肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

漫画「君に届け 感想 友達のちづとやのちんがすごくいいよね」

 

今さらながら「君に届け」の原作漫画を全巻読みまして、全編通した丁寧な心理描写にかんたんするとともに、ちづとやのちんみたいな女友達ちょういいよねという気持ちがみなぎりました。

 

betsuma.shueisha.co.jp

 

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絵の線が感じいいなあ、完結したら全部読もうと思っていて忘れていて、いつの間にやら数年前に完結していたようで。

 

各種メディア展開されていた有名な作品なのでご存知な方も多いと思いますが、貞子似の主人公 爽子さんが、爽やかで男前な風早くんと恋愛する作品です。

 

 

君に届け」というタイトルがそのまま作品テーマになっておりまして、自分の気持ちを人様に伝えるというのは大変難しいことでがすから、各登場人物がなんやかやを通して悩んだり葛藤したりしながら自分の気持ちを自覚して、それを相手に勇気を出して届けよう、としていく流れの描写が全体通してまことに丁寧なんですよね。

主人公の爽子さんが当初コミュ障気味なところが上手く作品テーマに活きていて、成長っぷりを真っ直ぐに魅せてくれるのが素晴らしいと思います。

 

 

物語は、高校1~3年生の3年間を着実に進めていく展開です。

恋愛描写は基本的にキスまでで、それ以上の内容はボカされていますんで、子どもが読んでいてもそんなに不安にならないのもいいですね。

保護者サイドの心情もちゃんと描いてくれていますし。

表紙はプレーンなのに中身が過激なやつも多いっすからね少女漫画。

 

 

 

以下、けっこうネタバレを含みますのでご留意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バトル漫画で主人公の戦いよりも展開を読みにくいサブキャラの戦いの方が面白いことがままあるのと同様、恋愛漫画もサブキャラの恋愛の方が面白かったりしませんか。

 

あくまで私の感想ですが、「君に届け」も女友達のちづ・やのちんの恋愛模様にめっちゃグッときました。

この二人、主人公の友人としても描写が最高なのに、それぞれの恋愛パートでも抜群に輝いてくれて、この作品のダブルMVP間違いなしだと思いますわ。

 

 

ちづ(吉田千鶴)

直球系の少女。自慢は足。

幼馴染の真田龍さんと関係を深めていくストーリー。

 

もともとは龍さんの兄へ幼い恋心を抱いていたこともあり、なかなか龍さんへの気持ちを自覚できないまま時間が流れていったのですが。

 

高校野球の選手である龍さんを応援するかしないか(勝利すると彼は地元を離れてしまうだろう、というシチュエーション)でヤキモキされまして。

本音では応援したいんですけどね、気持ちとしてはすねちゃいますよね。

 

 

そんな気持ちを溜めて溜めて、からの25巻。

龍さんの最後の試合。

 

 

詳しいセリフや展開は伏せますが、

私は正直言って泣いてまいました。

 

泣くわこんなん。

ちづさん、ほんまええ子やで……!

セリフの一つひとつに気持ちが乗っかっていて、こんな言葉届けられたらもう男も読者もたまんないですよね。

 

この作品には様々な恋愛のかたちが出てまいりますが、私はちづさんのような姿勢や言葉にいちばん憧れます。

 

 

 

矢野ちん(矢野あやね)

大人っぽい少女。あくまで中身は少女。

めちゃくちゃ察しがよくて周囲に気配りできるのに、自分自身に対しては察しがよくないのがかわいいという。

物語が進むにつれて魅力が深掘りされていくので、ほぼ第二の主人公。

 

 

彼女は高校三年間で数人の男性とお付き合いしたり恋愛したりいたします。

その恋愛遍歴がまた大変リアリティがございまして、

  • ナンパしてきた大学生と流れで付き合う
  • 告白してきた同級生と流れで付き合う
  • 優しいクラスメイトと付き合う
  • 先生に恋をする

 

という満腹セットな内容なのですよ。

 

一般的に漫画のキャラクターが複数人の相手と恋愛をすると読者からはウケが悪くなると言われますけれども、それは読者が漫画に夢を見たいからで、複数人の相手と恋愛をして、経験を積んで、だんだん自分に適した相手を幅寄せしていくというのはとても実際的で実用的な描写ですからね。

同世代の読者は爽子さんに夢を見つつも、やのちんに現実を学ぶのでありましょう。

 

とりわけ、優しくて満足度の高い三浦健人さんと別れたのは英断でした。

ふつうのキャラクター、ふつうの漫画、あるいは現実のたいていの高校生なら、多少の違和感があったとしても付き合い続けちゃうと思うんですよね。

あそこでケントと別れてこその「君に届け」ですし、別れを選んだこと自体がやのちんの大成長だと思います。

 

そして、そこから多少の間隔をあけて、担任「ピン」さんへの恋心を自覚して以降の恋する少女化は目覚ましかったですね。

序盤のクールで大人っぽい彼女からの距離感がすごいし、すごい魅力的です。

 

ピンさんへの恋は真っ当に実りませんでしたけれども、ちゃんと告白してちゃんと振ってもらうことを「必要な経験」として捉えているこの作品とやのちんは、強いなあとかんたんしました。

 

 

なお、ピンさんへの告白はまことに感動的なシーンなのですが、このコマだけは

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そこはかとなく「金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿」的なノリを感じてしまって惑いました。

流れを読まずに一コマだけを切り取ってはいけませんね。

 

 

 

 

 

 

君に届け、めっさ面白かったです。

もっと早く読んでおけばよかった。

 

くるみちゃんも好きなキャラなので、番外編も探してみようと思います。

 

健全な青少年の皆様が、ちづさんややのちんのような健全な友人に恵まれますように。