いますが、そうなるとマサルが曇ること間違いなしですね。
テツ
「こぉゆう時が一番危険なんやど」
「そやからこの眼ェ開いたままパクパクして寝てるのは人間が死ぬ用意してる時やんけ」
「とにかくこぉゆう時はビンタかましてでも眼ェさまさんと」
謎の巨人「一ツ目入道」を目撃したショックでぶっ倒れたヒラメちゃんを介抱するテツ。こういうときに落ち着いた判断が下せるテツは、それだけの修羅場をくぐってきているということなのでしょう。
ちなみにパクパクして意識を失っているヒラメちゃんは大変かわいいです。かわいいとか言っていられる状況ではないんですけど。
渉センセ
「アイアンダスタンド オコノミヤーキ」
一ツ目入道の正体、ハワイからの刺客と英語で意思疎通できる渉センセ。
さすがじゃりン子チエ界随一のインテリです。
地獄組のボス
「リメンバーオオサカ リメンバーテツ」
姿を現した黒幕にしてオチ担当、地獄組のボス。
その後の展開はお察しの通りであります。
お好み焼屋のオッちゃん(百合根)
「もぉ逃がさんど恩知らず
今おまえに人間の心ちゅうもんを
たたき込んだる~~~」
「男度胸の片道燃料
ガマンにガマンをかさねて爆発した時の
日本人のおとろしさ見せたる~~~」
「お父さんお母さん
行ってまいります
プハ~」
「死ね~~オンボロ空母」
「わ~
なんじゃなんじゃ」
「アントニオバンザーイ」
一升瓶を飲み干してハワイからの刺客に突貫するオッちゃん。
ハワイの人相手にこのセリフはそうとう危ないのですが、これをブラックユーモアとしてチャンポンできるじゃりン子チエという作品フォーマットの強さにかんたんしてしまいますね。
ヒミコ
「お金をかくしておるな」
「この店の中に三か所」
登場するなり、チエちゃんのへそくりの隠し場所を当てる霊媒師ヒミコさん。
巻き込まれで焦らされるチエちゃんがいじらしいですね。
アントニオジュニア
「知らんかった……
父さんがあんなにオレのことを
思てたなんて」
「父さんは勝手なことしてたけど
オレのことを一時も
忘れたことなかったて」
イタコ猫にアントニオの霊を呼び出してもらって、父から泣けるような話を聞かされたジュニア。ここで終わればいい話なのですが……。
イタコ猫(憑依していない時)
「オレにはわがまま勝手のやりたい放題
あの世に向かって一直線って男に見えるがな」
「たしかに顔はおまえとウリ二つでも
この顔からおまえの持ってる
悲しみや憂いのようなものが
みじんも感じられねえからさ」
「もしおまえのオヤジが
泣けるような話をしたのなら
死んでまでウソをつく
とんでもねえ野郎かも知れねえぜ」
イタコ猫の冷静で的確なコメントがもうつらい。
イタコ猫(アントニオ憑依)
「死ね~~~
三日月野郎~~」
「かかって来い~~
もぉ一ぺん
オレと勝負せえ~~」
「オレのキン玉
勝手に盗みやがって」
「今度はお前のキン玉
二つ取って
タコ焼きにして食てしもたる~~」
「息子やと~~~
息子やったらオレに加勢して
なんでこいつのキン玉取らんのじゃ~~」
「煮え切らん
おまえの頭から割ったろか~~~」
いきなりイタコ猫に憑りついて、小鉄とジュニアに襲い掛かってくるアントニオ。
どうやら生前のアントニオは暴れん坊なだけでなく、女癖が悪いわ、図々しいわ、呼んでもないのに勝手にイタコ猫の身体に入ってくるわという、無茶苦茶な猫だったようですね。
ジュニアにとってはおつらいイベントですが、息子はいずれ父親の理想像を砕いて父親の現実を乗り越えていかねばならぬ的なテーマがあるのでしょうか笑。
イタコ猫(憑依していない時)
「供養のつもりなら
まず 土に返してやらねえと」
「おまえの父さんは成仏出来ないで
鉄板の周りをウロウロしてるじゃねえか」
「それが証拠に
この前小鉄さんの身内の霊を呼び出そうとしたら
いきなり横入りして出て来たじゃねえか」
そもそも、アントニオの遺体を剥製にして飾っている時点でマトモちゃうわという冷静で的確なツッコミをしていくイタコ猫。
飼い主がお好み焼屋のオッちゃんやからなあ……。
そんなこんなで、死んだ父親からもノイローゼの種を植え付けられるジュニアが愛しい巻でした。お好み屋のオッちゃん、アントニオ(霊)、アントニオジュニアのトリオはスパイシーが過ぎて面白いですね。
なんか猫を捨てたとか拾ったとかの動画がなんやかやあるらしいですけど、どちら様も良い飼い主と良い猫とで幸せな暮らしを送ることができていますように。
「じゃりン子チエ 文庫版20巻 感想 ジェミニの悪太郎1/2」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ
「じゃりン子チエ 文庫版22巻 感想 アントニオ再び、からのおバァはん無双」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ