じゃりン子チエの文庫版30巻、このたびはカルメラ兄弟が人生のひとつの節目を迎えることになりまして、長期連載漫画としてもひとつの節目を迎えたような感じがしてかんたんいたしました。
リアルタイムでぜんぶ読んでいたらいっそう感慨深かっただろうなあ。
表紙は晴れ着姿のチエちゃん。
井桁模様の生地が庶民的でよくお似合いです。
井桁は家内安全の象徴とも言われますが、意識して思い出すとさいきんあまり見ない柄な気もしますね。
30巻に収録されているお話は次の通りです。
- いきなり熱帯
- 嘘つき3D眼
- 3D眼のコツ
- どこもかしこも3D眼
- 危険な3D眼
- 怒りの記念写真
- 警官殴打事件対策本部
- ビンタで犯人が現れる
- 写真の顔で取り調べ
- 「なんでもセリ市」参加作品
- テツのお値段
- 神のない12月
- 二件目の夜逃げ
- カルメラの証人 百合根
- お正月の披露宴
- カルメラのおみやげ
- 新装開店 百円ラーメン
- 絶叫の百円ラーメン
- 堅気屋 再建
- ボンボンのため~~ボンボンのため~
- ハク製と旅する男
- 堅気屋主人 接客の極意
前半はなつかしい「3Dアート」ブームの到来と、同時に襲い掛かってきたヤクザの襲来とを描いたお話、
中盤はカルメラ兄弟の結婚とお店リニューアル、
後半はお好み焼き屋のオッちゃん(百合根)をめぐるバタバタ、となります。
以下、ネタバレをまじえつつ各キャラの名ゼリフを。
テツ&うどん屋のオバちゃん
「世の中なんかボヤーッと見えてるくらいで
丁度ええんや
ちゃんと見えたからゆうてロクなことないし
なんかおもしろいことでもあるゆうの……」
「ん!!
………………
なんかテッちゃん眼の焦点狂てから
頭のピントが合うて来たんやおまへんか」
3Dアートブームを受け、「先に答が見えた方が500円」バクチで荒稼ぎするテツ。
眼が完全に3D仕様になってしまい日常生活に支障をきたしていますが、本人はなんら気にしていないところがさすがの大物っぷりです。
テツ&ミツル
「ボコボコにしたかったら
すぐポリやめんかい」
「エッ」
「ポリなんかやってたら
こいつらつかまえるだけで
手ェ出されへんど」
「うっ」
「こいつらにナメられてええんか
ボコボコにしたかったら制服脱いで
真人間に戻らんかい」
「ナ…ナメんなよ~~
オレらこの服着てたら
ピストル撃ってもええんやど~~~」
人違いでヤクザに襲われたミツル。
犯人のヤクザはテツを不意打ちで倒して記念写真を撮りたかったのに、警官のミツルを殴ってしまったことで罪が倍増であります。
「警察をやめる」=「真人間に戻る」というテツの理屈が面白いですね。
チエちゃん&小鉄
「行ってきます」
「あっとゆう間の二学期勤め
ごくろうさんです」
大人たちがヤクザ狩りで遊んでいる中、学校に行くチエちゃんと見送る小鉄。
小鉄があいかわらずチエちゃんに対してだけは完全に舎弟でかわいいっす。
アントニオジュニア
「結果はそれを信じて行動した者に
「吉」と出るんや」
テツとミツルに追われるストレスで激ヤセしたヤクザ。
ジュニアが正体を見破り、ビンタしまくって顔面を腫れあげさせて見事御用に。
いきなりビンタをかまして取り調べようとするジュニア、なんら悪びれるところがなくてイカついっす。
アントニオジュニア
「逃げよなんて考えてたら
頭のカケラさがさなあかんことになるど」
ヤクザの金策(ミツルたちへの賠償金)を監視するジュニア。
ヤクザ以上にヤクザでほんまイカついっす。
チエちゃん&百合根
「とりあえず一杯」
「なんちゅうシツケのええ子や
どうせみんなカルメラの結婚式の話
聞きとうて待ってたんやろ
一本開けて人間やめてから聞かしたる」
「今日は早めに閉店や」
疲れたオッちゃんにスッと日本酒を注ぐチエちゃん、どんな小学生やねん笑。
チエちゃん
「あ~
コアラちゃん
かわいい~~~
あなたはチョコラちゃん
チョコレートのコアラやからチョコラちゃん
どうしょうもぉ……
こんなかわいかったら食べられへんわ」
新婚旅行でオーストラリアに行ったカルメラ兄弟から、コアラ形のチョコレートをもらったチエちゃんのリアクション。
こんな少女らしいファンシーな反応をしたチエちゃんを見るのは初めてかもしれない……! 本来はこういう感性の子なんやなあ。
カルメラ兄弟
「なんかワシらこの前まで
カルメラの屋台引いてたのに
こんな店やれて
お客さんも来てくれて
おまけに嫁さんまで……」
「なんかワシら
これで運使い果たしたんやおまへんか」
結婚、お店の新装開店、大繁盛。
チエちゃんたちに感謝のラーメンを食べてもらって、感極まって男泣きに泣くカルメラ兄弟。
「人間ちゃんとやってたらええことあるんですわ」という周囲の言葉もめちゃくちゃあたたかくて好き。
百合根
「ワシが今から
接客の極意ちゅうもんを見せたる」
からの、流し目で客のオバちゃんたちをキャーキャー言わせるオッちゃん。
長期連載の果てに幸せをつかんだカルメラ兄弟もいれば、ここにきてまさかの後家殺しな魅力を滲みだし始めるオッちゃんもいるという。
この辺の塩梅がさすがじゃりン子チエですね。
いよいよ、じゃりン子チエの新文庫版も最終局面を迎え始めた気がします。
月に一度の楽しみなので、終わりが見えてくるのは寂しいですが……
今の世の中でも、少なくともちゃんとやっている人にはええことありますように。
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