肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「カラスの教科書」松原始さん(講談社文庫)

 

 

カラスの生態や特徴を楽しく学べる本、「カラスの教科書」に
かんたんしました。

 

bookclub.kodansha.co.jp

 

 

読み終える頃には「好きな鳥はカラスです」と言ってしまうほど
カラスへ愛着を感じてしまう。

凄まじいクオリティのカラス布教本であります。

 


作者である松原始さんの文章がいいですね。

知的で、ユーモアがあって、偉そうでもなく卑屈でもなく
マイペースで飄々としたリズムが快い文体。

京大の人っぽいなあと思ったら本当に京大ご出身の方でした。

 

同じくイラストを手掛けた植木ななせさんも素晴らしいと思います。

植木ななせ - Google 検索

カラスをこんなに愛嬌たっぷりに描いた方はいないんじゃないでしょうか。

松原始さんの文章と相性バッチリで、読者をカラス好きにさせる
大きな原動力となっております。

 



本書は4章仕立てですので、各章ごとに概要や感想を書いてみたいと思います。



第一章 カラスの基礎知識


日本で主に出会えるカラス……ハシブトガラスハシボソガラス
見分けるのはプロでも難しいといったことや、
カラスは若い頃は群れで暮らして成熟すると家庭を築くといったことや、
雛から巣立ちまでのなかなか感動的な家族劇や、
マヨネーズが大好きだったり割烹の残飯を食べてたり羨ましいぞといったことが
紹介されております。


印象に残ったのが作者さんの恩師の山岸哲先生のコメントで、

「カラスは行動範囲広すぎて見えねえ、捕獲できねえ、標識できねえ、年齢わからねえ、性別わからねえ、巣が高過ぎて覗けねえの三重苦どころか五重苦、六重苦。だからオレはやめた」


というもの。

これだけ身近な鳥ながら、実はカラス研究はまだまだ進んでいないのだそうで。
なるほど……。


あとは「焼き芋大好き」というところに親近感を覚えました。




第二章 カラスと餌と博物学


学術的なパートで、採餌行動やくちばしの構造や山間部での暮らしぶりや
遊び・知能ぶりや世界各国における文化との関係などを紹介いただいております。


第一章で指摘されていた通り、カラスの行動を捕捉して観察するというのは
本当に難事業なんだなあ……と唸ってしまいます。


推論段階ということわりつきながら、沖縄諸島における島ごとのカラスの
行動・くちばしの違いは採餌環境の違いがもたらしたものではないか……
という進化論風の内容が興味深かったです。

カラスをモデルに何世代で特徴が分化していくのかとか分かったら
意義深そうですね。


あと、松ぼっくりで遊ぶカラスを描写した文章・イラストが
ともにめっちゃかわいくて和みました。




第三章 カラスの取り扱い説明書


ゴミ問題や、攻撃されたりするんですかいいえ基本されませんという
トピックスになります。


穏やかな語り口でカラス駆除の効果性に疑問を呈しておられて、
立派な学者さんだなと敬意を抱きました。

 -罠にかかるカラスは、放っといても死ぬ個体である可能性が高い
 -駆除を続けてきたが、カラスの総数に影響があったように見えない 等

行政は民意に従ってやることも多くて必ずしも科学的合理性があること
ばかりではないのが実情ですけど、こういった波風を最小限に抑えた
提言・諫言はものすごく貴重だと思うのです。

市民サイドもいろいろ学んでまっとうな要望を上げていく必要がありますね。


カラスは人間を怖がっているので基本的に攻撃はしてこない、
かんたんなカラス語を理解すればカラスのテンションは分かる、
とりあえず巣・雛から目を逸らして距離を取れば大丈夫だ、
そもそもカラスと人間のウェイト比は人間と象のウェイト比なんだぜ、
といった内容も分かり易くて納得感が高かったです。

野生生物への対応全般に通じることだと思います。




第四章 カラスのQ&A

Q カラスはなぜ黒いのかなあ?

A 全然分かりません。

 

Q カラスってお賽銭を盗んで自販機で買い物するんですよね?

A それ、ガセネタです。

 

といった楽しいQAがたくさん載っていて面白うございました。

 

 


最後に

 

とても印象に残ったのが結に書いてはった

シギのような長いくちばしも、猛禽のような鋭い爪も、アホウドリのような長い翼も持ってはいないが、それでもカラスはちゃんと餌を食っている訳だ。
包丁で言えば「これ一本でだいたい間に合う」という万能包丁で、刺身や菜切りに特化したつくりではない。

遭えて得意科目を作らない、60点主義でいいから八方美人にしておく、という進化もあり得るということだ。


という文章です。

ゼネラリスト気味人材に勇気と感銘を与えてくれる名文だと思います。
ちょっと家紋に八咫烏を掲げたりしたくなりますね(雑賀衆)。

 


以上、野生生物に興味がある方にはとてもおすすめの本です。

カラスによるゴミ荒らしに悩んでいる方にも参考になると思いますよ。

 

人間とカラスのほどよい共存が続きますように。

 

 

 

 

「第1回インフラメンテナンス大賞」と「(株)デックのSDF工法」

 

第1回インフラメンテナンス大賞という社会的意義の大きそうな表彰が
ひっそりと行われていてかんたんしました。

併せて、素人目にもすごいと思ったデック社のSDF工法にも
かんたんいたしました。

 

www.mlit.go.jp

 

 

日本の全国土に張り巡らされた膨大なインフラ群の
保全・維持が大きな課題となっております。


そんな中、国土交通省等が民間企業の優れたインフラメンテナンス技術を賞し、
今週表彰式が行われたそうなのですが。

日刊工業新聞の社説くらいでしか取り上げられていなくて侘びしい限りです。

社説/初の「メンテナンス大賞」−インフラの維持・管理技術に注目を | オピニオン ニュース | 日刊工業新聞 電子版

 

省庁サイドでの発信も足りなかったのかもしれませんが、
もう少し注目されてもいいように思いますね。


受賞者の方々、まことにおめでとうございます。

 

 

受賞案件としては


 総務省案件の情報通信分野(NTT等)、

 文科省案件の大学・校舎施設分野(名大等)、

 厚労省案件の水道分野(東京都水道局等)、

 農水省案件の農林水産分野(山田堰土地改良区等)、

 国交省案件の道路・鉄道・河川・下水道分野(東京都下水道局等)、

 防衛省案件の自衛隊施設分野(第1術科学校『大講堂』大改修)、


と幅広い領域からセレクトされております。

 

ざっと受賞案件を確認したところ、ITを活用した効率化案件が多いですね。

IT業界自体、数十年前の機器やコードの保守改修で死にかけている人も
多いと思いますが……。

画期的なリニューアルなりマイグレーションなりの技術が出てきたら
IT系企業も表彰してあげてほしいものです。

 


受賞案件の中身については、残念ながら概要紹介を読んだだけでは
具体技術や定量効果をはっきり把握することはできません。

一定程度の企業秘密情報も入っているんでしょうし、
まあ概要レベルの発表になっちゃうのは仕方ないでしょう。

 

そんな中、素人目で見てもデック社のSDF工法(厚労大臣賞)
分かり易い上にすごいなあと思いました。

 

開削工事が不可能であることから水道管路の経年管路更新が難しく、今まで手付かずであった軌道下横断、河川横断、交通量の多い交差点、他企業体が輻輳している道路において、管路更新を可能とする切り札としてステンレス・フレキ管を使用した既設管の中に挿入する工法(SDF工法)を開発した。

 

水道管は至るところに埋まっておりますが、線路の下や川の下や
交通量の多い交差点の下などを掘り返すのは困難です。

そこで、該当箇所を掘るのではなくて、他の場所で立坑を開けて、
既設の水道管の内側に新しい水道管をむんずむんず挿入していく
画期的な技術を開発されたのだそうで。



SDF技術協会


こちらのサイトではSDF工法のプロモーション動画が載っていたりして
簡潔明瞭に技術を解説してくれております。

動画では、
踏切近辺に2つの立坑を掘り、そこからSDF(Stainless Dynamic Flexible)管を
挿入していくことで電車を止めることなくリニューアルを完了。


技術に詳しくない者でも凄さ素晴らしさを絶対に理解できる動画です。
一見の価値あり過ぎです。

地震にも強い、90度カーブの既設管にも対応可能、
強靭かつ弾性に優れたこんな技術をよくぞ確立されたものだと感動しました。

考えた人も実現した人もまさしく偉大です。

 



こうしたインフラ・メンテナンスの世界に光が当たるのは
とてもよいことだと思います。

お国全体であれ各企業内部であれ、
何十年もかけて築き上げてきたインフラを誰かがメンテしてくれているから
今日も平和に安定的に仕事が回るのです。

インフラを維持できなくなって滅びたローマ帝国の教訓を
忘れてはなりません。



誰かを支えてくれている人がまっとうにリスペクトされる世の中でありますように。

 

 

 

「未来の職場を予感させる3Dホログラムのヘッドセット、米企業が開発」ブルームバーグ Selina Wang記者

 

 

アメリカ企業「メタ社」でAR・3Dホログラムを活用した職場づくり実験が
始まったというニュースにかんたんしました。

攻殻機動隊とかマクロスとかの世界ですね。

 

www.bloomberg.co.jp

 

記事の中のこの写真、とても格好いいです。
何が書いてある記事なのかも一目で伝わります。
(Photographer: Stephen Schauer/Meta)

f:id:trillion-3934p:20170727211523j:plain

 

メタが目指すのは、実在する物体を扱うのと同様にホログラムを取り扱え、現実世界をシームレスに拡張させるAR技術の確立だ

ユーザーは、クリックやドラッグ、ボタン押しといった操作をすることなく、手で3次元物体をコントロールできる

コンピューターも間仕切りも、普通の仕事机も椅子もないオフィスで、スタッフがホログラムの回りに集合して共同作業する、という未来のビジョン

 

いよいよ実現・普及が見えてきましたね。

職場の掃除が楽になりそうでいいと思います。

一方、空間に映したホログラムをいじって仕事し続けると
腕がプルプルになりそうな気もします。
この辺は人間工学に基づいて楽な姿勢・映し方が見出されていくんでしょうか。



メタの従業員の一人の仕事机にはヘッドセットとキーボードが置いてあるだけ、壁にも賞状と新聞の切り抜きがいくつか貼ってあるだけだ。だがヘッドセットを装着すると、ガールフレンドの写真やスティーブ・ジョブズ氏の胸像、「テスラ3」などのホログラムが姿を現し、別画面ではユーチューブの音楽ビデオが再生される。本物の仕事机の上には、ホログラムの整理棚もある。

 

地味にキーボードは残っているのが面白いと思います。

ARキーボードの研究も進んでおりますが、
いまのところは本物キーボードの方が操作しやすいのかもしれません。

空中に浮かんだARキーボードを打ち続けたら
それこそ腕の筋肉がえらいことになりそうですし。

未来職場の真の敵は重力だった、的な。


PC作業で必要な機械のうち、キーボードや紙ベースの出力装置なんかは
案外しぶとく残っていくのかもしれませんね。



メタの従業員の体験に基づくと、事実上無限のスペースを使って無制限の数の画面を表示できることが生産性を大きく向上させるようだ

 

この辺りは一般企業への普及時に最も期待されるところだと思いますが、
実際どうなんでしょう。

私の体験では「無制限の数の画面を表示」はどちらかというと
生産性が悪化するイメージもございますけど……。

業種にもよるのかな。


日本企業だと、職場の皆さんがどんな画面を展開しているのかを
互いに共有できる機能を実装した方が生産性は上がりそうです。

手が止まって悩んでいる子がひと目でわかるでしょうし、
サクサク仕事を進めているデキる子に注目が集まるでしょうし、
ゲーム攻略サイトやyoutube食べログを開いていたら即バレるでしょうし。



この技術の利点は、実際に手に取ることができる製品を生産する企業には明白だ。試作品のホログラムを実物大で即時投影できるため、例えば自動車メーカーは新車の企画・設計等に必要な時間を短縮できる

 

こうしたデザインを伴う仕事には本当によさそうですね。
職場へのインフラ投資という点では3Dプリンタとの競合も起こるのかも。


それにしても、ホログラムであったとしても3Dモデルを周囲に投影可能となれば、
民間普及が進むとアートやらフィギュアやらの業界に地殻変動が起こりそうです。

彫刻なりオブジェなりいかがわしいフィギュアなりの3Dデータが
格安や違法無料でダウンロードできるようになっちゃったら、
実物を買う人ってすごく減りそうですよね。

違法アップロードサイトとかには「エロフィギュア3Dデータ」とかの
リンクが貼られて、ダウンロードしてみたら「う●こ」だったみたいな
悪戯も横行しそうですよね。


未来だなあ。

 


投資対効果の話はさておき、使う分には楽しそうなので普及が楽しみです。


ただ、ひとつ気になることが。
このアメリカ企業での実験、出資者は「レノボ」「テンセント」という
中国マネーなんですよ。

新しいことはなんでもアメリカと中国が独占する時代です。
例によって儲かるインフラは他国が用意して、あまりお金にならない
コンテンツは日本も一所懸命つくっていますがという形になりそうです。


いいっちゃいいんですけど、
こうした現実を認められない人はけっこう多そうで、
導入にしても普及にしても国内議論が変に紛糾しそうでやだなあ。


低成長時代における日本社会のお家芸……
仏教伝来時や黒船来航時の国内紛争再び、って感じになりませんように。

 

 

 

 

小田原・箱根 菜の花の「ご黒うさん」

 

 

小田原や箱根にある「菜の花」という和菓子屋さんの銘菓、
「ご黒うさん」にかんたんしました。

 

ご黒うさん – 和菓子菜の花

 

 


皮には竹炭を練り込み、中身は黒ごまあん。
その名の通り真っ黒なおまんじゅうです。

インパクトがあります。


新月をモチーフにしたお菓子とのこと。

箱根・大涌谷のあたりは黒ギャルの美尻のような風貌の
燻製たまごで有名ですから、てっきりあのたまごがモチーフかと
思ったのですが。

たいへん失礼いたしました。



で、驚いたのは真っ黒な見た目ではありません。

味です。

ごまあんの力強い甘さ風味がとても上質でおいしいのです。


和菓子や土産物の世界でごまあんをつかったものは数多いのですが、
たいていがクドかったり舌触りが悪かったりで当たり外れが大きい、
むしろ“外れ”の方が多いくらいの印象がございます。

その分、“当たり”のごまあん菓子に出会った時の喜びはひとしおで……!

こちらのお菓子は“当たり”どころか“大当たり”ですよ。


ごまのクセを弱める薄める方向に調味せずに、
クセ……個性をいっそのこと増幅してまう方向の仕上げ。

皮も控えめではなくて「ヨッシャいったれいったれ」みたいな感じに
ごまあんを盛り上げていくスタンス。

結果としてたいへんパワフルで稠密な、小さな見た目に釣り合わぬ
キャラクターに仕上がっております。

 

食キング風にコメントするなら「小田原名物が増えました!」ですね。

これから小田原や箱根にでかける人が現れたら、お土産はこのお菓子を
リクエストしたいくらいです。



ネーミング的にビジネス利用にも向いてそう。
ちょっと上から目線で傲岸感はありますけど。

おっさんがおっさんギャグ承知でご苦労さん言いながら
このお菓子を渡してきてくれたら愛しくありませんか。
(ありませんね)

どうでもいい話ですが、おっさんがこういうのを持ってきても
スベるだけですが、デキる女性がこういうのを持ってきはったら
一目置かれるイメージがあります。
この差はなんなんでしょう。

 

 

 

小田原に行ってみたいんですよね。

北条家を偲んだりかまぼこ食べ比べたり。
小田原城に行って、それから三島の山中城に寄って
えげつないと評判の障子堀を見学したら楽しいだろうなあ。


いつか東国見物の機会が訪れますように。

 

北条家の名城「山中城」と三島市の「美観」 - 肝胆ブログ

 

 

神戸市一番館の「ポーム・ダムール(りんごチョコ)」

 

神戸にあるチョコレート屋さん一番館の「ポーム・ダムール」という名の
りんごチョコがおいしくてかんたんしました。

 

www.ichibankan.co.jp

 

 

有名かつ歴史あるお菓子ですからご存知の方も多いと思います。

私は何かが入っているチョコレートを普段食べないので
いままで買ったことがなかったのですが、
もっと早く手を出しておけばよかったです。

友達に差し入れでいただいて、味見してみて感激しました。



まずパッケージがイケてます。

チョコレート色の箱に鮮やかな緑色のイラスト。
さすがの神戸系シャレオツです。
冷蔵庫に入れておくと冷蔵庫の格が上がった気になります。

 

チョコの個々包装もセンスいいです。

金色で高級感に溢れています。
カクテルグラスとかに盛り付けて出したら
高級ホテルのラウンジみたいです。

 

何よりおいしいです。

チョコレート独特の風味と甘さ、
下ごしらえされたりんごのしっとり感と甘さ、
両者の合わさった馥郁たる甘さがものすごく嬉しいのです。


昔ながらの強めな甘味ですけど、
品のいい仕上がりなのであまり気になりません。

むしろ、疲れが取れるような気がして食べ過ぎてしまうほど。


チョコとりんごのバランスがめちゃくちゃいいですね。

すごい。

りんご入りチョコと言った方がいいのか
りんごのチョコがけと言った方がいいのか
少し考えたのですが、どっちがメインとはとても言えない。
両者対等かつコンビネーション最高の名タッグであります。

 

ちなみにフランス語でポーム(pomme)はりんご、
ダムール(d'amour)は愛です。

ポーム・ダムールという商品名はりんごチョコではなくて
「愛のりんご」となります。
名前的にはりんごメイン感がある風情です。

シンプルで素敵な商品名ですね。
愛のりんごという名を冠するにふさわしい美味だと思います。

 


一番館は各地のデパートにしばしば入っていますし、
なんなら通販でも購入可能です。

おいしい上に見た目もよろしいお菓子ということで、
自分づかい・お進物の両方に好適だと思います。

 

大事に少しずつ食べていくつもりです。

つまみ食いされませんように。

 

 

 

 

PSP「起業道」コクヨ/ディンプス

 

あのコクヨPSPで出していた「起業道」というゲームの
微妙なおもしろさにかんたんしました。

(↓制作はディンプスさんです)
ビズ体験シリーズ 起業道 | 製品情報 | 株式会社ディンプス

 

 

PSやPSPの黎明期は妙なゲーム? ソフト? が
たくさん世に送り出されたカオスな時代でございました。


こちらの起業道というゲームもそのひとつで、
ゲームプレイを通じて「ビジネスセンスを磨こう」という
シュールなコンセプトの製品であります。

中古ショップにて500円で投げ売りされていたので買ってみましたが、
「500円なら満足、1,000円なら許容可能、2,000円以上なら不満」
という感想・評価を抱きました。

 ※定価は4,800円(税抜き)です


格安で手に入れ、暇つぶしに数時間プレイするという条件なら
充分に良作だと思います。

フリーソフトなら名作扱いになっていたことでしょう。

 

 

内容は脱サラして起業して業界ナンバー1になってやるぜ! という
トーリーのノベルゲームです。

ありていに言うと「一本道の弟切草」「分岐しないかまいたちの夜です。


トーリーの要所要所で行動・発言の選択肢が入りますが、
常識的かつ前向きなものを選んでおけば問題なくストーリーが進行します。

「やっぱりサラリーマンがいい」みたいなものを選べばゲームオーバーに
なることはできますが、ほぼほぼ分岐はありません。
間違った選択肢を選んでも「やっぱり考え直した」と自動補正されて
正しい選択肢を選んだことにしてくれたりします。
ゲームとしては極めてイージーモードで、初見殺し要素はありません。


また、ストーリーの合間にビジネス知識の理解度を問うテストがありますが、
こちらも社会人としては超イージーです。
ある程度の商売経験があれば満点は容易いことでしょう。

うっかり間違っても、問題は毎回固定ですので2週目以降は満点確定です。

 

トーリーのシナリオは3本入っていて、それぞれ初回は1-2時間でクリア、
2週目以降は30分程度でクリアできるボリュームです。

開始時にプレイ可能なシナリオは「アパレルショップ編」
アパレルをクリアすると「フラワーショップ編」「雑貨ショップ編」
選ぶことができるようになります。


 ※要注意

   3つのシナリオは、ストーリー開始時に選択することになります。
   シナリオ途中で分岐する訳ではありません。
   トラップとして、「人物紹介モード」等からスタートボタンで抜けると
   攻略情報がリセットされてシナリオ選択ができなくなります。
   前プレイのクリアデータをロードすれば回復可能ですが、
   うっかりアパレルショップ編を開始してクリアデータを上書きすると
   アパレル再クリアまでは他の2シナリオを選べなくなります。
   なんてこった。

 

 

ささやかなエンディング分岐要素を書き留めておきますと、
アパレルショップ編は選択肢の積重ねで妻と離婚するかヨリ戻すかが変わります。

フラワーショップ編は4章の選択肢でバリキャリ女性、お水風女性、
離婚間際の人妻、独身ヤリチンの道、いずれかを選ぶことができます。
バリキャリの車同乗誘いをOKするとバリキャリorお水、
車同乗を断ると人妻or独身になります。

雑貨ショップ編は皆幸せみたいな平和な流れでまったりできます。

他にも隠し要素があるかもしれませんが、各シナリオ2週程度プレイすると
お腹いっぱいになりましたので掘り下げる気力は湧いてきません。

 


シナリオの特徴としてはこち亀ばりにサクサク成功していくことが挙げられます。
成功しないと企業の成長ステージごとの学習ができないので仕方ないっすね。

現実でもタイミングと運がよければ急成長することはあり得ますから、
なかなか芽が出ない方向のリアルさを追求するよりも
急成長後の内紛とかを語るリアルさを採用したということでしょう。


主人公はほどよくダメな男です。
とりわけ女性対応に難があります。
イデアセンスと行動力はありますが脇が甘いタイプです。

こちらもほどよいリアルさかもしれません。
テキストで客観的に読んだら突っ込みどころは多いのですが、
実際に動いているときは自分の判断の甘さに気づかないものです。


あとは全編通じて人妻系人材が優秀です。
迷ったら人妻です。
若い男はあまり役に立ちません。
この辺もリアルなビジネスセンスというものかもしれません。

 

まとめると、そうとうにご都合主義的ながらある程度のリアルさを有する
トーリーかと思います。

市販の経営学系教科書のケーススタディもだいたいこんなもんだと思えば、
社会人の暇つぶしには充分耐えうる水準であります。

じゃあ勉強になるかと聞かれれば、それはまあお察しですが……。

「ためになる」度で言えば、ゴルゴ13こち亀当作品島耕作>>>漫画太郎
といったところでしょうか。

 

ゲームとしては問題もたくさんありますけど、
コクヨさんがわざわざPSPに参入して実験されたという点で
大きな意欲を感じる作品ではありました。

こういう社会人向けゲームが増えてくれたらいいなと思いましたが、
その後まったく増えていないことを思えばちっとも売れなかったんでしょうね。

「ビズ体験シリーズ」と銘打ちながら続編も僅かしか出ていないようですし……。

 


シニアゲーマーが増えゆくいまこそ、これ系ゲームの逆襲が始まりますように。

 

 

 

「'17名古屋場所結果 白鵬余裕ない説を一蹴する北の富士さんと、幕内の世代構成」

 

 

 

名古屋場所千秋楽、白鵬が大記録を成し遂げている横での
北の富士さんコメントにかんたんしました。
加えて、幕内の世代交代についても感慨深く思っております。

 

www.sumo.or.jp

 

headlines.yahoo.co.jp

 

 

この名古屋場所では白鵬関が歴代1位の1050勝とV39を成し遂げ、
「終わってみれば白鵬」時代再びといった趣であります。


まことに素晴らしい記録ですから、ニュース等でもいつになく
白鵬に好意的な取り上げがなされています。

しばらく稀勢の里・高安フィーチャーが続いていたので
白鵬関周辺の皆さまやファンはさぞ喜んでいることでしょう。

 

一方、近年の白鵬の取組み方……特に立ち合い時の張り差しや
かち上げや変化気味の立ち方について苦言を呈す方も多い状況です。


私の印象では、
何はともあれ白鵬すごい横綱は勝ってこそと称える人が8割~9割、
もっと受け止める横綱相撲しろよ品ねえなとイライラする人が1割~2割、
といったところな気がします。

前者は一般人+貴乃花以前の横綱方の品格を知っている人が中心、
後者は貴乃花時代への憧憬が強い人中心というような気もしますがどうでしょう。

 

 

それで本日の千秋楽。

白鵬日馬富士との熱戦を制した後のタイミングで
舞の海氏がいつも通りの感じに白鵬の立ち合いに嫌味を言って
「それだけ余裕がなくなってきた」という風に評価したんですが。

ああまた始まったと思ったんですが。

北の富士さんが「その見方には反対」「むしろ余裕ができてきたから
なんでもできるようになった」「多彩になってきたと言うべき」
白鵬はもともと好奇心が強いからいろいろ試しているんだろう」と
いった趣旨のことを語り、舞の海氏の主張を一蹴されたんです。


この応酬、すこぶるよかったです……!

いまの相撲界を取り巻く論陣を端的に象徴したやり取りでしたね。
どちらの意見にも支持者がいらっしゃるかと思いますが、
私は北の富士さんの方が素直に相撲を楽しんではるような気がして好きです。

相撲に限りませんが、
自分の理想が先にあって現実が理想に合ってる合ってないと騒ぐのと、
現実が先にあってここが楽しいここがイケてると見出すのとでは
後者の方が生き方上手だと思うんです。


とりわけ白鵬評のあとに北の富士さんが付け加えたコメント、
「若い力士たちが出てきた。白鵬相手に色々と試せばいい」という内容。

これがまた重要だと思うのです。

世代交代は進んできていて、若手力士が横綱陣を恐れなくなってきた。
横綱時代をむしろ金星フィーバーだと前向きに見る者が出てきた。
あいつが金星獲れるなら俺だって、という雰囲気が生まれてきた。
それに応えるように白鵬も引き出しの数々を見せ始めた。

おいおいいまの相撲おもしろいじゃん!


ということですよね。

多くの相撲ファンが漠然と感じていたであろうことを全国放送の解説で
ピタリと言ってくださって嬉しかったのです

 

こうした器量あるコメントは北の富士さんならではですね。

健康不安がありますが、まだまだ解説を続けていただきたいです。
東京オリンピックまで生きられるかなみたいなことを仰っていて切なくなりました。


北の富士さんが解説を降りられた時、舞の海氏は続投するんでしょうか。
誰を相手にしてもバランス悪そうだし、もうそれなら刷新した方が……。

NHKって海外勢も観てますし相撲に詳しくない人も観てますし、
今日的にちょっとそれ大丈夫? というコメントは観ていてハラハラします。
新聞とか雑誌とか観る人の主義主張が特定されてるメディアならいいんですけどね。

 


幕内の世代構成状況

 


今場所の結果……勝ち越した方々の勝数と年齢は以下の通りでした。

20代に太字20代前半は赤字


14勝
 白鵬(32歳)


13勝
 碧山(31歳)


12勝
 栃煌山(30歳)


11勝
 日馬富士(33歳)


10勝
 阿武咲(21歳)
 千代大龍(28歳)
 松鳳山(33歳)


9勝
 高安(27歳)
 御嶽海(24歳)
 嘉風(35歳)
 栃ノ心(29歳)
 千代丸(26歳)
 宝富士(30歳)


8勝
 北勝富士(25歳)
 千代の国(27歳)
 豪風(38歳)
 佐田の海(30歳)
 錦木(26歳)
 荒鷲(30歳)
  

ちなみに若手の台頭として注目されやすい
正代(5勝)は25歳、貴景勝(5勝)は20歳、宇良(7勝)は25歳、
輝(5勝)は23歳、石浦(7勝)は27歳、遠藤(休場)は26歳です。

貴景勝と阿武咲の若さは群を抜いていますね。



こうして見ると若手の印象に残る活躍(金星関係)は多かったものの、
安定的に星を稼いでいるのはまだまだベテラン勢が中心と言えそうです。

て言うかバランスいいっすね幕内の年齢構成。
豪栄道(31歳)琴奨菊(33歳)もまだまだいけるぞ来場所に期待。
そのうち安美錦(38歳)も幕内復帰してくれるかも。

 

 

休場した稀勢の里(31歳)、鶴竜(31歳)、照ノ富士(25歳)。

揃って今後が不安です。

とりわけ鶴竜
次に途中休場・大負けしたら……と師匠がとうとうコメントしはりました。
白鵬の復調におおいに刺激を受けているはず……
このままあっさり……とはなりませんように。



怪我関係についてはもう少し協会の方でも対策を考えてほしいです。

トップの八角理事長が休場続出に「申し訳ない」と頭を下げてはって、
それ自体は立派だと思うんですが、ちょっと怪我による休場を
個々力士の自己責任にし過ぎだと思うのです。

工場でも事務でもミスは絶対起こりますけど、
ちゃんとした企業ならミスを起こした人だけの責任にはしないですよね。
組織としてミスを防ぐ仕組みづくりに励みますよね。

協会業績のリスクは「不祥事」と「人気力士の休場」なんですから、
重点的に手は打ってしかるべきかと存じます。

 

以上、いろいろと書きましたが今場所も面白かったです。

秋場所も充実した内容になりますように。

 

 

 

定点観測
相撲界の毛利三兄弟の成績

 若隆元(幕下四十九枚目)4勝3敗
 若元春(幕下十四枚目)3勝4敗
 若隆景(幕下三十八枚目)6勝1敗