肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「キン肉マン 完璧超人始祖編(46巻~60巻)」週刊プレイボーイ web comic

 

 

キン肉マンの「完璧超人始祖編」にかんたんしました。

 

www.s-manga.net

 


キン肉マンシリーズは息の長い作品で、初めは週刊少年ジャンプで初代連載を、その後は週刊プレイボーイキン肉マンⅡ世を、そして現在はプレイボーイのWeb連載で初代キン肉マンの続きを連載しております。
(その他、スクラップ三太夫にウォーズマンがゲスト出演していたりマッスル・リターンズという読み切りがあったりもします)

 


私はリアルタイムで初代もⅡ世も見てきた人なのですが……

その中でも今回(コミックスベース)完結した「完璧超人始祖編」は大傑作でありました。
バトル漫画としてもストーリー漫画としても、漫画史に残ることは間違いないと思います。

 


話のあらすじとしては、初代キン肉マンの終了(キン肉星王位争奪編決着)後、平和が戻った地球に完璧・無量大数軍(パーフェクト・ラージナンバーズ)という完璧超人軍本隊が攻めてきた……彼らの背後には完璧超人を生み出した「完璧超人始祖」(パーフェクト・オリジン)が存在していて……というものです。

なお、完璧超人始祖編は厳密には38巻から始まるのですが、しばらくは完璧・無量大数軍との戦いで、完璧超人始祖が登場するのは46巻からですので当記事では46巻以降のみを扱います。

38巻の新シリーズ初戦テリーマンvsマックス・ラジアル」など紹介したい名バウトはいっぱいあるのですが今回は省略です。

 


完璧超人始祖とは、以下の十一名であります。


零式 ザ・マン
壱式 ゴールドマン(悪魔将軍)
弐式 シルバーマン
参式 ミラージュマン
肆式 アビスマン
伍式 ペインマン
陸式 ジャスティスマン
漆式 ガンマン
㭭式 シングマン
玖式 カラスマン
拾式 サイコマン



この方々、ストーリー上は敵役なのですが、実力・人格・貫禄ともに超絶格好いい人揃いでして……!
漫画やアニメによくある「少数精鋭敵集団」の中でも、この完璧超人始祖は最高クラスの魅力を有してはると思いますよ。


何より、「年月の経過」「変わりゆく絆」「取り戻したい過去と繋ぐべき未来」という人の世における重厚真正なテーマを、漫画家としてますます純熟してはるゆでたまご先生が渾身のストーリー・画力で完結させてはります。

これは……女房を質に入れてでも見届けねばならないでしょう!

 

 

 

 

以下、ネタバレをたくさん含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

46巻以降の完璧超人始祖によるバトル※を順に紹介していき、私の感想やコメントなどを添えさせていただく流れで書いてまいります。

※ネメシスさんは省略することになります。
 主役のキン肉マンが一度も登場してこないんですがご容赦ください。

 

 

 

○悪魔将軍 vs ミラージュマン● (決め技:地獄の断頭台)

 

遂に始まった完璧超人始祖同士の戦い。
読者は「悪魔将軍がかつて完璧超人始祖だった」ことを知って驚愕です。

しかし、僅か2話(実質1話)でミラージュマンは瞬殺されました。
将軍様超強い。強過ぎる。

ミラージュマン、幻影を張って超人墓場(と地上超人の粛清)を守っていたことが後から判明して、なかなかバウトに集中できてなかったんじゃないかとも言われていますが。
実力を充分に発揮する前に、数十年ぶりに登場した将軍様を引き立たせて敗れ去りました。

完璧超人始祖の中ではカラスマンに並んで気の毒なお方です。

 

 

○悪魔将軍 vs アビスマン● (決め技:地獄の断頭台)

 

完璧超人始祖勢の中で、私が一番好きなアビスマンの登場です。

正面からのぶつかり合いでは完璧超人始祖の中でも最強。
超人墓場の鬼たちからすっごく畏れられている貫禄。
人呼んで「パーフェクト・ザ・ルール」。
笑い声は「モガッモガッ」。

ストイックなのに気さくというところが個人的にたまりません。


アビスマンは悪魔将軍自慢の「硬度調節機能」を一撃で破壊するという大戦果を上げはりましたが、やはり4話で敗れ去ってしまいました……。
新シリーズ、テンポ良く進んでいます。

とは言え、将軍様とアビスマンの会話の一つひとつが「昔は仲良かったんだろうな」感、「憎しみ合っている訳じゃない」感がありありと湧き出ていて、この辺りから早速「完璧超人始祖の強さに漂う哀愁」が感じ取れます。
完璧超人始祖編の成功はこの時点で予兆が見えていたと言っても過言ではないでしょう。

アビスマンは「正面からの潰しあいでは最強」「背中も謎のすごいバリアで守られている」と明確に設定されましたので、後から超強い完璧超人始祖が登場するたびにアビスマンの株も上がるというおいしい立ち位置を得ることができました。
実際、将軍様以外のキャラクターが挑んでいたら何名も犠牲者を出していたかもしれませんね。

 

 

○ジャンクマン vs ペインマン● (決め技:ジャンククラッシュ)

ここから将軍様はひと休みして、悪魔騎士たちが完璧超人始祖に挑みます。

一番手はジャンクマン。
好きな食べ物はジャンクフードだと今回明かされたジャンクマンです。

相手のペインマンは全身が「超すごい緩衝材(エアバッグ的なもの)」。
かつて悪魔将軍さんですら傷つけることができなかったそうです。
「鋲でぶっ刺す」ファイトスタイルのジャンクマンにとっては相性最悪です。


詳細は伏せますが、とんでもない発想でペインマンを撃破したジャンクマンはめっちゃ男を上げました。

「一番首~~っ…召しとったりィ~~~~ッ!!」

という勝利の咆哮もイイですね。


敗れたペインマンも、やはり完璧超人始祖らしい老成された発言をなさっていました。

「残念ながら何ひとつおまえの師匠ゴールドマンとは意見が合わなかったがなぁ~」
「だがなぁ…私はそれが楽しかったのだよ そして ついぞわかりあう日は来なかった」
「やつは我らと袂を分かちこの超人墓場より姿を消した」
「その後に訪れたのは悠久の沈黙と偽りの平穏…それはとても哀しいものだ」
「いや わかりあえなかったのが哀しいのではない」
「ただ言い争いができなくなった… それが私は哀しいのだ」

このような台詞回しは現在のゆでたまご先生ならではだと思います。
ゆでたまご先生自体、週刊少年ジャンプにおける完璧漫画家始祖のようなお方ですしね。
「よかった頃」「つらかった頃」「再ブレイクしている現在」という濃密な人生を過ごされてきた作者の魂があちこちに籠っているように思えます。


既に「役目を終えた神々」となっている完璧超人始祖たち。
しかし、彼らは本当に滅ぼさなければならない相手なのでしょうか?

このペインマン戦で、ますます完璧超人始祖ファンが増えてきました。

 

 

●スニゲーター vs ガンマン○ (決め技:エルクホルン・テンペスト

 

地上に現れた完璧超人始祖たち。
ピサの斜塔でスニゲーターがガンマンに挑みます。

これまでは哀調を帯びた始祖たちばかりでしたが、今回登場したガンマンさんは超パワフル、超シンプルです。
もともと始祖の中でも「地上の下等超人なんて粛清しちまえ」というタカ派
純粋なパワーファイトでスニゲーターを圧倒します。

スニゲーターは幾つかの勝利フラグを積み上げたのですが……完敗。
あらゆる技がガンマンには通用しませんでした。

完璧超人始祖、初白星。

 


●プラネットマン vs サイコマン○ (決め技:ファントムキャノン)

 

今度はプラネットマンがサイコマンに挑みます。

結果は惨敗でしたが、プラネットマンの立ち絵が超格好よかったです。
初代の頃とデザインがまったく違う。
こんなイケメンキャラだったっけか。


相手のサイコマンは、完璧・無量大数軍との戦いでも「グリムリパー」という変名で登場しておりました。

更にこのサイコマンさん、いきなり「マグネット・パワー」を使い始めたり、ガンマンさんと口喧嘩し始めたり、仲が良かったのはシルバーマンだけと独白したり、外連味と禍々しさをたくさん振り撒いてくださいました。

この方のお陰で、「完璧超人始祖内の人間関係」「マグネット・パワーの秘密」などの伏線・ストーリー展開が濃厚になっていくのです。
始祖編には欠かせない名脇役ですね。

 


○サンシャイン vs シングマン● (決め技:コンプリートサンド・セメタリープレス)

 

「“都合の悪いことは忘れよ!”悪魔超人には記憶力の欠如が必要なんだよ」

「うる」
「せーぞ」
「バカがぁーーっ!!」
「なぁシングマン あんたは確かに義理堅い大した人物さ…」
「だが いつまでもおまえたちの時代じゃねぇ」
「明日は明日で天気になればそれでいい」


という名台詞とともに、サンシャインが見事な騙し討ちでシングマンを破ります。
シリアス続きな完璧超人始祖編の中では楽しいバウトでしたね。

Ⅱ世以降、サンシャインはキャラクターの掘り下げがどんどん進んでいます。
出てきて何か話すだけでしみじみ人情シーンっぽくなるのはずるいぞ。
そんなサンシャインが大好きです。


シングマンは全身が地球外物質で出来ている防御特化型の始祖なんですが。
なんか「強いんだけど始祖の中ではいつも貧乏くじを引いてそう」という人の良さで損をしてそうなキャラでした。

サンシャインによって空の彼方に吹っ飛ばされて退場しましたので、ひょっとしたらどこかで生存しているかもしれませんね。

 

 

○ザ・ニンジャ vs カラスマン● (決め技:悪魔忍法クモ糸縛り)

 

ニンジャ初勝利!!

超人血盟軍“Lの陣形”!!


など、いろいろと見応え要素はあったのですが、始祖編の他の試合が名バウトばかりなので地味な印象のエピソードでした。

どちらかと言うと場外で騒いでるブロッケンJr.の方が目立っていた気がします。


相手のカラスマンは回避特化型の始祖ですが、あまり他の始祖たちとの絡みもなく……。
若干寂しい役回りだったように思います。

2話で敗れたけど貫禄はあったミラージュマンと、
6話も登場できたけど印象が薄いカラスマン、
どちらが幸せかなあ、という具合です。

デザインがイケメンだし、戦い方がギミック多めなので、Ⅱ世向けのキャラだったのかもしれません。

 

 

アシュラマン vs ジャスティスマン○ (決め技:ジャッジメント・ペナルティ)

 

悪魔六騎士のトリを飾るのは実力者アシュラマンです。
Ⅱ世ではシリーズラスボスも務めたほどで、悪魔超人の中でも最強格と言っていいでしょう。


その相手は……


なんと「裁きの神 ジャスティス」
まさか初代キン肉マンで「ゴールドマンとシルバーマンの戦いを裁いた神様」の設定がここで拾われるとは……!

このジャスティスマンが異常に強い。
アシュラマンが何をやってもまるで通じない。
ジャスティスマンの攻撃は一撃でアシュラマンの腕を破壊してくるのに。

他の超人が噛ませ扱いされるならともかく、あのアシュラマンが、です。

先に逝った悪魔超人の腕を召喚し、火事場のクソ力的なものまで発現しても……
ジャスティスマンに完膚なきまでに叩きのめされてしまいました。


「完璧超人始祖といっても、倒せないほどではないな」

と思っていた読者の心胆も冷え冷えです。


この方の登場で、始祖の強大さがあらためて強調されました。


ジャスティスマンは、外野のサイコマン・ガンマンに構うことなく「アシュラマンが示した火事場のクソ力の正体」「かつてゴールドマンとシルバーマンが求めた力の正体」について独り思惟に耽ります。
周りと議論するより、内省に励みたい人柄のようです。

よく考えたら、この方ほど「考え続けている」キャラクターはキン肉マンで初めてかもしれません。

 

 

バッファローマン vs ガンマン● (決め技:ハリケーン・ギガブラスター)

 

完璧超人始祖編、個人的ベストバウト第3位!!


パワーファイターとパワーファイターのぶつかり合い。

迫力、構図、台詞、何もかもが最高水準の試合です。

特に130話の純粋ファイトと、131話の「強いーーーっ ガンマン強過ぎるーーーーっ!」の構図は是非一読いただきたいですね。


決着のつけ方もよかったです。

ストーリーとバウトが濃厚に合致しています。


ガンマン、漢です。

一番喧しい始祖は、一番繊細な始祖でした。

そんなキャッチコピーがつきそうです。

 

「シャババ…ババ…バッファローマン…」

最期にちょっと笑わせてくるのもずるいと思います。


このバウトは52巻です。

 


テリーマン vs ジャスティスマン● 

 

完璧超人始祖編、個人的ベストバウト第2位!!


私が一番好きな超人、テリーマンが遂に登場です。

しかし、テリーマンを以てしてもジャスティスマンは無敵。
まるで付け入る隙がありません。
テリーマンアシュラマンのように完敗してしまうのか……?

という流れで。

 


決着の流れは詳述しませんが、この戦いはバトル漫画史上でも屈指の名エピソードであり、また、現在のゆでたまご先生でしか描けない内容だと思います


純粋なバトル、超人プロレスとしては、むしろ“塩”かもしれません。
ジャスティスマンの実力が異次元過ぎて、テリーマンが「勝てるかも」「逆転できるかも」という期待・高揚がまるで得られないのです。

ですが、「魂と信念の証明」「男の生き方が男の生き方を変える」という点では……このバウト以上の物語を私は知りません。

テリーマンジャスティスマンという、この漫画屈指の「真っ直ぐな」キャラクター同士が戦ったからこそ描けた憧憬だと思いますし、ゆでたまご先生の原作・作画双方があってこその説得力だったように思うのです。


この試合を読んで、私は「現代に蘇ったキン肉マン」に心底から感謝しましたよ。
それほどの感銘を受けたのです。


こちらのバウトは53-54巻です。

 

 

ブロッケンJr. vs サイコマン○ (決め技:リフトアップスラム)

 

ブロッケンJr.が奮闘します。

ゾーリンゲンの鈍色刃」という最高に見栄えの良い新技も披露してくれました。


しかし……相手は完璧超人始祖。

最後は地力の違いがモロに出て、とどめを刺されそうになります。


そこに、空からシルバーマンが現れて……。

 

 

○シルバーマン vs サイコマン● (決め技:アロガント・スパーク)

 

完璧超人始祖同士の争いは、マグネットパワーとキン肉族奥義の原型が乱れあう激戦となりました。

サイコマン、すごいですね。
完璧・無量大数軍時代と合わせて、これで4戦目です。
この方もガンマンさん同様、意外な裏表のある方でした……。


試合はシルバーマンが「アロガント・スパーク」というえげつない殺人奥義を繰り出して決着しました。
(一見の価値ありです)

 


そして、それ以上に……物語はここで重大な局面を迎えます。

こちらも重大なネタバレになりますので詳しくは書きませんが……。

完璧超人始祖編独特の哀切が最高潮を迎えるのです。

 


この辺りから、完璧超人始祖の首領「ザ・マン」の表情に変化が見られます。

普段は血走った目をしていて大変こわいのですが……

ときどき、目から血管が消えて、とても切ない表情をする場面があるのです。
もらい泣きしそうになってしまいます。

血管と眉間の描き分けだけでザ・マンの心情を描写できるゆでたまご先生の画力がすごい

 

 

○悪魔将軍 vs ザ・マン● (決め技:神威の断頭台)

 

間違いなく完璧超人始祖編、ベストバウトです。


細かいことは申しませんが、ここまで積み重ねてきた始祖たちのドラマが凝縮されています。

作画も素晴らしいです。
将軍様が立ち上がってくるだけで格好いいんですよ。

ストーリーも、作画も、シリーズ最終試合に来て一番の高みを出してくださっています。
もうなんと言うか、読者としてはただただ「ありがたい」という気持ちです。

 

将軍様の使命感も、
ザ・マンの表情も、
かつての情景も、
どれもこれもたまらないのです。


この試合に限らずですが。
始祖たちの回想シーン、涙的な意味でめっちゃいい仕事してるんですよ。

みんな楽しそうで、仲良くて、活き活きとしていて……。

時間って、どうして止まってくれないんでしょうね。

 

 

 

 

 

過ぎ去った時と、託すに足る未来とが交錯した、素晴らしいシリーズだったと思います。

かつてキン肉マンに触れた方に限らず、たくさんの方に読んでいただきたいです。

 

 

新シリーズも既にWebで始まっています。

完璧超人始祖編を超える物語というのが正直想像できませんが……(贅沢な不安)。

 


引続きキン肉マンが盛り上がっていきますように。

久しぶりに「ザ・マシンガンズ」の試合も見たいです。