肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「松永久秀と下剋上 室町の身分秩序を覆す」天野忠幸さん(平凡社)

 

天野忠幸さんの新作松永本が、従来よりお求めやすい価格(1,800円+税)で氏の三好松永説を分かりやすくコンパクトにまとめはった内容になっていてかんたんしました。

 

あと、あとがきにサラッと結婚されたことを書いてはったことにもかんたんしました。

おめでとうございます。

現代に生きる所帯の暮らしを支えているのだと思えば、あの世の長慶さんも久秀さんも嬉しいのではないでしょうか。

 

 

www.heibonsha.co.jp

 

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おおまかな内容

戦国時代に少し詳しい人であれば、「三好家が再評価されているらしい、というか見方によっては天下を取っていたらしい(三好政権)」とか「松永久秀は実は忠臣だったという説もあるらしい」とか「最近のコーエーは三好主従を推している模様」とか聞いたことがあるかもしれません。

 

そういった流れにドライブをかけてはる学者さんの一人が著者の天野忠幸さんでして、この本でも以前から氏が主張してこられた説……


三好長慶は保守的で甘い人物どころか、当時の価値観からすればとんでもない常識デストロイヤーだった(意訳)」

松永久秀は長慶様だーいすき(意訳)」

三好長慶も久秀のことがだーいすき(意訳)」


みたいな内容を端的に紹介しておられます。

さいきんの三好松永研究にちょっと関心がある、という方にとってはとてもよい入門本に仕上がっているのではないでしょうか。

 

 

 

↓本の記述を一部紹介

久秀は長慶の意向を無視して独断専行したり、自分の意向によって裁許を歪めようとしたりする意図などはなかった。本国寺と清水寺の山論をめぐる将軍義輝の裁許に干渉したことと比べると、その差は歴然である。久秀にとって、長慶こそがあくまでも主君であり、最高主権者であると認識していたのだ。久秀が長慶に背くようなことなど、一度もなかった。

久秀を、長慶は三好氏家臣団内部の家格秩序にとらわれず評価した。多くの大名家では当主一族や有力家臣の名跡を継がせる形で、家格秩序を改変せず、取り立てていた。しかし、長慶は松永姓のまま、久秀を一族や家臣団の最上位に位置づけたのである。長慶は戦国時代で初めて足利将軍家を推戴せず、首都京都を支配したが、家臣団に対しても、家格秩序にとらわれることはなかったのである。

久秀に対して、長慶はもともとは自身の家臣を久秀の家臣としたり、与力や援軍をつけたりして、全面的に後援することで、久秀に腕を振るわせたのである。また久秀も、有為の人材を積極的に受け入れた。それは、天皇の教師、足利一門や守護から、荘園の代官、朝敵とされた南朝由緒の者まで多様性に富む。彼らの中からは、信長の祐筆や秀吉の引き起こした文禄の役の停戦交渉を担い北京へ向かった者、徳川将軍家御流儀としての剣術を確立する者もいた。

大和においては、日本最大の宗教権門であった興福寺と、その膝下の奈良に対峙する形で、新たな武家権力の支配のあり方を示した。その象徴が、南都の宗教建築群を圧倒した多聞山城であり、村落共同体に基づいた支配であった。久秀は大仏殿炎上のイメージが強いが、奈良の住民や柳生氏などの領主だけでなく、興福寺からも官符宗徒中の棟梁として認められるなど、大和に受容され、支持される存在でもあった。

従来、久秀は信長に降伏したとか、名物茶器を信長に献上したことで大和一国を安堵されたと理解されてきた。しかし、これは完全に誤りである。久秀は、義昭や信長にとって敵ではなく、二年前からの味方である。それどころか、久秀は三好三人衆や篠原長房の攻撃を一手に引き受け、その東進を食い止めた。

戦国時代は実力の時代とされるが、それほど単純ではない。身分や家格に規定された秩序が厳然として存在していた。そうした従来の社会秩序を改革することが、久秀にとっての下剋上であった。

 

 

 

もともと天野氏の研究を追いかけていたようなコアな畿内史ファンにとっても、従来の本よりも久秀さんの大和統治の模様が詳しく掘り下げられていますので、戦国期の大和や筒井家の動向等にさまざま触れられて興味深い内容になっていると思いますよ。

 

 

  

特定層に刺さりそうなポイント

久秀さんの人間性というか、あれこれ妄想する余地があるようなエピソードがいくつか取り上げられております。

 

例えば芙蓉ポエム。

南禅寺の高僧が久秀さんに贈った讃の内容が……

「桃李門中多喜色、芙蓉幕下得兵権、民歌美政帰斯主、士感殊恩服厥賢」、久秀さんの下には優れた人物が集まり、芙蓉(富士山の雅名)のように立派な長慶の下で兵権を得ている、民は久秀の仕置きが良いことを喜び、心ある武士は久秀の賢明な処置に服しているという意味になろう。

 

という。

 

芙蓉。

 

確かに富士山のことも芙蓉と表現しますが……。

禅寺では普通に芙蓉の花を活けていたりしますし、ていうか芙蓉って昔から中国では美女の代名詞でもありますし、割とガチでみんな長慶さんのことをそっちの意味のイメージで見ていたんじゃないか説が私の中で腐とはいったい……うごごご!!

 

 

他にも、天野氏の脚色が若干入っているような気がしないでもないのですけど、長慶さんのお気に入り1号の松永久秀さん、お気に入り2号の石成友通さん、前妻と後妻の対立……長逸は見た! みたいな文脈がときどき出てくるのが面白いです。

 

こんな対立軸を挿れられると、三好義興さんが瀕死の時に、久秀さんが友通さんへの手紙の中で悲嘆にくれているという割と最近有名なエピソードについても……

「こんな大変な時に、殿と若のそばにいるのがよりにもよって後妻のあなたで、大和にいる私は悔しいながらもあなたからの便りを心待ちにせざるを得ない」

みたいなニュアンスが実は混じっていたんじゃないかとかもはや史実とか全然関係ない別方面の妄想が頭に浮かんできて困ってしまいます。

 

 

三好家中のこと以外にも、実のお母さんが病気になった時、お母さんはほどなく治ったのに今度は久秀さんの方が心配しすぎて倒れてしまった、みたいな梟雄イメージからはだいぶ遠い一面が紹介されていたりもして楽しいですよ。

 

 

 

ちょい真面目な感想(でも妄想)

少し三好贔屓過ぎではないか、ちょっと足利義輝さんが色々押し付けられ過ぎではないか、などの感触はいつも通りではありつつ。

 

その上で、天野忠幸さんの唱える三好長慶こそが戦乱と従来秩序の克服を最初に手掛けた天下人」「長慶のビジョンを他の誰よりも深く共有し、かつ強く支えていたのが松永久秀という描像は大変魅力的な仮説で、私も含めて多くの人が影響を受けているのですけれど。

 

この本で久秀さんの後半生、長慶さん死後の活動がだいぶ掘り下げられたこともあって、かえって前半生と後半生の繋がりの整合性が難しくなってきたなあ、という印象も抱きました。

 

 

長慶さん死後、三好家中の内乱で三好三人衆や篠原長房さんに押されていたのはまだともかくとして……

その後の、足利義昭さん上洛作戦を牽引し、織田信長さんと一緒に見事足利義昭政権成立を手掛ける松永久秀さんのビジョンがよく分からないんですよね。

久秀さんの実力が相変わらずすごいのはよく分かるんですけれども。

 

長慶さん死後の久秀さん、および三好長逸さんあたりの行動を見ていると、本の前半部分、三好長慶さん生存時部分で語られていた「従来秩序の克服」というビジョンって、あんまり部下の久秀さんや長逸さんには伝わってなかったんじゃないの? という印象を持ってしまうのが正直なところです。

状況に応じて久秀さんは義昭さんを担いだり、三人衆は義栄さんを担いだり。

長慶さんが実際にやっていたこと……義輝さんを追い出したり、仲直りするけど立場をどんどん相対化していったり、そもそも義冬(義維)さんを無視したり……とだいぶ違うじゃないですか。

 

久秀さん・長逸さんに比べれば、むしろ義冬さんを担いだ篠原長房さんの方がとても素直に分かりやすいと思うのです。

 

もちろん人間なので宗旨替えはよくあることですし、臨機応変な立ち回りこそが武家の本分でもありますし、実際の世の中は小説のような分かりやすい一本道のストーリーで進んでいくはずがないですしなんですけどね。

 

結局のところ

秩序克服のような高邁なことを考えているのは長慶さん一人だけだったの?

長慶さんにしても個々の賢い判断を積み重ねた結果がたまたまそうなっただけなの?

久秀さんたちにしてもやはり生き残ることや権益を守ることを最優先したためなの?

などなど、実像らしい実像を掴むにはまだまだ材料が足りないなあという印象です。

 

この、長慶さん死後の反動、混沌がね。

とても人間らしい史実なんだけどね。

 

仮説通り長慶さんが高邁なビジョンをお持ちだったとして、実はそのビジョンを一番よく受け継いだのは部下の久秀さんや長逸さんではなく、友達の千利休さんだった……お茶の世界で新たな秩序を拓くんや……みたいなんもありだなあと思ったりとかね。

 

 

 

 

と、いろいろ書きましたが、最近の研究に触れる上でも、それに反論する上でも、あるいは何かしらの妄想を働かせる上でも、とても好適な材料になる本だと思います。

 

もっともっと研究や議論が進むのを見ていたいですね。

 

この頃の史料……本人たちの手紙などに加え、世論を示すような日記類などなど……がもっと表に出てきて、当時の情勢をクリアに想像できるようになりますように。

 

 

 

 

「アクタージュ2巻感想、ていうか売ってねえ」原作:マツキタツヤ先生 / 漫画:宇佐崎しろ先生(ジャンプ)

 

アクタージュ2巻をちゃんと発売日に買いに行ったのにどこにも売っていなくて何軒も本屋さんを巡ってやっと確保できたのでかんたんしました。

 

ヤングキングアワーズ週刊漫画ゴラクの漫画でもあるまいに、どうしてジャンプのコミックを買えただけでこんなに喜ばなくてはならないんだ(笑)。


www.shonenjump.com

 

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表紙は主人公のライバル……

というか絶対王者的な女優であらせられる百城千世子さんです。

白を基調としたデザイン、ふわりとした髪質、瞳のニュアンス、演技に対する姿勢と、何から何まで主人公の夜凪景さんと対照的で、それでいて大変魅力的な女性だという。

 

この作品は次から次に引力の強いキャラが出てくるのが凄いと思います。

 

 

 

アクタージュ、ありがたいことに打ち切りを回避し、さいきんの本誌ではセンターカラーまでいただいてはりました。

じわじわ人気出てきたのかな、よかったなあと思っていたのですが、こんなけ単行本が刷られていないところを踏まえるとまだまだ危険水域なんでしょうか。

それとも、もしかしたらめっちゃ売れすぎて品切れだっただけ……?

あるいは品薄商法だったりして……?

(なんでもいいから右肩上がりに人気が出るといいなあ) 

 

 

 

2巻では「デスアイランド編」……いわゆるバトル・ロワイアル的な青少年が殺し合う設定の漫画の実写映画化に夜凪景さんが参加しはる内容になっています。

百城千世子さんに会ってみたいがためにオーディションを受けて、なんやかんやで合格するも自身の演技上の大きな課題を自覚して、それを頑張って克服しながら支え合える仲間を得ながら百城千世子さんに近づいていく……という流れ。

 

詳細はネタバレいたしません。

 

 

 

単行本でまとめて読み直して抱いた感想としましては。

 

まずは何と言っても手塚監督(丸メガネサングラスの人)のしたたかさ。

本誌で1話1話見てても「喰わせものやなあ」と思ったもんですが、通して読んでみるとこの人夜凪景さんのことを「百城千世子さんの新たな魅力を引き出すための駒」として徹頭徹尾扱ってはるんですね。

まったくブレていない。

パーツパーツで見たら主人公を評価していたり導いていたりしているんですけど、それはあくまで主演女優を更に引き上げるための手段に過ぎない訳です。

漫画演出上はともすれば夜凪景さんと百城千世子さんの実力が肉薄しているように映るのですが、この辺りの手塚監督のスタンスが埋めがたい彼女たちの実力差・実績差をリアルに表現しているように思えて、漫画として重層的な印象を与えてくれる感じがしてええなあと感じ入りました。

 

逆に、監督としての対比と言いますか。

登場回数がぐっと減った黒山監督のおまけ漫画での魅力掘り下げがよございました。

コミックに収録されているおまけ漫画、ぜひ見てみてください。

めんどくさい映画愛と親バカが超いいですよ。

 

このアクタージュ、場面場面では夜凪景さんや百城千世子さんがまさしく主役なんですけど、通して読むと、流れをつくっている監督たちが裏の主役なのかもしれませんね。

構成、演出の意図は全容を見てみないと分かりにくいので、監督の意図を想像しながら読み進めると一層楽しい漫画なのかもしれません。

 

 

 

本誌であまり印象に残らなかったけど2巻を読んだときは印象に残った箇所としては。

 

「scene10.顔合わせ」の扉絵デザインのよさ。

本編と趣の異なる衣装を着ている夜凪景さんが素敵です。

 

 

「scene13.夜凪の俯瞰」で斬られた堂上竜吾さんの表情。

夜凪景さんのゲロに注目してしまいがちですが、いままさに絶命しようとしている堂上竜吾さんの演技がきれいでいいなあと思いました。

漫画的には主人公に意地悪なことを言う役回りですが、そういう人がちゃんといい仕事してるのが好感度高いのです。

ゲロがかかっても喜んだりせずに動揺しまくってる精神の健全さも素晴らしい。
(おまけ漫画より)

星アキラさんといい、スターズのメンバーはさすがの魅力実力ですね。

 

 

それに、何といっても夜凪景さんが友達を得ていく過程の描写。

これもまとめて読み直すと更によさが分かりますね。

なんというか人生やり直している感があるというか。

ドラゴンボール初期の孫悟空さんや連載初期のキン肉マンさんなんかの、世間からけっこうズレていた主人公が、仲間を得ていくなかで自身のスケールをどんどん大きくしていったような感、仲間も主人公の影響を受けてそれぞれが成長していくんだ感があるというか。

やーほんまジャンプ漫画のよさですわ。

 

 

あと、ジャンプGIGAに袋とじで掲載されていた漫画が収録されていたのも良心的だと思います。

(肉体の欲求に抗えず夜凪景さんの情動が露わになるというエキサイトな内容です)

 

 

 

表紙カバーをめくると出てくるボツ表紙カットも相変わらずキュートですし。

2巻もたいへん満足度が高かったです。

 

 

引続き連載が堅調に続いていきますように。

デスアイランド編の次が大事なんでしょうね。

 

 

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美少女系の漫画の話のあとにオッサン漫画の話をするのもアレなんですが。

 

同時期に発売されためしばな刑事タチバナの30巻もめっちゃ面白かったです。

いつも以上にプロットもセリフもキレッキレで。

 

めしばな刑事タチバナも、実は多分に映画的・芝居的な漫画だと思っています。

アクタージュが好きな人はめしばな刑事タチバナも好きなはずなんだ(暴論)。

微百合シーンもありますしね(強調)。

 

 

 

 

「アクタージュ 1巻感想……なぜにこの漫画をおすすめするのか」原作:マツキタツヤ先生 / 漫画:宇佐崎しろ先生(週刊少年ジャンプ) - 肝胆ブログ

 

「アクタージュ3巻 感想 百城千世子は偉大なり」原作:マツキタツヤ先生 / 漫画:宇佐崎しろ先生(ジャンプ) - 肝胆ブログ

 

「Bloodstained:Curse of the moon」が悪魔城伝説ライクでごっつう面白い(インティ・クリエイツ)

 

悪魔城ドラキュラシリーズを手掛けていたIGA(五十嵐孝司)さんが製作した2Dアクションゲーム「Bloodstained:Curse of the moon」が悪魔城伝説の正統後継ゲームみたいな仕上がりになっていてかんたんしました。

 

今の時代にこんな懐かしく面白い代物に出会えるとはとても幸せです。

 

curseofthemoon.com

 

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2018年に発売されたゲームでありながら……

 

どこかで見たような猫背スタイルの主人公「斬月」さん。

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ベルモンド家っぽい階段の昇り方です。

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ベルモンド家っぽいジャンプです。

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悪魔城伝説のop「prayer」っぽい登場シーン。

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巨大ボスと戦ったり。

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風呂場を覗いたり。

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左右反転したラスボス直前階段を前にしたりします。

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ここで隠しボーナスがあるのも悪魔城シリーズっぽいですね。

 

 

悪魔城シリーズを相当やり込んだ人たちがつくった作品という印象です。

ゲームの手触りも難易度もまさしくああこれこれこんなのがやりたかったですよ。

 

悪魔城ファンが期待するであろうBGMについても大変良質で、個人的には1面、4面、7面、エンディングあたりの曲がお気に入りです。

 

これが1,000円でプレイできるとは。

いろんなゲーム機器で遊べるのも含めて素晴らしいですね。

 

 

悪魔城シリーズの古参ファンの中にはかつてIGA氏の耽美系探索型悪魔城路線をめっちゃ叩いていた人もいたものですが、悔い改めてこのBloodstainedをノーダメクリアできるまでやり込むべきではないでしょうか。

もう何十年も経った話なのでノーサイド、この傑作をありがたくプレイさせていただきましょう。

 

 

 

ゲーム紹介に戻りまして。

 

悪魔城伝説ライクに、三人の仲間が登場します。

 

 

女性の鞭使い「ミリアム」さん。

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リーチが長く、ジャンプ力が高く、スライティングが出来て、サブウェポンがどれも強いという。

(女性ベルモンドなキャラクターですがさすがにバーニングモードはありません)

 

主人公の斬月さん(平常状態)よりも明らかに使いやすいので、彼女を主軸に攻略していくといいと思います。

 

 

伝統的な扉の開け方。

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壁を叩くと宝石袋やハート(体力回復)が出てきたり。

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メデューサヘッドっぽい敵。

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骨柱っぽい敵。

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安置でボスの攻撃をやり過ごす姿。

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意外と腕力系の少女だったりもします。

 

えっちら

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ほーい

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仲間と力を合わせるとショートカットできる仕様なのが面白いですね。

 

 

 

続きまして錬金術師の「アルフレッド」さん。

悪魔城伝説サイファさん枠です。術がもう完全にまんまです。

 

杖の振りが遅いのが難点。サイファさんの太鼓乱打の如き腕前はありません。

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便利な炎バリアー。

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ボスだろうがお構いなしに凍らせる術。

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敵をホーミングする雷玉の術。まさにサイファさん同様なボスキラーです。

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最後の仲間は「ジーベル」さん。

アルカードさんっぽいキャラクターですがアルカードさんの7倍くらい役に立ちます。

 

通常攻撃は上段に3つのコウモリを発射するというもの。

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アルカードさんのヘロヘロショットと違って威力が充分にありますし、このゲームの敵は宙に浮いていたり階段の上に陣取っていたりのケースが多いのでワイワイワールドのゴエモンさんの如き活躍ができるのです。

 

 

特技はコウモリ変化。

ショートカットや緊急避難に便利であります。

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こうやって見ると本当に悪魔城伝説リスペクトですね。

キャラクター性能を今日的に再調整したリブートという趣。
(バランスブレイカーのグラントさんはリストラされてしまったのでしょう……)

IGAさんが蒼月の十字架ユリウスモードなどで悪魔城伝説好きとして知られていたことを思い出します。

 

 

 

 

続いて、少しネタバレを交えてやり込み要素のようなものを紹介します。

 

 

 

 

 

 

 

 

主人公の斬月さんは、仲間をあえて殺していく(出会う場面で話しかけずに攻撃する)と新たな力を身に着けるという業の深い力をお持ちです。

 

二段ジャンプができるようになったり。

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攻撃判定の広い縦斬りができるようになったり。

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走れるようになったり。

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アルティメットなゲームモードでは溜め斬りまで使えるようになり、普通なら攻撃しにくいラスボスに直接刀が届くようになったりとやりたい放題。

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他にも、斬月さんが闇堕ちしたナイトメアなゲームモードでは三人の仲間が斬月さんの魂を開放しに地獄へ向かったりしますよ。

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どことなく月風魔伝っぽくもありますね。

ナイトメアモードのラスボス斬月さん戦は演出含めとても面白いのでおすすめです。

 

 

 

 

 

という訳で様々なゲームモードやボスラッシュなんかもあるので、何度も繰り返し遊べていい感じですよ。

 

慣れれば1時間かからずにクリアできるようになりますし、お手軽なのもいいですね。

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Steam版の実績も全部解除してみました。

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プレイしているうちに、ノーダメージでボスを倒せるようになるのが悪魔城シリーズの醍醐味だと思います。

 

興味のある方は是非プレイしてみてくださいまし。

 

 

 

このFC風のBloodstainedについても続編が製作されますように。

「Bloodstained:Curse of the Moon2 攻略の感想 ワイワイリスペクト」(インティ・クリエイツ) - 肝胆ブログ

 

 

「Bloodstained:Ritual of the Night」が探索型悪魔城の集大成過ぎて感動した - 肝胆ブログ

 

 

「自註鹿鳴集」会津八一さん(岩波文庫)

 

久しぶりに“もっと早く出会いたかった”と思えるほどの本を読むことができてかんたんしました。

 

奈良の寺社、あるいは和歌(とりわけ万葉集)に興味のある方は是非とも一読いただくことをおすすめいたします。

 

www.iwanami.co.jp

 

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知る人ぞ知る歌人、「会津八一」さん。

新潟県の出身、明治期~昭和の戦後直後まで活躍されたお方で、主に奈良の寺社仏像を題材にした和歌でいまも多くの人を惹きつけておられます。

 

その会津八一さんが生涯に読んだ歌をまとめ、更にご自身で註釈を付したありがたい本がこちらなんですよ。

尊敬する人に勧められて読んでみたのですが、これは本当にもっと早く読みたかった、そう思えるほどの素晴らしい歌集でございました。

 

 

 

会津八一さんの歌の特徴は、ひらがなで書かれていること。

この独特の味わいがまたよいのですよ。

 

例えば。

 

春日野にて

 

かすがの の みくさ をり しき ふす しか の

つの さへ さやに てる つくよ かも

 

みくさ 「み」は接頭語。草。

さやに さやかに。分明に。

つくよ つきよ。月夜。月明。「よひづくよ」「ほしづくよ」ほしづくよ「さくらづくよ」などあり。

奈良博物館にて

 

こんでい の ほとけ うすれし こんりよう の

だいまんだら に あぶ の はね うつ

 

こんりよう 紺綾。紺色の綾地に金銀泥にて描きたる縦広一丈にあまる大曼荼羅金剛界胎蔵界の二幅あり。空海(七七四-八三五)が唐土より齎すところといふ。高市郡高取町子島寺の出陳なりき。

 

といった感じ。

冒頭に何処で詠んだ歌かを記し、和歌、自註、と続くスタイルです。

 

この自註もいいでしょう。

八一さんがどのような意図で詠んだのかがありありと伝わって参りますし、寺社仏像や古語の学習にもすこぶるよいですし。

奈良に縁があればピンとくる場景も多ございますので、関西の学生さんも下手に興味のない古典を勉強するくらいならこれを読んだ方がいいんじゃないかと思うくらいです。

 

 

好きな歌を挙げればキリがありませんが……。

 

唐招提寺にて

 

おほてら の まろき はしら の つきかげ を

つち に ふみ つつ もの を こそ おもへ

 

せんだん の ほとけ ほの てる ともしび の

ゆらら ゆららに まつ の かぜ ふく

夢殿の救世観音に

 

あめつち に われ ひとり ゐて たつ ごとき

この さびしさ を きみ は ほほえむ

吉野の山中にやどる

 

あまごもる やど の ひさし に ひとり きて

てまり つく こ の こゑ の さやけさ  

畝傍山をのぞみて

 

ちはやぶる うねびかみやま あかあかと

つち の はだ みゆ まつ の このま に 

三月堂にて

 

びしやもん の おもき かかと に まろび ふす

おに の もだえ も ちとせ へ に けむ

 

ああ、また奈良を旅したくなる。

実に奈良の匂いがする歌ばかりだと思うのです。

 

 

奈良博物館で即興で詠んだ歌、

あせたる を ひと は よし とふ びんばくわ の

ほとけ の くち は もゆ べき もの を

 

もいい。

びんばくわとは頻婆果というインドの赤い果実で、仏像といえば骨董趣味・古色蒼然なものがありがたがられるけど、制作された頃の仏像の唇は赤く輝いていたんだからね、的な意図なのでしょう。

侘び寂び一辺倒になりがちな我々の趣味に一石を投じてくださっています。

斎藤茂吉さんにこの歌を褒めてもらったそうです) 

 

 

 

 

もちろん奈良以外の歌もありますよ。

 

こちらは京都の教王護国寺(東寺)。

たち いれば くらき みだう に ぐんだり の

しろき きば より もの の みえ くる

 

密閉されていた寺院堂内に入り、暗闇にだんだん目が慣れてきたところ、軍荼利明王の白い牙が初めに見えた……という様子がよく伝わって参りますね。

 

 

 

肥後国熊本県木葉村の木葉猿売り。

このごろ の よる の ながき に はに(粘土) ねりて

むら の おきな が つくらせる さる

 

ちょっと欲しくなってしまいます。

 

 

 

東京の多摩の畑にて。

まめ ううる はた の くろつち このごろ の

あめ を ふくみて あ(吾) を まち に けむ

 

なんて農家心を呼び起こす歌なのでしょう。

お土さんが早く来てちょうだいと呼んでいるんですよ。

 

 

 

関東大震災の惨事を詠んだ歌も。

被服廠の跡にて(数万人が焼死した場所)

 

あき の ひ は つぎて てらせど ここばく の

ひと の あぶら は つち に かわかず

 

何日経っても大量の遺体から出た脂が乾いてくれない事実……。

 

 

 

漢詩からインスピレーションを得た歌もいいですね。

いりひ さす きび の うらは を ひるがへし

かぜ こそ わたれ ゆく ひと もなし

 

着想元:秋日(耿湋さん)

返照入閭港 憂来誰共語

古道少人行 秋風動禾黍

 

 

いかがでしょう。

取っつきづらいかもしれませんが、「思ったよりは面白そう」と感じた方はぜひ触れてみてくださいまし。

 

この本を懐に入れておけば奈良の旅がますます楽しくなりそうです。

というか奈良を再発見できそうです。

ゆっくり奈良をまわりたいなあほんまに。

 

 

会津八一さんの歌がこれから先の世代の方々にも継がれていきますように。

 

 

 

 

 

「こううんりゅうすい<徐福>3-4巻感想 卑弥呼さんいいよね」本宮ひろ志先生(グランドジャンプ)

 

本宮ひろ志先生の人類史漫画「こううんりゅうすい」が飛鳥や隋の時代まで進んできたところ、歴史漫画というテイストを残しつつ徐福さん・卑弥呼さん夫婦の旅番組っぽくなってきているのが穏やかかつ大望感があっていいなあとかんたんしました。


grandjump.shueisha.co.jp

 

 

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最新巻表紙の人物は聖徳太子さん(少年)です。

ちなみに3巻表紙は秦の始皇帝さんです。

 

「徐福・卑弥呼夫婦」というのも初めて聞いた方には意味が分からんでしょうけど。

 

 

以前も紹介しましたが、

「こううんりゅうすい<徐福> 1-2巻」本宮ひろ志先生(グランドジャンプ) - 肝胆ブログ

 

 

この漫画は本宮ひろ志御大による人類の歴史の流れを眺めていく漫画でして、

 

 ・富士山パワーで西暦二千二百年までの寿命を得た徐福さんと、

 ・同じく富士山パワーで年を取らなくなった卑弥呼さんと、

 ・水銀パワーで死ななくなった秦の始皇帝ことエイセイお爺ちゃんと、

 ・たぶんこれから富士山パワーを得るのであろう聖徳太子さんとが、

 

人間って何なのかなとか思いつつ、各地諸国家の興亡を眺めていく代物であります。

 

 

4巻の卑弥呼さんのセリフがこの物語のスタンスをよく表しているかと思います。

たとえ全世界の王になろうと 人間は決められた時間で死ぬ

私たちの運命はその馬鹿げた妄想に駆られた人間を…

ずっと見続けていく事よ

二千年を越える命を授けられたのはきっと意味がある…

人間たちはこれからもずっと争い続け殺し合うわ

でももしかしたら私たちは見る事が出来るかも知れない

いつの日にかその愚かさに気づき争いを捨てる人間たちを…

私はそれを見てみたいの

 

漫画なので時々主人公たちの戦闘シーンがあったり、エイセイお爺ちゃんがかめはめ波的なものを杖から発射したり、蘇我氏の陰謀や物部守屋の変なんかの歴史ファンが興味を抱きそうなシーンがあったりしますが、大きくは大河の流れ、苔むす大岩、時の流れを茫漠と見つめているのが本筋なのでありましょう。

 

 

そんな中での卑弥呼さん。

3巻では邪馬台国時代だったので卑弥呼さんは現役施政者ですから、けっこうドSな面を発揮していてそれはそれで大変魅力的だったのですけれども。

「ブラックティガー 3話 溟海の銃撃手」秋本治先生(グランドジャンプ) - 肝胆ブログ

 

 

4巻になると人間としての現役を退いて徐福さんと夫婦になって世界各地を気ままに旅することになりまして、険のなくなった卑弥呼さんの様子が大変魅力的なのです。

大草原で突厥の方々と向き合ったり、フランク王国の街角で踊ってみたり。

 

男性サイドの徐福さんやエイセイさんがまだまだガキっぽい、たまに妄想や激情が顔に出るところがあるのに比べて、卑弥呼さんの達観した、静かで、余裕のある気品が。
(そして多分キレたら一番怖いのが卑弥呼さんなのでしょう)

 

なんとなく本宮ひろ志御大の価値観が出ているのかなあとも思います。

 

大御所の描く理想の女性像ってそれぞれ個性があって好きなんですよね。

この卑弥呼さんもそうですし、

秋元治先生が手掛けているブラックティガー姐さんもそうですし。

富野由悠季さんのディアナ・ソレルさんなんかも私は好きです。

格と人間らしさが両立している女性像が、何かの参考になるような気がいたします。

 

 

 

こううんりゅうすい、歴史的な出来事に立ち会っている場面も面白いんですけれども、私は徐福さんと卑弥呼さんがゆったりと大陸の原野を歩いていたり、ヨーロッパの街道で馬車に揺られていたりする場面がいちばん好きだったりします。

 

夫婦で行くBS歴史旅番組みたいで、ストレスフリーに大きなものに接している心持ちになれるのです。

 

 

漫画の展開はまったく予想できませんが、西暦二千二百年まで連載があんじょう続いてくださいますように。

 

 

「こううんりゅうすい 最終8巻感想 案の定の本宮エンド」本宮ひろ志御大(グラジャン) - 肝胆ブログ

 

 

かんたん陰謀論づくり「例:安宅冬康さん殺人事件」

 

先日紹介した「陰謀の日本中世史」、よく考えたらこれって「かんたん陰謀論づくり」のテキストでもあるなあと気づいてかんたんしました。

 

↓前記事

「陰謀の日本中世史」呉座勇一さん(角川新書) - 肝胆ブログ

 

 

前回は詳しく紹介しなかったのですが、いわゆる陰謀論には

 

 ・結果から逆算したストーリー
  (最終的な勝者の筋書き通り)

 ・単純明快

 ・加害者と被害者が逆転

 

などの特徴があるそうです。

 

 

本ではこういう陰謀論を批判している訳ですが、逆に言うと、適当に選んだ歴史事件をこういう視点で解釈すれば誰でも陰謀論をつくれてしまいそうですね。

 

 

例えば戦国時代。

陰謀論といえば「本能寺芸人多過ぎやろ」というくらい本能寺の変が質・量ともに陰謀人気を集めているのですけれども、やっぱりこのブログだと少し前の時代の畿内史周辺に注目したいところであります。

 

畿内戦国史陰謀論としては

 

 ・木沢長政氏

 ・遊佐長教氏

 ・松永久秀

 

辺りが有名ですが、さいきんは三名とも「そうでもないんじゃないか」「むしろ特定の誰かにとっては忠臣なんじゃね」と言われ始めておりまして。
(まだ定説とまでは言い難いでしょうけど)

 

で、仮に彼らが陰謀家ではなかったとしてですね。

木沢・遊佐両名による畠山氏の支配力低下については他にもいろいろ要因を挙げられる気がするんですけど、従来松永久秀さんのせいにされていた三好家連続殺人事件の方は「じゃあ皆さん自然死ですね」とは素直に思えない死亡率の高さな訳で、おそらく他の原因をみんな探したくなると思うんですよ。

 

もし三好家の人気が高まれば、この辺に陰謀論者がつけ入ってくるに違いありません。

 

 

 

【以下、陰謀論注意】

 

三好家連続殺人事件の中でも、最も陰謀ネタにされそうなのは安宅冬康さん殺人事件でありましょう。

 

通説では三好長慶さんが「松永久秀さんの讒言(弟さん謀反しようとしてまっせ)」、「松永久秀さんの偏愛(ワイだけを見とくんなはれ)」「三好義継さんへの権力集中」「足利義冬さん封じ」「純粋に長慶さんがトチ狂った」あたりの理由で冬康さんを成敗したことになっております。

で、冬康さん殺害後、長慶さんも後を追うように1か月後にお亡くなりになります。
冬康さんが無実であったことを知り、嘆きながらの悲しい臨終……的なアレで。

 

 

実はですね皆さん。

私が入念かつ科学的な検証を行った結果を申し上げますと。

 

この安宅冬康さん殺人事件には、驚くべき叙述トリックが含まれていたのですよ。

 

 

だっておかしくないですか。

三好長慶さんの遺体は塩漬けにされて2年ばかし山に埋められていたんですよ。

「死んだことを秘密にしよう」てなことで、実際に割と秘密は守られていたんですよ。
(そのせいで政務意欲をなくしたとか久秀さんの専横を許したとかの風評が)

 

葬儀関係の記録から「命日は7/4ざんす」ということになっていますが、「本当に7/4に死んだ」ことを誰が証明できるというのです……?

 

2年の時を経て、長慶さんの命日は何者かが意図的に調整できる余地があった。

いや、それどころか、2年間死を隠した理由も、「長慶さんが死んじゃうと世間が動揺するから」だけではなくて、「長慶さんの本当の死因がバレたら困るから、遺骸が痛むまで寝かせておこう」という面もあったのでは……?

 

 

 

……真相を申し上げましょう。

 

 

三好長慶さんと安宅冬康さんの死んだ順番、実は逆!

本当は安宅冬康さんが三好長慶さんを殺したのです!!

(加害者と被害者が逆転)

 

 

動機はもちろん室町時代名物の家督争い。

 

長慶さんが愛息義興さんを失ったショックで息も絶え絶えな中。

幼少の義継さんに三好家を託すくらいなら、冬康さんが“三好”に復姓して自分が舵取りした方がいいんじゃねと思うのは当然のことであります。

 

 

更に。

 

 

仁将と呼ばれた冬康さんを兄殺しの道にそそのかした真犯人もいるのですよ。

 

その名は「足利義冬さん」&「篠原長房さん」

(最終的な勝者の筋書き通り。なお義冬&義栄の寿命)

 

 

動機?

あるある!

だって三好兄弟は結局足利義冬さんを無視してたじゃん!

四国衆の兵力を散々使いまわしたくせに、四国衆にほとんど利権くれなかったじゃん!

 

 

そんな彼らは義継さん&三好三人衆に冬康さんが実行犯であることをリーク、首尾よく冬康さんをも排除してしまいました。

もちろん、家督争いというダーティなイメージがつくのを防ぐため、死んだ順番を冬康→長慶とすることを首脳陣で握りつつ。

 

 

こうなれば義冬&長房コンビに怖いものなどありません。

 

義継さんは若造、

三人衆は目先の畿内統治で手一杯、

久秀さんは長慶さんの死から立ち直れず。

 

四国衆の力を掌握した彼らが、畿内三好家の力も取り込んで無敵になっていきますよ。

さあ次は義継さんをそそのかして永禄の変だイエーイ……

(足利家一統的な意味で単純明快)

 

 

なに?

 

久秀さんが足利義昭さんを逃がしただと?

 

 

【以上、陰謀論注意】

 

 

 

みたいなことを言い出す人が出てくるんじゃないですかね。

 

一応繰り返しますが、上で書いたことは何の根拠もない、口から出まかせですからね。

「なるほど」と思ったら駄目ですよ、下手に畿内史に詳しい人ほど騙される系ですよ。

 

 

この三好家周辺、他にも容疑者なんて作ろうと思えばなんぼでも作れます。

 

足利家はもともと疑われがちです。

畠山家は根来衆とか雑賀衆とか後南朝残党とかが領地にいます。

六角家は甲賀ニンジャを抱えています。

三好家は伊賀ニンジャにも手を出そうとしていた時分です。

 

もともと昔の人も松永久秀さん容疑者説で三好家の崩壊を理解しようとしていた訳ですから、陰謀論的には扱いやすい領域なんですよね。

安宅冬康さんは安宅冬康さんで、墓がどこにあるのかよく分からないなど妄想の余地が多いお人ですし。

 

 

 

手法を試してみましたが、陰謀論ってほんまに手軽につくれるもんなんだなあ。

これは危ない。

 

あとは、自分に都合のよい史料だけをセレクトして情報武装を分厚くして。

学識者に批判されたら

 

 「私が間違っているという証拠を出せ」

 「私が批判されるのは学会が自分たちの権威を守りたいから」

 

とか吠えといたらいいんですよね。

大半の人からしたらどっちが正しいのか分からないだろうし。

 

うーん、ひどいなあ。

 

 

 

たくさん陰謀論が出るのは人気がある証拠だとは思いますけど。

妙ちきりんな変テコ説が無駄に広がったりしませんように。

 

 

 

 

 

「陰謀の日本中世史」呉座勇一さん(角川新書)

 

応仁の乱に続いてヒットしている呉座勇一さんの新書「陰謀の日本中世史」がめっちゃ面白いし分かりやすくてオススメなんですが、その上で「そっち行っちゃうの……?」感がふんだんにあって複雑にかんたんしました。

 

www.kadokawa.co.jp

 

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保元の乱/平治の乱治承・寿永の乱源義経さんの結末、鎌倉幕府の内部粛清、建武新政/室町幕府成立と観応の擾乱応仁の乱日野富子さん、本能寺の変関ヶ原の戦い……といった日本中世史のエポックメイキングな出来事を取り上げつつ、これら史実にまつわる陰謀論をぶった切っていくような内容になっています。

 

 

第一の特徴として、「応仁の乱」ヒットで講演慣れされたのか、史実の説明がすこぶる分かりやすくなっています。

ぶっちゃけた話、「応仁の乱」を読むよりこの本の応仁の乱パートを読んだ方が一見さんにはぜったい通じやすいと思われます。

他の出来事についても最新の学説を踏まえた丁寧な解説をしていただけますので、日本中世史の大きな流れを知る上でとても取っつき易い良著になっておりますよ。

 

 

第二の特徴、これがこの本のウリだと思うのですが、世間にはびこる「俗説」「陰謀論」を一次史料や論理を駆使してバッサバサ斬り捨ててはります。

固有名詞は出しませんが、もうあの人もこの人も、まあ「斬られても仕方ないよね」的な人も含めて次々とやり玉に挙げられているんですよね。

●●氏をはじめ、多くの本能寺の変陰謀論者は、本能寺の変ばかり調べて、歴史上の他の陰謀に関心を示さない。だから現実と乖離した奇説に走ってしまうのである。本書のように、日本史上の諸陰謀を幅広く見ていけば、それらが必ずしも「完全犯罪」になっていないことがすぐに分かるだろう。

 

みたいな感じに。

 

これが痛快だと、世の歴史ファンの支持をかなり集めている模様です。

確かに訳の分からない説をテレビや雑誌で吹聴する人はたくさんいますから、真っ当な学問をされている方からすれば「よくぞ言ってくれた!」なのでしょう。

 

また、著者としても、史学に限らず一次ソースに当たる、きちんと検証可能な論理構築・実証を行うという科学的姿勢が世に根付いているのか不安で、デマや疑似科学に踊らされる人があまりにも多い現実を危惧したので、こういう本を書いたのだ……という説明をなされています。

 

 

この本はそういう本なのです。

初学者にとっては分かりやすく、良質な勉強になり、ある程度の歴史ファンにとっては言いたいことを言ってくれたカタルシスを得られる本。

これが880円なんですから、実に優れた、良心的な新書だと思います。

 

 

 

 

ただ……私としては「え、そっちの方いっちゃうんですか?」的な戸惑いを覚えたのも事実なのであります。

 

著者の気持ちは分かるんです。

すごい分かるんですよ。

 

それでもなお、こういう本がたくさん売れてしまうと、こういう本から入ってきた新しいファンは「次は誰を斬ってくれるんだろう」「あいつをもっと斬ってほしい」を期待するようになりますから、本業の歴史研究よりも他者攻撃に時間を取られるようになってしまうんじゃないかなあ……と不安になってしまうのです。

 

陰謀論は分かりやすいから人気が出る。

 

のと同じく、

 

他者攻撃は分かりやすいから人気が出る。のです。

 

 

読み進めながら、「これは見る人が見たら弱い者イジメじゃないのか」「や、斬られている人の自業自得だからいいのか」「読者は斬られている理由を本当に理解した上で斬ったことを褒めているのだろうか」などともやもやもやもや考えてしまって、良質な中世史解説の方がクリアに頭に入ってこなくなっちゃったんですよね……。

 

私の気にしすぎなんでしょうけど。

 

 

著者自身、他の歴史研究家のこういう意見を紹介されています。

私たち研究者は、人の一生という、限られた時間の中で研究生活を送っている。研究に取り組まなければいけないこと、明らかにしなければいけないことは非常に多い。そのさい、研究して史料としての利用価値があると判断されるものならば、もちろん、時間を割いて研究し、おおいに学問の進展に寄与させる必要がある。しかしわざわざそれを否定するために研究することは、およそ時間の無駄でしかない。この手のものは黙殺するのが学会の常識である

 

要するに、珍説やトンデモ理論は無視するのに限る、ということです。

 

そうした学識者のある種の常識を充分に理解しつつ、「全員が無関心を決め込んでいいのか」「訳の分からない説が世に広まるのを放置してていいのか」という使命感を抱き、この本を書かれた著者の勇気は素晴らしいと思います。

まさに「一歩踏み込む」決断だと思うのです。

 

なので、私が上で述べたもやもや感、当然著者は承知の上でのことですので……

外野があれこれ言うのも野暮というものなのでしょう。

 

 

こういった本はこういった本で世を確かに啓蒙しつつ。

 

応仁の乱」で魅せてくださった、当時の人(経覚さんと尋尊さん)の価値観や迷いや判断がビビッドに目に浮かぶような、当時の史料に基づく精緻な研究成果もいずれ発表してくださいますように。

 

 

 

かんたん陰謀論づくり「例:安宅冬康さん殺人事件」 - 肝胆ブログ