東京、有楽町の出光美術館で開催している「六古窯展」が地味で素朴で力強い見どころが多い内容でかんたんしました。
こういう展示、好きです。
六古窯……中世から瀬戸、常滑、越前、信楽、丹波、備前で制作されてきたやきものはファンが多いことで知られています。
昔から出光美術館は好きですし、備前焼も好きなので足を運んでみたのですが、これが実に充実した展覧会で行ってよかった、満足度高かったですよ。
六古窯のやきものや、六古窯ゆかりの茶器や唐物を紹介していただける、実に茶色い展示物の数々。
さっそく、私のお気に入りを展示テーマごとにひとつずつ取り上げますと……
第一章 中世陶器の系譜――瓷器系・須恵器系・土師器系
⇒2.双耳壺(日本 越前窯 室町時代 高40.3 福井県陶芸館)
オフィシャルHPにも載っている大ぶりの壺です。
見どころは釉薬が白色、青紫色に変化した上で、どうやら壺が窯の中であっちに倒れたりこっちに倒れたりしたらしく、釉薬もダイナミックにあっちに流れたりこっちに流れたりしている景色。
静態の壺からいかんなく放たれるダイナミズムに誰もがときめくこと間違いなしです。
第二章 六古窯と中世諸窯
⇒32.四耳壺(日本 珠洲窯 室町時代 高37.1 出光美術館)
しっかりと焼きしめられた灰色の壺に、黄色がかった乳白色の自然釉がはらはらとかかっている逸品です。
北陸生まれの壺ということもあって、凍てついた大地に粉雪が降り注ぐ場景なんかを想像してしまいますね。
【特集①】中世のひとびとの<こころ>
⇒44.銅製布薩形水瓶(日本 鎌倉時代 高27.2 出光美術館)
「布薩」という仏教修行で使用される水瓶です。
黒飴のような色艶、カシっと緊張感のある佇まいよきフォルムで、高い精神性を感じずにはいられません。
【特集②】おおきいやきもの
⇒53.大壺(日本 丹波窯 室町時代 高41.6 出光美術館)
オフィシャルHPでも見れる大壺です。
人柄のよさそうな大ぶりの茶色い壺に丹波特有の薄緑色の釉がかかっているのですが、この緑釉と茶肌の境が、大地が苔むしたような風情があってとてもいいんです。
年季を経た相棒感があって、こんな大壺が屋敷にあったらいいだろうなあと思います。
第三章 中世陶器の系譜から発展した茶陶
⇒56.筒茶碗(日本 信楽窯 桃山時代 径11.4 出光美術館)
これもオフィシャルHPに載っていました。
赤い地肌に、黄緑の釉薬がかかっているお茶碗です。
中を覗き込むと、見込みの部分が赤み混じりの黄色にきらきら輝いていて、まるで天気のよい日の古刹の池のような印象を抱きます。
古刹の池、なんていうとお茶がおいしそうに見えないかもしれませんが笑。
【特集③】茶入
⇒78.瀬戸尻張茶入 銘 猿若(日本 瀬戸窯 江戸時代 高7.2 出光美術館)
基本は飴色の茶入なんですが、一本、黒色に変化した釉薬が上から下にスッと流れているのが特徴です。
侘び寂び的には癖が強いとみなされるかもしれませんが、モダンな美しさがあって私はとても好きです。
第四章 中世の人々が好んだ唐物
⇒98.青磁鎬紋盤(中国 龍泉窯 元時代 高45.8 出光美術館)
一転して青磁、青緑色のアイテムが並ぶコーナーです。
この鎬紋が入った青磁大皿は均整の取れた出来ばえで、非常に使い勝手よさそうなのが印象的でした。
青磁の大皿というと家庭では何を盛り付けるのかちょっと考えてしまいますが、中世の人なら鯛や伊勢海老をドーンと盛り付けたらまさしく主菜感があって重宝したことでしょうね。
第五章 後世の眼が見た中世のやきもの
⇒103.大壺 銘 猩々(日本 丹波窯 鎌倉時代 高55.0 兵庫陶芸美術館)
この大壺、直近では土門拳さんのコレクションだったそうです。
全体にボコッボコッと瘤(空気が入って膨れたっぽい)が飛び出ているのが特徴で、見ているだけで元気が出そうなパワー系のやきものです。
この展覧会、日本独特の素朴でちょっと歪んだり曲がったり石や砂がひっついたりしているやきものを散々見てきた最後に、この得体のしれない大壺でシメましょうという構成が素晴らしい。
隣の「御所柿」という大壺も同じくよかったです。
以上、出光美術館の六古窯展でした。
10連休中でしたが混雑もしておらず、まったりと好きな壺を見れて最高でした。
北陸系のやきものへの関心が高まったり、すり鉢の魅力を再認識できたりと、個人的な収穫も多くて大満足です。
いろんな美しさが咲き乱れる現代において、こうしたジャンルの美しさもしっとり認められていきますように。