肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

ジルオールの「フレアとゾフォル」インフィニット版エンサイクロペディアより

 

偶然ジルオール インフィニット エンサクロペディアを手に入れてかんたんいたしました。

 

ジルオール インフィニット エンサイクロペディア

 

本書は2005年6月に発売されたPS2ソフト『ジルオール インフィニット』に登場するキーワードを取り上げた用語辞典です。

冒険の舞台となるバイアシオンには歴史、人物、国や種族などさまざまな言葉が登場します。『エンサイクロペディア』では1,400点に上るこれらの用語を集め、イラストや画面写真とともに解説していきます。

また、代表的なキャラクターやエピソードについて、ゲーム内では語られなかった背景設定を公開。より深く楽しむためのサブテキストとして、バイアシオンで紡がれた各時代の逸話や主要人物も取り上げていきます。

本書が『ジルオール』の世界観を補完し、みなさまの旅をより魅力的にする手引きとなれば幸いです。

                                       編者

 


ジルオールというゲームをご存知でしょうか。

コーエーさんがPS・PS2(リメイク)・PSP(再リメイク)でリリースしていたRPGゲームで、バイアシオンという架空の大陸における歴史ファンタジーを題材にしているものです。

カルラさんというハイレグアーマーの新参ホイホイキャラが目立っていたのでご覧になったことのある方もいらっしゃるかもしれません。

 

 ↓参考:後姿も神々しいカルラさん

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ゲームバランスはけっこう大味ながら、イラスト・テキスト・BGMが極めて優れており、熱心なファンを多数生み出しました。

舞台設定や人物造形がたいへん練り込まれている作品ですので、上述のような歴史・設定・用語集のニーズも出てくる訳でございます。

評判を聞いてエンサイクロペディアを一度は読んでみたいと願っていたところ、最近某所で思いがけなく入手することができました。

読んでみたら想像以上に突っ込んだ裏設定を記載してくれていて面白かったので深くかんたんした次第でございます。

 

 

とりあえず本日は個人的に好きなキャラクターのうち、エンサイクロペディア記載の裏設定にとりわけ興味を引かれた二人を取り上げたいと思います。

 

以下、ジルオールのフレアとゾフォルについて重大なネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フレア・ウル

 


かつて栄えた魔導王国「ラドラス」の支配者「シャローム」さんの血を引く四人の巫女のひとり、火の巫女フレアさん。

ファーストインプレッションは無表情・無感情ながら、足繁く通ううちに情熱的かつ依存的な親愛を見せてくださる女性です。


実は本物のフレアさんは数十年前に亡くなっております。

「シェムハザ」さんという火の巫女の世話係に求愛されたのですが、拒否したところ殺されてしまったということで……。

ゲーム中で出会えるフレアさんはシェムハザさんが「束縛の腕輪」という闇の神器を使って土くれからつくられたレプリカ、人造人間なのです。


エンサイクロペディアでは、オリジナルフレアさん殺人事件について裏設定を記載してくださっています。

本物のフレアは真面目で辛辣だった。現在のフレアと同様に火の精霊神殿を守ることを第一にしていた。そのため、コーンスと人間との間で子供が作れないことを理由に、シェムハザの想いを即座に退けた。


即座に退けた。


シェムハザさんは「コーンス」という妖精種族の生まれです。
人間とコーンスでは子供ができないという設定があったんですね。



現フレアさんとオリジナルフレアさん、けっこうキャラクターが違うようです。



オリジナルフレアさん……

真面目……辛辣……次世代の巫女誕生が第一……


ということはフレアさんの見た目はそのままで、
ドSでツンツンだけど子づくりは熱心という……

ゴフッ



現フレアさんとオリジナルフレアさん、プレイヤーが両方に出会えていたら大変なことになっていたかもしれませんね。

 

 

現フレアさん、PS1時点では「絶対に助からない」キャラでした。


このゲームは大きな歴史の流れは決まっているのですが、各登場人物は主人公の行動次第で生死や人生が大きく変わるのです。

しかも「一番親密なキャラと個別エンディングを迎えることが可能」というゲーム設計になっており、要は恋愛ゲーム的な要素が充実していて、「お気に入りキャラを生き延びさせて熱愛エンディングを見る」ことがプレイヤーの大きな目標となっていたものでした。


それだけにフレアさんも何とか生き残る道があるはずだと多くのプレイヤーが挑んだのですが、そんなフラグはどこにもなく。

主人公との出会いによって感情・親愛の心を得たフレアさんが、最後は必ず土くれとなって滅びてしまう。

もちろんフレアさんとの個別エンディングはなし。

何より、お亡くなりになる際の台詞が誰よりも切なく……。
(画像はPS2版の死亡ルート)

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直後、主人公はフレアさんの力で神殿の外に飛ばされます。

死顔を見せない矜持、苦みを抱いて散りゆく覚悟。
フレアさんはプレイヤーの心に大きな傷跡を残したのでした。


「絶対に死ぬ」ことで、フレアさんはジルオールに登場する数々の魅力的な女性の中でも、格別の思い出と立ち位置を得ることになったのです。

 

 

そしてPS2でリメイクされた「ジルオール インフィニット」。

多くのプレイヤーとスタッフの愛情を集め、フレアさんには新たに「生存フラグ」「追加イベント」「個別エンディング」が用意されたのでした。


当初、この英断は不評だったと記憶しています。

「命を失ってこそのフレア」
「陳腐なハッピーエンドなど要らない」

そんな声が多かったものでした。



ですが、プレイヤーの期待は良い方向に裏切られることになります。


PS2の追加イベント・フレアエンディングが……とんでもなく蠱惑的で、「PS時の哀悼」とは全く別の方向にプレイヤーを魅了したのでした

(この追加イベント・エンディングの内容はあえて貼りませんが、何度も見てしまうプレイヤーが続出したと聞いております)


PS2版のフレアさんテーマ曲「故郷」「命火」がまた情景に彩りを加えて。

PS2PSPから入った人は素直にフレアさんの愛に捕われたことでしょう。

 

 

かくしてフレアさんは

 ・土くれに帰してこそ

 ・一緒に暮らそう

 ・いっそ出会わない方が

という3択をプレイヤーに迫る悩ましい存在となり、現在に至っております。



ちなみにPSP版では「仲間にする」ことまで可能となりましたが、3Dグラフィックの出来がお、おうという感じなので割とスルーされている状況です。
魔力が高いから強いんですけどね。



2度のリメイクを経てここまでの人気者になったフレアさん。

だからこそオリジナルフレアさんの裏情報は新鮮でしたし、もし登場していたら新たなフレア豚を生んでいただろうなと思いました。

 

 

 

妖術宰相ゾフォル

 


ジルオールの物語における黒幕のひとり、妖術宰相ゾフォルさん。

「システィーナの伝道師」というNARUTOで言えば暁のような悪の組織の一員で破壊神ウルグと魔王バロルの復活、世界の滅亡をもくろむお爺ちゃんです。


魔術師としても超一級の実力を有してはりますが、ゾフォル爺ちゃんの一番の異能は「予言の力(※不吉な内容限定)」

この力を以て、ジルオールの世界における強大な帝国の前皇帝2代に仕え、予言に従って皇帝にとっての不吉要素人材を虐殺したり魔人を召喚したり
皇帝を不死身にしたりと物語開始前から悪い方向に滅茶苦茶活躍してはります。



ただ、ゾフォルさんって普段は気さくに話してくれるお爺ちゃんで……。


予言の力のせいで、幼い頃から母に捨てられたり人に疎まれたりと酷い経験を重ねてきたことも透けて見え。

極悪人なんですがどこか「他の生き方もあったのでは?」と思えてしまう黒い魅力の持ち主なのでございます。


↓老いについて語るゾフォルさん。たぶん自分のことを話している。
 自分を変えてくれる人を探し求めているようにも映る。

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フレアさんのところで書いた通り、ジルオールでは主人公の行動によって人生が変わるキャラクターが数多いらっしゃいます。

フレアさんのように、リメイクを重ねる中で選択肢が広がっていった方もいらっしゃいます。

 ※逆に私の大好きなエリス王妃などは狭まっていきました。
  かつてのフレアさんのように助からないからこその切ない魅力がございます。

ジルオールの「エリス、セルモノー、ゼネテスについて」 - 肝胆ブログ



そんな中、ゾフォルさんは救済シナリオが追加されることなく、一貫して悪事を重ね、滅びていくのです。

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これはフレアさんがキュートでゾフォルさんがハ外道だからというだけではなく、物語で担っている役割として「救ってはならない存在」だからなのでしょう。

ゾフォルさんが救われれば、ディンガル帝国三代の悲劇が茶番になってしまう。
ネメアもシャロームもベルゼーヴァもザギヴも道化になってしまう。
絶対に許されてはならない人物なのです。

ゾフォルさんが救われれば、「老い」というものが空疎になってしまう。
明るい意味で古強者「アンギルダン」さんも変わることがありませんが、変わらないからこそのお年寄りなのです。
まさにゾフォルさん自身がそう言っていることであります。



この方が変わることなく斃れてくれるから、未来への扉が開かれる。



でも……もし、主人公がゾフォルさんの若い頃に生まれていたら?

もっと他の生き方が、むしろ主人公とゾフォルで世界を裏から操る存在を克服していくようなストーリーもあり得たのではないか?


プレイヤーにとって、そんな思いも捨てきれないのがゾフォルさんでした。

 


そして、このエンサイクロペディアでは……

バロル(前皇帝兼魔王)の配下になったのは、バロルがヌアド(前々皇帝)の元で飼い殺しになっていたゾフォルの才能を見出し、譲り受けたためである。こうしてアンギルダンやサラシェラ(カフィン)らと並ぶ“バロルの四星”に数えられるようになった。
その後、バロルに憧れていたキャスリオンを仮面の騎士としてバロルに推薦し、“バロルの五星”となる。
ゾフォルはひそかにキャスリオンに好意を持っていたが、「バロルはゾフォルを得ることで、大事なものを得るだろう。そしてディンガルを手に入れるだろう。だが大事なものを失うだろう」という予言を防ぐことができず、毒酒をあおるキャスリオンの死を見届けることとなった。
この罪悪感から、キャスリオンを復活させるというイズとの取引で闇に落ちたバロルを魔人にし、次々と闇の円卓の騎士を復活させた。



背景が複雑なので詳述は避けますが、自分を取りたててくれた皇帝と、好意を持っていた皇帝の妻(ジルオール世界の勇者ネメアの祖母)を自分の予言どおりに失った。

バロルとキャスリオンを復活させたくて、ゾフォル自身も闇に落ちた。

その後の所業は非道と呼ぶにふさわしいもので……という経緯があちこちの裏設定話から読み解けるのです。

(なんか松永久秀みたいです)



ますますゾフォルさんを惜しむ念が強まってしまいました……。

そして、こういう「もう遅い」方がいるからこそ、大河ドラマとしてのジルオールが厚みを増しているのでしょうね……。

 

 

 

 

以上、取り急ぎフレアさんとゾフォルさんの裏設定のご紹介でした。

他にも触れたい人がたくさんいるので、そのうち別途書くかもしれません。

 

ジルオールはとてもおもしろいゲームですし、いまでも比較的手に入れ易いです。

これからも新規プレイヤーがじわじわと入ってきて、三度目のリメイクやら新作発表やらに繋がりますように。

 

 

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