肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

ジルオールの「エリス、セルモノー、ゼネテスについて」

 

青空文庫織田作之助さんの「夫婦善哉」を読んでかんたんいたしまして、ジルオールのエリスさんとセルモノーさんの夫婦関係についてあれこれ書いてみたくなりました。

 

 

以下、ジルオールのネタバレをふんだんに含みますのでご留意くださいまし。

 

 

 

 

 

ジルオールに登場する、ロストール王国の王妃エリスさん。

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夫のセルモノーさんも実兄の大貴族ノヴィン・ファーロスさんもさっぱり頼りにならないので、大国ロストールを実質一人で取り仕切っていることで知られています。

 

彼女は国と家族を守るために懸命に励んでいる訳なのですが、ロストールは昔ながらの貴族主義国家のために女性である彼女が前に出ることを快く思わない者が多く、妖艶な外見も災いして、「ファーロスの女狐」というあだ名で呼ばれているという。

 

実際に彼女は有能な諜報集団を子飼いにしていたり、謀略が得意であったり、毒に詳しかったり、何より政治判断が卓越していたりしますので、周囲から畏怖されるのは仕方ないところがあるのですが……。

 

 

 

本来の彼女は情に厚く、家族ファーストなお気持ちと才能を持っていたりします。

 

 

 

実兄のノヴィンさんが戦死して悲しむエリスさん。

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甥のゼネテスさんを気に掛けるエリスさん。

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ちなみにエリスさんのうしろに控える侍女はタッチストーンさんというフリントさんの姪っ子で、やはり有能な諜報員だそうです。

リューガの変でアトレイアさんを救いに向かうも、行方不明になってしまったそうで……(闇の王女の手にかかったか)

 

 

 

娘のティアナさんをいつも心配しているエリスさん。

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アトレイアさんを救うために毒にも詳しくなってしまうエリスさん。

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エリスさんは非常に集中力が高いという裏設定があり、集中し過ぎて大陸でいちばん毒に詳しくなってしまったそうです。スゲェ。

 

 

 

集中力を発揮して料理も縫い物もバッチリなエリスさん。

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集中力を発揮して政も謀略も極めてしまうエリスさん。そういうとこよ。

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……と、プレイヤー視点で見るとエリスさんは非常に魅力的な女性でして、私情を漏らせばジルオールでいちばん好きな人物は彼女だと言い切れるくらいなのですが、ジルオール世界の皆さま目線では……

 

 

 

娘からは、親の夫婦仲がよくないので自分の本当の父親は別にいるんじゃねーのと疑われていたり。

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どうせ自分に優しくするのもウラがあるんだろ? と思われていたり。

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そして、エリスさんが尽くしている夫のセルモノーさんからは……

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と、愛してもらえない、構ってもらえないどころか、毒殺すら疑われてせっかくつくった料理にも一度も口をつけてもらえないという。

 

 

 

この夫の仕打ちには、本来善良な娘っ子であるエリスさんもマジ悲哀(ピエン)であります。

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…………。

 

 

 

挙句の果て、セルモノーさんはゲーム終盤の政変時に妻の処刑を了承してしまい。

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エリスさんはすべてに納得して運命を受け容れるという……。

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夫と娘を愛する故に実権を握ったものの、

それ故に夫と娘から愛されることはなく、

果ては夫(と娘)の了承のもと命を落とす。

最後まで夫と娘を愛したまま…………。

(しかもストーリー展開によっては夫と娘の行きつく先も……という救いのなさ)

 

 

ジルオール世界でも屈指の実力者ながら、まったく現世の幸せにあずかれなかった彼女は、いったい何をどうすればよかったというのでしょう。

 

 

 

 

と、長年にわたってエリスさんというキャラクターが意識の底に沈殿している感じだったところ。

 

さいきん青空文庫夫婦善哉を再読しまして、「ああ、エリスさんとセルモノーさんにこんな面があったらな」と感じたんですよね。

www.aozora.gr.jp

 

 

 

夫婦善哉のストーリーについて詳しい紹介はいたしませんが、平たく言えばクズな夫としっかり者の妻の夫婦がなんやかんやで仲がいいやつです。

 

 

 

エリスさんは、セルモノーさんからの仕打ちにひたすら耐えたり自分磨きしたりするだけじゃなく、遠慮なくセルモノーさんを折檻すれば良かったんじゃないか。

 

夫婦善哉の夫のように、

 

「く、く、く、るしい、苦しい、おばはん、何すんねん」

「どうぞ、かんにんしてくれ」

 

と悲鳴を上げてしまうまで、

 

締めつけ締めつけ、打つ、撲る

 

と、思う存分セルモノーさんに感情をぶつければよかったのではないか。

 

 

 

なんて想像してしまいました。

 

まあ、無限のソウルの持ち主である主人公がいてもそういうストーリー分岐が出てこないあたり、庶民的な感情のぶつけ方ができない、そんな発想すらないところがエリスさんの魅力なので、こんなことを考えてもせんない話ではあるんですけど。

 

 

 

 

庶民的な夫婦相和のコツという意味では、世情に通じたゼネテスさんなんかが上手くアドバイスできたんじゃないのと思わなくはないのですが。

 

 

ゼネテスさんはゼネテスさんで理想の叔母貴像をつくりすぎていてエリスさんのイメージが崩れるアドバイスなんてできなさそうですし、心情的にも夫と仲良くなるような方向のアドバイスはできなさそうですし。

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そもそもゼネテスさん、世情に通じている風な面をしていますが女性心理にはまったく鈍感だという公式の裏設定もありますので、

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夫婦関係改善に向けてエリスさんに手を差し伸べられるような者はロストールにはいなかった、というのが動かぬ事実なのでしょう。

 

 

 

なお、それでも、私はゼネテスさんのこのセリフ

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「愛する誰かのために一生懸命な人間は天国に行くんだよ、叔母貴」

 

は、ジルオール屈指の名ゼリフであり、エリスさんの棺に入れるにこれほど相応しいセリフもないとも思います。

ゼネテスさんは、主人公にかけてくれる数々の頼もしいセリフ・行動よりも、エリスさんに対するあたたかいセリフ・行動の方に惚れたね私は。

 

 

 

 

あれこれ述べはしましたが。

 

エリスさんの死後、セルモノーさんも闇からちょっと抜け出ていましたので。

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二世の縁、来世ではエリスさんとセルモノーさんが仲睦まじい夫婦になって、お母さん大好きなティアナさんが生まれてきますように。

 

 

 

上でも書きましたが、無限のソウルの持ち主である主人公がいても、エリスさん生存ルートが生まれないところがインフィニット版の解釈一致な魅力だと思っています。

 

生存ルートが生まれて魅力の幅が広がったフレアさんと本当に対照的。

ジルオールの「フレアとゾフォル」インフィニット版エンサイクロペディアより - 肝胆ブログ

 

 

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