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かんたんにかんたんします。

「三好長慶とは」分かりやすい最近の研究とかの解説

 

大河ドラマ麒麟がくる」に登場したり、信長の野望20XXで人気キャラになっていたりと、三好長慶さんの知名度が最近急に向上していてかんたんしている一方、彼がどういう人物なのかを分かりやすくまとめているサイトや書籍が意外と少ないので、自分なりの最近の研究を踏まえた現時点の理解をとっつきやすい形で書き記しておきます。

ご参考になれば幸いですが、しょせん私の素人理解ですし、あえて単純化して書いていますのでご留意くださいまし。

 

 

どんな顔?

こんな顔です。

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肖像画の讃(バックの文章)には「按成一剣定天下」と書かれており、「武力で天下を安定させたよね」と功績を称えられています。

あと、特別に下賜された「桐紋」が衣装に描かれています。

 

 

 

何をした人なの?

雑に言えば、応仁の乱以来、ずうっと戦乱が続いていた当時の首都圏(畿内地域)に平和をもたらした人です。

 

 

その過程で、

  • 一時的に足利将軍を京から追放して首都を単独支配
  • 室町時代の有力守護である細川家・河内畠山家の勢力を吸収
  • それまで武家支配が及んでいなかった大和を侵略
  • 結果、五畿内(山城・摂津・大和・河内・和泉)を支配下
  • 足利将軍に代わって改元を主導、天皇即位式を警護
  • 石垣や居城移転や鉄砲やキリスト教等の先進事例を多く採用
  • 寺社や朝廷を保護し一揆を抑止し交易を促進し治安を改善

 

等の画期的な成果を上げられています。

 

 

言い方を変えれば、

後の織田信長さんたちが活躍できる下地をつくった人、

ややこしい室町時代的勢力を一掃してくれて、実力と名分さえあれば中央政界でデカい顔ができる前例をつくっておいてくれた人、

でもあります。

 

 

基本プロフィールは?

徳島県出身。

1522年~1564年。

年が近い有名人は武田信玄さんや陶晴賢さんや毛利隆元さん。

 

居城は西宮市(越水城)→高槻市(芥川山城)→大東市/四条畷市(飯盛城)。

お墓は京都の大徳寺聚光院(通常非公開、たまに特別公開)。

 

 

 

強いの?

戦も政治も異常に強いです。

 

決戦をするたび大勝利、しかも最終的な動員兵力は約6万にのぼるという。

世論工作もやたら上手く、足利義輝さんとの関係がこじれた際には、なぜか「足利義輝三好長慶に謀反」と世間に言わせてしまう始末です。

 

 

 

弱点はないの?

運と寿命(享年43歳)。

 

 

 

天下人なの?

諸説あります。

 

戦国時代や江戸時代初期の文献では「天下主」「天下執権」「日本の副王」等と天下人っぽい表現で讃えられていました。

当時の「天下」は「五畿内」を指す説が近年有力なので、戦国時代に初めて五畿内を支配した彼を「最初の天下人」と呼ぶ人も増えてきています。

 

が、そもそも「天下人」という言葉に明確な定義がないので、

  • 全国支配をしていないから天下人ではない
  • 官位が従四位下どまりだから天下人ではない
  • 最終的に足利義輝さんと手を結んだから天下人ではない
  • とにかく天下人ではない

等の声も多い状況です。

皆さまの思う「天下人」のイメージに当てはめて判断いただければよいかと。

 

総じて、当時の人からは高評価、現代ではマイナーさもあって評価が混在、といったところでしょうか。

  

 

 

そんな話はじめて聞いた or これまで聞いた話と違う。

天野忠幸さん(現:天理大学准教授)等の研究が2000年代頃から急速に進みました。

もともと応仁の乱をはじめとする畿内史がややこしい上、織田信長さん以降の歴史の主役と直接関わっていないこともあり、研究・創作ともにそれまでは題材になりにくかったようです。

 

世俗的な眼から天野忠幸さんの功績を挙げると

  1. 三好家関係の一次史料(当時の文献)を整理した
  2. 逆に、三好家関係の俗説(講談や小説等の創作要素)を除外した
  3. 三好長慶さんや松永久秀さんの魅力的な人物像を提示した

 

というところで、1・2のおかげで最近は三好家界隈の研究がとても盛んになっていますし、3もあって私も含めたアマチュア歴史ファンも三好家トークを楽しめる状況になってきた次第でして。

3はあくまで仮説段階だと思いますが、1・2の基礎的事実の整理については学問的に定説になりつつある段階だと認識しています。

 

 

一方、江戸時代後期(頼山陽さんの創作等)から続く伝統的な三好長慶さん像は松永久秀さんに下剋上された残念な人」「晩年はボケた」でして、こうした昔ながらのイメージをお持ちの方もいまだ多く。

また、2000年代の「ニコニコ動画」や「信長の野望・革新」が盛んだった頃は、松永久秀さんが「梟雄キャラ」「義理1キャラ(すぐ裏切るキャラ)」として人気者だったこともあり、なおさら三好長慶さんは梟雄久秀さんの踏み台のような扱いを受けることも多く。

 

 

要は、2020年現在は「最近の研究」が浸透している途上、というところです。

初めて聞いた、で当たり前ですし、

聞いていた話と違う、でも当たり前です。

わざわざ能動的に調べて喜んでいる人の方がレアです。

 

そもそも、戦国時代の学術的な研究自体が戦後の学者さんたちの努力でようやく盛んになってきたところですし、 一口に戦国時代といってもプロもアマも縦割り横割りが激しくてなかなか互いの研究成果が上手く共有化されない構造課題があったりして、どうしても最新研究が定説化するには時間がかかっちゃうものなんですよね。

 

 

 

松永久秀さんに下剋上されたんじゃないの?

されてないです。

当時の文献では最期まで久秀さんは長慶さんに忠節を尽くしていますし、長慶さんや三好一族の連続死で久秀さんは何ひとつ得をしていません。

むしろ「松永久秀忠臣説」が人気出てきています。

 

実は、三好長慶さんは2年間ほど死を秘匿され、しかも秘匿が成功してしまいまして。

長慶さんの死を内緒にしていた1564-1566年頃、宣教師さんとかに「最近三好長慶さんは政務を疎かにしてすべて松永久秀さんに任せてしまっている」と評されてしまい、そのせいで松永久秀下剋上説が広まったんじゃないかという哀しい経緯があったことが判明しております。

 

 

 

晩年は不幸だったとか悲惨だったとか。

家庭面では不幸だったと言って差し支えないと思います。

  • 1561年 弟の十河一存さんが死亡(長慶40歳)
  • 1562年 弟の三好実休さんが死亡(長慶41歳)
  • 1563年 一人息子の三好義興さんが死亡(長慶42歳)
  • 1564年 弟の安宅冬康さんを自ら成敗し、自分も病死(享年43歳)

 

もともと三好長慶さんは

  • 11歳で父親が死亡
  • 18歳で母親が死亡
  • 27歳で妻と離縁

 

という経験もされておりますし、なんというか、いくら乱世といえど、もう少し運命の女神さんも彼に優しくして差し上げて……とは思ってしまいます。

 

 

 

なんで弟の安宅冬康さんを殺したの?

分かりません。

 

  1. 松永久秀さんの讒言
  2. 精神衰弱により道連れにしようとした
  3. 安宅冬康さんが謀反を企んでいた
  4. 後継者の三好義継さんに権力を集中させるため(お家分裂を防ぐため)

 

等の説がありますが、いずれも根拠はなく、創作や想像や状況証拠からの推測です。

天野忠幸さんは4を提示していますが、じっさいどうなんでしょうね。

本人の気持ちを慮ればどれも気の毒すぎる。

 

リアルにミステリです。防げ陰謀論

 

 

 

晩年はボケたり精神を病んだりしたんじゃないの?

死の直前まで普通に仕事しているので、ボケたりメンタルヘルスになったりはしていないと思われます。

 

精神が不安定だった説の元ネタは頼山陽さんです。

また、某小説家兼医師さんの「うつ病だったのでは」というかなり実験的な仮説論文(大胆な判断、痛烈なご批判を期待、と断って書かれたもの)が、wikiに部分的に切り取られて掲載されていた時期があり、余計にそういうイメージが広がってしまったりも。

 

 

 

ということは、すごい人なのに気の毒すぎませんか?

そうなんです。

だからこそ近年ファンを増やしているのかもしれません。

私は「三好長慶=戦国時代の樋口一葉」説を推しています。

 

 

 

そんな三好長慶さんの魅力は?

個人的には有能かつ薄幸なところを推していますが。

最大の魅力は「これぞ」という人物像がいまだないところではないでしょうか。

 

求む、素敵なコンテンツ誕生。

麒麟がくるにも期待しています。

 

 

 

必殺技とかないんですか?

ないです。

あえて言えば「実休さん召喚」でしょうか。

 

「車懸り」「啄木鳥」「三段撃ち」みたいな分かりやすい創作がある人はいいですね。

北条氏康さんなんかもそうですが、明らかにすごい人なのに分かりやすい必殺技がないせいでコンテンツ損している戦国大名っていると思うんです。

 

 

 

有名な戦は?

見どころが多くて面白い戦は

あたりでしょうか。

詳細は長くなるので割愛します。

 

 

 

ライバルは?

スポーツ漫画風に言うと、

  • 地区大会のライバルが木沢長政さん(惜しまれつつ引退)
  • 全国大会のライバルが遊佐長教さん(後に仲間に)
  • 世界大会のライバルが足利義輝さん(後に仲間に)

でしょうか。

 

 

 

友達は?

理由は不明ですが、千利休さんと墓場までぴっちょり一緒(聚光院)です。

小説等では利休さんに長慶さんの妹が嫁いだことになっていますが、仔細よく分からず。でも、仮に義兄弟だったとしても、お墓が隣り合っている、しかも千利休さんが生前にそれを指定、というのは相当な思い入れですが果たしていったい。

 

 

 

趣味は?

連歌と禅。

 

茶の湯はあまり熱心ではなかったようです。

弟の三好実休さんや親戚の三好宗三さんが茶の湯では有名です。

 

 

 

人柄は?

分かりませんが、細川藤孝さんの証言によれば動かずにじっと沈思しているタイプの人だったようです。

あと、織田信長さんの有名な料理人坪内某エピソードを信じるならば、薄味派です。

そうとうストイックな匂いがしますね。

 

旧主を殺さなかったことで「甘い」とも言われがちですが、最近は「殺さないのが当時の常識」「世論への配慮が本当に上手い」と評されるようになってきています。

 

 

 

浮いた話は?

波多野氏出身の妻がいたが離縁した、

遊佐長教さんの娘を継室にもらったらしい、

以外はなんの記録も残っていません。

すなわち縛りはほとんどありません。

あとは何を想像するのもあなたの自由です。

 

 

 

彼が目指した世とは?

分かりません。

 

天野忠幸氏は室町時代の家格秩序を克服し、新たな世を」という魅力的な長慶像を発信してくださっていますが、あくまで仮説段階です。

なりゆきで天下人になっただけなのかもしれませんし、逆に先の世をしっかり洞察しつつ世論に配慮して物事をゆっくり進めていた人なのかもしれません。

 

彼の構想を評価する上でキーとなるのが、1558年の足利義輝との和睦。

それまで京を単独支配していた長慶さんは、ここで義輝さんと和睦し、以降は

  • 上に室町将軍を据えつつ
  • 自らが引続き実権を握り続け
  • 河内や大和等、周辺諸国への侵略を進める

というスタンスになるのですが、この和睦がどのような判断だったのか。

妥協なのか、屈したのか、能動的選択なのか。

 

議論が尽きない、興味深い論点であります。

 

 

 

興味が湧いたので真面目な本を読みたいです。

天野忠幸さんによる最近の研究に触れるならば、「松永久秀下剋上」が一番手に入りやすくて読みやすいと思われます。

www.heibonsha.co.jp

「松永久秀と下剋上 室町の身分秩序を覆す」天野忠幸さん(平凡社) - 肝胆ブログ

 

タイトルは松永久秀さんですが、前半は三好長慶さんの事績と重なっていますし、後半の織田信長さん時代との繋がりも学べていい感じです。

 

読んでみて肌に合いそうだったら、より学術的な本や論文をお読みくださいまし。

その際は、天野忠幸さんに加え、馬部隆弘さんや中西裕樹さんの文章にも目を通されると理解が立体的になっていいと思いますよ。

 

 

大阪界隈にお住まいの方なら、「飯盛山城と三好長慶」も郷土史的面白さがあっておすすめです。

www.ebisukosyo.co.jp

 

 

 

真面目な本じゃなくて小説とかゲームとかないんですか。

あんまりないんですよねえ……。

まだまだ供給不足なのが実態です。

 

小説は、最近の研究が反映されたものがほとんどありません。

手に入れば「新三好長慶伝」は最近の研究もある程度反映されていて読みやすいんですが、松永久秀さんの扱いがかなり悪いので彼のファンはしんどいかも。

小説「新三好長慶伝 龍は天道をゆく 感想」三日木人さん(幻冬舎MC) - 肝胆ブログ

 

マチュアでよければ私が昔書いたやつもありますが、長くて暗いのでだったら専門書読んだ方がいいじゃんという感じです。自分で読む分にはまあ面白いんですけど。

きょう、(小説 三好長慶)

 

 

ゲームだと、最近は信長の野望シリーズが三好家をけっこう推してくれているのでおすすめです。

信長の野望・大志の「残念な足利義輝像」と「危険な三好長慶像」 - 肝胆ブログ

信長の野望20XX「三好主従&人気武将の活躍」'20バレンタイン三連覇&主従同率1位記念 - 肝胆ブログ

 

 

 

 

 

以上、自分なりにとっつきやすく書いたつもりですが、やっぱり長くなっちゃいますね。プロの手による新書発売とかを切に願います。

 

 

なんにせよ三好長慶さんの知名度がじわじわ上がって、ファンもそこそこ増えていきますように。

 

 

 

 

 

信長の野望20XX「三好主従&人気武将の活躍」'20バレンタイン三連覇&主従同率1位記念

 

信長の野望20XXのバレンタインチョコ獲得数、三好長慶さんが三連覇するとともに松永久秀さんと同率一位を達成するというあり得なさそうなことが現実に起きていてかんたんしました。

 

明日の大河ドラマ麒麟がくる」5話ではいよいよ三好長慶さんが登場するらしいですし、これは何かミラクルなたぐいの風を感じますね。

  

 

mantan-web.jp

 

 

 

やーそれにしても三連覇&主従同率1位とは。

これはもう氷帝コールならぬ三好コールが自然発生しても不思議ではないっすね。

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(なるほど VALENTINE'S DAYじゃねーの)

信長の野望201X「三好長慶が'18バレンタインNo.1人気に」 - 肝胆ブログ

信長の野望201X三好長慶'19バレンタイン制覇記念「長慶大開眼50%」 - 肝胆ブログ

 

 

 

 

せっかくの機会ですので、信長の野望201X・20XXにおけるこれまでの三好主従の活躍を振り返ってみたいと思います。

コンテンツ供給が乏しいことで知られる三好家を、ここまでの人気キャラに育ててくださった当シリーズには感謝してもし足りませんの。

 

 

 

三好主従

河内和泉

三好長慶さんが情緒不安定&娘介錯キャラとして衝撃の登場を果たし、今以上に三好コンテンツが少なかった当時にあって戦国時代ファン(のごく一部)に凄まじいインパクトを与えてくださいました。

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そして松永久秀さんは殿を支えつつ腹の底では三好家乗っ取りを画策しつつ、

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殿のことは裏切れないのよと「忠臣・梟雄ハイブリッド」久秀という新たな人気ポジションを得ることになったのです。

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信長の野望201X、当初からコラ関係ははっちゃけてましたが、この三好主従登場からストーリー面でも躊躇しなくなってきて面白味が増した印象です。

 

実際の三好長慶さんがうつ病だったという説はかなり根拠レスで、昔からの小説的な取り上げであったり某実験的仮説が一時wikiで部分引用されてしまったことであったり等で広まってしまった訳でして、基本的に最近の三好ファンからは嫌がられる要素のはずなんですけど、201Xの情緒不安定要素に限っては「面白いからいいか」と皆から好意的に受け取られている気がします。や、あくまで私の主観的印象ですので今後三好長慶さんの人気が高まればやいや言ってくる人も出てくるかもしれませんが。

 

 

永禄の変異聞

信長の野望201X「永禄の変 異聞 ~二人の将軍と天下人~」 - 肝胆ブログ

 

引続き松永久秀さんが梟雄っぽい素振りをしています。

が、まつりさんあたりからは「でも長慶さんのこと大好きですよね?」とツッコまれ始めていたりもします。

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長慶さんは相変わらずメンタル不安定ですが、

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外の国の薬(現代の頭痛薬と胃腸薬)を飲んだ後は本来の有能ぶりを取り戻して活躍しはります。

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長慶さんは切り替えの早さ芸が、久秀さんは殿大好き芸がクオリティアップしてきた異聞でしたね。

 

 

 

山城

201X第一部の山場。

全国から諸大名が集まり、物語の大ボスとの決戦が始まる中……

 

 

長慶さんは囚われのヒロインに。

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久秀さんは救いのヒーローに。

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人目もはばからず三好主従の熱愛が繰り広げられます。

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この頃から公式で「三好主従はいいぞ」になって参りました。

ありがとう開発スタッフ方。

 

 

 

金ヶ崎・姉川異聞

信長の野望201X「金ヶ崎・姉川異聞」 - 肝胆ブログ

 

姉川の戦いに、なぜかご存命の三好長慶さんが介入するというサプライズ。

 

 

久秀さんはますます忠臣に。

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長慶さんはいつになく晴れやかな名将に。

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これには朝倉宗滴さん(ご存命)もかんたんせざるを得ないのです。

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公式だけでなく、201Xの世界内でも「三好主従いいよね」「いい……」になってきてしまいました。

 

いまやっているコラボも含め、201X・20XXには数多の素敵主従が登場してきます。

こうした主従切り口のパイオニアが三好主従だったと言ってもあんまり過言ではないんじゃないでしょうか。

 

 

 

正邪対抗! 201X学園

信長の野望201X「正邪対抗!201X学園(学園三好松永)」 - 肝胆ブログ

 

こまかい経緯は申し上げませんが、とぅるーひーろーたるキャプテン・ナガヨシさんとえくすぷろーじょんう゛ぃらんたるヒサヒデ・ザ・ボマーさんが激突します。

 

 

拳と拳で語り合う両雄!

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熱き戦いと別れが涙を呼ぶ!(仕留めてしまっても構わんよな?)

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これにはスタンディングオベーション間違いなしであります。

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「三好主従映画化」という公式の悪ノリがすごい。

もはや三好主従なら何をしてもいいだろう、という信頼関係がユーザーとのあいだに築かれている気がいたします。

 

 

 

久秀のニャ望

信長の野望201X「久秀のニャ望 感想」 - 肝胆ブログ

 

 

「のぶニャがの野望」とのコラボにより、猫化した三好主従までが登場いたします。

 

 

忠臣ではありつつも、人使いが荒い上に言うことを聞いてくれない長慶さん(猫)にボヤく久秀さん(猫)。

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一見紳士然としていますが底知れぬダーティな怖さを感じる長慶さん(猫)。

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新たな三好主従のかたちに驚きを禁じ得ないまつりさん(人)。

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なお、長慶さん(人)の様子はだいたいいつも通りです。

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三好家登場人物が増えてきましたが、基本的に「三好家一同→→心配(介錯はいたしませぬぞ)→→長慶さん」という感じになっているのがなんともはや。

 

 

久秀さん(猫耳)の妻として三好御前さん(猫耳)が登場していますので、長慶さん(人)の行きどころのない感情が出てくるのも新たな切り口です。

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かように、三好主従は201X・20XXのカオスを体現する象徴と化して現在に至っている訳ですね。

たぶんどんなコラボや展開でも三好家なら物語をつくれる状態になっています。

 

 

久秀界で一番人気というクリスマス久秀さんのストーリーは現時点で実装されておりませんが、もともとの殿のシャンパングラ(や之長氏のハムッ……ハフハフ、フハァ!! グラ)とも相性がいいはずですし、そのうち何らかのかたちで共演が実現いたしますように。

信長の野望20XX「クリスマス松永久秀」(聖夜の祝宴 in 2019 殿) - 肝胆ブログ

 

 

 

バレンタイン人気武将

三好主従以外の人気武将についても名場面を一コマだけご紹介いたしますよ。

 

織田信長

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長篠異聞が良すぎましたね。

一人だけすべてを察している信長さんの魅せ方が実にいいんです。

信長の野望201X「長篠異聞(後編)のストーリー」※一部ネタバレあり - 肝胆ブログ

 

 

 

黒田長政

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関ヶ原異聞に登場。

秀吉・ねね夫妻に深い恩義を抱いていて、それをてらいなく真っすぐ表す長政さんがマジ格好いい。

異聞そのものも201Xを通して最高のストーリーでした。

信長の野望201X「関ヶ原異聞 ~本編・決戦~ 感想」 - 肝胆ブログ

 

 

 

里見義堯

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国府台異聞より。

親バカな面を見せてくれたり、某虚無僧と仲良く?したりする、里見義堯さんの魅力が詰まった貴重な異聞でしたね。

(記事に取り上げたつもりだったけど取り上げていませんでした。なんでだっけ)

 

小弓公方たる「足利義明」さんも登場いたしまして、これがもう201X悪役武将の中でもトップクラスに格好いい活躍をしてくださいますから、足利ファンや小弓公方ファンも国府台異聞の復刻を楽しみにお待ちください。

 

 

 

真壁氏幹

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201Xの氏幹さんといえば、佐竹義重さんとの主従関係、そして塚原卜伝さんとの師弟関係と、おいしい見どころが多い方であります。

 

画像は常陸攻略より。

ここではそんな主従関係と師弟関係を両方楽しめるTボーンステーキのような展開を満喫できますよ。

さあみんな頑張って北関東まで攻略を進めよう。

信長の野望201X「佐竹家等攻略(上総・下総・下野・常陸)」 - 肝胆ブログ

 

 

 

 

 

201X・20XXの登場人物はみんな本当にキャラが立っていて、様々な地域愛や武将愛や性癖や嗜好の受け口が広くていいですね。

 

ますますユーザーが増えて一人ひとりがお気に入り武将を見つけられますように。

 

 

 

 

 

「こううんりゅうすい 最終8巻感想 案の定の本宮エンド」本宮ひろ志御大(グラジャン)

 

本宮ひろ志御大版の「まんが 日本の歴史」こと「こううんりゅうすい」が、すべてをブン投げて案の定な本宮エンドを迎えていてかんたんしました。

 

grandjump.shueisha.co.jp

 

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不老不死の力を得た徐福さんと卑弥呼さんと秦の始皇帝さんと聖徳太子さんが日本・世界の歴史の流れを見守る漫画だったのですが……。

 

乙巳の変の顛末や行基さんの事績等までは真面目に描いてはって私的には面白かったのですが……。

 

以下、ネタバレます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御大、飽きたのでしょう。

 

 

舞台が奈良時代から現代まで飛びました。

 

 

 

その間、注目すべき人物は……

 

 

戦国時代の織田信長さんと、

 

 

幕末の坂本龍馬さん、

 

 

以上2名しか現れなかったそうです。

 

 

これには全歴史ファン悶死不可避。

 

 

 

 

 

……ま、まあ、1万年以上続いた原始社会と比較して、人類が「クニ、政治、戦を始めた」という点だけで見れば、確かに奈良時代から現代まで大きくは変わっていないのかもしれませんが……。

 

織田信長さんと坂本龍馬さんという人選は完全に御大の趣味でしょうから突っ込むのはやめておきましょう。

 

なお、信長さんと龍馬さんも不老不死になりました!

(ちなみに不老不死勢の力は一人当水爆五千発分だそうです)

 

 

 

 

さあ、不老不死6名が現代に現れてどうなるかというと……

 

従来、彼らは「人類の歴史にはタッチしない」というスタンスを守り続けていたのですけれど……

彼ら自身が飽きてしまったようで。

 

 

織田信長さんは、全暴力団を束ねるドンとなって日本で内戦を始め、次いでアメリカに喧嘩を売って空を飛んでホワイトハウスに殴り込み、トランプさんの頭をブッ叩きます。

「ぐわあっはははは」

「何がICBMじゃ このわしも同じ軌道を通ってやるわっ」

(大気圏外を飛びながら)

 

「わしは日本から飛んで来た織田信長 すでに六百年以上生きている バケモノじゃ」

「今この地球に必要なのは絶対的な力で立つ一人の王じゃ それはこのわしよ」

 

 

 

聖徳太子さんと坂本龍馬さんは勝手に世界各国と外交を初めて「軍事力放棄」を実現しかけます。

あと、聖徳太子さんは小泉進次郎さんの身体を乗っ取って総理大臣になります。

 

 

 

秦の始皇帝ことエイセイさんは習近平さんに説教して聖徳太子さんへの協力を取り付けます。

 

 

 

卑弥呼さんと徐福さんはドン引きしながら傍観していた次第です。

(徐福さんは織田信長さんに多少操られながら)

 

 

 

 

 

 

そして……

 

 

そうこうしていたら、いきなり

地球に巨大な隕石が迫ってきました。

 

 

核ミサイルで迎撃する人類。

 

 

隕石は砕け散るも、

破片が無数に地球へ降り注ぎ……

 

 

一旦世界は滅び、

人類は三千万人まで減りました。

 

 

 

唐突!!!

あまりにも唐突ゥ!!!!

 

 

 

 

 

で……

 

 

 

西暦2500年くらい。

 

 

人類は再び繁栄し。

 

 

AIとかロボットとかが活躍する中。

 

 

織田信長さんが世界の王となり。

 

 

そんな織田信長さんと他の不老不死5名が

戦ったりもしましたけど。

 

 

最期はみんなで宇宙に出て

新天地たる惑星を目指して

旅立っていきました!

 

 

 

完!!!!

 

 

 

 

 

 

いやあ、非常に本宮ひろ志御大らしい、楽しい漫画でしたね。

途中から完全に「夢幻の如く」再びでした。

 

歴史ファンには特段おすすめしませんが、本宮ひろ志御大らしいスケール感とイキイキ感と勢いと強引な店じまいが好きな方にはおすすめですよ。

卑弥呼さんかわいいし。

 

 

現実の歴史はブン投げるわけにもいきませんので、本宮ひろ志的熱情を持ちつつも地道に着々と人類の歴史が流れていきますように。

隕石エンドはやだなあ。

 

 

「こううんりゅうすい<徐福>3-4巻感想 卑弥呼さんいいよね」本宮ひろ志先生(グランドジャンプ) - 肝胆ブログ

 

 

日経新聞「戸田雄三さんのこころの玉手箱 感想」

  

日経新聞の「こころの玉手箱」、戸田雄三さんの回が非常に密度高く、後進にとって得るところの多い内容でかんたんしました。

 

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こころの玉手箱は、1か月連載の私の履歴書と違って全5回になりますので、凝縮された内容になっているのが特徴ですね。

 

著者の戸田雄三さんは、富士フィルムさんの多角化というか、化粧品事業や医療事業への進出に多大な貢献をされたことで著名なお方であります。

若い方はピンとこないかもしれませんが、かつてフィルムカメラデジタルカメラに駆逐された際、フィルム事業にこだわったコダックさんが破綻し、一方で多角化に成功した富士フィルムさんが見事難局を乗り切った……というのは、各種ビジネススクールの教材でも取り上げられるほど有名な経済史上のエピソードなんですよ。

事業環境のディスラプション……破壊的変化……というのは引続き様々な業界で生じていくことでしょうから、富士フィルムさんの足跡から後進が学ぶべきところは多いと目されている訳であります。

 

 

 

そんな戸田雄三さんのこころの玉手箱ですが、そうした自らの功績的要素については控えめで、むしろ製造的実務面の重要性を訴えかけるような内容であったり、チームの力を発揮するための努力であったり、御父上との思い出であったりと、地に足の着いたエピソードが中心になっているのが非常にいいですね。

共感を抱きますし、経済ニュースでちやほやされる系ではないんだけど実は働く上でものすごく大事なことを実直に書き下ろしてくださっているような感じで。

 

 

私にとって印象的だったエピソードは次のとおり。

 

まだ小学校にあがる前、新年会に行ったのはいいが、おやじは地下鉄の駅のベンチで寝てしまった。終電もなくなり、駅員さんに声をかけられて、やっと目を覚ました。その時、おやじのオーバーコートで暖かく包まれた時のたばこの臭いは今でも覚えている。 

 

大学で有機半導体を研究したが、富士フイルムでは研究職には就かずに「製造マン」になった。新入社員研修で「俺たちはフィルムを作っているのではない。信頼をつくっている」という言葉に感動し、自ら志願した。以来、研究と市場の交差点とも言える製造現場で単なる製品ではなく、お客様に信頼して買っていただける「商品を作る」ことを実践した。

 

私に「この実験データは信用できない」と指摘され、「両親にもそんなふうに言われたことはない」と泣きながら所長室を飛び出していった所員もいた。あとでもう一度呼び出し、「データは信用できない」と繰り返した。「だが、君のことは信頼している。だから単刀直入になれる」と付け加えると、彼は再び泣いた。この一件の後、私も彼のおかげで「ミスター・インスパイアリング(励まし屋)」と所内で呼ばれるようになった。

 

製造には研究とは違った技術が必要で、まさに信頼を作り込んでいると言ってよい。ところが、最近の日本企業では、製造が生み出すこうした価値が経営陣によく理解されていない。そもそも、技術系の役員の比率が小さい企業が多い。製造の大切さを再評価してこそ、この先の日本の産業競争力再生が可能になる。

 

リーダーの役割は次代を担う若者に希望を与え、課題を示唆することであるはずだ。しかし、今をときめくリーダーの多くが世のため、人のためよりも自分、自社、自国を最優先させているのは憂うべきことだ。

 

いずれも情感深く、かつ学ぶところの大きい内容だと思います。

 

全5回という凝縮した文章量の中で、戸田雄三さんの回はとりわけ読み捨てるところのない、金言が多い連載だったように感じますね。

 

「守りは本能、攻めは才能」というお言葉も、苦境にあってなおファイティングスピリットを失っていない後進の背中を支えてくださると思います。

 

 

かような先人に負けず劣らず、これからの日本経済もまた力強く情緒豊かに難局を乗り切っていくことができますように。 

 

 

 

 

漫画「ミナミの帝王 失踪留学生編 感想」作:天王寺大先生 / 画:郷力也先生(週刊漫画ゴラクNo.2697)

ミナミの帝王「失踪留学生編」の竜一さんが格好よすぎてかんたんしました。

いつの間にやら立派な貫禄をお持ちになって……。

 

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失踪留学生編。

外国人留学生が学費&生活費&借金のために掛け持ちバイトで疲弊し大学へまともに通えず行方知れずになる問題(+そんな留学生を野放図に受け入れまくってきちんと管理していない某大学問題)を題材にした章になります。

 

 

以下、ネタバレを一部含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回のヒロインはベトナム人留学生のシュアンさん。

褐色童顔系のかわいらしい女性です。

最近のミナミの帝王はマンゴー保育園の沙也加園長といい、宗教法人買い取り編のルリカさんといい、クセのある美人が多く登場してきて実にいいですね。

 

 

で、シュアンさんは「失踪留学生」のテーマ通り、夢を抱いて日本に来たものの苦労して騙されて酷い目に遭いかけてと非常に気の毒な感じになるんですね。

 

そこへ、彼女に一目ぼれした竜一さんが救世主的活躍をしてくださる訳ですよ。

(そういえば以前もアジア系女性に恋してアンニョンソウルしたことがありました)

 

危うく強姦されそうになったシュアンさんを見事に救出してですね。

 

 

「私はもう恥ずかしくて生きていけない」

 

と消沈するシュアンさんに対して竜一さんが!

 

「シュアンちゃん 俺も もう 子供やない」

「人間誰にも人には見せられへん部分がある」

「そんなとこを抱えながらも健気に生きてるさかい……」

「人間はえらいんや!」

 

「誰しもすねに傷を持って生きてるもんや」

「その傷を俺は……」

「醜いとは思わへん!」

「愛おしいやないか……」 

 

と説きほぐしながらミナミの灯りのしたを歩くのですよ!

 

これは竜一さん史上でも最高に男前な竜一さん

ほんまご立派になられたものです。

彼も様々な魅力を持つ人物ですが、格好いい竜一さんを見たいファンにとってこの章は必読ものでありますよ。

 

 

まあ、最終的なオチはあまりにも強引で酷い展開になってしまいましたが……。

メタ的には漫画設定に影響するから仕方ないのでしょうけど。

 

竜一さんに更なる幸せあれかし。

 

 

 

 

今号のゴラクは他にも見どころの多い巻でございました。

 

 

白竜HADOU「警察の森」編。

最終ページの

 

鷲田:「決着をつけようぜーーーッ!!」

日野:(……ッ!?)

 

にフフッとなりました。

「決着をつけよう」という緊迫すべき場面で、そのフリが唐突過ぎて相手が「??」とついてこれていない構図がシュールでいいですね。

 

 

 

シニザマ「松永久秀編」。

従来の梟雄説通りの松永久秀さんが描かれています。

死亡カルテ

松永久秀

自爆(第一次爆傷による爆死)

享年68歳

松永久秀まるで子供向け番組の怪人のように自爆した

それは乱世においても唯一無二の死に様だった

 

という解説がジワります。

忠臣説を調べていない訳ではなくて、梟雄説のほうがゴラク読者層にウケると判断されたような印象。

まあそうかもなあ。

要は読者が読みたいものが積み重なっていった結果が梟雄説なんだろうし。

 

 

 

江戸前の旬「1046話~宝石~」。

魚と宝石の近似性だけで1話使っている展開が面白いです。

 

「寿司ダネのイカもダイヤのように包丁の入れ方で見た目や味を変化させることもできるし、ルビーのように加熱処理することでより色を鮮やかにすることも出来るんです」

「さしずめルビーはマグロの赤身のヅケってとこね!」

「確かにイクラなんかはよく宝石に例えられるような…」

「親方! マグロのブロックは赤いルビー…寒サバの青はブルーサファイア サヨリの輝く体の色はまさにダイヤモンド…」

 

と、おっしゃる通り確かに魚介類の美しさは宝石に匹敵するとは思うのですけど、こうして文字に起こすと絶妙に味わいがあっていいですね。

 

 

 

ゴラクも相変わらず元気で面白いです。

 

 

ミナミの帝王は次号から「"暴走老人”編」が始まるとのことですが、お車関係でしょうか。引続き注目を集めているテーマですね。

 

はやくレベル5の自動運転が普及しますように。

レベル5の自動運転が普及するような世の中になっても萬田金融の商売は順調でありますように。

 

 

 

「アクタージュ10巻 感想 夜凪景、圧巻の主人公力≒ラスボス力」原作:マツキタツヤ先生 / 漫画:宇佐崎しろ先生(ジャンプ)

 

アクタージュ10巻、いよいよ夜凪景さん主演の舞台「羅刹女:サイド甲」が開演。

様々語りたいことはあるのですが、何よりも夜凪景さんの類を見ない張り詰めた存在感にかんたんしました。

 

www.shonenjump.com

 

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表紙は天知心一さん。

怪しくて妖しい。

隠されたお口はいったいどんな表情していることやら。

 

扉絵について言えば、「scene86.必死」の、夜凪景さんと百城千世子さんが相互にメイクしているイラストが素晴らしいですね。

 

 

以下、ある程度のネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイド甲の開演にあたり、山野上花子さんがとんでもない爆弾を夜凪景さんにギフトしてしまいました。

「私はあなたのお父さんとお付き合いしていました」

「あなたのお母さんのお葬式の夜も私は彼といました」

 

 

花子さん、不倫とか似合いそうだな笑 と思ってたら……

まさか本当に不倫ネタをブチ込んでくるとは……

ここ、週刊少年ジャンプですよ……

 

 

この時点の、ドロドロに歪んだ花子さんのグルグル瞳が、美しい石川賢といった風情に狂気を孕んでいて堪らないのですが。

 

 

 

 

ここからの夜凪景さんが圧巻でしたね。

 

最期まで父を愛していた、心優しき母を思い浮かべ。

思わず花子さんを、出血させるほど本気でブッ叩きつつも……

 

 

ライバル百城千世子さんの横顔がよぎり。

 

大切なのは一つだけ

この“怒り”を羅刹女に使うこと

飲まれるな

利用しろ

私は役者だ

 

と。

まさしく主人公なりと賛辞すべき意志の力を発揮するに至ります。

 

 

そうして誕生した夜凪景さんの羅刹女は……

ジャンプ史上でも類を見ないほどの迫力を備えたラスボスでしてね。

 

 

主人公力を発揮した結果、できあがったのがとんでもないラスボスという因業。

カムパネルラのときも思いましたが、これ、実写化ムリですわ。

 

 

詳述はしませんが、「scene83.大切なのは」「scene84.ヒーロー」での夜凪景羅刹女は、数多ある漫画のラスボス登場シーンの中でも稀有な迫力、緊迫、恐怖、そして美しさに満ちていると思うのです。

 

私もたいがい漫画読んでいる方だと思うんですけど、類似する登場シーンがちょっと思い浮かびません。

キャラの方向性は違いますが、インパクトだけで比べても、3部DIO登場シーンや始祖編シルバーマン登場シーンに勝るとも劣らないですよ。

まこと、キャラの登場シーンや入場シーンは漫画の華でございます。

 

夜凪景羅刹女に怯える幼女客(有島あゆみさん6歳)の反応・感受性、夜凪景さんと日ごろ親しき友人・仲間たちが青ざめる様子もまた、素晴らしいですね。

読者と同じ反応を登場人物たちが示してくれる、この一体感ライブ感よ。

 

 

 

読者としてのライブ感で言えば、ここからの活躍MVPは王賀美陸さんであります。

 

百城千世子さんとの甲乙対決に加え、山野上花子さんの何してくれてんのレベルなセルフ炎上無差別テロが混ざり、「アクタージュという作品」「舞台羅刹女編」の方向性が極めて視界不良になったと思わせておいて。

 

細かくは伏せますが、毎話毎話の王賀美さんの活躍描写とピンチ描写に、読者の気持ちも毎話毎話「終わった」「スゲェ!」を繰り返すことになり、展開の先行きが見通せなくても過程を抜群に楽しむことができるというね。

 

これはいい舞台。

ドキドキできりゃあなんしかいいゲイジュツですよね。

 

結果として山野上花子さんの人間性評価が暴落する一方、王賀美陸さんの実力評価人間性評価がストップ高につぐストップ高であります。

これはスター。いまなら王権神授説も信じられるよ。

 

私はそれでも山野上花子さん、好きですけどね。

お酒ぐびぐびしてたらなおかわいいし。

人間性? いんだよ細けぇことは。

 

 

王賀美陸さん、いずれどこかで愛してくれる作品に出会えるといいですね。

 

あと、10巻ラストの変化の術を解くシーン、スモーク焚いて一瞬で牛魔王衣装から孫悟空衣装に引抜していますけど、これは実写で見てみたいな。

 

 

 

と、夜凪景さんの圧倒的存在感、そして王賀美陸さんによる毎々の盛り上がりと、瞠目せざるを得ない仕上がりになっている10巻でしたね。

10巻にして主人公がラスボス化しているというのもスゴいことです。

漫画としての勢いを感じる。

 

 

先行きはまったく不明瞭なままではありますけど、さんざんに読者の気持ちを弄んでくれたうえで、最終的には目の覚めるような鮮やかな結末に至りますように。

 

 

 

なお、単行本特典で羅刹女パンフをもらったんですけど、サラッとサイド乙のメンバーの名前が明らかになっていますね。

 

メガネデブの人は山寺英司さんで、お笑い芸人出身のマルチタレント。

ヒゲ短髪の人は渡戸剣さんで、天球以前に巌裕次郎さんに鍛え上げられた舞台俳優。

 

サイド乙は、巌裕次郎つながりの役者が二人もいる設定だったのか。

明神阿良也さんとの絡みを楽しみにせざるを得ない。

 

そして明神阿良也さんのパンフコメントが完全にアウトな代物で、予備知識なしに客が読むと「百城千世子ワキガ説」とか出かねないような内容なのが酷い。

スタッフはチェックしていないのかこの野郎レベルでウケますから、一見の価値ありますよ。

 

 

 

「アクタージュ9巻 感想 ああ腹が立つ腹が立つ」原作:マツキタツヤ先生 / 漫画:宇佐崎しろ先生(ジャンプ) - 肝胆ブログ

 

「IQ2 感想」ジョー・イデさん / 訳:熊谷千寿さん(ハヤカワ文庫)

 

アメリカの黒人探偵小説「IQ」の楽しい続編が発売されていてかんたんしました。

 

www.hayakawa-online.co.jp

 

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↓前作「IQ」の感想

「IQ 感想」ジョーイデさん / 訳:熊谷千寿さん(早川書房) - 肝胆ブログ

 

 

ロサンゼルスの下層社会で探偵業を営む「アイゼイア・クィンターベイ」さんの活躍を描いたシリーズになります。

黒人系、アジア系、メキシコ系のギャングやストリートカルチャーがふんだんに登場してきますので現代アメリカの一面を記した小説としてもクオリティ高いですよ。

 

「暗黒街のホームズ」といったキャッチコピーがついているシリーズでもありますが、個人的にはシャーロック・ホームズ感はそこまで抱かないかなあ。

探偵もの、バディもの、高い知性と品性と運動神経……といった点は共通していますけど、主人公「IQ」の葛藤多き黒人青年ぶりが他の小説とはそうとう異なった個性をお持ちですので。

 

1作目との比較では、引続きアメリカ下層社会特有のネトネトした頽廃文学味は残しつつ、よりアクション映画的な爽快感が増したような印象です。

文学的な深い内面描写は1作目の方が上、娯楽小説として完成度が高いのはこちら、という感じかなあ。

 

 

 

あらすじは次のとおりです。

亡き兄の恋人だった女性から、高利貸しに追われる妹ジャニーンを助けてほしいと頼まれた探偵"IQ"。

腐れ縁のドッドソンを伴い、彼女が住むラスベガスに赴くが、事態は予想よりも深刻だった。

ジャニーンは中国系ギャングの顧客情報に手を出し、命を狙われていたのだ。待望のシリーズ第二作。

解説/丸屋九兵衛

 

 

小説の構成としては

 

 ・ジャニーンさんを救うため中国系ギャングに対抗するパート(現在)

 ・亡き兄の死因を探るパート(数日前)

 

が交互に展開していく書き方になっていまして、前者はアイゼイアさんが恋心に揺れつつ相棒ドッドソンさんと痛快な活躍をするのがメイン、後者はアイゼイアさんの復讐心に沿った追跡と葛藤がメイン、という感じになっています。

前者がガン・アクション、後者がドロドロネトネトですね。

終盤では両方の要素が見事に合流して、(死人が大量に出つつも)物語的にはハッピーエンドを上手く迎える運びになりますので安心してお読みください。

 

 

見どころは色々ありますが、今回は暴力とPTSDの関係がけっこうリアルに描かれていたのがよかったですね。

被害者は当然悲惨で、加えて加害者サイドのPTSDも迫真味がありまして。

「ミゲル、マテオ、エステバン。みんなライム病か何かにかかったと思ってるが、実のところはストレス何とかだ。業(カルマ)みたいなもんだろ? ひでえことすれば、そのつけがあとでケツに噛みついてくる。ああ、くそ、そうなら自殺したほうがましかもな」

 

暴力の後悔から逃れるために暴力やドラッグや死に場所を求める男たち。

そういう男たちがゴロゴロいるロスの暗黒街。

そんな街で活躍せざるを得ない探偵IQ。

 

こういう物語設定の時点で、やはりこの作品はオリジナリティの高い面白さがあるなあと思います。

 

 

そんなネトネトした暗さとは別に、1作目から打って変わって恋心に揺れ動いて幼さをひけらかすアイゼイアさんがかわいい。とてもかわいい。

「ありがとう、アイゼイア。ほんとに感謝してる。電話してね、お願いよ?」

「ああ」アイゼイアはいった。そして、さよならもいわずに電話を切った。ばっちりだ。どじでまぬけなやつみたいな話しぶりでなかったのはたしかだ。

 

 

そんなアイゼイアさんをからかう相棒ドッドソンさんもかわいい。

「ちょこっとアドバイスをくれてやる。女には芝居しないことだ。等身大の自分でいろ。よくわからねえなら、わかったふりはするな。どのみち、向こうのほうがはるかにうわてだ。何をしたって、女はいずれこっちの本心をつかむ」 

 

今作ではドッドソンさんがきちんと人生の足場を固め始めていたり、アイゼイアさんに推理面で張り合おうとしたり、やはり要所要所でキッチリと活躍したりと、いっそうドッドソン愛を掻き立てられる内容になっているのが実にいいですね。

相棒もののバディが魅力的だとその作品の価値はハネ上がると思いますの。

 

 

他にも、ネタバレになるので詳しくは言えませんが、登場する敵役はみんな人間臭いクセがあって惹きつけられますし、更なる続編に繋がりそうな意味ありげ人物も登場しますし、二作目ながら完成度には既に信頼を置ける作家さんになっていますよジョー・イデさん。

 

「IQ3」もとくとく邦訳されて発売されますように。

ふだんアメリカドラマを観る習慣はないんですが、この作品が映像化されたら実写でも是非観てみたいなあ。音楽パートや食べものパートにリキが入っていると嬉しい。