肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

(感想)「いわさきちひろ、絵描きです。展」東京ステーションギャラリー

 

東京駅内の美術館「東京ステーションギャラリー」で開催中の「生誕一〇〇年 いわさきちひろ、絵描きです。」展がとても感じ入る内容でかんたんしました。

 

いわさきちひろさんが描く子どもの絵は本当にいいですね。

 

www.nikkei-events.jp

 

 

いわさきちひろ、絵描きです。」とは、いわさきちひろさんが夫に初めて出会った際に名乗ったセリフなのだそうです。

こういう、所属組織名を名乗らない自己紹介って格好いいと思います。

 

 

いわさきちひろさんは、赤ちゃん向けの絵本でお世話になるケースが一番多い感じですかね。

私の周りのちびっ子たちも、彼女の絵を見て育ってまいりました。

「もしもしおでんわ」や「おふろでちゃぷちゃぷ」あたりが私はお気に入りです。
読み聞かせてあげるのが楽しみでした。

輪郭のない、淡い色使いを重ねた子どもの絵は、なんとも幻想的かつ親しみの湧き上がる、ずうっと記憶に残っていく逸品であります。

 

 

 

今回開かれている展覧会では、いわさきちひろさんの初期から晩年までの絵を一度に見ることができる構成になっております。

マリー・ローランサンさんの絵など、彼女の絵に影響を与えたと思われる作品や当時の文化史料が展示されているのも注目度が高いですよ。

 

 

私の印象に残ったのは、初期の油絵。

いわさきちひろさんというと上で挙げたような絵本の水彩画が有名ですけど、油絵やパステル絵もまた違った趣があってようございました。

 

例えば展覧会のHPにも載っている「眼帯の少女」。

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(オフィシャルHPから引用)

 

確かにいわさきちひろさんのタッチでありながら、絵本とは違った重さ、暗さ、どうしようもない共感が伝わってまいります。

 

この作品の近くには同じようなテイストの「マッチ売りの少女」なども展示されていて、いわさきちひろさんが子どもを単なる「かわいいもの」として写し取っている訳ではない、ベースの部分には子どもたちの幸せを願うような祈り、逆をいえば幸せでない子どもをたくさん見てきたのであろうこと……が偲ばれます。

 

 

彼女の、現実のつらい面やヒューマンドラマを描いた作品、見応えがございまして……

幻灯「最後のつたの葉」(オー・ヘンリーさんの最後の一葉)なんかも立ち止まってしばらく眺めてしまいました。

 

 

 

展示会の中盤からは、子どもや赤子を描く作品が増えてきまして、よく知られている方のいわさきちひろさんの世界が広がってまいります。

 

とりわけ赤子のスケッチは全体的に素晴らしく写実的で、そうそう赤ん坊ってこんな顔するよね手足の曲げ方するよねこうやって指しゃぶるよね! と育児経験者の胸に迫ること間違いなしです。

小さな作品が中心になりますが、スケッチを見逃さないようにいたしましょう。

 

「あごに手をおく少女」や「落書きをする子ども」も見飽きないですし、

私の好きな「たけくらべ」の信如・美登利の絵があったのもたまらないですし。

 

 

 

終盤に見ることができる作品群はもう圧巻の一言です。

「王子を想う人魚姫」「魚たちにハーモニカをきかせる少女」「海辺を走る少女と子犬」などの水をモチーフにした作品たちには本当に感じ入りました。

 

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(オフィシャルHPから引用。この遠望。一人と一匹、足跡、空と海の色……)

 

 

 

高畑勲さんのアイデアで拡大された「子犬と雨の日の子どもたち」「落書きをする子ども」も超よかった。

現代の技術をもってすれば絵を拡大して悪くなることなんて何もないんだ、ガラスの向こうの本物と、拡大されたコピー、両方展示すればいいんだ、というメッセージは考えさせられるものがあります。

(歴史系の文献展示なんかもそうかもしれない)

 

 

 

あらためて作品を一度に見せていだくと、いわさきちひろさんが描く子どもは、写実的、かわいい、幻想的……なだけでなく、幼子独特の脆さ、儚さ、だからこそ大人が抱かざるを得ない願い……をも内包しているのかもしれないなあ、と。

そんな考えを抱いた素晴らしい展示会でございました。

 

 

 

東京駅には東京ステーションギャラリーがあるのがいい。

極めてアクセスのよい場所にあって、しかもあまり広くないのが好き。

移動の合間に「ちょっと絵を見に立ち寄る」ができるのが最高なのです。

 

3階→2階の移動時、煉瓦壁の階段を降りる時間がまたいいんですよ。

展示作品と展示作品の間の上質なインターミッション感があって。

東京駅の歴史を刻んだあの煉瓦、いいわあ。

 

欲を言えば「ぽちのきたうみ」をショップで売ってくれていたらなおよかったな。

丸善に寄ってみたけど丸善にもなかった。

ちひろ美術館に行ってみようかなあ。

 

 

 

絵本作家もすてきな人が次々登場してきてはりますけど、いわさきちひろさんの作品も時を越えて子どもたちに愛され続けますように。

 

 

 

 

秋田県仙北市角館町「唐土庵いさみやのもろこしあん」

 

前回の記事で蘆名家の話をしたら、たまたま蘆名家にちょっとだけ縁のあるお菓子をいただいてしかもそれがもの凄く珍しいおいしさだったのでかんたんしました。

 

お菓子の名は「もろこしあん」であります。

 

www.morokosian.jp

 

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※画像はオフィシャルHPより引用。

 

 

「もろこし」と聞いて一瞬??となりましたが、これは「とうもろこし」でなく「唐土」、すなわち中国のことなのだそうです。

「中国から伝わったお菓子」的な意味なのでしょう。

 

このお菓子は小豆餡のまわりを炒った小豆の粉(きな粉の小豆版)で覆ったものです。

こうした「炒った小豆の粉を落雁のように打ち菓子にしたもの」を「もろこし」と呼ぶのだそうで。

 

 

名前も珍しいのですが、味も珍しいのですよ。

しっとりした小豆餡を、柔らかぱふぱふな炒り小豆粉でコーティングしている訳で、食感の対比がまず面白いです。

 

その上、この炒り小豆粉……もろこしの部分が実に味があるのです。

きな粉と似ているんだけど、ちょっとだけニュアンスの違う香ばしさでして。

もともと小豆由来ですから当然にあんことの相性もよく。

 

小ぶりな一口サイズにまとめられているのも好印象、一口食べればもろこしの香ばしい風味と奥ゆかしい甘みが相混ぜになって脳髄を癒してくださいます。

 

 

しかもこの風味、コーヒーやお茶とすこぶる合うんですよね……!

 

 

秋田県にこんな名物菓子があるとは存じませんでした。

これはもらったら嬉しい秋田土産ランキング上位にエントリー間違いなしであります。

 

 

 

こちらのお店がある角館は武家屋敷と桜で有名な町ですね。

 

実は、この地の武家屋敷は蘆名家にゆかりがあるんですよ。

戦国時代末期に伊達政宗さんにしてやられた蘆名家は佐竹家に仕えることになり、佐竹家が秋田に移った際も一緒についていきまして。

ほいで秋田で居を構えたのがこの角館の地だったのであります。

 

町割りなんかも蘆名家の影響が強かったらしいので、蘆名ファンは訪れてみると感慨ひとしおではないでしょうか。

蘆名家は多少マイナーながらも美少年系(ていうかあっち系)のエピソードが多いし、けっこう有名人との絡みも多いので戦国時代ビギナーにもいいと思うんですよね。

 

まあ蘆名家は江戸時代になってから、3代で断絶しちゃうんですけど……。

 

 

 

私も秋田は秋田市内と男鹿半島安東愛季さんの脇本城がありました)にしか行ったことがないので、角館はぜひ一度訪れてみたいと思っています。

行ったことがある人によれば大変満足度が高かったそうなので……!

 

 

 

どこの地方も人口減が懸念される時代ですが、こうした魅力ある町の風情がこれからも残されていきますように。

 

 

 

信長の野望201X「伊達家ストーリー攻略② 岩代」

 

201Xの陸奥紀行、伊達家ストーリー第2弾です。

 

岩代国というと福島県会津界隈……であってますかね。
福島県浜通り中通り会津でぜんぜん趣が違うのでいまだに土地勘が働きません。

 

攻略的には(適したメンバーがいるなら)難易度は高くなく、さくさくとクリアすることができてかんたんしました。

 

 

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岩代は鬼の国なのですが、面倒なことに天邪鬼さんも銀魔鬼さんも複数ボスも出てきはります。

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……なんだかなあ、という敵の群れですね。

 

私の普段使い三好父子はこういうタイプの敵が苦手なので控えに回ってもらって、

  •  ボスアタッカーとして、鬼にも強い十河一存さん or 武田信玄さん
  •  天邪鬼を含めた雑魚散らしとして、鬼特攻付きの学園太原雪斎さん
  •  銀魔鬼対策として、北条早雲さん
  •  あとはバッファー

というパーティ構成で進めました。

 

ここまで来れたプレイヤーならある程度手持ち武将も充実しているかと思いますが、無属性複数体攻撃ができる武将がいないとちょっと面倒ですね。

その場合は9mm拳銃やエムCQBをみんなに持たせる感じでしょうか。

 

対策さえできれば、敵の生命力や攻撃力はそこまで激しくないので、あまり育っていないメンバーでもなんとかなると思います。

 

 

 

 

ストーリー的には蘆名家界隈の武将が出てきます。

 

主軸は阿南姫と

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その息子蘆名盛隆さん、

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そしてもちろん伊達政宗さん。

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田村海賊団の近況報告がいいですね。

 

 

 

 

ちなみに阿南姫の旦那様は出てきませんし、

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(蒼天録や太閤立志伝5の顔グラがよく話題になりますがよく見ると烈風伝も酷いな)

 

信長の野望201X「201X学園 ハッピーハロウィン ~吸血鬼の宴~」 - 肝胆ブログ

 

 

 

蘆名盛氏さんも出てこないのが少し寂しいですね。

参考に、御館の乱異聞(裏)で出てきはった盛氏さんの画像を貼っておきます。

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御館の乱異聞未プレイの方は、細かい事情は気にしないでください)

 

 

 

あんまり人に語れるほど詳しくないのですが、

 

蘆名家は盛氏さんの代に勢力を拡大するも、期待していた息子さんが早世してしまい、仕方なしに養子(先ほど登場した盛隆さん)を迎えた後に盛氏さんがお亡くなりに……

その後の蘆名家は伊達家や佐竹家などに揉まれて傾いていく……

 

という三好家好きとしてはなんとなく親近感の湧く事情をお持ちの家ですね。

こうした流れのお家衰亡は残念ながら戦国時代あるあるであります。

 

 

 

ストーリーでは、他にも大内定綱さん(彼がこんなに目立った戦国コンテンツがかつて存在しただろうか、いやない)や

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201X山名家のアフターファイブ的な匂いがする二本松畠山義継さん、

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本家信長の野望では蘆名家の貴重な戦力として福島商工会議所とのタイアップで天道から追加された穴沢俊光さん、

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更には伊達家の勇将、かつお腹空いてる系男子なキャラ付けがされた伊達成実さん、

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などが登場して参ります。

伊達家好きも福島県民も引き続き満足度が高いですね。

 

 

次は羽州あたりでしょうか。

最上家の皆さまがどんな味付けがなされるのかも楽しみです。

シレッと上杉家が介入してきたりしないかな。

 

 

 

東北戦国史の人気もどんどん高まっていきますように。

研究者数の偏りか、関東、東海、畿内の研究ばかりが進んで東北や山陰や四国なんかの研究があまり進展していない印象があるんですよねえ。

 

 

信長の野望201X「伊達家ストーリー攻略① 磐城」 - 肝胆ブログ

信長の野望201X「伊達家③&最上家ストーリー攻略 羽前」 - 肝胆ブログ

 

 

「トラクターの世界史を読んでSociety5.0への移ろいを思う」藤原辰史さん(中公新書)

 

“トラクターの世界史 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち”という新書がトラクター愛と新技術に向き合う人類の様子とを克明に表してはって大変かんたんいたしました。

 

トラクターの世界史|新書|中央公論新社

 

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「人類の歴史を根底から変えた」というコピーがいいですね。

 

少し紹介文や本文を引用してみましょう。

19世紀末にアメリカで発明されたトラクター。直接土を耕す苦役から人類を開放し、作物の大量生産を実現。近代文明のシンボルとしてアメリカは民間主導、ソ連ナチス・ドイツ、中国は国家主導により、世界中に普及する。だが農民や宗教界の拒絶、化学肥料の大量使用、土壌の圧縮、多額のローンなど新たな問題・軋轢も生む。20世紀以降、この機械が農村・社会・国家に何をもたらしたか、日本での特異な発展にも触れて描く意欲作。

トラクターがファシズム共産主義を生み出したという歴史観である。

トラクターは「疫病神」となってアメリカを襲う。ニコライによれば、トラクターが濫用されて土地が荒廃したために、一九三〇年代にダストボウルが起きた。他方で、土壌浸食は飢饉をもたらし、アメリカ経済を混乱に陥れ、ついには一九二九年の株価大暴落を引き起こす。そして、この政情不安と貧困が世界中に広がり、ドイツのファシズムとロシアの共産主義の衝突に向かい、人類を破滅の道へと駆り立てた――。

(※作者の主張ではなく、小説『おっぱいとトラクター』内の描写です)

トラクターは、社会主義陣営にせよ、資本主義陣営にせよ、農場を巨大化し、自身も大きくしていった

農民を大量に土地から切り離し、それを化学産業やIT産業を始めとする二〇世紀に新しく形成された労働市場に送り込んだだけでなく、農業そのものを農地の外からの管理作業に変え、人類史から消滅させる試みの始まり、とみることもできないだろうか。

 

 

言われてみればなるほど……そういう見方もあるか……ですね。

トラクターの意義についてこんなに考えたことがなかったのでとても新鮮でした。

 

 

この本では日本を含む各国でのトラクターの発展を縦軸に、トラクターが生み出した副次的作用や文化史を横軸に、それぞれの要素を丹念に紹介してくださっています。

 

メカまわりが好きな方なら、アメリカや日本におけるトラクター技術の発展が純粋に楽しめることでしょう。

戦争ものが好きな方なら、トラクター技術が「戦車開発(キャタピラー等)」に転用されていった史実に胸を痛めつつ、二つの世界大戦がもたらした大変革に圧倒されることでしょう。

環境問題や社会問題に関心のある方なら、トラクターによる土壌圧縮がもたらした砂塵化や、トラクター購入に伴う農民のローン地獄や銀行による担保農地の没収、高い事故率や振動による健康問題等、現代まで続く課題を憂うことでしょう。

 

どの要素も実に精緻な描写がなされていますから、様々な読み手を満足させていただけることかと思います。

 

 

 

個人的にいちばん楽しめたのはトラクターと人類の出会いを通じた文化史。

 

エルビス・プレスリーさんがトラクターコレクターだったり、小林旭さんの「赤いトラクター」だったりという男楽しい文化が実にいい。

小林旭 トラクター - Google 検索

 

 

更に、この本で際立つのが「新技術がもたらした動揺と哀調」

 

農場から去っていく長年慈しみ育ててきた馬たち。

トラクターを「反キリストが乗ってくる鉄の馬」と全否定したソ連の司祭たち。

手仕事にこだわる親世代と、無邪気にトラクターに惚れる子世代のコントラスト。

 

こうした模様が様々な小説、映画、インタビュー等を元に紹介されていくのです。

著者さんのトラクターコンテンツ網羅ぶりがすごい。

抒情を添えて描き出せる文章力もすごい。

こういう歴史本が大好き。

 

 

 

 

トラクターを切り口にした近代史を楽しく学べる良著だと思います。

 

 

それに。

新技術に向き合う人類、という意味でタイムリですよね。

 

 

さいきんSociety5.0とか話題じゃないですか。

Society 5.0 - 科学技術政策 - 内閣府

 

第五の社会ですよ。

1番目が狩猟社会、2番目が農耕社会、3番目が工業社会、4番目が情報社会。

ほいで5番目がサイバーとフィジカルが融合した社会なのだそうです。
AIやIOTやロボットが庶民の暮らしにまで浸透した社会、ということなのでしょう。

 

政府や経済界はこのSociety5.0で経済成長や社会課題解決を目指していく模様です。

ソウルソサエティの五番隊元隊長風に言うなら「一体いつから――――景気が回復していないと錯覚していた?」的な卍解を目指している訳ですね。

 

 

まあ偉い人たちの思惑がどうであれ、技術ができた以上は浸透していくでしょうから。

これから育つ若い人たちは、感受性豊かな時分に様々な変化を目撃するのでしょう。

 

田んぼを飛び交い農薬を撒くドローン。

コンビニの発注をすごい的中度でやってくれるAI。

倉庫の荷出しや在庫チェックを自動でやってくれるロボット。

 

地元で、バイト先で、いままで見なかったものを見る機会が増えていきますし。

親世代や爺婆世代は遺伝子治療等を通じてボケなくなったり、ロボットによる介護を受けたりするようになっていきますし。

その過程で、新技術に仕事を奪われたり馴染めなかったりでイラつき悲しむ大人を見ることもあるでしょうね。

 

デジタルネイティブどころではない、こうしたSociety5.0的世界にて育った若い世代が世の中をどう見てどう変えていきたがるかが楽しみですし、いろいろディスカッションやコラボレーションもしてみたいものです。

 

数十年前は、勉強は嫌いでもバイクの仕組みはすげぇ詳しい……若い人がいました。

いまも、勉強は嫌いでもプログラムの扱いはすげぇ詳しい……若い人がいます。

これからは、勉強は嫌いでもAIやロボットの調教はすげぇ詳しい……若い人が出てくるんでしょうから、こちらもあらかじめ心構えをしておこうかということです。

 

 

この「トラクターの世界史」は、読み手をそんな気分にもさせてくれる本でした。

新鮮な気分を授けてくださってありがとうと言いたいです。

 

 

どんな時代の移ろいであれ、世代間の対立や世代内の分断拡大があんまり起こらずに、やわらかく平穏に変わっていけますように。

 

 

 

 

ローソンの生ハム「プロシュートとハモンセラーノ」

 

何気なく買ってみたローソンセレクトの生ハムが、思いのほかコストパフォーマンスに優れていてかんたんしました。

赤ワインに合う合う!

 

www.lawson.co.jp

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www.lawson.co.jp

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いまは生ハムがコンビニで手に入る時代なんですね。

 

もの凄く所帯じみた話なのですが、今日はおやつにたこ焼きを食べ過ぎて、晩ごはんは抜いてもいいかなあ……でもタンパク質は取っておきたいなあ……ハムでも買って残り物のワインで追っかけるか、みたいな動機でこの商品を買ってみた次第です。

 

どちらのハムも約300円。

安い。

もちろん量は少ない、持ち重りが軽い軽いなのですけれども。

 

まあ塩分つよい食べ物ですから、量は控えめでもいいですよね。

高級なプロシュートやハモンセラーノは何千円もしますし。

 

 

 

プロシュートはイタリアの生ハム、ハモンセラーノはスペインの生ハムです。

どちらも豚肉を熟成させてつくられており、ねっとりした食感と甘じょっぱ肉い食味、柔らかな余韻が特徴であります。

果物やチーズやパンと一緒に食べてもおいしいですし、そのまま食べてもおいしい。

なんて素敵な食べもの!

 

 

このローソン調達のプロシュートとハモンセラーノも、300円とは思えないクオリティでございましたよ。

 

プロシュートはストレートに塩気と肉の風味が楽しめる味わいで、力強い印象。

ハモンセラーノは濃厚なのに柔らかく流れていく味わいで、包み込まれるような印象。

どちらも極薄切りにされており、そのテクスチャーがまた、存在感のある味わいと絶妙にフィットしてはるのであります。

 

 

そこに、赤ワイン。

肉の熟成香と赤ワインの相性のよさは大人になってよかったと思わずにはいられない、素晴らしいパートナー関係じゃないですか。

 

300円×2の生ハムに、2,000円しない赤ワイン(しかも開封済みの残り物)。

 

これだけで、体感的には10,000円分くらいの幸せでしたよ。

生ハムをはむはむ食べて、赤ワインをぐびぐび流し込むだけ。

もうね、そしたらね、“んー!、んんー!”ってなれますからね。

 

ワインが苦手でなくて、コンビニ食材に抵抗がなければ、ぜひお試しあれです。

 

 

 

ワインもたいがい値段の割においしくなってきていますが、今度は生ハムまで安かろううまかろうになってきているんですね。

サイゼリヤさんたちの努力のおかげなんだろうか。

これで生産者の方々が食べていけるのか不安になるほどですが、ありがたいことです。

 

 

おいしいお酒とつまみがますます庶民に寄り添い彩りを与えてくださいますように。

 

 

 

 

「三好長慶の妻と、松永久秀の闇堕ち」(創作注意)

 

さいきんまた三好熱が高まってきたので、昔考えてはいたけど採用を見送ったプロットをひとつ書いてみることで排熱させていただきたいと思います。

 

歴史ファンの妄想、創作的なやつなのでそういうのが苦手な方はご留意ください。

かんたんいただけるような内容ではありませんしむしろ痛くて暗いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先に基軸をざっくり言うと、

実家の八上城に戻った三好長慶の先妻を松永久秀・長頼が殺めてしまい、松永兄弟が闇堕ちするというストーリー。

 

 

近頃は松永久秀忠臣説がじわり注目されてきていますが、201Xなんかで採用されているような忠臣でもあり梟雄でもある松永久秀像も面白いですよね。

そういうのを狙って、「もともとは三好長慶の忠臣だったんだけれど、ある事件を境目に梟雄の道を歩き始める松永久秀」みたいなのもいいかなあと考えたんですよ。

 

 

 

 

弘治三年(1557年)頃のこと。

三好長慶さんは先妻(波多野稙通さんの娘、三好義興さんの母)と別れて10年近く。

松永久秀・長頼兄弟は彼女の実家である八上城を攻め落とし、丹波を三好家の勢力下に組み込もうとしておりました。

三好家は丹波制圧に何度も失敗しており、この度の攻撃は三好政権のメンツがかかった相当激しいものになっていたことかと思います。

 

この頃に松永兄弟が八上城を落としたのは史実であります。

 

 

 

一方、三好長慶さんの女性関係は史料がとことん残っていないことに定評があり。

 

この離縁して波多野家に帰ったはずの先妻さんがその後どんな人生を送ったのかは何も分かっておりません。

ただ、長慶さんがその後義興さん以外の子どもを得た様子がないこと(三好家は基本的に子だくさんな人が多いのに)、遊佐長教さんの娘を後妻にもらったはずがその後妻の記録もまったく残っていないことなどを思えば、長慶さんの方は先妻のことをその後も引きずっていたんじゃねと思えなくもなく。

 

 

再婚とか出家とかしてはる可能性はあるものの、自然に考えれば、松永兄弟が八上城を何度も攻撃している間、長慶さんや義興さんがいまも心を寄せているであろう先妻さんが、まさに敵側で一緒に籠城していたのではないかなあと考えられる訳であります。

これは攻めづらいですね。
だからこそ三好家は何度も八上城攻めに失敗してたんだったりして。

 

 

 

それでも、松永兄弟の奮戦により、とうとう八上城最後の日は訪れ。

 

燃え盛る城の中、長慶先妻さんを救出に向かう松永兄弟。

だが、彼女は侍女か誰かを出火から守ろうとして、顔や身体に重い火傷を負っており。

このような姿で、敗軍の虜囚としてかつての夫の前に現れることを潔しとせず……。

 

「あの人には、あたしのみにくい姿を見せたくありません。
 久秀、長頼、あの人に伝えて。
 来世でまたお会いしましょう。
 さようなら、あたしの今生を苦いものに変えた人……あたしの大事な人……
 (千熊丸……母を許せよ……)」

 

的な某ゲーム丸パクリのセリフを残して自害するのであります。

 

 

 

遂に丹波を落としたとはいえ、こうなっては松永兄弟の面目はありません。

 

三好長逸

「存念あってのことではないとはいえ、それがしには松永殿の失態を受け容れられぬ」

 

石成友通

「殿はいたくご落胆の様子(これは、わしにお目をかけていただく好機かのう)」

 

三好実休

「あのへつらい野郎はよう、いつかこんなことをしでかすと思っていたぜ」

 

安宅冬康

丹波制圧の大功を思えば、いささか気の毒ではあるが……」

 

十河一存

「……(超怖い顔)」

 

みたいな家中の世論が盛り上がっていき、針の筵に座るかのようです。

 

 

 

実際、主君の落ち込みようは松永兄弟の想像以上でございました。

 

三好長慶

「よい……もう、よいのだ。ご苦労だったな……」

(精神崩壊フラグon、政治離れフラグon)

 

三好義興

「許せねえ、久秀も、長頼も、波多野も、細川も、こんな乱世も。
 許せねえ、こんな世の中をつくった大人たちを。
 許せねえ、何より、自分自身を許せねえ」

(生き急ぎフラグon)

 

 

ずうっと長慶父子の忠臣として生きてきた松永兄弟にとって、これは何よりつらい。

 

弟の松永長頼さんは、これ以降めっきり士気が下がり、朝倉家や赤井直正さんとの戦で劣勢になっていくのでした。

(敗死フラグon)

 

 

 

そして兄の松永久秀さんは……悔恨、苦悩の果てに……

 

「殿……
 殿は、政に私情は挟まへんって言ってたやんか……
 あれは嘘やったんでっか……
 どんな不幸に遭ってでも、民のために天下静謐を優先するんやって……」

「わいが仕えてるんは……あの頃の殿や」

「そんなに妻に会いたいんやったら、そんなに家族みんなで過ごしたいんなら。
 その願い、叶えさせてもらいまっさ。
 それがわいの……最後の奉公や」

(三好一族毒殺フラグon)

 

みたいな闇への堕ち方をする訳ですね。

 

 

 

こんなことをあれこれ考え、地味に史実とのフィット感が高かったこともあり、意外とアリかなあと思い。

 

足利義輝

「独立の動きを見せ始めた松永久秀を直臣とし、三好の分断を図るも一手か」

 

篠原長房&三好康長

畿内が揺れている。いまこそ我らが前に出る時だとは思いませんか」

「お前はそういうことを口に出すのがよくない」

 

みたいな関係者の思惑も浮かんでいたのですが。

 

 

 

冷静になってみると

  • ただでさえ暗い三好家物語がますます暗くなる
  • 某ゲーム丸パクリのセリフを採用するのもさすがに抵抗がある
  • よく考えたら羽柴秀吉さんとお市さんの物語にも似ているぞ
  • それに長慶先妻さんにはもっと伸び伸び生きていてほしい
  • ていうか波多野晴通さんは八上城落城時、普通に逃げ延びてるしなあ

 

などなど見送り要素がたくさん出てきて、結局書かなかったんですよね。

言い方を変えれば、書く勇気がなかったというか。

創作作品としては、とことん救いのない話にした方がいいのかもしれませんけど……。

 

 

 

 

 

松永久秀さんの多面性、前半生と後半生の印象の違いなどを受けて、久しぶりにこんな妄想を思い出したよ、という話でした。

 

陰謀論のときも思いましたけど、歴史ってのはいくらでも解釈を生み出せるコンテンツですね。

頭の体操、あるいは暇つぶしとしてはとてもいいかもです。

 

 

そのうちプロの作家さんとかが新たな三好松永解釈を生み出してくださいますように。

河内畠山ものとか波多野ものとか足利義晴ものとか細川高国ものとかも読みたいなあ。

 

 

 

 

「信長上洛~京都・織田信長入京から450年~展の感想」京都文化博物館

 

松永久秀さんや織田信長さんによる足利義昭上洛作戦の本を読んだところ(前記事)、ちょうど京都で信長上洛展をやっていたので別件のついでに観に行ってきました。

 

そしたら、三好長慶さんや松永久秀さんがまじめに京都の治安を守っていたことが偲ばれる文書を見ることが出来たり、有名な三好宗渭(政康)さんのおしどり型の生花押を見ることが出来たりと、思った以上に満足度の高い展示でかんたんしました。

 

 

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開催要項


 永禄11年(1568)9月26日、織田信長足利義昭を奉じて京都の東寺に入りました。室町幕府の実権を握っていた三好勢は各所で抵抗を試みますが、織田の軍勢に圧倒されて敗退を重ね、間もなく京都は織田信長が制圧するところとなったのです。そして10月18日には足利義昭征夷大将軍となり、室町幕府は信長の軍事力を背景にようやく秩序を回復させたのです。この後、信長は抵抗する諸勢力と戦いを繰り広げ、ついには足利義昭を京都から追放し、天正10年(1582)に本能寺で最期を迎えるまでおよそ14年間京都周辺を中心に活動しました。
 織田信長の上洛は、日本史上の大きなインパクトとして広く知られています。旧来の秩序を破壊し新たな時代を切り開いた改革者としての織田信長の人物評は、おそらくこの上洛の一件以降の事象から想起されたものでしょう。信長の上洛をもって近世が始まったと唱えた歴史研究者もあり、信長の上洛はその事実以上に大きな意味を後世にもたらしています。果たして「信長上洛」とは何だったのでしょうか。
 この展覧会では、織田信長の上洛前後の様相を伝える古文書を中心に、当時の京都の世相を伝える資料を展示すると共に、織田信長という人物とその行動が後の世にどのように語られていったのかについて、検証してゆきます。

 

 

 

京都文化博物館京都市の中心部にあるので、アクセスがよくていいですね。

日本銀行京都支店を転用した建築も見応えがあります。

 

信長上洛展は総合展示コーナーの一角でやっている小規模なものですので、通常展示と合わせて500円で見ることが出来ます。

現地に行ってみるとまったくアピールされていなくて、本当にやってるのかな……? と不安になるレベルです。

お客さんも数人しかいませんでした……。

 

 

特別展の西尾維新さんのやつはすごく盛況で若い人がいっぱい来てはりましたけどね。

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パンフの1ページ目。

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織田信長弾正忠さん上洛時の禁制(東寺に乱暴しちゃ駄目よ文書)ですね。

画像では分かりにくいかもしれませんが「天下布武」印も押されております。

 

これも有名な文書ですから信長さんファン的には必見ではないでしょうか。

 

 

 

パンフの2ページ目。

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実際の展示はこの「信長上洛前夜」から始まります。

 

少しずつ三好時代の努力が知られるようになってきており、この展示でも「応仁の乱以降京の治安は乱れていたが、三好長慶は治安維持に努めた、ただ彼の死後は再び……」という紹介のされ方になっているのが嬉しいですね。

 

パンフやHPでも三好長慶松永久秀の書状が紹介されておりますし、実際の展示では三好長逸・宗渭連名の書状や三好康長さんの書状なんかも出ております。

 

三好長慶さんの折紙書状の内容は

「東寺で徴税担当をやっていた親子が不正をしたあげく証拠の升を持って逃げたのは言語道断である、そいつらの一族を捕らえ調べ上げなさい、新しい升をつくるのは許可しましょう」的な内容。

 

松永久秀さんの書状は

「盗っ人を捕らえたのは立派なことです。ただ、他の仲間は逃げたままなので、しっかり調べ上げて仲間も捕らえますように」的な内容です。

 

私の適当意訳なので内容は正確ではありませんのでご留意ください。

 

それにしても悪いやつが多いもので、三好家単独で京の治安維持を担っていた長慶さん久秀さんのご苦労を思わずにはおれません。

あるいは己の曽祖父も京の治安を乱していた張本人なのでこれも因果なんでしょうか。

 

久秀さんは他にも「落雷で塔が焼けたのは大変だったけど気落ちせず、来世のためにも再建に努めるのが肝心だと思いますよ」みたいなお寺への書状が展示されていて、きめ細やかなお仕事ぶり心配りぶりが察せられますよ。

 

 

 

この三好家関連コーナーの目玉は、個人的には三好宗渭さんの書状だと思います。

展のHPにも載っていないので見に行っていただくしかないのですが、あの有名なおしどり花押が生で見れますからね。

三好政康 花押 - Google 検索

 

まことにユニークなかわいいデザイン。

後の伊達政宗さんの鶺鴒花押とかにも通じるような。

 

刀の目利きといい、ほんま宗渭さんはセンスいい人やったようです。

お父さん(三好宗三)ゆずりの数寄心なんでしょうね。

 

 

 

パンフの3枚目。

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信長さん上洛後の行政文書を中心に展示されています。

後期(8/7-9/2)になると明智光秀さんの書状なんかが多く展示されるようですよ。

 

個人的に印象に残ったのは、細川藤孝さんの書状類。

とりわけ、織田信長さんと足利義昭さんの関係が悪化した頃のお手紙には織田信長の出方をよくよく見極めることにしょう」みたいなことが書かれていて、幕府と信長さんの間に挟まれた彼の難しい状況に思いを馳せずにはおれませんでした。

 

 

 

「その後の「織田信長」と京都」の展示では、明治時代以後に信長さんが勤王の人として人気が出てきて、建勲神社が設立されたり、時代祭で信長さん上洛シーンが再現されたり……と確かに京都らしい内容の記録が紹介されております。

時代祭の写真、信長さん役の男性がけっこう優男系のハンサムさんで、しばらく眺めてしまいました(笑)。

 

 

 

 

信長上洛展の隣でやっている「後藤家の軌跡展」では、同じく戦国時代末期に金工で知られた後藤勘兵衛さんと、加藤清正さんや小堀遠州さんとの手紙のやり取りなんかが展示されていて興味深かったです。

 

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虎狩りで知られる加藤清正さんに「虎皮」をお贈りしていたり、小堀遠州さんに「松茸を贈りますね、この前のやつと違って瑞々しくてうまいよ!」とアピールしていたり、当時のプライベート感あるお付き合いの様子がなんだか面白いんですよ。

 

 

 

京都文化博物館は建物もいいし、漆喰製のまゆまろさんもいますし、素敵ですね。

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おいおい祇園祭の宵宮や山鉾巡行もありますし、観光がてら文化博物館に立ち寄って「信長上洛展? ふーん、三好家ってのもいたんだね、クールじゃん」と覚えてくださるような奇特な人が少しでも現れますように。