三好一族を軸に戦国時代を俯瞰した内容の小説がamazonでダウンロードできるようになっていてかんたんしました。
※Kindleアプリ(無料)をダウンロードする必要はあります
三好一族の中で江戸時代まで生き残った数少ない人物、三好為三さんが昔をしみじみと思い出すような流れで構成されています。
三好為三さんは三好宗三さんの息子、三好宗渭(政勝/政生)さんの弟ですね。
信長の野望等の戦国コンテンツでは三好政康(宗渭)・政勝(為三)兄弟として、政康は早くから長慶さんに降り、政勝さんは反抗を続けた……となっていることが多いのですが、実際はいままで政勝(為三)だと思われていたのが政勝(政生/宗渭)で、その更に弟が為三さん、じゃあ政康さんってなんやったんだろう……というのが最近の研究成果のようです。
ややこしい三好一族の中でも特にややこしい兄弟であります。
この作品は紙の本だと70ページ程度の短編で、その気になればあっという間に読み終えることができます。
その短さで、応仁の乱、両細川家の争い、三好一族の台頭、織田信長~豊臣秀吉~徳川家康までの経緯を全部詰め込んでいるんですよ。
しかも端的に分かりやすく。
もちろん一般的には馴染みのない人名が多いのは否めませんが、読みやすい文章・分量で戦国史と三好史の概要をざっと知れるのは素晴らしいことだと思います。
ふりがながしっかり振られていているのもいい。
この界隈の間口を広げる配慮が行き届いています。
話のコアは「三好長慶さんすごい」でまことにけっこうなのですが、個人的には、作者の阿牧次郎さんが様々な文献をしっかり読み込まれているのが伝わる、個々のエピソードの取り上げ方が特にキュンときました。
例えば三好之長さんのヤカラエピソード。
土一揆を堂々と扇動し、都の真ん中で証文を破り捨てたりしていたこと、都人や同僚から嫌われまくっていたこと等が取り上げられています。
(真偽は分かりませんが)江口の戦いの際、当初はうっかり三好宗三さんの味方をしてしまい、途中で長慶さんの方に戻ってきた説が取り上げられています。
主人公が為三さんということもあって、宗三さんが長慶さんと争った理由も「細川晴元さんに直に仕えていた宗三さんの意地」という表現になっているのもイイ。
三好家中心の物語として足利義輝さんがどうしても残念な悪役になりがちなのは気の毒ですけれど。
小牧長久手の戦いでの池田教正さんの奮戦などが紹介されているのも嬉しいですね。
電子版であれ紙版であれ、広く配布されるといいな、と思います。
知名度はコンテンツの量に比例するはずですし、これからも多くの方がどんどん素敵な作品を発表してくださいますように。