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「働かないふたり 登場人物の変化(13巻感想)」吉田覚先生(くらげバンチ)

 

ほのぼのニートコメディ「働かないふたり」の最新巻がいつもながら笑えたのですが、だんだん登場人物に変化が出てきたなあと感慨深いものがあってかんたんしました。

 

www.shinchosha.co.jp

 

↓どんどん表情が多彩になっていく倉木さんが好きです。

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働かないふたりはニート兄妹「石井守」さんと「石井春子」さんを中心に据えたギャグマンガで、社会人年齢の登場人物がいつまでも少年少女時代のような無邪気な暮らし・掛け合いをしている姿がどうしようもなく愛しい内容になっています。

 

ニートを題材にしていますが特に悲壮感はありません。

8割がたギャグで、ときどきホロっときたり考えさせられたり家族愛にあたためられたりするようなドラマが混じっている感じです。

 

 

以前は作者さんの個人ブログで掲載されていたのですが、スカウトがあったようで現在はくらげバンチで連載されています。

毎週ちゃんと更新していて凄いんですよ。

ニート漫画なのに作者さんは誰よりも勤勉という。ありがたいことであります。

 

 

気づけば13巻。

この最新巻ではいままで以上に登場人物に変化が出てきていて、内容はとても面白いのですが、物語を畳みにいっているのかと少し不安になってしまいました。

きれいに終わってほしいと願う一方で、ずっとこのゆるい空気感に接していたいと思うのは読者のワガママというものでしょうか。

 

 

備忘も兼ねて、登場人物の特徴や13巻での活躍、感じた変化などを書いていきます。

ネタバレを含みますのでご留意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

石井守

ニート界のエリート……“エニート”と妹から称されるスーパーお兄ちゃん。

頭脳明晰、コミュニケーション上手、行動力あり、運動神経よし、芸術得意、料理得意、工作得意、ゲーム得意、ユーモアセンスあり、恋愛経験あり、海外放浪経験あり、漫画を描けば入賞、殺気を察知可能、親孝行、妹を守る、お年寄りにも友達にも優しいなどなど……

「なんでニートしてるの」と言わざるを得ない非現実的傑物です。

 

13巻では縁あって他のご家庭のニートを救うという活躍をされていました。

スゲェ。マジありえねぇ。

 

本当になんでニートしているのかいまだに分からないのですが、おそらく自分のできること・やりたいこと・やるべきことを冷静に見極めているんじゃないでしょうか。

あるいは、自分が社会に出てしまったら妹の支えがなくなってしまうから……?

 

あくまで私の印象ですが、初期の頃よりもその能力を様々な人のために使い始めている気がいたします。丸山くんや倉木さんを始めとして、兄妹ともども世間との接点が増えてきていることが大きいのかもしれませんね。

 

漫画家になって多くの読者を勇気づけるような存在になっていくのかなあ。

 

 

 

石井春子

ニート妹。兄と違って本当にエデュケーションもトレーニングもされていない感じ。

かわいくて巨乳なのでなんとかならんかなと母親は願っている模様。

 

彼女は対人恐怖症もちで、ニートになるべくしてなったような存在です。

が、兄や倉木さんなど心を開いた方に見せてくれる表情はまことに呑気なかわいさがあって魅力的なんですよ。

 

13巻では、お友達のユキちゃんの恋を応援するという、これまでの彼女からすれば考えられないような勇気を見せてくださいました。

私が親だったら泣いていたと思います。

 

丸山くん、倉木さん、ユキちゃん、友晴くんと、少しずつ世の中に触れられるようになってきて、街を出歩くこともできるようになっていって……

あたたかな社会復帰ドラマを見てきたことにあらためて気づきました。

 

 

 

倉木さん

石井家の隣のアパートに住むOLさんで、アホな石井兄妹を眺めているうちに心が癒され不眠が治り、いつしか兄妹と一緒に遊ぶようになったという。

冷静に考えると危ない人のような気もしますが(笑)、石井兄妹に救われた登場人物の代表であり、その後は石井兄妹によき影響を与え続けている社会人でもある方です。

とりわけ春子さんとユキちゃんに健全な女子力を与えているところが素晴らしい。

 

13巻では「石井家バーグその後(単行本おまけ)」と「冬至(#808)」が好き。

#805で春子さんに頭突きされていたのもキュートでした。

 

 

 

丸山くん

いつも石井兄妹&倉木さんと遊んでいる社会人。

人が良すぎて損をしがちですが、友人からの好感はすこぶる高いタイプの男性です。

 

彼は初期の頃から一貫して「いい人」で、実はこの漫画では数少ない「石井兄妹から影響を受けたというより、石井兄妹に安心を与え続けている」貴重なキャラなんですよ。

そんなキャラは石井家両親とこの丸山くんくらいであります。

この方がいなければ、兄妹のニート生活はもっと荒んだものになっていたのやも。

 

13巻でも「ひみつきち作るぞー」という守さんの呼びかけ一発で駆けつけてくれる安心感がもう最高でした。

こんな友達が一人いてくれるだけで精神がどれほど健やかになることか。

 

 

 

遠藤くん

守さん&丸山くんの友人でイケメン、彼女も美人という。

 

これまでは影が薄かったんですけど、13巻では急にとんでもない行動を。

こんなズレた感性の持ち主だったんですね……。

 

 

 

稲森さん

その遠藤くんの彼女。

美人でナイスバディで突き抜けた陽気さの持ち主……陽の気がめっちゃ強くて、他の漫画の主人公がゲスト出演しているかのような立ち位置のキャラです。ある種ドラえもんみたいになんでもできてしまいそうというか。

登場しすぎると漫画のトーンが変わりかねないんですが、私はそんな彼女の活躍も心待ちにしています。

 

13巻での活躍は控えめでしたが、彼女は重要な伏線を繋ぐ役割を持っていますのでどこかで大きく動いてくれることを期待ですね。

 

 

 

ユキちゃん

春子さんの友達で、男のような風貌の女子大生。

実際ケンカがとても強いのだけれど、本人は女らしく生きたいと願っている感じです。

 

13巻での彼女は実に乙女でした。

彼女は春子さんと同じく他人に気持ちを上手く伝えられないタイプだったのですが、そんな彼女がついにここまでという。

彼女と春子さんの成長は多くの読者を喜ばせたのではないでしょうか。

 

 

 

アキさん

ユキちゃんの姉で人間凶器。職業不詳。

 

基本的に人を寄せ付けない存在ですが、そんな彼女が守さんの前ではちょっとだけメスっぽくなってきているのが面白いですね。

武力的な強弱だけでは推し測れない守さんという存在に惹かれているようです。

 

守さんが渡してくれた石は、守さんによって厳選されたよく飛ぶ石だったのかなあ。

 

 

 

ユキ父

ユキちゃん・アキさんの父親で無職。

職業的な意味ではなくスト2的な意味でトレーニングし続けているオッサンです。

 

おおきくはダメな大人ですが、油断しているとたまにいいこと言うから侮れません。

13巻末のおまけ漫画では油断していたら泣かされそうになりました。

 

 

 

戸川さん

ここ数巻のメインコンテンツと呼んでも過言ではない方。

 

石井父の会社の部下で、趣味で小説を書いています。

さまざまな縁あって守さんと出会うのですが……。

 

10巻の「また書こう」から12巻の「みじめ」、13巻の「にっ」まで、創作をするような方にとっては共感しまくりの激しい魅力を発揮してくださいました。

いまだどう着地していくのか不明ですが、現在進行形で大きく変化している彼女の姿はとても刺激的で、強い引力を感じます。

 

 

彼女にかけた石井父の言葉も、部下に対する真摯と息子に対する信頼とが凝縮されていてめっさよかった……!

 

 

 

 

守さんの活躍が更に広がり、春子さんとユキちゃんの確かな成長が見られ、戸川さんの新たな一歩を目撃できるという、良い意味での変化に富んだ13巻でございました。

石井兄妹はほんま様々な人の表情を豊かにしていきますね。

 

丸山くんや倉木さんが安定していて、遠藤くんが迷走していて、ユキ父が番外編的に活躍しているのも楽しいです。

 

このままイイ感じに連載が続いていきますように。

 

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