待ち望んでいたアクタージュの単行本1巻が満足度の高い内容でかんたんしました。
以前も紹介しましたが、
「アクタージュ 1話感想」原作:マツキタツヤ先生 / 漫画:宇佐崎しろ先生(週刊少年ジャンプ'18年8号) - 肝胆ブログ
この「アクタージュ」は演技・役者という少年漫画ウケしなさそうな題材を扱いつつ、内容は少年ジャンプらしい「友情・努力・勝利」感に満ちた期待大の作品であります。
主人公「夜凪景」さんが女優として天才性を発揮していく王道のストーリー。
ひと捻りある奥深い原作とテキスト表現。
一枚絵を中心に人を惹きつける魅力的なイラスト。
夜凪景さんと一緒に作者のお二人もこれからますます伸びていくビジョンが具体的にイメージできる傑作だと思うのです。
もっとも、題材がジャンプっぽくないせいで、せっかくの「友情・努力・勝利」要素が分かりにくいんですけどね。
友情……デスアイランド編から顕著になっていきます。
努力……ものすごく丁寧に描写いただいているのに、丁寧すぎて分かりにくいという。
勝利……基本夜凪景さんは失敗ばかりなので勝利要素はいまのところ薄いか。
実質では勝っているんですけどね。
そう、本質的な努力要素は他の連載陣に勝るとも劣らない内容(現実世界の話だし)だと思うのですが、いかんせん題材が「演技」なので読者に伝わりにくいのかなと感じます。
加えて、夜凪景さんは天才であるが故にかんたんに勝利させる訳にもいかないから、彼女の努力・成長を促すためにも失敗し続けさせざるを得ない感。
この辺り一般読者ウケしなさそうな要素がビンビンなのですけれども。
更に、作者のお二人がお若い、デビュー直後ということもあってか、細かな粗や粗雑さはどうしても目に付く訳で。
舞台が現実の映画撮影現場ということもあり、共演者やスタッフに迷惑をかけるような描写に眉をひそめる読者も一定いるのだろうなと。
「いいじゃん、現実の芸能界の方が粗だらけなんだから」「勝新太郎って知ってる?」などと思わなくもないのですけど、倫理意識や品質意識の高い現代読者にウケるかはやはり懸念せざるを得ません……。
実際、ジャンプ本誌では低空飛行を続けていて不安でいっぱいです。
アウターゾーン枠でもいいので、ストーリーのまとまりのよいところまで続いてほしいものであります。
続いていけば原作も作画もぐんぐん洗練されていくだろうし。
この1巻、通して読むと更に面白いんですよ。
まずは夜凪景さんの天才性と危うさを掘り下げ、そこからライバルの「天使」百城千世子さんの登場や、友情要素満載のデスアイランド編に展開していく流れが。
芝居という特性上、夜凪景さんの様々な衣装スタイルを楽しめるのも満足度高いです。
制服姿から、料理姿、着物姿などを満喫できますからね。
デスアイランド編後の題材がどんなものになるのかも楽しみです。
あらためて夜凪景さんの父親が失踪した際のコマを見てみると、酒瓶のほかに紙(原稿用紙?)が散らばっているのも気になります。
家に古いビデオがたくさんあることといい、お父さん実は脚本家とかなんでしょうか。
主人公同様に危ういお人のようですけど。
コミックスおまけの各キャラクター設定解説も興味深い。
例えば夜凪景さんは
●好きな映画
意外にラブロマンス好き
と設定されていて、ひょっとしたら将来恋愛体質になってしまったりするんだべかなどと思えて大変いかがわしいです。
恋愛映画の役になり切って、さらに映画と現実の境目があいまいになってしまったらえらいこっちゃですね。
個人的には星アキラさんの
●好きな映画
2作目が好きな様子。
が好感度高い……。
作中の彼の役割を投影するかのような設定が巧みだと思います。
あと、柊雪さんのガチで作画したらたいそう美人な感じもいいっすね。
今更ですが、別にこの作品のことを「分かる人には分かる」みたいな高尚な代物扱いしたい訳ではないんですよ。
題材のレアさや見かけのデビュー直後特有な稚拙さに惑わされず、素直に読んだら実は少年漫画の王道を歩んでいる作品でしかも面白いんだよ今後が楽しみなんだよ女性にもおすすめだよと声を大にして言いたいだけなんです。
なんでこの漫画をこんなに推すのかというと「夜凪景さんや百城千世子さんがかわいいからでしょう?」と聞かれれば「YES!」ではあるんですが、それ以上に「連載が続くとスゲェ化けそう」な可能性をこの作品、作者に感じるからなんですよね。
現時点のクオリティよりも数年後のクオリティに投資したい的な気持ち。
てな訳でほんまになんとか連載がしばらく続きますように。
色んな伏線がありますが夜凪景さんがおおきくは幸せになりますように。
「アクタージュ2巻感想、ていうか売ってねえ」原作:マツキタツヤ先生 / 漫画:宇佐崎しろ先生(ジャンプ) - 肝胆ブログ