肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

【願望】「ゾフィーとマガオロチの戦い(ウルトラ戦士vs魔王獣)を映像化してほしいなあ」(ウルトラマンオーブ前史)

 

ウルトラマンオーブ THE CHRONICLE(オーブ再放送)の本編13話「黒き王の祝福 誕生! サンダーブレスター」にあらためてかんたんしていたんですが、オーブ前史・タマユラ姫現役時代の勇者ゾフィー伝説を見たくて見たくてしょうがなくなりました。

 

www.tv-tokyo.co.jp

 

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以下、ウルトラマンオーブの一部ネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラマンオーブの敵は「魔王獣」と言いまして、それぞれが遥か過去にウルトラ戦士の力で封印されたという設定がございます。

元になった怪獣を思えばけっこうえげつない面子なんですよ。

 

 

■魔王獣の皆さん(復活後にオーブが倒した順)

 

 闇ノ魔王獣:マガタノゾーア   ⇒ ウルトラマンティガが封印

 光ノ魔王獣:マガゼットン    ⇒ ウルトラマンが封印

 風ノ魔王獣:マガバッサー    ⇒ ウルトラマンメビウスが封印

 土ノ魔王獣:マガグランドキング ⇒ ウルトラマンタロウが封印

 水ノ魔王獣:マガジャッパ    ⇒ ウルトラマンジャック(新マン)が封印

 火ノ魔王獣:マガパンドン    ⇒ ウルトラマンゼロが封印

 大魔王獣 :マガオロチ     ⇒ ゾフィーが封印

 

 

マンさんがゼットン超えを果たしていたりパンドンさんをゼロさんが封印していたりと地味に熱い設定なんですが、その中でも注目は大ボスのマガオロチさんを封印していた「勇者ゾフィーさんでありましょう。

 

太平風土記などによれば、はるか昔にタマユラ姫をさらった「星を食らい尽くす」オロチを、勇者(ゾフィー)が封印してくださったのだそうで。

 

 

まあ、本編では勇者ゾフィーの封印は「六大魔王獣」&「ベリアルさん」の力で破られてしまうのでゾフィー(笑)感のある演出ではございましたけれども!

そんなけごっつい面々の力を結集しないとゾフィーさんの力を破れなかったんだと思えばやっぱりゾフィーさんの力はさすが宇宙警備隊長的な輝きに満ちてございますよね。

 

 

 

オールドファンはこのオーブストーリーを見ながら、みんな思ったはずなんです。

 

ゾフィー対マガオロチ、見てみてえ」

 

ってね。

 

 

各ウルトラ戦士の奮闘後に現れた絶望の化身マガオロチ(あるいはマガタノオロチ)を打ち砕く奇跡のM87光線。

 

映像化したら盛り上がること間違いなしであります。

オーブが「諸先輩方! 光の力! お借りします!」したのと同じように、ひょっとしたらかつてベーダ―人を一撃で粉砕した「ビーッグ! M87光線!」(ウルトラ兄弟がピラミッド組体操でゾフィーに力を集める姿は必見です)を使用したのかもしれませんね。

 

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なんでこんなにゾフィーゾフィー言うかとゆうと、ゾフィーさんはウルトラ兄弟最強というイケ設定を持ってはるのに、主役の映像作品が製作されたことがないんですよね。

(いちおう彼の名を冠した総集編映画はありますが)

 

弟たちの作品にゲスト出演するばかりで、しかも初代マンを除けばけっこうつらい役目が多くて……という。

同じオーブの「ウルトラファイトオーブ」でバードンさんに単独リベンジしはったときの興奮ったらなかったですよ。

ぜひCHRONICLEでもウルトラファイトオーブを再録いただきたいものです。

 

 

その代わりゾフィーさんは漫画には恵まれておりまして、上で少し紹介した内山まもる先生の作品や真船和雄先生の「STORY 0」では八面六臂の大活躍をしてはるんですけどね。

ゲームに登場する時も基本的に最強格の扱いですし。

 

 

そんなゾフィーさん本来の実力を、現代の映像クオリティで見れたらなあ……

ドラマパート抜きの、バトルシーンだけでもいいから……

(ドラマパートで今更の人間体とかタマユラ姫とのラブシーンとか入れたら激昂するファンが出てきそうだ)

 

 

いつかきっと、何十年来のゾフィーファンが歓喜するような作品が登場しますように。

 

↓ '21/2/14追記 歓喜しました

「ウルトラ6兄弟 THE LIVE in 博品館劇場 -ゾフィー編- 感想 強い兄貴だ……!!」 - 肝胆ブログ

 

 

 

余談ですが、ジード映画でもネタにされていた「サンダーブレスター」と「ジード プリミティブ」似ている問題。

 

見かけは確かに似ていますが、やっぱりサンダーブレスターの方がはるかにマッシブでいかついですよね。

暴走度もサンダーブレスターの方が凶悪ですし。

 

 

この両者、

サンダーブレスターは「ゾフィー」×ベリアル

ジード プリミティブは「初代マン」×ベリアル

という組み合わせの違いがあります。

 

 

オーブリングとジードライザーの違いをいったん置いておけば。

 

違うのはゾフィーか初代マンかだけ……

 

ゾフィーが入ると凶悪で、

初代マンが入ると基本形態……

 

…………。

 

 

やっぱり、サンダーブレスターって荒ぶるゾフィーをベリアル閣下がなだめている形態だったのやもしれませんね(笑)。

 

 

 

 

'18.5.3追記

 

ゾフィーが封印したのはマガオロチの「卵」だったそうです…… 

「ウルトラマンオーブクロニクル(年代記) エピソード10構想」ウルトラマンオーブ完全超全集より(小学館てれびくんデラックス) - 肝胆ブログ

 

 

「マルチバース宇宙論入門 私たちはなぜ<この宇宙>にいるのか」野村泰紀さん(星海新書)

 

マルチバース宇宙論について勉強してみようと思って当著を読んでみたら想像以上に壮大で面白くてかんたんしました。

 

www.seikaisha.co.jp

 

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ざっくり紹介しますと

 

「なるほど、分からん」

「でも、好き!」

 

 

という本です。

 

 

 

マルチバース

我々が全宇宙だと思っていたものは無数にある「宇宙たち」のひとつにすぎない……

という理論のことです。

 

宇宙はいっぱいあって、他の宇宙にはひょっとしたら他の私や他のあなたが住んでいるかもね、的なロマン。

 

 

ウルトラマンシリーズでは以前から採用されている理論で、光の国(ウルトラ兄弟たち)がある宇宙、ティガさんたちがいる宇宙、オーブさんたちがいる宇宙……などと色んな宇宙があるよね、ウルトラマンゼロはウルティメイトゼロになったら他の宇宙を自由に行き来できて便利な人だよね、的な設定になっております。

 

近頃は科学誌などでもマルチバース理論が紹介されていましたし、そうやって色んな場で目に触れるようになってくるとやっぱり本の一冊でも読んでみようかなという気になっちゃいますね。

 

 

 

当著の構成は次のとおり。

 

 第1章 「宇宙」って何?

 第2章 よくできすぎた宇宙

 第3章 「マルチバース」 ――無数の異なる宇宙たち

 第4章 これは科学? ――観測との関係

 第5章 さらなる発展 ――時空の概念を超えて

 

ざっくり言うと、前半で従来宇宙論の概要と課題を解説いただき、後半でマルチバース論について詳しく説明いただける構成になっております。

いきなりマルチバースの話に行かず、アインシュタインさん的な宇宙の膨張やビッグ・バンについても説明いただけますので親切ですよ。

(ビッグ・バン宇宙論について触れておかないと、なぜマルチバース宇宙論が登場したのかが理解できないためです)

 

 

詳しい話は本を読むなり別途調べていただくなりして、前半の従来宇宙論における本著の美しい表現をひとつ紹介します。

 

ちなみに、我々自身を構成する炭素、窒素、酸素、及び金属等を含むより重い元素は、ビッグ・バン原子核構成ではほとんど作られない。これらは、より後の時代に恒星が誕生した後、その内部の核反応により作られたものである。その証拠に、初期の第一世代と呼ばれる恒星にはこれらの元素はほとんど含まれていない。我々の太陽は、これら第一世代の恒星がその寿命を爆発により終えた後、吹き飛んだガスを元に今から50億年程前に誕生した第二世代、もしくは第三世代の星である。これが地球を含む太陽系の惑星にこれらの重い元素が含まれる理由である。つまり、我々の体は大昔の星の残骸でできているのである!

 

 

理論や数式の美しさにも心惹かれますが、こうした科学的事実をもとにした美しい解説文言にも私はときめいてしまいます。

著者である野村泰紀さんの文章は非常に聡明で、当然に科学的で、それ以上に情熱が伝わってくるのが素晴らしいと思います。

 

 

 

 

さて、マルチバースですが。

 

従来のビッグ・バン理論の何が問題だったかといいますと。

我々の宇宙のエネルギーの内訳は星と銀河が~0.4%、ニュートリノが~0.1-1.6%、普通の物質(ガス)が4.4%、ダークマターが26%、ダークエネルギーが69%となっているそうなんですが。

ダークマターとかダークエネルギーという言葉を聞いたことある人は一定数いるかもしれません。FF5ダークマターダークマターをちょうごうするとシャドーフレアですとか(笑))

 

このうち、ダークエネルギー(あるいは真空のエネルギー)は物理学の理論値からすると120桁も小さい値となっており、しかも結果としてこの物質とダークエネルギーの量の比は「我々人間が生まれて宇宙を観測するのにちょうどいい」塩梅になっているという。

 

人類にとって都合の良すぎる環境となっているこの宇宙。

神の御業でなければいったいどうしてこんなことになっているのだろうか……?

 

この謎を解き明かすのがマルチバース理論だったというのがポイントです。

 

 

 

マルチバース理論の形成には超弦理論超ひも理論)の寄与などが大きかったようですが、要は「宇宙の数が何通りも何通りもあるなら、その中にたまたま人間が生まれて宇宙を観測できるような環境の宇宙が生まれても論理的におかしくない」という理論が矛盾なく説明できるようになったという訳でありまして。

 

詳しい理論は私には説明できませんが、流れとしてはそういうことのようです。

 

時空では永久に加速膨張を続ける「背景」の中に無数の泡宇宙が生み出し続けられている。さらに超弦理論によれば、これらの泡宇宙は10^500かそれ以上もの種類を持っている。これらの異なる宇宙においては、素粒子の種類や性質から真空のエネルギーの値、空間の次元までもが異なっており、我々が住んでいる宇宙、すなわち第1章で見た宇宙はこの無数の泡宇宙の一つにすぎない。これこそまさに真空のエネルギー値の問題を解くのに必要とされていた状況である!

 

 

円周率の話を思い出しますね。

3.14……の先にはあらゆる数字の組み合わせが入っているから、理論上は世界のあらゆる情報と同じ値(私の誕生日や、ビッグマックのレシピや、シェイクスピアの物語などなんでも)がπの中にはあるんだ的な。

 

同じように、真空のエネルギーが120桁も理論値より小さかろうが、宇宙が無数にあるんだったらその中に一つや二つそんな都合の良い宇宙があっても問題ないだろうと。

 

マルチバースすげえ。

 

 

 

 

更に本の終盤では、マルチバース理論の最前線として「量子的マルチバース」というすげぇエキサイティングな議論まで紹介いただけます。

 

シュレディンガーの猫とか聞いたことあるかもしれませんが(ヘルシングとかで)、量子力学における「粒子と観測者は相互作用する」「観測者もシステムの一部である以上、波動関数の一部として扱わなければならない」マルチバース理論とが合流し、

 

異なる種類の泡宇宙が生まれる理由は、この過程が量子力学的な確率過程だからである。そしてエヴェレットによれば、これは宇宙全体(この場合マルチバース)の波動関数が、異なる泡宇宙が生じた状態の重ね合わせに時間発展していくことに他ならないのである。

これらの異なる世界(それは我々が基本的だと思った素粒子の質量や空間の次元等が異なる宇宙から、昨日行った実験の結果が僅かに異なるといった微妙に違うだけの世界まで全てを含む)は全て波動関数の中の重ね合わせとして「確率空間」に存在している。そして、それらはどれも同じように実在しているのである。この意味で「無限に続くマルチバース」と「量子力学的多世界(パラレルワールド)」は実は同じ現象――確率的重ね合わせ――なのである。ただ、我々に比べてはるかに大きいスケールで起こった時にマルチバースと呼び、小さいスケールで起こった時に量子力学的多世界と呼んでいたにすぎない。

 

という風に進展してきているのだとか。

 

なにこれ面白い。

めっちゃ壮大なマルチバースと、めっちゃ極小な量子力学が実は同じ現象の異なる側面だったんじゃねえかという高揚。

難解なパズルの答がピタッと嵌まったかのようなカタルシスがございます。

 

ウルトラマンゼロは次元の壁を超えて移動していたというより、重なり合ったマルチバースの確率を操作して他の宇宙に転移していたんだなあ。

すごいぞウルトラマンノア。

ていうか「もしもボックス」こそマルチバースの本質なんじゃねという気がしてきた。

 

 

 

 

もちろん、私は細かいことは分かっていません。

でも面白い。

下手なSF読むよりも面白い。

 

200ページほどの新書でこんなにどきどきわくわくできるんだから最高です。

こいつあおすすめですよ。

 

 

 

あえて引用しませんが最後のあとがきがまたいいんですよね……。

お人柄と科学者としての真摯が偲ばれる名文で。

 

あとがきを読めばぜったい筆者のことを好きになると思いますので、この本の場合はまずあとがきを読んでみてもいいと思います。ネタバレとかないですし。

 

 

 

とりあえずマルチバース理論を知っておけば精神衛生にいいと思います。

かなしいことや気に入らないことがあっでも「この宇宙ではこうだっただけなんだ」と思えるようになるのですから。

三好家が長生きする宇宙やWizardry8が絶版にならない宇宙や悪魔城ドラキュラが存命な宇宙やスカーフェイスさんがかませにならない宇宙なんかもあるはずなんだ。

 

 

 

これからも科学の基礎研究に熱意ある人材や資金が集まり続けますように。

 

 

 

 

愛媛県西予市/松山市の「山田屋まんじゅう」

 

愛媛県名物の山田屋まんじゅうがイカしていてかんたんしました。

 

山田屋150周年|山田屋まんじゅう

 

(写真はオフィシャルHPより引用)

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梅鉢紋がステキですね。

 

 

前から気になっていたんですが、食べたのは初めてです。

後から調べたら、けっこうあちこちで買うことができるようで。

 

 

1個97円(税込)からというお手ごろ価格。

清冽な印象を与える白い包装紙。

包みをはがすとポロンと登場するちっちゃいまんじゅう。

 

 

この小さなお菓子に、透き通るような美しさがあるんですよ……。

淡い紫色の皮・こしあんは、まるで宝石のようです。

味の宝石箱や的な大げさ宝石じゃなくて、おばあちゃんの形見的存在の宝石です。

 

皮は極薄で、中のこしあんと一体化しております。

こしあんは味も舌触りもさらさらと儚く、名残惜しくてもう一個もう一個と食べてしまいたくなる代物なんですよ。

 

まこと貴重なものをご馳走になった、という思いを抱きました。

 

 

ちなみにお店のおすすめ通り、凍らして食べてもたいそう美味でしたよ。

冷凍しても硬くならなくて、しっとりしたまま冷たいんです。

実に不思議な体験だ。

 

 

 

創業150年、昔から多くの著名人に愛されていると聞いたことありますが。

まんじゅうについていた「ぜいたくな時間に出会う」(天野祐吉さん)というコラムの共感度が極めて高かったので一部抜粋します。

 

……あまりにおいしかったので、ぼくは三つ食べた。

そのまんじゅうは、ひとくちで食べてしまえるような小さな形をしていたが、その小さな形のなかには、家並みと同じようにたっぷり時間がつまっていて、口に入れてそっと噛むと、その時間がくちのなかいっぱいに、ゆったりひろがっていく。

(中略)

薄い皮につつまれた漉し餡のちょっと例を見ない洗練と品位のなかに、このまんじゅうを黙々とつくりつづけてきた人たちの時間が、ぎっしりつまっている感じがしたのだ。

 

 

まんじゅうのなかに時間がたっぷりつまっている。

 

いい言葉だなあとかんたんいたしました。

きらきらした宝石だって、大自然の時間がつくりだした美しさですもんね。

 

かような“時間の美”をおいしく味わい、自分のからだに入れ込むという喜び。

ありがたく思います。

 

 

 

多くの人々の称賛を集める訳だな、自分もたくさんの人々の共感の輪に入ったんだな、とストンと納得できるおまんじゅうでした。

 

愛媛県に行ったりデパ地下で見かけたりしたらおすすめですよ。

軽くて小さいスイーツ、という意味でもとても使い勝手がよいですし。

 

 

 

和菓子屋さんも経営が難しい(独特の勘が要る)ものだと伺いますが、この老舗の味が少なくとも向こう一世紀くらいは安泰に続いていきますように。

 

 

 

大相撲'18春場所感想「鶴竜関お疲れさまでした」

 

18年度の春場所

一人横綱を務めた鶴竜関が満身創痍疲労困憊の中で薄氷を踏むような勝利を積み重ね優勝をもぎ取らはったことにかんたんしました。

 

www.sumo.or.jp

 

 

幕内で勝ち越した力士は次のとおりです。

 

13勝 鶴竜(優勝)

12勝 高安、魁聖(敢闘賞)

11勝 勢

10勝 栃ノ心(殊勲賞)、阿炎、大奄美豊山

9勝   豪栄道逸ノ城遠藤(技能賞)玉鷲、大栄翔、大翔丸千代翔馬

8勝   松鳳山、碧山、朝乃山、竜電

 

 

 

鶴竜関は悲壮感を見事に跳ね除けはりましたね。

序盤戦で休場しても不思議じゃないほどの状態だったはずなのに。

 

勝利の仕方もご本人が毎回苦笑いせざるを得ないような形ばかり。

相手のまわしも充分に握れないのによくぞ13勝も積み上げはったものです。

 

足の手術が功を奏したのか、立ち合いの出足が鋭かったのが大きかったのでしょうね。

しっかり当たれているからこそ、その後の引く展開でも辛うじて優位を保てた訳で。

加えて、鶴竜関ならではの技術の冴えが要所要所(特に逸ノ城戦)で光って……

 

それでも一人横綱のプレッシャー、しかも指をまともに使えない……という過酷な状況は想像を絶するものがあったのでしょう。

千秋楽の高安戦。

取り直し時に高安関の足の痛みが注目されていましたが、私はそれよりも鶴竜関の顔に疲れがありありと浮かんでいたことの方が心配でした。

ちょっと見たことのないくらいの疲労の濃さが伺えたのです。

高安関に敗れはしましたが、鶴竜関が更なる大けがを負うことなく十五日を終えたことに深く安堵いたしました……。

 

鶴竜関は人のよさ、賢明さ、地味さ、かわいさが愛されていますよね。

優勝しても「鶴竜時代」とか誰にも言われない奥ゆかしさが切なくも好き。

塩をまくとき、塩の量が他の力士よりも控えめなのもいいと思います。

 

 

 

高安関はまたも準優勝。

前回同様に序盤戦で優勝戦線から離れて、注目されなくなってから勝ちまくるという。

そのうち綱取りもあるんじゃないかなと思っているんですが、北の富士さんが仰るように来場所の成績次第ではもしかするともしかするんでしょうか。

綱取り基準については常に激論が交わされますが、私は上げれるならどんどん上げちゃっていいんじゃないかなと思っています。

 

 

 

魁聖関は敢闘賞おめでとうございます。

優勝争いを終盤まで引っ張ってくださった活躍は素晴らしかったですね。

勢関もご当地大阪で活躍しはって何よりです。

どちらも上位陣でそろそろ定着していただきたいものです。

 

 

 

栃ノ心関は10勝を確保し、来場所は大関取りの場所になりそうです。

白鵬関やもしかすると稀勢の里関も復帰するでしょうから、来場所は盛り上がりそう。

千秋楽の栃ノ心ー逸ノ城戦はたぎりましたねえ。

この二人のパワーファイトは本当に好きです。

北の富士さんが顔の向きが勝敗を分けたと仰ってたのがめっちゃ腑に落ちました。

 

逸ノ城関もますます上位安定してきました。

千代大龍関の当たりにビクともしなかったのがスゲェ。

栃ノ心関を除けば、逸ノ城関をパワーのみで攻略するのはもはや無理そうです。

やはり鶴竜関のような攻め方がキーになってくるのでしょう。

 

 

 

名勝負製造機こと遠藤関がついに三役に上がりそうです。

この方は実績がポテンシャルに見合うようになってきた上、上位陣といつも熱い勝負を見せてくださいますから、女性ファンだけでなくだんだん男性ファンも増えてきている気がいたします。

怪我することなく、三役に定着していただきたいなあ。

 

そして、大栄翔・大翔丸・大奄美という追手風部屋メンバーも近頃調子がいいですね。

部屋全体がいい雰囲気なんでしょうか。

私は元園芸部でひまわり好きという大栄翔関を密かに応援しています。

 

 

 

松鳳山関も今場所よかったです。

特に張り差しの立ち合いと速攻相撲が見ていて小気味よかった。

やっぱり相撲は色んなスタイルの力士がいてこそで、特定の取り口ばかりを求めたり否定したりは違うと思います。

 

竜電関も昨日の荒鷲戦、今日の朝乃山戦と二日続けてよい取組でしたね。

勝ち越しできてよございました。

 

 

 

負け越した力士の中では、千代丸関(6勝)と妙義龍関(6勝)。

 

千代丸関は結果として優勝争いの行方を決めたお方となりました。

まさか二大関を破るとは。

千代大龍関に続き、いよいよ上位陣からしても「怖い」存在になってきましたね。

これで千代の国関も更に地力がつけば、「上位陣殺しの九重部屋」という部屋みんなが玉鷲関みたいな存在になっていきそうです。

 

妙義龍関は胸を打つ取組が多かったです……。

こういう言い方したら本人やファンは不快かもしれませんが、傷ついたエリートが懸命に一番一番闘っている姿に目が釘付けになりました。

いつも以上に応援に身が入りました……。

千秋楽の相手が幕内復帰を目指す安美錦関というのがもうまたね審判部めこの野郎。

 

 

 

 

白鵬関や稀勢の里関がいない中、更には土俵外の無益な争いが騒がしい中でも、土俵の上では心に響く取組がたくさん見られた春場所でした。

 

しっかりと務めを果たしてくださった力士や親方や行司や呼出や関係者の皆さま、本当にありがとうございました。

 

来場所は取組が更に盛り上がって、どうでもいいニュースは盛り下がりますように。

 

 

 

 

定点観測:相撲界の毛利三兄弟

 

若隆元(幕下二十二)5勝2敗

若元春(幕下十二) 4勝3敗

若隆景(幕下筆頭) 4勝3敗

 

みんな着実に番付を上げていますね。

若隆景さん、来場所は関取かな……?

 

 

 

 

「観劇三昧」で松永久秀演劇「飛ばぬ鳥なら落ちもせぬ(ボクラ団義)」

 

舞台「飛ばぬ鳥なら落ちもせぬ(飛ば鳥)」を「観劇三昧」というWebサイトで観ることができるというお話を教えていただきました。

ありがとうございます。

 

 

「松永様はあの人に生きてて欲しいんだろ!?」

 

あらためて観てみたら……やっぱり深くかんたんいたしました。

松永・三好好きの人はほんま一度ご覧になることをおすすめしますよ。
980円振り込むだけでOKです。

 

kan-geki.com

 

 

↓以前の感想

「飛ばぬ鳥なら落ちもせぬ」企画演劇集団ボクラ団義 - 肝胆ブログ

 

 

 

観劇三昧というサイト、いいですね。

月額980円でさまざまな劇団の舞台を見放題という。

kan-geki.com

 

もちろん実際の劇場に行った方が満足度は高いと思いますが、「ちょっと興味がある」くらいの劇団をチェックしたり、劇場が遠方すぎて行けないケースだったり、面白かった作品をもっかい観たいときだったりには最高のサービスだと思います。

 

せっかくだし他の劇団もいろいろ観てみるつもりです。

 

 

 

 

「飛ばぬ鳥なら落ちもせぬ」の感想については以前書いたので、今回はもう少しストーリー部分をきちんと紹介しようと思います。

 

ネタバレを含みますのでご留意ください。

 

 

 

 

 

 

 

メインの主人公は松永久秀祐筆の楠木正虎さん(沖野晃司さん)と、松永久秀配下の飛脚二曲輪猪助さん(竹石悟朗さん)。

猪助さんは信貴山城落城間近の場面から、松永久秀さん(鵜飼主水さん)の心情を知るために三好政権時代まで時を遡ります。

 

もう片方の主人公は現代の歴史ゲーム会社「HOMAREI(どう見てもKOEI)」のスタッフである細川太郎さん(添田翔太さん)、太田暁美さん(水崎綾さん)、水前寺さん(齋藤彩夏さん)の三名。

新作ゲーム製作の中で、松永久秀さんのキャラを「従来通りのダークヒーロー」にするか「実は忠臣キャラ」にするかで議論が紛糾していたところ、やはり三好政権時代にタイムスリップしてしまうという。

 

 

こうした方々が松永久秀さんとその妻たちと三好四兄弟のドラマを目撃し、久秀さんの実像を知っていく……という流れであります。

要は「松永久秀忠臣説推し」「三好家はいいぞ」演劇。

 

もちろん演劇なので史実とちょっと違う部分もありますし、史実解釈についても好みが分かれるところはあるでしょう。

松永久秀さんにダークヒーロー性を求める方には合わないと思いますし、
三好長慶さんの志や狂気有無をどう捉えるかも人それぞれだと思いますし、
安宅冬康さんがぽっちゃりイメージかどうかも人それぞれだと思います。

 

それでも、この舞台は役者様方の演技の熱がもの凄いので、もの凄い没入感を与えてくださいます

細かな史実解釈の話に拘泥することなく、まずはご覧になるのが一番でありますよ。

 

上で挙げた主要メンバーはもとより、三好四兄弟の人間力がパないです。

三好家好きを更に三好家好きにさせるパワーがあります。

 

 

 

メインストーリーは松永久秀さんの「長慶様だーいすき」を追いかけるものですが、それ以外にも松永家中の女の争いなんかもあって飽きさせないんですよね。

 

祐筆としてのあり方と女たちが果たした役割とが交差するストーリー展開の織り上がりが見事で、「文っていいよね」「確かに文って時を越えるよね」という納得感が身体の中から湧いてまいります。

身体の中に確かな実感を与えてくださる作品こそ、よい芸術ではないでしょうか。

 

 

 

物語は三好四兄弟の死、三好義継さんの暴走を経て、松永久秀さんの最期に至ります。

(ちなみに十河一存さんと三好義継さんのキャラがめっちゃ笑えます)

(同じく三好之虎さん兼筒井順慶さん兼細川晴元さんのキャラもめっちゃ笑えます)

 

そして、現代に戻ったHOMAREI社メンバーは松永久秀さんの「義理」を「1」から「100」に変更するという。

 

この作品が信長の野望・創造と大志の間に発表されていて、大志で松永久秀さんのキャラがガラッと変わったことを思い起こすと、なんだか作品と現実が連動しているような趣があって感慨深いですね。

 

HOMAREI社メンバーの演技、よかったなあ。

歴史ゲームライターの太田暁美さん(水崎綾さん)の絶叫、

「私、好きーィィ!
 この立場、好きィィィ!!」

 

がとても好き。

 

 

好きで言えば、二曲輪猪助さん(竹石悟朗さん)の生き生きアクションや、松永久秀さん(鵜飼主水さん)のガラの悪い殺陣も好きです。

三好長慶さんや松永久秀さんを、家柄の低い者たちのヒーローとして描写しているのが大好物。

 

 

島左近さん(吉田宗洋さん)もイケメンすぎて困る。

物語的には傍観者に近いのですが、いてくださると場面が締まるのが凄いです。

 

 

あと、私的な思い入れですが、三好長慶さん(佐藤修幸さん)とあまねさん(春原優子さん)が人知れずな繋がりがあったり、エンドロールでもペアで記載されていたりしたのにジーンときました。

長慶さんとあまねさんによって命を落とす義興さんががが。

偶然だと思いますがその偶然に震えるの。

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飛ば鳥、戦国ヴァンプ、信長の野望・201X&大志……

 

良質な三好松永コンテンツが増えてきましたね。

そろそろ他の戦国ファンから憎まれちゃいそうで怖いくらいです。

 

 

「調子に乗っている」と思われないように品よく振舞いつつ、三好松永人気がまだまだ高まっていきますように。

 

 

 

 

 

「息をのむ写実絵画の世界 美しい女性像」編:近衛ロンドさん(日東書院)

 

さいきん流行している気がする「女性を題材にした写実絵画」の特集本を買ってみたところ、どきどきするような絵がたくさん収録されていてかんたんしました。

 

息をのむ写実絵画の世界 美しき女性像 | TG-NET 辰巳出版グループ

 

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婦人画っていいですよね。

いつの時代の作品も神秘的な美しさがあって。

 

 

こちらの本に収められている画家は次のとおりです。

 

【掲載作家一覧】
島村信之/生島浩/小尾修/小川泰弘/山本雄三/石黒賢一郎
塩谷亮/小木曽誠/山梨備広/渡抜亮/藤田貴也/本木ひかり/鶴友那(掲載順)

 

 

 

冒頭の「新写実憧憬」(南城守さん)の文章からいいんですよ。

 

現代写実の新しい挑戦

今日の写実は一過性のものとして看過できるものではない。日本の現代写実には画家たちの存在に対する思想・哲学が息づいている。写実専門を謳った美術館の開館などは、日本のリアリズムを美術史の中に位置付ける試金石となるものだろう。考えてみればCGやデジタル動画が氾濫する現在、画家たちが置かれる環境は、もはや写真に衝撃を受けていた時代の比ではない。絵を描くという行為そのものが否定されかねない状況にある。であるからこそ逆に、日本で起こったこの現象を「新写実」と捉え、現代アートに伍する新たな挑戦としてその可能性を問いかけてみたいと思うのである。現在、日本の写実は中国や韓国の若い芸術家たちにも波及し、それぞれの価値観と美意識に培われたリアリズム絵画を生み出す契機ともなっている。

さて、クールベの「レアリスム(リアリズム)」から百六十年。現代の写実にも時代の審判が訪れるだろう。忘れてはならないことは、リアリズムはイズム(主義・主張)であるということだ。何をその中に語るかがその生命線となる。「写実」は「実」を「写す」と書く。「実」とは何か、その問いかけこそ個々の人生観、価値観を通して見えてくる存在の証でもあるのだ。「実」に迫り、真の「実」を語るリアリズム絵画の誕生を期待したい。

 

 

女性像、特に裸婦像を眺めているとハァハァした気持ちが湧いてきますが、一方でこうした観念を抱いておくことも愉しいことだと思います。

 

ちなみに文中で紹介されている「写実専門を謳った美術館」とは、千葉のホキ美術館のことでしょう。

行ってみたいなあ。千葉かあ……遠い……。

www.hoki-museum.jp

 

 

 

 

本に収録されていた作品の中で、個人的に好きなのは次のとおりです(掲載順)。

 

 日差し(島村信之さん)
 月夜(〃)
 ニジイロクワガタ――メタリック――(〃)


 香る宙(生島浩さん)

 夏彩(〃)


 視(oil sketch)(小尾修さん)


 彼方に(小川泰弘さん)


 余韻(山本雄三さん)

 誘惑(〃)


 月華(塩谷亮さん)

 森の陽(〃)
 待春(〃)


 桜と光の中(小木曽誠さん)

 光へ還る(〃)


 Largo(山梨備広さん)


 計測と記述(渡抜亮さん)

 影を測る(〃)


 結び目の行方(鶴友那さん)

 覆い隠す(〃)

 

 

 

島村信之さんの「日差し」についてはホキ美術館の収蔵作品欄にも載っておりました。

収蔵作家と作品|ホキ美術館 HOKI MUSEUM

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光を浴びながら横になる女性の姿。

細密な描写、服やシーツや毛髪の柔らかな表現、安心と幸福を感じさせる表情。
いいなあ……。


ぜひ実物を見てみたいものです。

 

 

 

絵については実物を見るのが一番だと思いますので、気になる画家さんなどがいたらチェックしてみてはいかがでしょうか。

 

画家名でグーグル画像検索するだけでも幸せになれますよ。

島村信之 - Google 検索 ※ヌード注意

生島浩 - Google 検索

塩谷亮 - Google 検索

鶴友那 - Google 検索

 

 

 

こうした女性像の写実絵画は近頃ムック本などもよく出ていますし、じっさい人気が出てきているのでしょうね。

 

男女の性差が社会的には是正されていく一方、それぞれ固有の美しさもまた認められる社会でありますように。

 

 

画集「神業の風景画 ホキ美術館コレクション 感想」芸術新聞社 - 肝胆ブログ

 

 

「会社法の学び方」久保田安彦さん(日本評論社)

 

ちょっくら会社法でも勉強してみるかと何冊か本を読んでいたのですが、一通り基礎テキストを読んだうえでこの「会社法の学び方」を読むとイイ感じに理解を定着させていただけてかんたんしました。

 

※あくまで素人理解レベルの話です

 

www.nippyo.co.jp

 

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さいきんコーポレートガバナンス・コードの話が盛り上がっていたりしますよね。

 

ああいう世の中の流れをもう少し深く理解したいなと思い、前段となる知識として会社法なんかをインプットしてみようと思ったのです。

 

法律とか判例って読んでいると眠くなるのですが、眠いなりにいろいろためになることも多くて社会人の暇つぶしにはとてもいいんですよ。

法律は業種関係なくどんなビジネスやっていても必要になってきますしね。

 

 

本の内容をオフィシャルHPから引用しますと。

 

それを知らないと会社法がよくわからないのに教科書にはあまり書かれていないことを解説し、会社法の理解を一歩進める学習参考書

目次

《総論》
 第1章 株式とは何か
 第2章 株式会社の区分規制
 第3章 株式の評価方法

《株式》
 第4章 株主名簿の効力
 第5章 株式の準共有

《機関》
 第6章 上場会社の「取締役会の無機能化」問題
 第7章 取締役の利益相反取引
 第8章 取締役の報酬等――確定額の金銭報酬を中心に
 第9章 取締役の報酬等――退職慰労金とストック・オプション
 第10章 取締役の会社に対する責任

《資金調達》
 第11章 公開会社の株式発行
 第12章 非公開会社の株式発行
 第13章 新株予約権制度の趣旨と効用
 第14章 新株予約権の発行手続と株主の救済策
 第15章 株式の仮装払込み

《計算》
 第16章 資本制度と100%減資

M&A
 第17章 少数株主の締め出し

事項索引

 

という感じです。

 

そもそも会社法ってなんやねんという方も多いかもしれませんが、「株式とは何か」とか「公開会社の株式発行」とか言われるとなんか興味が湧いてきませんか。

会社法はその名のとおり会社の設立や資金調達や組織形態や意思決定を規定している法律ですので、知らず知らず多くの方が関わっている法律でもあるんですよ。

 

 

このテキストは会社法をより突っ込んで学ぼうという趣旨の本ですので、初めて会社法を読む人には取っつきづらいと思いますし、法務部や弁護士クラスのガチ勢にとっては実務でめっちゃ役に立つような本でもないかと思います。

会社法の基礎テキストを1-2冊読んでみた」くらいのレベル感の人向けですかね。

大学の授業で言えば、基礎講座の後半でやるような力加減のイメージかと。

 

実際、本の内容は法学雑誌「法学セミナー」に掲載されたものがベースとのことです。

 

その上で、各章とも初めに取り扱うテーマを挙げて、概要と論点を提示して、一つひとつの論点を検証して、現段階での見解をまとめる……という流れがとても良質な文章で記載されておりますので、「よい授業を受けた」という満足感・理解を得ることができる良著なのでありますよ。

 

 

 

個人的に面白かったのは第6章の「上場会社の「取締役会の無機能化」問題」。

 

ここで注意すべきは、会社法上、上記3種類の取締役(平取締役、選定業務執行取締役、代表取締役)の地位は対等であるということである。というのも、仮に取締役間に序列がある(例えば平取締役は代表取締役の下位である)とすると、取締役会で取締役全員が合議して業務執行の決定を行うことは困難になる(平取締役が代表取締役の発言に意義を唱えることは難しい)。また、取締役が他の取締役の職務執行を監督することも困難になる(平取締役が代表取締役の監督をするのも難しい)と考えられるからである。しかし実務上、後述する理由から取締役間に序列が形成された結果、会社によっては、取締役会が業務執行の決定や取締役の職務執行の監督を十分に果たしえない状況が生じた。これが「取締役会の無機能化」問題と呼ばれるものである。

 

会社法と一般企業の間のズレを端的に説明してくださっていて分かりやすいですよね。

多くのビジネスパーソンにとって取締役とは「出世レースのゴール付近」「平取→常務→専務→社長という序列」のイメージだと思いますが、会社法的には序列なんかなくて対等なんですよ。

 

それなのに、現実の企業の中には序列があることが多いものですから、会社法の精神に則った取締役会の機能発揮がなかなかできない……社長や会長のワンマンもやり放題やんけ……

なんてことだクソッ、ならば「社外取締役」や「女性取締役」をガンガン増やさせて多様な能力を活かした意思決定をできるようにさせねば……(昨今のコーポレートガバナンス・コード的な議論へ)

 

というのが世の流れなのであります。

 

ちなみにこの本ではこうした要因や現実を冷静に分析いただいた上で、社外取締役を重視する欧米諸国(特に米国)の一般的な考え方の妥当性についても、さまざまな議論がある」「わが国における上場会社の取締役会改革は未だ再検証の途上にあるというのが公正な評価であろう」と、中立のスタンスで結んでくださっているのが好感度高いですよ。

 

 

 

同じように、第8章の「取締役の報酬等――確定額の金銭報酬を中心に」も、法律と現実の間のバランス感を高いレベルで描写してはって必読性が高いです。

 

取締役の報酬って会社法的には株主総会で決めなきゃいけないんですが、現実問題として報酬の決め方ってものすごく難易度の高い判断事項で、株主総会で決められる訳ないんだけどじゃあどうしたらいいんだろうという内容。

 

こうしたポイントも、今まで以上に企業と株主のコミュニケーションで互いに理解を深めていかなければならないのでしょうね。

 

 

 

この他、資金調達関係の第11章~第15章は前章の知識が次章の学習の下支えとなっていくという流れが美しくて読んでいて楽しいですし、第17章の「少数株主の締め出し」箇所は興味深いのでもっと知りたい続編書いてくれませんかね感があってエキサイティングですし。

 

全体を通じてとても面白い授業でございました。

 

 

 

法律やガバナンス関係は専門家に任せときっぱなしにするにはもったいない、楽しいテーマだと思い始めています。

 

こういう議論が一般人レベルでもっと活発になっていけば、結果として世の中の企業ももっと元気になっていくのではないでしょうか。

 

 

いろいろありますが日本経済の地力が堅実に合理的に高まっていきますように。