アメリカ初の大陸横断鉄道の建設史を描いた西部劇サイレント映画「アイアン・ホース」が正統派のエンターテインメントと濃密なオス臭さがブレンドされた傑作でかんたんしました。
大陸横断鉄道の完成は1869年です。
それまで、アメリカの東海岸から西海岸への旅は船で南アメリカ大陸をぐるっと回っていく事例も多かった(ジョン万次郎さんがゴールドラッシュに参加したのもこの船ルートだったそうな)ようですから、横断鉄道の敷設はまさに画期的な国家事業だった訳ですね。
「アイアン・ホース」とはずばり鉄道のこと。
当時、インディアンから鉄道はこういう風に呼ばれていたのだとか。
映画では、鉄道の敷設工事を縦軸に、主演のジョージ・オブライエンさんによる父親の仇討ちですとかマッジ・ベラミーさんとの恋愛ですとかを織り交ぜて物語が展開されてまいります。
ジョージ・オブライエンさんとマッジ・ベラミーさん。
ジョージ・オブライエンさんは端正な顔立ちながら、荒涼とした大地で肉体労働に励む姿がサマになっていて汗臭くて格好いいんですよ。
物語の詳しいネタバレはいたしませんが、見どころとしては迫力のある構図・画面が純粋に楽しくていいですね。
例えば工事関係者の食料として、大量の牛(牛肉)を移送するシーンですとか。
大河を渡る牛さんの群れ。
撮影も史実のカウボーイさんも大変だったろうなあ。
「いつまでバッファローの肉ばかり食わせるんだ牛肉を出しやがれ」とキレる労働者の方々の不満もリアルでよござんす。
この作品の労働者は、白人も中国人もジメジメウジウジしたところのない、カラッと働いたり歌ったり戦ったり騒いだり文句言ったりしているのが実にいいんですよね。
歌いながら働いて!(なお無声映画)
(セリフはすべて字幕で表示されます)
インディアンが襲ってきたら応戦して!!
物語としては調査とかケンカとか仇討ちとか色々あるんですけど、
とにかく働く! 働く!
肉体労働こそが映画の主役だ!!!
非常にオスオスしくて愉しい!!!
人様が一所懸命汗水流して働いているところを見ると、元気が出てまいりますね。
これはいい映画、これぞ人間賛歌ですよ。
働いた!
↓
世の中よくなった!!
↓
仇討ちできて彼女もできた!!!
物語ってのはそれでいいのよ。
働くってのはつらいことも嫌なことも退屈なことも多いものですけど、一方でこういう熱くなったり汗をかくのが不快でなかったり達成感があったりドラマがあったりすることも多いものですからね。
100年前の映画ながら、面白さもパワーもまるで色褪せておりません。
シンプルに、力強くて、夢も希望も叶う世界を再認識させてくださいます。
どうか現実もそういう現実であってくれますように。