肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「スーパーロボット大戦MXポータブル 2周目」バンプレスト

 

 

スーパーロボット大戦MXポータブルの2周目をクリアしました。
2周目になってもけっこう時間がかかってかんたんしました。

 

www.suparobo.jp

 

1周目⇒「スーパーロボット大戦MXポータブル」バンプレスト - 肝胆ブログ

 


こちらのゲーム、2周目以降はクリア特典がついていて、
前周までに稼いだ資金やPP(各キャラを強化するためのポイント)や
強化パーツを一部引き継ぐことができるのです。


とりわけ資金と強化パーツの恩恵は大きく、2周目以降の難易度を
大きく下げてくれます。
いきなりお気に入り機体フル改造とか、ハロ装備とかできますからね。


PPの方は全員分のPPを合算して再度全員に配分することになりますので、
2周目だとボーナスはひとり100ポイント(アタッカー分)程度と
そこまでの無双を可能とするものではありません。

キャラ単位引継ぎだったら無敵の甲児くんとかつくりたかったです。

 

 

2周目はガンダム系+1周目に使わなかった人たちということで、
以下の方々を中心に使いました。

最終マップ出撃メンバー

 電童(銀河・北斗)
 セルブースターバルハラ(ベガ・スバル)
 凰牙(アルテア)
 ブラックサレナ(アキト)
 ドラグナー1型カスタム(ケーン
 ドラグナー2型カスタム(タップ)
 ドググナー3型(ライト)
 ファルゲン・マッフ(マイヨ)
 ディジェSE-R(カミーユ
 フルアーマー百式改(クワトロ)
 ΖΖガンダムジュドー
 νガンダムアムロ
 マジンガーZ(甲児)
 天のゼオライマー(マサト・美久)
 ダイモス(一矢)
 ガルバーFXⅡ(京四郎・ナナ)
 ライディーン(洸)
 ブルーガー(マリ)
   +
 リアル系主人公
   +
 真聖ラーゼフォン(真聖綾人)

 

それぞれ使い勝手などの感想を書きますと。


電童の皆様はよい若者&大人たちという感じで好感度の高い面々でした。
シナリオの主軸ですし、決戦シナリオで挿入されるOver the Rainbowという
曲もロボットアニメらしい素敵なBGMでした。
機会があれば原作アニメも観てみたいです。

但し、電童は戦力的にはイマイチでした。
装甲も運動性も攻撃力も中途半端なので、精神コマンドや修理抜きでの
運用は二線級という印象です。
フェニックスエールを使えるようになってようやく他の主人公級並……。
1周目ならクロックマネージャー(敵行動不能化)をもっと活用できた気が
しますけど、2周目なら動きを止める前に殴り殺した方が早いので。

ベガさんは使いやすいです。
1周目ならバイク運用していたと思いますが、2周目はカミーユドラグナー
斬り込み隊長を担うので補給機運用です。
統率技能があるので補給機でも攻撃力が出ます。
運動性を改造すれば回避力も高く、戦力的にも渋い活躍でした。

アルテア兄上は格好よすぎました。
初見メンバーの中で個人的に一番気に入ったのがこの方です。
凰牙・フェニックスエールは武器がひとつだけ、気力130で使用可能
一見正気ではない設定なのですが、それでも好んで使っていました。
援護技能&エネルギー回復があるのでラスボスの前に置いて大活躍です。

 

ナデシコも原作未視聴です。
なんかイメージよりも悲壮感のあるシナリオっぽいですね。

ラーゼフォンが抜けるタイミングで援軍に来てくれたので、
そのままブラックサレナを使ってみました。
すげえ強かったです。
敵の攻撃は当たらず、反撃で2万近いダメージをばら撒いてくれます。

 

ドラグナーの皆様はキャラ的にも能力的にも大活躍でした。

強制出撃が多いので、育てておくと攻略が格段に楽になります。

合体攻撃が異常に強いですね。
ダイナミック勢やGガンダム勢の立場がないです。
終盤で仲間になるマイヨさんなんて明らかにバランスブレイカ―です。
同じような立ち位置のクワトロさんの立場がないです。

そんな中、しばしば被弾するタップさんがチャーミングでした。

 

ガンダムはいつものロボット大戦という感じですが、
ドラグナーナデシコ勢に若干喰われている印象ですね。
普通に使うなら彼らの方が強いと思います。

ただ、カミーユが乗ってきてくれた隠し機体「ディジェSE-R」だけは
とんでもない強さです。
言うなればブラックサレナのエネルギー無消費型です。
私の知っているディジェSE-Rと違う。
中身ビルバインなんじゃないかと疑ってしまいます。
機体入手は手間ですが、労力に見合う戦力だと思います。

 

甲児君は初め使うつもりはなかったんですけど、
ベガ星連合軍との決戦シナリオ出撃メンバーで育てていたのが
ライディーンだけでしたので急遽育成いたしました。
このゲーム、シナリオ分岐による出撃キャラクター縛り対策が地味に重要です。
合体攻撃がなくてもマジンガーは安定して強うございました。

 

ゼオライマーは機体デザインがいいですね。
八卦ロボがそれぞれ格好いい。

ゼオライマーのメイオウ攻撃(MAP兵器)は確かに便利でしたが、
よく話に聞くほどバランスブレイカ―ではないと思いました。
高攻撃力・分身・バリア・エネルギー回復・覚醒と万能感はありますけど、
過信して敵陣に放り込むとけっこう冷や冷やするダメージを喰らいます。
といっても充分エース級なんですけどね。

 

ダイモスは戦闘アニメの作画がよかったです。
あえて昔ながらのカクカクデザインを強調するポーズ・ムーブ。
絶対そんな角度で関節動かへんやろ……というデザインを
無理やりグリグリ動かしているのが楽しい。

この人も過信しているとけっこうダメージを受けますので、
単騎特攻には向きません。
役割はシンプルにボス殺しです。
それまでは双竜剣で地道に気力を溜めましょう。

ガルバーFXⅡは意外な活躍でした。
運動性を強化してみたら避ける避ける。
修理補給に邁進しつつ、局面によっては雑魚殺しの遊軍にも。
京四郎さんのキャラクターも渋くていいですね。

 

ライディーンは便利でした。
援護&ゴッドボイス(MAP兵器)が超便利。
BGMが「神と悪魔」なのもいい。
ぶつかる~ぶつかる~♪
カットインなどで洸君の美少年ぶりが強調されてるのもよかったです。

ブルーガーは優秀なサポート機でした。
各精神コマンドの消費量が少なめに設定されているのがありがたい。
原作終了後なので仕方ないんですけど、神宮寺さんとの二人乗りなら
なおよかったのですが。
無念、ミスターはプル・プルツーほどの人気は得られていない模様。

 

主人公は地味ながらいい人たちです。
リアル系の機体も地味ながら良質でした。

地味なのがいいんですよね。
シナリオもGガンダムをもう少し優等生にした感じですし。

 


そしてラーゼフォン
能力的にはまあ強い、というところです。
終盤シナリオでは離脱してたりするので、育てるかどうかは好みですね。

シナリオ面の中核を担っているのですが、
用語や設定が難解すぎて困った方も多いと思います。

私も1周目は訳が分からなくて、終盤でいきなり遙さんがサカり始めるので
「なんやこのおばはん……」とドン引きしてしまいました。
どうもこのMX、遙さんとミサトさんとベガさんの妙齢トリオが
フィーチャーされております。
ベガさんは健全なるも、他二人は色々こじらせている模様で。

ラーゼフォン(映画)を観てみたりして一応事情は分かったんですけど……
17歳男性と29歳女性の熱愛……まではまあいいとして、
29歳側には年齢相応の成熟を求めたいところです。

一方で、BGMと「ブルーフレンド」は素晴らしかったと思うんです。
リアルタイムで観ていたらもっと嵌まっていたかもしれません。
みっちり観たら良作で、表面だけチラ観したらけったいな作品という印象です。

 


さて、これだけの強メンバーを集めて周回ボーナスも得て、
改造しまくり、全員アタッカー&リベンジ装備、強化パーツ使い放題、
難易度楽々でプレイしてみましたが、クリアに3箇月近くもかかってしまいました。

ロード時間、やたら多い敵HP、やたら長いシナリオの壁は厚かったようです。


でも、苦ではなかったですね。
やっぱり好きなロボットが質のいいBGMに乗って格好よく動いているだけで
プレイヤーは楽しいものです。


またそのうち3周目をやるかもしれません。

 


そのためにも、近所のTUTAYAに電童が入荷されますように。

 

信長の野望 大志「父親にしたい武将アンケート結果」(コーエーテクモ)の感想

 

 

信長の野望 大志の特設サイト内で行われていたアンケート、
父親にしたい武将」の結果にかんたんしました。

 

www.gamecity.ne.jp

 

父の日に合わせたアンケートのようです。
なかなか珍しいお題ですね。

 

結果は以下のとおりであります。

 

1位  真田昌幸
2位  毛利元就
3位  上杉謙信
4位  北条氏康
5位  織田信長

6位  黒田官兵衛
7位  武田信玄
8位  徳川家康
9位  竹中半兵衛
10位 大谷吉継

11位 羽柴秀吉
12位 羽柴秀長
13位 立花道雪
14位 島津義弘
15位 小早川隆景

16位 高橋紹運
17位 立花宗茂
18位 伊達輝宗
19位 真田信幸
20位 前田利家
20位 伊達政宗

21位 明智光秀
22位 島津日新斎
23位 真田幸村
24位 武田信繁
25位 蒲生氏郷

26位 本田忠勝
27位 山県昌景
28位 最上義光
29位 長宗我部元親
30位 藤堂高虎

31位 浅井長政
32位 片倉小十郎
32位 島津貴久
32位 細川幽斎
33位 真田幸隆
34位 直江兼続
35位 今川義元

36位 石田三成
37位 尼子経久
38位 足利義輝
39位 斎藤道三
40位 朝倉宗滴

41位 上杉景勝
42位 北条氏綱
43位 毛利隆元
44位 山中鹿之介
44位 前田慶次
45位 三好長慶
45位 加藤清正

46位 松永久秀
46位 宇喜多直家
47位 長野業正
48位 今川氏真
49位 織田信忠
50位 武田勝頼

 

こういう戦国武将人気アンケート企画のようなものは
信長・信玄・謙信・政宗・幸村あたりが上位5人を取る印象がありますが、
父親にしたい」というお題になったことで回答がばらけたようです。


1位真田昌幸、2位毛利元就、4位北条氏康は納得の結果ですね。
皆さんお子様もたいへん優秀で、立派な父親ぶりであります。


3位上杉謙信は意外でした。
義の武将かつ義父と、義尽くしのお方です。
“義父”といえば養子の親という意味の他に、配偶者の父親という意味もあります。
結婚相手の父親上杉謙信だったら痺れますね。
塩だけを肴にえんえん飲まされそうです。


逆に、1位常連の信長が5位というのも意外でした。
選出理由に「身内に優しい」と複数書かれていて、
信長のイメージが少し変わってきたのか、
あるいは信長の息子たちのイメージが変わっていないのか、
なかなか考えさせられる結果だと思います。



6位以下も知名度に相当程度は比例しつつ、
人格者イメージのある方々が順位を上げている印象です。


武田信玄7位、伊達政宗20位というのはおもしろいですね。
それぞれ固定ファンが相当数いるはずなのですが、
父親にするのは嫌ということでしょうか。
分かるような気もしますが、お父様も色々苦労してはるんですよ。


秀吉11位
平成に入ってから、じりじりと太閤さん人気が下がっている気がします。
残虐超人みたいなイメージに変わってきているのかもしれません……。
そんな中、弟の秀長さん12位が隣に寄り添ってくれているのは癒しですね。


23位に真田幸村
昌幸さんの息子というイメージが強くて、父親キャラな感じがしないのかも。
(これは伊達政宗もかな)
戦前の講談とかだと大助さんとの父子愛が強調されていたんですけどね。
楠木正成・正行父子の姿を仮託されたかのような幸村さんの姿は
いまどき流行らないのかもしれません……。


46位の松永久秀さんが45位の殿(三好長慶)にぴったりと従い、
一方で同率46位に宇喜多直家さんがいるのは実におもしろいです。
忠臣説と梟雄説が矛盾せずに成り立っているようで味わい深い。
私が知っている創作もので、久秀が一番楽しそうに父親をやっているのが
漫画ゴラクの「戦国えっち」というのがアレですけど。
(息子の久通くんと女の子を取りあうくっだらないエロ漫画です)

 

伊達輝宗さん(18位)、島津日新斎さん(22位)、島津貴久さん(32位)、
北条氏綱さん(42位)と、日頃こういうアンケートに出てこない方々が
入っているのもいいですね。
立花道雪さん(13位)・高橋紹運さん(16位)も本人人気に加えて
義父・父要素が織りこまれているのでしょう。

こうした方々はアンケートの趣旨にとても合っていると思います。
そのうち織田信秀さんや三好元長さんも入るようになってきたらいいですね。

 

 

以上、素人っぽい感想でした。

母にしたい人アンケートをしたらねねさんと寿桂尼さんがぶっちぎり、
続いて妙久さんとかになるんでしょうか。

個人的には母(あるいは妻)としての江姫なんて色んな意味で
再評価されてもいいように思います。
近年になって株が更に下がったという珍しい方ですし。

 

 

大志、楽しみです。

前半シナリオは三好長慶さんが無双してくださるバランスでありますように。

AIにこだわるということですが、今作こそ“自滅”型AIを積まれませんように。

1560年代の長慶さん、よく勘違いされますけど引き籠ってませんからね。
むしろ河内・大和を侵略してますからね。
近江・伊賀・紀伊・若狭にもちょっかい出してますからね。
晩年こそ旧細川勢力圏から飛び出して一番オラついていた時期なんですよ。

その辺りの反映をどうかひとつ……。

本能寺シナリオの織田家のように、イベント・寿命なしだったら最強、
イベントで死亡・分裂するから他家は安心、という感じにいつか……。

 

 

 

「白竜HADOU 暴力市場編」作 天王寺大先生/劇画 渡辺みちお先生(週刊漫画ゴラク)

 

 

白竜の暴力市場編(豊波市場編)にかんたんしました。

 

www.nihonbungeisha.co.jp

 

 

週刊漫画ゴラクの看板漫画、白竜。

原発編の途中に東日本大震災が起こって連載が中断したり
ドッドッドという独特な擬音が物議を醸したりと、
ごく一部ではメジャーなマイナー漫画であります。


東京の六本木を根城とするヤクザ漫画ですが、
ヤクザ同士の抗争というよりはゴルゴ13のヤクザ版、
パーフェクトヤクザ白竜さんが社会問題に切り込んでいく、
悪を悪が退治していくような内容です。

ミナミの帝王同様、おっさん読者向けの社会勉強漫画と言えましょう。

白いスーツを着て美術館や図書館やピアノバーを廻り
困っている上司に「この一件、私が仕切らせていただきます」と言えば
お手軽に白竜さんごっこができますよ。

 


今週で豊波市場編が完結しました。
(けっして豊洲市場ではありません)


「咲山都知事」と「日本計画会議」が企む豊波市場移転。

汚染土壌地帯にわざわざ新市場を移転させようとする
その真意は何か――!?


というお話です。
どっかで聞いたような内容ですね。

以下、ネタバレを書きます。

 

 

 

 

 

 

豊波市場移転の真の狙いは「永遠に続く汚染処理ビジネス構築」でした。

すなわち、どれだけ大きなハコものをつくっても、その支出は1回限りだと。
それでは利権を貪る系の人たちにとっては旨味が少ないのだと。

そこで、あえて土壌に盛り土をせず、かつ汚染情報をリークすることで、
都民の不安解消に向けた土壌処理を“し続ける”のだと。

安全と安心は違う、アホな都民は安心のためならなんぼ税金を投入しても
喜ぶんだぜイエーイ! という壮大な構想でございました。


邪悪ですね。
それに東京の人はそこまでアホではないと思います。


で、白竜さんがその真相を調べ上げ、
咲山都知事を脅迫して口止め料に100億円を巻き上げ、
なおかつ真相をちゃっかりマスコミにリークしてしまうというオチでございました。

「白竜! お おめえがこの情報を……?」
「咲山との約束通り私は一切 口を開いておりません」
「そうかい……」
「但し」
「但し?」
「どこかから情報が漏れることまでは責任を持てません」
「お おめー それは詭弁じゃ……」
「詭弁でけっこうです
 私は……ヤクザですので!


ちゃんちゃん。

 

32話も使ったのでテンポは間延び気味でしたけど、
ラスト3話くらいは実に白竜らしい展開で楽しかったです。

何より、諸事情による掲載中止がなくてよかった(笑)。


先週今週と2週続けて

「白竜さん……お願い……今夜だけ……
 今夜だけは私をジャーナリストじゃなく女に戻らせて!!」

というサービスシーンを入れてきたのは笑いましたが。
こんなところもゴルゴっぽいですね。

 



今週の週刊漫画ゴラクはいろいろ面白かったです。


「戦国えっち」

松永久秀が主役のしょうもないエロ漫画であります。
梟雄でも忠臣でもない、ただのエロジジイな久秀。

漫画としては特に見るべきところはありませんけど、
こんな楽しそうな松永久秀もいいもんだとは思います。

 


ミナミの帝王 浪速のデリヘル王編」

これは傑作シリーズになりそうな予感があります……!
完結したらまたまとめて感想を書くかもしれません。

 


「激マン キューティーハニー編」

マジンガー映画の件でギレルモ監督とハグしている裏で、
こんなおちゃらけ懐古漫画を描いていることを知る人は少ない。

パンサークローがメタ台詞を連発していて笑いました。

「あばしり一家だ! 全員で出かけるようだ……!」
「我々のキューティーハニーのマンガとは関係無いようだ!」

「悪役なめんな!?」
「レギュラーだからってイケメンぶりやがって!?」

近年の永井豪漫画は台詞の最後に“!?”がつくのが特徴ですね。
独特の味わいがあって好きです。

久しぶりにバイオレンスジャックが出てきたのも嬉しい。

叶うならば、早乙女門土と身堂竜馬の物語をまた見れますように。
可能性は低いでしょうけど。

 

 

以上、白竜を中心とした今週の週刊漫画ゴラク感想でした。

 

「羊羹」永井荷風さん(青空文庫)

 

青空文庫収録の永井荷風さん「羊羹」にかんたんしました。

 

永井荷風 羊羹

 

 

永井荷風さん。

花柳界など都会の風俗を洒脱な文章に表したことで名高いお方ですね。
個人的には、晩年の毎日同じ定食屋さんでカツ丼を食べていたという
エピソードになぜだか惹かれます。

 

こちらの「羊羹」は、第二次大戦直後の時代を舞台にした短編です。
短いのですぐに読めますよ。


以下、ネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

あらすじ。


新太郎さんという料理人見習いがおりました。

戦争を終えて東京に戻ってきてみれば、一面焼け野原で
修行していた料理店の影も形もありません。

とりあえず商売替えして運送会社に勤めることにしました。

復興期ですので仕事はなんぼでもあったため、
あっという間に羽振りがよくなりました。

金に困らないことを家族や友達に見せびらかして得意満面です。


偶然、昔働いていた料理店の旦那様の避難先を知りました。

貴重なタバコを土産に、成り上がった自分の姿をいっちょ見せたろという
気持ちで訪ねてみたところ。

旦那様は昔と変わらず裕福な暮らしをしていて、
ビールやら白米やら何皿ものおかずやらが出てくるほどの
歓待を受けました。

……タバコを差し出して自慢するどころではありません。


なんかムカついて、帰り道、一般人にはなかなか手が出せない
「林檎」や「羊羹」を買ってみました。

 

以上。

 

 

主人公新太郎さんの、ひとりで調子に乗って、ひとりで盛り下がって、
ひとりでしぶとく格好つけてる描写がいいんですよね……

愛すべき小人物ぶり。

 

文学にもいろいろありますが、こういう「あるある」という卑小心理を
写実的に切り取っているところに、荷風の視点の鋭さ、筆の冴えを感じます。



短編でも、やはり荷風の文章は洒脱です。
ぐだぐだこまごまという解説なんてしないんです。

戰後の世の中は新聞や雜誌の論説や報道で見るほど窮迫してはゐないのだ。ブルジヨワの階級はまだ全く破滅の瀬戸際まで追込められてしまつたのではない。古い社會の古い組織は少しも破壞されてはゐないのだ。以前樂にくらしてゐた人達は今でもやつぱり困らずに樂にくらしてゐるのだ、と思ふと、新太郎は自分の現在がそれほど得意がるにも及ばないもののやうな氣がして來て、自分ながら譯の分らない不滿な心持が次第に烈しくなつて來る。

社会構造の歪みを確実に捉えながら、この記述以上に話を引っ張らないところ。
ちょっと真理を突いたことを言ってみて、サッと話を仕舞う。
実にお洒落だと思います。


私はぐだぐだこまごまと長っちりな文章を書いてしまう癖がありますので、
手本としなければいけません……。

 


近頃では「女帝」「女帝花舞」などの原作者である倉科遼さんが
荷風になりたい」という漫画を出していたりも。

「女帝」も「女帝花舞」もドロドロした夜の世界漫画でしたけど、
両作とも最後は家族愛に満ちたハッピーエンドだったと記憶しています。
幸せな姿を必要以上に描写しない構成で、すっきりさっぱりと。

言われてみれば、その辺の塩梅は永井荷風リスペクトなんですかね。



潔癖な現代世相だからこそ、荷風の味わいは輝きを増すように感じます。

永井荷風文学が次の世代にも読み継がれていきますように。
夜の世界で働く人の暇つぶしにもいいと思います。

 

 

 

 

「高安関の四股名」と「高安城」

 

 

相撲関係のニュースで「高安城」に触れられていてかんたんしました。

 

headlines.yahoo.co.jp

 

 

高安関が大関昇進後も「本名」四股名のままでいこうとしていること、
それは相撲界では珍しいこと(眉をひそめる人もいるということ)、
“高安”が天智天皇時代まで遡る由緒ある名前であることを紹介しています。

 

相撲界の本名四股名忌避もなかなか興味深い習慣であります。

戦国時代頃までは本名四股名が中心だったようで、
江戸時代頃から本名以外の四股名を名乗るようになったみたいですね。

宗教とかもそうですが、文化方面における“伝統”ルールは
江戸時代発祥のものが多い印象です。

 


さて、高安城です。


時は7世紀。
日本は朝鮮半島まで殴りこんでいって、白村江の戦いで唐・新羅
大敗を喫しました。

それで、唐・新羅が逆に日本まで攻め込んでくるかもしれないということで、
九州に防人を置いたり、西日本各地に古代山城を築いたりした訳です。


その古代山城シリーズで、畿内最後の砦がこの高安城
詳細不明ですが、場所は大阪と奈良の境目と推定されています。
ちょうど木沢長政&松永久秀で有名な信貴山城の近くですね。



外国勢の侵略を警戒して城を構築。
これは日本の歴史の中でも相当珍しい事例です。

元寇でも第2次大戦でも、九州や沖縄等の防衛線整備はともかく、
鎌倉や東京近辺に城や要塞を築いたりはしていないような……。

(私が知らないだけかもしれませんが)

 

心底、“倭”という国が消滅してしまうかもしれないという
危機感があったのでしょう。

当時は世界地図が明らかになっていない時代ですから、
感覚としては全世界を敵に回したようなものだったはずです。


古代過ぎて詳細はよく分かりませんが、
当時の人々がそこまでのリスクを負って百済救出に向かった
動機が気になりますね。

同盟国復興に向けた純粋な“義”なのか。
朝鮮半島権益が莫大だったのか。
無謀なる蛮勇だったのか。

白村江敗戦後の数々の施策を見る限り、
当時の人々の情報収集の確かさ、意思決定の迅速さは
相当な水準に達していたと思うのですが。

 

「7世紀の唐に喧嘩を売るのと、
 13世紀の元に喧嘩を売るのと、
 20世紀の中国&アメリカに喧嘩を売るのと。

 リスク・リターンの観点から合理的と思われる順に並べ替えよ。
 また、その根拠をそれぞれ800文字以内で記述せよ(3時間)」

みたいな日本史試験があったら学生さんが悶絶してしまいそうです。

 

 

こんなマニアックな高安城がヤフーニュースに出てくるくらい、
大関昇進というのは本当に大きな影響力を持ってるんですねえ。

 

 


高安関の話に戻りますと。

本名四股名で外野がやいや言い過ぎるのもどうかと思いますし、
歴史ある名前だからいいやんと周りが開き直るというのも微妙です。
(佐藤も鈴木も長い歴史があります。由緒が軽い名前なんてないでしょう)


本人と師匠が考えてやっていることですから、
マスコミも含めてあんまり話題にしないのが一番だと思いますね。

嫁の箸の上げ下ろしまで監視して陰口ネタにする
近所のおばちゃんたちみたいじゃないですか。

それでなくても大関昇進後は色んな行事参加が増えて
稽古に専念しづらくなるんですから。



こんなこと言っているうちに、もう6月も半ばです。

高安関が名古屋場所でもばりばり活躍しはりますように。

 

 

 

「ホテル京阪 淀屋橋」のじわじわくるWeb広告漫画

 

 

 

ホテル京阪が淀屋橋にもオープンするそうで。

なぜかWeb広告にサラリーマン金太郎を採用していてかんたんしました。

 

www.hotelkeihan.co.jp

 

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脈絡のないコマを多用したシュールなおもしろさ。

(広告画像なので転載してもOKかと判断させていただきました。
 NGなら削除します)

 


いまのところ全5話中3話までアップされております。


2話で伊郷さんが金太郎のストーカーをしているところ、
3話で金太郎一家が必要以上にシリアスに泣いているところが
見どころでしょうか。


ばかばかしいと思いつつ、ベッドの寝心地がよさそうだったり
朝ごはんにたこ焼きやミックスジュースを楽しめるようだったりと
ホテル京阪に関する知識がしっかりインプットされてしまいました。

巧みな広告だと思います。

 

 

淀屋橋のあたり、ホテルの開業が続いていますね。

アパ。
ユニゾ。
三井ガーデン。
大和ロイネット。


こちらの広告でも紹介されている通り、
淀屋橋というのは地味に地の利がようございます。

キタにもミナミにもUSJにも海遊館にも大阪城にも京都にも。
ビジネス利用も見込まれますし、手堅い好立地なんでしょう。

 

個人的におすすめなのは休日の淀屋橋散歩です。

日頃はビジネス街なので、土日は人がいない。
全然いない。

大大阪時代以来の趣ある建築群が見放題。
土曜日なら昆布の神宗も開いていて土産調達も可能です。

近頃は土佐堀・中之島の水回りもずいぶんきれいになりましたし、
ぷらぷら散歩するには大変気持ちのよい街になっております。

せっかく淀屋橋に宿泊するなら、早起きしてちょっとぶらついてみては
いかがでしょう。

 

 

大阪のホテル整備が進んできたら、次は奈良や名古屋ですかね。

長い目で見ればまだまだホテルが足りていないのが実情だと思います。
金利の低いうちに、もう少しホテルが増えますように。

 

名古屋はいまも駅前に「サワリーマン金太郎」が存在するんでしょうか。
あれ、そうとう恥ずかしいと思うんですが。
 

 

 

「銀座復興 他三篇」水上滝太郎さん(岩波文庫)

 

水上滝太郎さんの「銀座復興 他三篇」にかんたんいたしました。

 

銀座復興 - 岩波書店

 

明治安田生命の偉大なOB、水上滝太郎さん。

現役の職員方はご存知でしょうか。
明治~昭和初期に活躍した明治生命創業一族・筆頭専務にして小説家。
二足のわらじで、どっちでも高い功績を上げたすごいお人なんですよ。

 

 

本屋さんでたまたま目にして購入してみました。

関東大震災から立ち直る銀座のお話。

2012年3月発売。
東日本大震災の一年後に合わせて発売したようです。

岩波文庫、意外と商売上手。

 

四編で200ページ少々と読みやすい本ですので気軽に読み進めたんですが、
この短編集、非常にいいですよ。

 

以下、一部ネタバレを含みます。

 

 

 

 

 


表題の「銀座復興」

関東大震災で銀座壊滅。
どうも被害にムラがあったようで、丸の内や山の手や郊外は無事、
銀座や下町や海辺は壊滅という状況だったみたいですね。


煉瓦造りのビルディング群が軒並み倒壊した銀座を前に。

もう二度とあんな銀座は見られないよ。贅沢と浮気は叩きつぶされた。

と絶望に暮れる者。

この天災を天譴(天が与えた罰)と見て、我国民は反省せなければならんと云うのだ。

と震災を浮ついた世相の攻撃材料に使う者。


さまざまな人々の姿が描写されています。

なんかあまり現代と変わらないですね。

 

そんな中、廃墟と化した銀座でただ一人バラックの料理店を開業し、
復興の先陣だとおでん・刺身を売り出した「はち巻夫婦」。
はち巻岡田という実在のお店がモデルだそうです)

このお店に皆が集まってきて、飲んだくれて激論を交わしたりしつつ、
復興に向けた勇気を与えられて、実際に銀座に賑わいが戻ってくる。

こうしたポジティブな万歳やったねなトーンで物語は進んでいきます。

 

明るい。実に明るい。

震災を扱った作品ですが、“死”の匂いはありません。
人情もののお芝居を観ているような、予定調和感すら漂う根明さ。
ヤフーニュースとかフェイスブックとかで喜ばれそうなエピソードです。


こういう“天災もの”は珍しいですね。
岩波文庫がわざわざこの作品を現代に甦らせた思いが分かる気がします。

そのうち首都圏直下地震が来るかもしれませんし、あらかじめこういう本を、
こういう気構えを得ておくのも有意義だと思いますね。

 


さて、この本には他に三篇「九月一日」「果樹」「遺産」が収められています。


「九月一日」「遺産」も震災ものです。


「九月一日」関東大震災当日の模様がライブ感ある描写で記されつつ、
若者たちの青春模様と死と消失とが交差している内容となります。

「銀座復興」とはまるで雰囲気が違っていて、悼むものを感じます。

 

 

「遺産」は一風変わった内容で、震災で豪邸を囲んでいた煉瓦塀が崩れ、
諸事情あって中に引き籠っていた金貸しのおじさんが町内会の皆さんと
交流することになった話なのですが。

コミュ障のおじさんにムカついて、全体同質主義な町内会の皆さんが
暴力を振るう
のです。

「たたんじまえ。」
「やっつけろ。」
「高利貸。」
「社会の敵。」
「鬼。」
「畜生。」

やだ、これだから町内会とかPTAって嫌い。蛮族かよ。

でも、社会人なのにコミュ力ないおじさんもおじさんだよね。

日頃は関わることのない両極端なコミュニティが顔を合わせざるを得ない
震災被害現場、そこで起こりがちなトラブル。

このリアリティある記述が最高です。

 

 


「果樹」は震災と関係ない、仲良し夫婦のあたたかいお話です。

いいなあ、こういう夫婦。

そう素直に思える傑作短編だと思います。


夫がいいんですよ。

「ああ今日程忙しい事はなかった。すっかり疲れてお腹も減ってしまった。初茸御飯が待ち遠しいな。」

「今日はしんが疲れたんだなあ。こんな時は早寝にしよう。ほんとに風邪なんか引いては馬鹿馬鹿しいや。」

なんてことない平凡な台詞なんですけど、超かわいい。超いとしい。
こんななんてことない夫がほしいです。

 

 


完成度で言えば「果樹」、面白さで言えば「遺産」ですかね。

「銀座復興」で人目を引きつつ、後編に行くほど話の質が上がっていく。
この辺り、岩波文庫編集者の高い技量を感じます。


岩波文庫といえば堅苦しかったり読みづらかったりな印象を持っている
若い人が多いと思いますけど、読まず嫌いせずに手を出してみると
さすがの良品揃いで愉しいですよ。

ときどき、こうした時流に乗った本も出してはりますし。


最近は岩波文庫仕入れてくれない本屋さんも多いのですが、
まあ色んな事情があって仕入れない理由もよく分かるのですが、
これからも根強く岩波文庫が残っていきますように。