肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

映画「夜は我がもの 感想」ジョルジュ・ラコンブ監督

 

ジャン・ギャバンさん主演の映画「夜は我がもの」を観てみたらものすごく面白くて、これはきっと名作映画として広く知られているんやろなあと思ってネット検索したら情報がほとんど出てこなくてびっくりしましたが、もう1回観てみたらやっぱり面白くてかんたんしました。

たぶん「知られていないけど名作」というやつだと思いますので、機会があったらご覧になってくださいまし。

 

 

あらすじとしましては、

  • 蒸気機関車の機関士を務めるジャン・ギャバンさんが、
  • 事故で視力を失い(本人は1年で治ると思い込んでいる)、
  • やさぐれた気持ちで日々を過ごしていたところ、
  • 視力を失った人の教育施設に通うことになり、
  • 視力を失った状態でもラジオを巧みに組み立てられるようになり、
  • 同じく視力を失っている美人の先生にも出会い。
  • 人生が再び楽しくなってきたと思いかけたが…………

 

という流れで物語が進んで参ります。

 

端的に言えば、視力を失って絶望した男が、なんやかんやありつつ立ち直っていく物語ですね。

それ自体はベーシックな筋立てに移るかもしれませんが、役者陣の人間味あふれる演技がたいそう心地よく、非常に共感できる作品に仕上がっているんですよ。

 

「夜は我がもの」というタイトルから、てっきり悪魔城ドラキュラヘルシング的なホラーサスペンス系の内容をイメージしていたんですけど、全然違いましたね。

 

 

 

視力を失い、さっそくやさぐれているジャン・ギャバンさん(右)。

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イライラは大げさに、反省や感謝は控えめに表現する演技が、事故で傷ついた人間の心持ちを実にリアルに再現しているように思います。

それだけに、めっちゃ共感しちゃうんですよね。

 

ちなみに左は義理のお兄さんです。

ちょいちょい喧嘩にもなりますが、根っこでは強固な信頼で結ばれていることが分かる、素敵な関係なんですよ。

たまに喧嘩するけど、ちゃんとお互いを心配し、信頼し合っている家族。

ちょっと寅さん的な雰囲気があって好きです。

 

 

 

ヒロインは、シモーヌ・ヴァレールさん。

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自身も視力を失っているものの、教育に励み、視力のない方々に自信や喜びをもたらそうとされている立派な女性です。

 

この映画では、剥製や立体パズルを触ることで事物の知識を拡げる様や、点字教育、視力に頼らない工芸等々、具体的な教育シーンが充実していて、かつ見飽きない構成になっているのがとてもいいですね。

軽々と言っていいことではありませんが、自分が同じように視力を失ったとして、「これなら全く無理ではなさそう」と思えるように製作されている気がするのです。

勝新座頭市さんのような超人技能も好きですが、こうした質実な映像も好きだなあ。

 

 

 

惹かれていく二人。

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多くのセリフも派手なアクションもありませんが、この二人が惹かれあっていく過程は感じ入るものがありました。

視力を失った方すべてが魅力的な恋に出会えるかは別として、傷ついた人を癒していく、絶望した人に前を向く力を与えてくれるのは、やはり人との出会いや触れ合いなのかもしれませんね。

 

 

 

詳しくは書きませんが、敵役の方も、確かに嫌がられるタイプではありますが根っからの悪者という訳ではありませんし。

脇を固める役者陣の演技もいい感じですし。

 

とても完成度と満足度の高い映画だと思います。

もっと知られてほしいっす。

 

 

 

どのようなかたちであれ、不慮の出来事で傷ついた方に対しては、不慮に幸せな出来事も同じくらい発生いたしますように。