コンビニで売っているジャンプリミックスシリーズで、秋本治先生の「東京深川三代目」が復刊されていてかんたんしました。
秋本治作品の中でも屈指の完成度を誇る超貴重作ですので、見かけたら即確保をおすすめしたいところであります。
「秋本治SHOW(笑)タイム vol.2」に全話収録されています。
東京深川三代目以外にも、ブラックティガー味のあるバイオレンス作品「アリィよ銃を撃て!」や、こち亀の名作「友情の翼!」も収録されているのでお得感高いですね。
東京深川三代目は、深川の大工の家に生まれた立花静さんを中心としたハートフルな読切連作でして、いずれも秋本治先生らしい昭和映画調のテイストが光る内容になっています。
主人公の静さんはきっぷのいい溌溂とした娘さん、
父親は彼女を大工でなく丸の内OLにしたがっていますが、
祖父は彼女の大工の才を見込んで3代目として育てている……という感じ。
お話は全部で5編+こち亀に出張した1編となっています。
ストーリーもさることながら、熟練期にあった秋本治先生の画力もめちゃくちゃハイレベルでして、こち亀では見られないような構図の人物画等も楽しめます。
- 立花一家登場編
祖父がケガをしてしまい、静さんが代わりに指揮を執って豪邸を建設するお話。
病院で祖父に泣きながらすがりつく静さんがかわいい。 - 江戸下町祭編
深川祭に参加しつつ、学校のあくどい教頭先生を成敗するお話。
学校に殴り込むシーンがたいへん迫力があってよござんす。
生徒会長の山下さんもいいサブキャラですね。 - 深川望郷編
地上げ屋に狙われた写真館のおばあさんのお話。
オープニングの静さんの正面画、地上げ屋をカバンでぶん殴る威勢の良さ、物語を締めくくるおばあさんの写真等、物語・作画ともに秋本治先生の全作品の中でも最高レベルの作品だと思います。 - 大江戸町火消し編
和風建築を学ぶアメリカ人ケンさんとの出会い、下町につきものな火事との戦いを描くお話。
火事に立ち向かう静さんとケンさんと下町住人たちのシーンに加え、ラストのケンさんの姿が良すぎて震えます。 - 深川慕情編
立花家を狙う地上げに対抗しつつ、静さんの卒業・旅立ちを描くお話。
例によって地上げ屋をカバンでぶん殴り金的まで喰らわせる静さんが素敵です。ラストの深川名物「角乗り」の絵も情緒深くていいですね。 - 特別編 両さんの大工入門
こち亀に立花一家がゲスト出演した際のお話。ロボット派出所が人造人間の部長・中川・麗子をつくっていた頃の時期です。
両さんが立花一家の家づくりを手伝うことになるのですが、依頼人が見事なケチ男だったので両さん&立花一家も見事に安上がりな家をつくる……という筋。
「材木がもう5本ほど必要なんですけど…」
「まだたりんのか!?
この大黒柱太いな!」
「手ごろじゃない」
ウィィィィン
「よし3本とれた!」
「両さんこっちの柱もまだ2本はとれるわよ」
「本当だじつにもったいない」
冒頭で両さんが2コマでトラック(装甲車?)にはねられるシーン、唐突に両さんが銃を乱射するシーン、1ページで両さんが懲戒免職になるシーン等々、こち亀ならではのテンポとリズムの良さがさすがですね。
めっちゃ笑えるとかめっちゃ熱いとかめっちゃ泣けるとかではないんですけど、どのお話も情趣に富んだしみじみ沁み込むような出来ばえが素晴らしいですね。
深川には2回くらいしか行ったことがないのですが、一度有名な深川祭を見学してみたいものであります。
来年はコロナも落ち着いて、無事に祭が開催されますように。