肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「じゃりン子チエ 文庫版23巻 感想 チエちゃん VS 米谷さん」はるき悦巳先生(双葉文庫)

 

じゃりン子チエの文庫版23巻、新キャラの小学生「米谷さん」がまことに傑物でございまして、彼女の存在がチエちゃんやアントニオジュニアやマサルのポテンシャルを更に引き出していてかんたんしました。

 

出木杉さん的な存在がレギュラーキャラの魅力を引き上げてくれる展開いいですよね。

 

www.futabasha.co.jp

 

f:id:trillion-3934p:20211219125938j:plain

 

 

 

23巻に収録されている話は次の通りです。

 

  • 石の首飾り
  • 首飾りの持ち主
  • 転校生のあの子
  • 被害者がいっぱい
  • 首飾りの石が一つ足りない
  • 石の波紋
  • 割れた石の復元
  • 小鉄の荒療治
  • お別れは足を振って
  • 消えた二匹(テツも一緒です)
  • さえない日の耐寒マラソン
  • 第45部、ダイジェスト
  • 走る米谷さん
  • 米谷さんへの手紙
  • 本日 休養日
  • ひょうたん池一周マラソン
  • 和解の日
  • 迷えるロック
  • ロックとの再会
  • 秋田県事件始末①
  • 秋田県事件始末➁
  • 秋田県事件始末③

 

1冊まるごと米谷さんとその飼い猫「ロック」を巡るエピソードになります。

 

チエちゃんのクラスに転校してきた米谷里子さんは、美人で勉強も運動も大得意。彼女と仲良くなりたいチエちゃんだったが、小さな行き違いから一方的にライバル視されてしまう。そして迎えた校内マラソン大会の日、ついに二人の勝負が始まった!

 

 

以下、ネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

米谷さんという転校生は、頭も人柄も運動神経も優秀で、しかも努力家という素晴らしい少女なのですが。

 

彼女が拾った猫「ロック」が、その昔小鉄といろいろありまして。

 

ロックと小鉄・アントニオジュニア、そこにテツが加わり、話がややこしくなって、その余波で米谷さんとチエちゃんが誤解に基づく対立をしてしまう。

 

二人の少女は小学校のマラソン大会で雌雄を決し、アントニオジュニアとお好み焼屋のオッちゃんの尽力もあって無事に和解に至る……

 

 

という長編エピソードでございます。

暴力性やハチャメチャ性は少ないものの、ストーリー展開の味わい良さはさすがはるき悦巳先生やなというクオリティですよ。

 

 

以下、各キャラクターの名台詞を。

 

 

 

テツ&チエちゃん

「……ワシ ボケて来たんかな」

「ボケてて……

 一回もさえたことない内にボケてどぉすんねん」

 

のっけからチエちゃんが辛辣で素敵です笑

 

 

 

米谷さん

「もういいから

 わたしにもロックにも近づかないで」

 

誤解(主にテツのせい)で、チエちゃんと最悪のかたちで出会ってしまう米谷さん。

 

 

 

アントニオジュニア

「気のきかん奴ちゃなぁ

 猫舌ゆう言葉知らんのか

 オレにはサイダーでも出さんかい」

 

テツから熱い茶を出されて。

……サイダー飲める猫というのもたいがいだと思いますが。

 

 

 

チエちゃん&ヒラメちゃん

「そやけど猫のやったことやから

 とにかく米谷さんはなんも知らんと思うよ」

「ほんならちゃんと米谷さんと

 そぉゆう話したほうが」

 

米谷さんとギクシャクするも、チエちゃんの方は誤解やろから……と人柄の良さが出ています。チエちゃんはたまにこういう人間性の清らかさが見えるのがいいですね。

 

 

 

マサル

「トップを走り続ける人間のつらさは

 一ぺんでもトップに立ったことのある

 人間しか分からんのや」

「あかん~~もうあかん~~

 このままやとオレ米谷に殺されてしまう~~」

 

米谷さんにテストで敗れ、ドッジボールではKOさせられ、おおいにショックを受けているマサル

徹夜で勉強する等、本筋と離れたところであがいているマサルもかわいいもんです。

 

 

 

米谷さん

「まぁかわいい猫

 ほんとにかわいいわねぇ

 おしゃれなマフラーまでしちゃって

 なんてかわいいんでしょう」

 

アントニオジュニアをかわいがる米谷さん。

米谷さんは普段クール系の少女ですが、猫に対してはデレてくれるのが魅力的です。

 

 

 

チエちゃん

「あんたそこでそのまま固まって

 お地蔵さんにでもなり」

 

米谷さんとのギクシャクの原因が猫同士の因縁、しかも小鉄が主因らしいと察したチエちゃん。小鉄に対してはどこまでも辛辣な言葉を吐くところに、小鉄との関係の深さがかえって伺えますね。

 

 

 

ロック

「サッちゃん……

 長い間どうもありがとう

 オレ ロックとゆう名前好きでした

 サッちゃんのつけてくれた

 ロックとゆう名前で

 生き返れた気がしました

 本当にありがとう」

 

一方のロックも、米谷さんのもとを去り、小鉄と決着をつけようとします。

米谷さんはなぜロックがいなくなったのか分からず、動揺しまくるのが不憫です。

 

 

 

チエちゃん&周センセ

「そやからさっきからゆうてるやろ

 足くじいてから色々あって

 とぉとぉ足がノイローゼに」

「テツの子にノイローゼないね」

「ど…どうゆう意味や」

「とにかくテツの子の足単純明解

 ハリ打ってもダメね」

「なんでもええから早よ治してくれんと」

「大丈夫わたしにまかせて

 こうゆう足のツボはここをこうね」

クリッ

「んなっ」

「さぁよくなった

 もう大丈夫ね」

「エッ

 も…もぉて

 ん?! あれっ」

「ほ…ほれよくなったね」

「あ……ほんまや

 ほんまに足……」

「(やっぱり……)」

「おおきにオッちゃん

 ウチ バッチリや」

「(やっぱりテツの子ね………

 わたし適当に足をひねっただけね)」

「調子ええ

 なんも考えんと今度のマラソン

 思い切り走るど~~」

 

米谷さんとのあれこれで足が不調だったのですが、周センセの適当な治療ですっかりモヤモヤが晴れたチエちゃん。

何も考えずに突っ走っているときのチエちゃんが最強、というこの漫画の原点を思い出させてくれる展開で大好き。

 

 

 

おバァはん

「しかし勉強もえらい

 運動もええなんて

 なかなか図々しい子やおまへんか

 とにかくチエ本気出して頑張りなはれや

 チエが負けたりしたら

 世の中の運動が良うて勉強あかん子に

 申し訳ありまへんで

 

チエちゃんにはっぱをかけてくれるおバァはん。

励まし方がなんかズレてるのが庶民的でいいですね。

 

 

 

お好み焼屋のオッちゃん(百合根)&アントニオジュニア

「おまえまさかワシに手紙書かしとるんやないやろな」

「な…い…今頃気がついたんか」

 

オッちゃんに本を朗読させて、目当ての字のところでジュニアが机をたたく、オッちゃんはその字を便せんに書く、という無茶な手段で手紙を作成する二人。

アントニオジュニアが集めた事件の真相を米谷さんに届けようとする訳で、この二人の活躍はたいしたものなのですが、この猫と飼い主マジすげぇよ。

 

 

 

ここから、物語はチエちゃんと米谷さんのマラソン大会で盛り上がり、小鉄とロックが過去の因縁に決着をつけ、大団円を迎える感じです。

それぞれもおおいに改善して何より。

チエちゃんと米谷さんを主軸に、輻輳的にドラマが進んで満足度の高い巻でした。

 

 

米谷さんは銀行員の父のもとで転校を繰り返している、母親を早くに亡くしている、天国の母親のためにも勉強や運動を頑張っている、というえらい子ですし、どこかチエちゃんと似ているところもあると思います。

 

現代ではだんだん減ってきているような気もいたしますが、銀行員の子とホルモン焼屋(ほぼ無職)の子とがめぐり逢い、互いに刺激を与えあってよい友達になれるような環境が今後も下町のどこかで残っていきますように。

 

 

「じゃりン子チエ 文庫版22巻 感想 アントニオ再び、からのおバァはん無双」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ

「じゃりン子チエ 文庫版24巻 感想 サッちゃんとの別れ」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ