じゃりン子チエ12巻、遂にマサルが男を見せるのかとかんたんしかけましたが、まあ案の定な結末になってしまい気の毒でなりませんでした。
収録されているお話は次のとおりです。
- 宿題の旅
- 西萩少年少女探検隊
- 山へ川へ
- 男の旅立ち
- 男の生還
- いきなりの秋
- いきなりの秋―余話
- 餃子試食会①
- 餃子試食会②
- チエちゃんの読書の秋
- ペットショップへ走る者
- 餃子試食会へランニング
- 帰ってきたラーメンマン
- 再会のラーメン試食会
- いいことばかりは続かない
- スリの顔はどんな顔
- 季節はずれの花火
- 大晦日頭突き合戦
- テッちゃんのお正月
- オッちゃんそっくり アントニオそっくり
- 包装紙のアントニオ
- アントニオは何処に
- 風邪はひきたくないけれど
- 復讐の風邪袋
以下、ややネタバレを含みますのでご留意ください。
前半でチエちゃん&ヒラメペア、マサル&タカシペア、テツ、それぞれの行き当たりばったり旅の模様、
中盤でカルメラ兄弟の餃子&ラーメン修行の成果、
後半でアントニオの剥製誘拐騒動、
等々が収録されている巻になっております。
前半の旅は「普段と違うことをしよう」という宿題を受けて、チエちゃんやマサルが当てのない旅に行くという筋で、なぜか両組(&テツ)が同じ生駒の山奥に辿りついてしまう感じです。
チエちゃんとヒラメちゃんはパッと来て、飽きたらパッと帰ろうとする賢明さを見せるのですけれども、マサルの方は母離れするチャンスだと思って無謀にも山奥へどんどん進んでいくんですね。
で、なんやかんやありつつ、
最終的には謎の第六感で助けに現れた母親に助けられてしまうという、マサルにとって極めて残酷な結末で終わってしまうのです。
こういう、子どものプライドがズタズタになっている横で大人たちが何も気づかずケタケタ笑っている様が無性にリアルで、たまらない気分になりますね。
ちくしょうなんて漫画なんだ、スゲェわ。
以下、各人物の名セリフです。
チエちゃん&ヒラメ
「だいたいどこにも商店街がないやん」
「こぉゆうのウチらに向いてへんのかな」
「帰ろか」
始発で生駒の山奥まで旅に来ておきながら、人っけのなさに寂しくなって即座に帰ろうと言い出すチエちゃん。
「どこにも商店街がない」というのが騒がしい下町で育った子らしさが出まくっていて、写実的だなあと思います。
マサル
来るんや……
見送ったりせえへんとゆうたのにやっぱり来るんや
かくれて見送りに来てただけでも オレショックやのに
そやのにやっぱり最後は見送りに来てたことオレに知らすんや
冒険旅行出発時、見送りに来ないと約束していた母親が現れて、ショックを受けるマサル。この旅行の結末で、彼はいっそう酷いショックを受けることになる訳ですが……。
マサルはだいぶ痛い子ではありますけど、将来、彼が頭のいい学校とかに入ることができて、周りもみんな頭のいい子になってしまった時が素直に心配ですね。
チエちゃんたち西萩周辺住民に揉まれて育った経験が、未来の彼の糧になればいいなと思います。
テツ
秋か……
ふう……
ドライなテッちゃんもセンチになっちゃうぜ
秋の気配にやられて唐突に頭がおかしくなるテツ。
このセリフを聞いた小鉄とアントニオジュニアが屋根から落ちてるのがかわいい。
ヨシ江はん
竹本君……
若かりし時代、テツと付き合っていた頃の姿が回想シーンで登場しました。
チエちゃんがそのままお姉さんになったみたいな容姿なのがいいんですが、それ以上にその姿を思い出してしまっているのがテツというのがなおいいんです。
お好み焼屋のオッちゃん&アントニオジュニア
「カナヅチやったら丁度ええわい
底まで行く手間はぶけるやないかー」
「手ぶらで上がって来るな~」
「おまえの顔なんか見たないわい」
アントニオの剥製を沈めたひょうたん池に下手人を沈める飼い主&息子。
たいへんバイオレンスでめっちゃ笑えます。
小鉄
いつも俗世間の大人と泥まみれの戦いを続けてるチエちゃんが
今日図書館に行って本を借りて来たんやど
こんなことは滅多にないことやないか
ワシはそんなチエちゃんをここで静かに見守ってあげたいんや
いつも優しくチエちゃんを見守っている小鉄。
猫だけど登場キャラの中でいちばん大人。
チエちゃんにはさっぱり伝わっていませんが、そのミスコミュニケーションっぷりもかわいいのです。
マサルの不憫さに胸を打たれる巻ですが、その後のマサルはおおむねいつも通りなので、読者も母親みたいに過干渉になる必要はないのでしょう。
いつか何かのはずみでマサルが男前に育ってくれればいいなと思います。
親との距離感に悩む子どもに、親が気づいてあげることができますように。
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