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肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「アパート融資問題と高齢者の商取引問題」日経新聞  アパート融資で利益相反か 建築業者から顧客紹介料

 

日経新聞の昨日の記事「アパート融資で利益相反か」にかんたんしました。

 

アパート融資で利益相反か 建築業者から顧客紹介料 :日本経済新聞

アパート融資とは 相続税対策で需要急増、銀行が力 :日本経済新聞


私はこのアパート融資事案に関心を持っていて、ニュースなどを
趣味的に追いかけています。

というのも、年に数回、東北の被災地に行く用事があるのですが、
行くたびに現地の方々から世間話としてこの話を聞くものですから……。

(別に利害関係者ではありません。あくまで世間話です)

 

アパート融資問題とは。

クローズアップ現代とかで特集されたこともあるので
ご存知の方も多いと思うのですが、

アパート建築が止まらない ~人口減少社会でなぜ~ - NHK クローズアップ現代+

端的に言うと

「人口減なのにわざわざ借金してアパート建てて
 後から悔やむお年寄り増加問題」
であります。


えっ……
人口減っていくのにアパート経営なんて素人には難しいでしょう、
都心部とかターミナル駅前とかよっぽど場所がよけりゃともかく。

と、知らない方なら思ってしまうと思います。
私もそう思います。

しかもこのアパート、どう考えても採算が取れなさそうな
地方部でもいっぱい建ってるんですよね……。



なんでこんなことになるのか。

色んな事情が絡んではいるのですが……。


①'15年の相続税制改正で、小金持ちの人も課税対象になった。

  -相続税基礎控除の金額(遺産が以下基準内なら相続税対象外)が、
   それまでは5,000万+(1,000万×法定相続人)だったのが、
   '15年から3,000万+(600万×法定相続人)と厳しくなりました。


②農地とかを中途半端に持っている小金持ちのお年寄りが困る。
 (子どもに相続税負担を残したくないという思いやりの気持ち)


③大手不動産会社が小金持ちにアパート建設を提案する。
 「アパートを建てれば土地(遺産)の評価額が下がる、
  毎月家賃の現金収入が入ってくるから年金代わりにもなるんですよ!」


④「でも、アパート経営とかよう分からんし、入居者も埋まるかどうか……」と
 小金持ちが反論する。


⑤「安心してください! 当社が全部屋借りて又貸ししますから、
  家賃は全額保証させてもらいますよ!」と不動産会社が後押しする。


⑥「でも、アパート建てるお金がないし……」と小金持ちが反論する。


⑦「安心してください! ●●銀行が好条件で融資してくれますよ!
  しかも債務を抱けば遺産を更に圧縮できますよ!」と不動産会社が後押しする。


⑧「そっかあ、いい話だべなあ」と小金持ちが納得し、
 銀行からン千万の借金をし、アパートを建てる。
 (不動産会社の利益が確定)


⑨数年後、案の定部屋は埋まらない。
 そして小金持ちのところに訪れる不動産会社。

 「いや~経済情勢も変わったんで全部屋借りて又貸しして家賃保証という話、
  見直させてください。具体的には保証額は●●%オフということで」
 「そんな! 話が違うじゃないか!!」
 「は?(半ギレ) オーナーはあんただろ? あんたの経営努力不足を
  棚に上げて
弊社に文句言うんですか? うっわ、面の皮あっつ!」

  -契約書的には不動産会社の言い分が通ります


⑩元小金持ち(借金多数)「鬱だ死のう……」

 

以上です。


こう書くと不動産会社が邪悪なように思えますが、
真っ当な商取引ですから、一番悪いのは小金持ちさんです
うまい話に乗っかってしまうのは自己責任なのです。


また、登場人物を一旦小金持ちさんと不動産会社さんに絞りましたが、
実際は

 ・人口増を夢見て宅地許可を乱発する自治体

 ・融資成績をあげたい銀行

という方々もこの風潮にドライブをかけまくっています。

 


冒頭の日経新聞の記事では、銀行が不動産会社から手数料を受け取っていたことが
新たに判明しました。

銀行さんは小金持ちのお客さんをいっぱい抱えています。
大昔は預金してもらって融資に回してお金を稼いで、
ひと昔前は投資信託の回転売買で手数料を稼いで、
最近は生命保険を販売して手数料を稼いで……と、
銀行のビジネスモデルがどんどん厳しくなる中でもあの手この手で
収益を得ようとしてきたのですが。

小金持ちのお客様を不動産会社に紹介して手数料を受け取る、
一種の不動産営業の肩代わりまでしていたということです。


……これも、銀行さんに罪はありません。
まっとうな商取引です。金融ビッグバンの成果です。



地方自治体は、この期に及んでも「我が町だけは人口が増えていきます」という
能天気な中期計画をつくっていたりします。

アホか、と誰もが思っているんですが、

「我が町はどんどん人口減って衰退していきます」とは計画に書けませんから
(書いたら議会や住民から袋叩きにあってしまう)、
とりあえず建前上は人口増の計画をつくって、それに基づいて宅地造成に
手を貸したりしているのであります。

アホか、と誰もが思っているんですが、なかなか普通の人には流れを変えられません。
分かっちゃいるけどやめられない、というやつです。

 

以上、この事案、現代世相をたいへんよく表しているように思えます。

 

……東北の某被災地では、けっこうな勢いでこういうアパートが建ってるんですよね。

復興で働く人がたくさん来ている状況下でも、部屋の入居率は半分くらい。
工事関係者が去った後はどうなることやら。

絶対「禍根を残す」と地域住民がひそひそ言っています。

 

「息子や孫に相続税で迷惑をかけたくない」という善意から始まったはずが、
残ったのは「入居者が少ない赤字アパートと大借金」という笑えない結末。

もちろん都市部とかでは経営が順調なアパートオーナーも多いのでしょうが、
地方部過疎部のオーナーの未来は暗いでしょう。

自己責任だとは思いますが、気の毒と言えばあまりに気の毒です。

 

ただ、私見ですが、「小金持ち=高齢者が気の毒だ!」「税金で救済しよう!」
「お年寄りを食い物にする民間企業は悪だ! 糞だ!」みたいな流れには
なってもらいたくありません。

何度も言いますが、アパート建設をジャッジしたのはあくまで小金持ちです。

PCデポみたいな事例も、国が補償したりはしてません。
そもそも、老後にコンビニやらのフランチャイズオーナーになる、
長年の夢だった喫茶店やら古本屋やらを開業する、
大量の株や投信を買う、果ては馬券や宝くじを買う、
そうした行動とアパートオーナーになることはそう変わりませんから。

商取引はどこまでいっても自己責任であるべきだと思いますし、
税金で補償することになれば、それは現役世代に更に迷惑をかけることになるのです。

 

幸い、いまのところは金融庁が銀行の融資焦げ付きを警戒しているくらいで、
行政が本格的に被害者救済などを検討している様子はなさそうです。

 

だんだん、お年寄り相手の商売は難しくなってきています。

高額の売買時は家族が同席しなければならないとか、
大量の「分かりました」書類に押印しなければならないとか。

現役世代の働いている人には、さぞ面倒をかけていることでしょう。
コンプラコストもますます増えて、グローバルな競争で不利にしてしまって
いるのでしょう。


これは、高齢者の当事者からしても不自由が増えているということなのです。

「老い」は個人差がありますが、商売のルールはすべて弱者基準に染まっていく。
そうなると若い時から節制して、自己管理して、判断力を維持して……と
努力してきた人が馬鹿みたいじゃないですか。

十把一絡げにお年寄りは弱い! 救わねば! という論調になるのは、
はなはだ不都合です。



と、そんなことを偉そうに言っている私がいの一番にオレオレ詐欺
ひっかかったりするんでしょうね。
本当にすごい営業力や詐欺力をもっている人には誰も敵いませんし。


どうか悪賢い人に遭遇することなく余生を過ごせますように。
(最後は運頼み)