三好長慶さん生誕500年……ということで、気がつけば大阪府で3つも三好長慶さんの展示が催されていてかんたんいたしました。
意を決して3地点をいっぺんに回ってみましたが、3地点制覇なんてロマサガ/ミンサガ以来の挑戦で楽しかったですわ。
大東市立歴史民俗資料館「三好長慶と大東市の中世―飯盛城はそのとき―」
一か所目はオールドキャッスル飯盛城を擁する大東市。
いつの間にか三好長慶さんの漫画まで発売されていてびっくりです。
漫画版の三好長慶さんはまっとうに伝記漫画の主人公っぽくて素晴らしい仕上がり。
供を連れずに一人でぷらぷら出歩いている長慶さんの解像度が個人的に好き。
爽やかな木沢長政さんや風流な安見宗房さんの登場もいとおしい。
三箇頼照・頼連親子がこんなに登場する漫画も珍しいと思います。
漫画だけでなく、オリジナルの幟もいいデザイン。
江戸時代の浮世絵(元ネタ不明)由来の鹿角前立兜も、こうして見ると悪くない、むしろ渋くて格好いい。どなたのデザインか存じませんがイケメンに描いていただいてありがたいですね。
「按成一剣 定天下」という長慶さん肖像画の賛から引用した言葉のチョイスも好み。
3か所回った中では、大東市が一番「三好長慶&飯盛城を通じて地元愛をはぐくむ」ことに力を入れておられて、その姿勢や成果物がとても好きです。
愛されてこそ、ですよね。
展示のなかでは、
- 3 東大寺刻印平瓦。備前産。昔の瀬戸内海~深野池~大和の流通ルートが実感できます。
- 13 半分に割れた唐津焼のお皿が良品。戦国末期か江戸時代の品ですかね?
- 52 昭和初期の飯盛山上遊園地のパンフでも長慶さんのことがけっこう褒められていて地味に嬉しい。
あたりが意外な楽しさでした。
また、図録掲載の「三好長慶の築城―飯盛城を中心に―」(中井均さん)が、長慶さんの歴代居城の特色を端的に述べられていて素晴らしいですね。
城郭ファンにはぜひ読んでいただきたい。石垣と石積みの違い、長慶さんが穴太衆を動員していた可能性等の論考も興味深いですよ。
また、長慶さんの山上居城の特殊性について触れられている中で、「安土城の伝羽柴秀吉邸、信長居館だったんじゃないかな」という独自のご意見が触れられていますが、詳しく話を伺ってみたいものです。
あと、資料館には飯盛山の野鳥の写真展示があって、トラツグミの写真がキュートでした。野鳥いいですよね。
せっかく大東市まで来たので、野崎観音(慈眼寺)にもお参りしてみましたよ。
うまく言えませんが大阪の山寺っぽくてものすごく好きな雰囲気です。
写真撮ってませんが七五三ポスターもおしゃれで素敵。
屋形船で野崎参り、そんな風流な旅をしてみたいものですね。
高槻市立しろあと歴史館「戦国武将三好長慶―生涯と人々―」
続いては高槻市の展示です。
特徴は「密度の濃さ」。
限られた展示スペースに、三好家や畿内関係者の事績をぎゅっと詰め込んでいるので、歴史好きほど満足度が高い展示になっているのではないでしょうか。
私が行ったタイミングでは、3地点のなかで一番来場者が多く、また、学生風の若い方が熱心に観てはる姿が目立ちましたね。
高槻って関西の各大学からアクセスが良いので、史学を学んでいる人が三好家に注目しているのかもしれない。いいことだ。
密度高い展示のなかでどれがよかったと言うのは難しいのですが、
- 25 長慶さんから京都曇華院への書状。尼門跡宛なのでかな文字。そっか、曇華院(皇室周辺の女性)とも付き合いがあったんだなあと感慨があります。
- 29 藤田河内守幸綱書状。兵庫の清水寺への書状で、「松山重治さんが五十三の首級を上げた」等、三好方の優勢を喧伝するもの。三好家の遠国外交という面で重要な書状ですが、それよりも松山重治さんの武功に目が向いて仕方ないっす。もちろん「松山重治(率いる部隊)」なんでしょうが、書面に「率いる部隊」とは書いていないので「一人で五十三人倒した」と大胆な解釈する人が出てきて戦国無双プレイアブルキャラクター化とかに繋がったらいいな。
- 37 六角承禎書状。教興寺の戦い直前に畠山高政さんに送ったもの。サイズが小さい! 密書の可能性も指摘されていて、さもありなんという感じがします。
- 44 松永久秀書状。久秀さん、口が悪い! そういうとこ!
- 60 松山重治書状。八尾の真願寺に対して「長慶さんの墓所だから荒らしちゃダメ」という理由で保護を伝えた私のなかで有名な文書。そういうとこ!
あたりが心に残りましたね。
また、図録の序論(川元奈々さん)が名文で、展示品そのものとは別にこの文章も褒め称えたいなという気持ちになりました。
短い文章のなかで三好長慶さんの評価や研究の流れを的確にまとめた上で、当展示で心がけたもの、キャパ不足等の理由で視点から除かざるを得なかったものと、ご担当者としてのお仕事に対する思いのたけ、また、展示対象である三好家への愛情、がひしひしと伝わってきます。
正直この文章ひとつで、高槻市立しろあと歴史館へのリスペクトが何段階も高まった感じがする。みんな図録を買おう!
せっかく高槻に来たので、和田惟政さんの墓所がある伊勢寺に寄ってみました。
石畳がスタイリッシュですね。
伊勢寺さん、本当に三好義興さん墓所(霊松寺)から近くて驚きました。
大阪府高槻市「霊松寺と三好義興墓(カンカン石)」&「芥川商店街 肉のマルヨシのコロッケ」 - 肝胆ブログ
それにしても伊勢寺の伊勢って伊勢さんのことだったのか。
更にせっかくなので、茨木市の和田惟政さん敗死の地にも寄ってみましたよ。
和田惟政さんの死が荒木村重さんや中川清秀さんの成長を招いた面もあり、人ひとりの死がもたらす影響というのは大きいものです。
三好義興さんも和田惟政さんも、いまは冥府で静かに眠ってはるといいですね。
堺市博物館「堺と武将 三好一族の足跡」
3地点制覇、最後に待つ試練です。
堺市博物館はもともとの規模が大きいので時間に余裕をもって参りましょう。
常設展を見てから三好展に移る構成になってまして、そもそもの常設展が古墳時代、堺の中世と見どころが多いんですよね。
久しぶりに堺の鉄砲(江戸時代製)をまじまじ見ましたがロマンのある美しさで見とれてしまいました。刀剣もいいけど火縄銃もいいよね。
展示は、高槻同様に長慶さん周辺を様々取り上げていただいていますが、個人的には連歌関係と花押関係に目を引かれました。
- 15 三好宗三さんによる連歌会の記録。長慶さんの連歌デビュー会でもあります。宗三さん、連歌もやっている……本当にすごい人。長慶さんの連歌、実休さんの茶の湯は、宗三さんの人脈継承が急務という面もあったんじゃないかなあ。
- 17 宗養さんと長慶さん二人で百韻読んだ記録。霊元天皇が書写されたらしい。すごいやん。
- 20 冬康連歌集。安宅冬康さん自筆の選句集……実物! 宮内庁書陵部、三好関係のいいものたくさん持ってはるなあ。
- 45,47 細川「清」(氏綱さん)。
- 53 瓦林長親さんと寺町通昭さんによる引接寺への文書。こういうのを見ると、長慶さんってやっぱり偉かったんやなと分かりやすく感じますね。
- 75 三好義興さんの書状。実休さんの討死が口惜しくて仕方ない。熱い!
- 77-78 十河一存さんと九条家のかかわりを示す文書。一存さんがちゃんと九条家のために働いてはることが実感できます。
- 90 絵入太閤記、松山重治さんについて記す私のなかで有名な文章の実物!
- 三好一族の花押がそれぞれ個性的。
書きやすそうな元長さん。
真面目そうな長慶さん。
おしゃれ上級者な実休さん。
はっちゃけてる冬康さん。
見当たらない一存さん。
新時代を生きる義興さん。
実直な長逸さん。
かわいい宗渭さん。
意識が高い康長さん。
(個人の感想です)
また、論考「三好長慶と足利義維・義栄親子」(天野忠幸さん)で、三好実休さんによる足利義栄さん上洛支援説が出てきていてこんな史料見つかったんやと驚かされたり。
「三好一族の茶会と名物茶道具」(矢野環さん)が、茶会・茶道具所持者の記録が分かりやすくまとめられていてお茶関係に興味がある人には素晴らしい資料になっていたりと、図録の充実っぷりもイケてますね。
ほか、出口のところに「三好長慶クイズ(パソコンで5問×2コース)」があったので、10問オール正解キメてやりました。
こういう子ども向けのコンテンツ好きよ。
せっかく百舌鳥まで来たので、仁徳天皇領にも寄りました。
カモがかわいい。
木を伐採して埴輪と石積みをアピールする本来の古墳も格好いいですけど、現代の木に覆われた古墳もそれはそれでいいですよね。
博物館の古墳コーナーで、マグネットパワーがどうたら言っている方がいらしゃいましたが、考えることはみんな一緒だなあ。
以上、大阪府秋の三好祭でした。
大河ドラマ化を目指した運動も盛んなようで、各地で三好愛が高まっているなら何よりですね。
堺市博物館で見かけた大河ドラマ化運動ビラに「2025年の万博盛り上げにぴったり」と書いてあってなるほどなあと感心しましたわ。
何はともあれ今年が生誕500年ですから、没後500年になる向こう40年強の間には、大河ドラマになったり信長の野望の能力値がもうちょい上がったりいたしますように。