肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

日経新聞「戸田雄三さんのこころの玉手箱 感想」

  

日経新聞の「こころの玉手箱」、戸田雄三さんの回が非常に密度高く、後進にとって得るところの多い内容でかんたんしました。

 

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こころの玉手箱は、1か月連載の私の履歴書と違って全5回になりますので、凝縮された内容になっているのが特徴ですね。

 

著者の戸田雄三さんは、富士フィルムさんの多角化というか、化粧品事業や医療事業への進出に多大な貢献をされたことで著名なお方であります。

若い方はピンとこないかもしれませんが、かつてフィルムカメラデジタルカメラに駆逐された際、フィルム事業にこだわったコダックさんが破綻し、一方で多角化に成功した富士フィルムさんが見事難局を乗り切った……というのは、各種ビジネススクールの教材でも取り上げられるほど有名な経済史上のエピソードなんですよ。

事業環境のディスラプション……破壊的変化……というのは引続き様々な業界で生じていくことでしょうから、富士フィルムさんの足跡から後進が学ぶべきところは多いと目されている訳であります。

 

 

 

そんな戸田雄三さんのこころの玉手箱ですが、そうした自らの功績的要素については控えめで、むしろ製造的実務面の重要性を訴えかけるような内容であったり、チームの力を発揮するための努力であったり、御父上との思い出であったりと、地に足の着いたエピソードが中心になっているのが非常にいいですね。

共感を抱きますし、経済ニュースでちやほやされる系ではないんだけど実は働く上でものすごく大事なことを実直に書き下ろしてくださっているような感じで。

 

 

私にとって印象的だったエピソードは次のとおり。

 

まだ小学校にあがる前、新年会に行ったのはいいが、おやじは地下鉄の駅のベンチで寝てしまった。終電もなくなり、駅員さんに声をかけられて、やっと目を覚ました。その時、おやじのオーバーコートで暖かく包まれた時のたばこの臭いは今でも覚えている。 

 

大学で有機半導体を研究したが、富士フイルムでは研究職には就かずに「製造マン」になった。新入社員研修で「俺たちはフィルムを作っているのではない。信頼をつくっている」という言葉に感動し、自ら志願した。以来、研究と市場の交差点とも言える製造現場で単なる製品ではなく、お客様に信頼して買っていただける「商品を作る」ことを実践した。

 

私に「この実験データは信用できない」と指摘され、「両親にもそんなふうに言われたことはない」と泣きながら所長室を飛び出していった所員もいた。あとでもう一度呼び出し、「データは信用できない」と繰り返した。「だが、君のことは信頼している。だから単刀直入になれる」と付け加えると、彼は再び泣いた。この一件の後、私も彼のおかげで「ミスター・インスパイアリング(励まし屋)」と所内で呼ばれるようになった。

 

製造には研究とは違った技術が必要で、まさに信頼を作り込んでいると言ってよい。ところが、最近の日本企業では、製造が生み出すこうした価値が経営陣によく理解されていない。そもそも、技術系の役員の比率が小さい企業が多い。製造の大切さを再評価してこそ、この先の日本の産業競争力再生が可能になる。

 

リーダーの役割は次代を担う若者に希望を与え、課題を示唆することであるはずだ。しかし、今をときめくリーダーの多くが世のため、人のためよりも自分、自社、自国を最優先させているのは憂うべきことだ。

 

いずれも情感深く、かつ学ぶところの大きい内容だと思います。

 

全5回という凝縮した文章量の中で、戸田雄三さんの回はとりわけ読み捨てるところのない、金言が多い連載だったように感じますね。

 

「守りは本能、攻めは才能」というお言葉も、苦境にあってなおファイティングスピリットを失っていない後進の背中を支えてくださると思います。

 

 

かような先人に負けず劣らず、これからの日本経済もまた力強く情緒豊かに難局を乗り切っていくことができますように。 

 

 

 

 

漫画「ミナミの帝王 失踪留学生編 感想」作:天王寺大先生 / 画:郷力也先生(週刊漫画ゴラクNo.2697)

ミナミの帝王「失踪留学生編」の竜一さんが格好よすぎてかんたんしました。

いつの間にやら立派な貫禄をお持ちになって……。

 

www.nihonbungeisha.co.jp

 

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失踪留学生編。

外国人留学生が学費&生活費&借金のために掛け持ちバイトで疲弊し大学へまともに通えず行方知れずになる問題(+そんな留学生を野放図に受け入れまくってきちんと管理していない某大学問題)を題材にした章になります。

 

 

以下、ネタバレを一部含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回のヒロインはベトナム人留学生のシュアンさん。

褐色童顔系のかわいらしい女性です。

最近のミナミの帝王はマンゴー保育園の沙也加園長といい、宗教法人買い取り編のルリカさんといい、クセのある美人が多く登場してきて実にいいですね。

 

 

で、シュアンさんは「失踪留学生」のテーマ通り、夢を抱いて日本に来たものの苦労して騙されて酷い目に遭いかけてと非常に気の毒な感じになるんですね。

 

そこへ、彼女に一目ぼれした竜一さんが救世主的活躍をしてくださる訳ですよ。

(そういえば以前もアジア系女性に恋してアンニョンソウルしたことがありました)

 

危うく強姦されそうになったシュアンさんを見事に救出してですね。

 

 

「私はもう恥ずかしくて生きていけない」

 

と消沈するシュアンさんに対して竜一さんが!

 

「シュアンちゃん 俺も もう 子供やない」

「人間誰にも人には見せられへん部分がある」

「そんなとこを抱えながらも健気に生きてるさかい……」

「人間はえらいんや!」

 

「誰しもすねに傷を持って生きてるもんや」

「その傷を俺は……」

「醜いとは思わへん!」

「愛おしいやないか……」 

 

と説きほぐしながらミナミの灯りのしたを歩くのですよ!

 

これは竜一さん史上でも最高に男前な竜一さん

ほんまご立派になられたものです。

彼も様々な魅力を持つ人物ですが、格好いい竜一さんを見たいファンにとってこの章は必読ものでありますよ。

 

 

まあ、最終的なオチはあまりにも強引で酷い展開になってしまいましたが……。

メタ的には漫画設定に影響するから仕方ないのでしょうけど。

 

竜一さんに更なる幸せあれかし。

 

 

 

 

今号のゴラクは他にも見どころの多い巻でございました。

 

 

白竜HADOU「警察の森」編。

最終ページの

 

鷲田:「決着をつけようぜーーーッ!!」

日野:(……ッ!?)

 

にフフッとなりました。

「決着をつけよう」という緊迫すべき場面で、そのフリが唐突過ぎて相手が「??」とついてこれていない構図がシュールでいいですね。

 

 

 

シニザマ「松永久秀編」。

従来の梟雄説通りの松永久秀さんが描かれています。

死亡カルテ

松永久秀

自爆(第一次爆傷による爆死)

享年68歳

松永久秀まるで子供向け番組の怪人のように自爆した

それは乱世においても唯一無二の死に様だった

 

という解説がジワります。

忠臣説を調べていない訳ではなくて、梟雄説のほうがゴラク読者層にウケると判断されたような印象。

まあそうかもなあ。

要は読者が読みたいものが積み重なっていった結果が梟雄説なんだろうし。

 

 

 

江戸前の旬「1046話~宝石~」。

魚と宝石の近似性だけで1話使っている展開が面白いです。

 

「寿司ダネのイカもダイヤのように包丁の入れ方で見た目や味を変化させることもできるし、ルビーのように加熱処理することでより色を鮮やかにすることも出来るんです」

「さしずめルビーはマグロの赤身のヅケってとこね!」

「確かにイクラなんかはよく宝石に例えられるような…」

「親方! マグロのブロックは赤いルビー…寒サバの青はブルーサファイア サヨリの輝く体の色はまさにダイヤモンド…」

 

と、おっしゃる通り確かに魚介類の美しさは宝石に匹敵するとは思うのですけど、こうして文字に起こすと絶妙に味わいがあっていいですね。

 

 

 

ゴラクも相変わらず元気で面白いです。

 

 

ミナミの帝王は次号から「"暴走老人”編」が始まるとのことですが、お車関係でしょうか。引続き注目を集めているテーマですね。

 

はやくレベル5の自動運転が普及しますように。

レベル5の自動運転が普及するような世の中になっても萬田金融の商売は順調でありますように。

 

 

 

「アクタージュ10巻 感想 夜凪景、圧巻の主人公力≒ラスボス力」原作:マツキタツヤ先生 / 漫画:宇佐崎しろ先生(ジャンプ)

 

アクタージュ10巻、いよいよ夜凪景さん主演の舞台「羅刹女:サイド甲」が開演。

様々語りたいことはあるのですが、何よりも夜凪景さんの類を見ない張り詰めた存在感にかんたんしました。

 

www.shonenjump.com

 

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表紙は天知心一さん。

怪しくて妖しい。

隠されたお口はいったいどんな表情していることやら。

 

扉絵について言えば、「scene86.必死」の、夜凪景さんと百城千世子さんが相互にメイクしているイラストが素晴らしいですね。

 

 

以下、ある程度のネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイド甲の開演にあたり、山野上花子さんがとんでもない爆弾を夜凪景さんにギフトしてしまいました。

「私はあなたのお父さんとお付き合いしていました」

「あなたのお母さんのお葬式の夜も私は彼といました」

 

 

花子さん、不倫とか似合いそうだな笑 と思ってたら……

まさか本当に不倫ネタをブチ込んでくるとは……

ここ、週刊少年ジャンプですよ……

 

 

この時点の、ドロドロに歪んだ花子さんのグルグル瞳が、美しい石川賢といった風情に狂気を孕んでいて堪らないのですが。

 

 

 

 

ここからの夜凪景さんが圧巻でしたね。

 

最期まで父を愛していた、心優しき母を思い浮かべ。

思わず花子さんを、出血させるほど本気でブッ叩きつつも……

 

 

ライバル百城千世子さんの横顔がよぎり。

 

大切なのは一つだけ

この“怒り”を羅刹女に使うこと

飲まれるな

利用しろ

私は役者だ

 

と。

まさしく主人公なりと賛辞すべき意志の力を発揮するに至ります。

 

 

そうして誕生した夜凪景さんの羅刹女は……

ジャンプ史上でも類を見ないほどの迫力を備えたラスボスでしてね。

 

 

主人公力を発揮した結果、できあがったのがとんでもないラスボスという因業。

カムパネルラのときも思いましたが、これ、実写化ムリですわ。

 

 

詳述はしませんが、「scene83.大切なのは」「scene84.ヒーロー」での夜凪景羅刹女は、数多ある漫画のラスボス登場シーンの中でも稀有な迫力、緊迫、恐怖、そして美しさに満ちていると思うのです。

 

私もたいがい漫画読んでいる方だと思うんですけど、類似する登場シーンがちょっと思い浮かびません。

キャラの方向性は違いますが、インパクトだけで比べても、3部DIO登場シーンや始祖編シルバーマン登場シーンに勝るとも劣らないですよ。

まこと、キャラの登場シーンや入場シーンは漫画の華でございます。

 

夜凪景羅刹女に怯える幼女客(有島あゆみさん6歳)の反応・感受性、夜凪景さんと日ごろ親しき友人・仲間たちが青ざめる様子もまた、素晴らしいですね。

読者と同じ反応を登場人物たちが示してくれる、この一体感ライブ感よ。

 

 

 

読者としてのライブ感で言えば、ここからの活躍MVPは王賀美陸さんであります。

 

百城千世子さんとの甲乙対決に加え、山野上花子さんの何してくれてんのレベルなセルフ炎上無差別テロが混ざり、「アクタージュという作品」「舞台羅刹女編」の方向性が極めて視界不良になったと思わせておいて。

 

細かくは伏せますが、毎話毎話の王賀美さんの活躍描写とピンチ描写に、読者の気持ちも毎話毎話「終わった」「スゲェ!」を繰り返すことになり、展開の先行きが見通せなくても過程を抜群に楽しむことができるというね。

 

これはいい舞台。

ドキドキできりゃあなんしかいいゲイジュツですよね。

 

結果として山野上花子さんの人間性評価が暴落する一方、王賀美陸さんの実力評価人間性評価がストップ高につぐストップ高であります。

これはスター。いまなら王権神授説も信じられるよ。

 

私はそれでも山野上花子さん、好きですけどね。

お酒ぐびぐびしてたらなおかわいいし。

人間性? いんだよ細けぇことは。

 

 

王賀美陸さん、いずれどこかで愛してくれる作品に出会えるといいですね。

 

あと、10巻ラストの変化の術を解くシーン、スモーク焚いて一瞬で牛魔王衣装から孫悟空衣装に引抜していますけど、これは実写で見てみたいな。

 

 

 

と、夜凪景さんの圧倒的存在感、そして王賀美陸さんによる毎々の盛り上がりと、瞠目せざるを得ない仕上がりになっている10巻でしたね。

10巻にして主人公がラスボス化しているというのもスゴいことです。

漫画としての勢いを感じる。

 

 

先行きはまったく不明瞭なままではありますけど、さんざんに読者の気持ちを弄んでくれたうえで、最終的には目の覚めるような鮮やかな結末に至りますように。

 

 

 

なお、単行本特典で羅刹女パンフをもらったんですけど、サラッとサイド乙のメンバーの名前が明らかになっていますね。

 

メガネデブの人は山寺英司さんで、お笑い芸人出身のマルチタレント。

ヒゲ短髪の人は渡戸剣さんで、天球以前に巌裕次郎さんに鍛え上げられた舞台俳優。

 

サイド乙は、巌裕次郎つながりの役者が二人もいる設定だったのか。

明神阿良也さんとの絡みを楽しみにせざるを得ない。

 

そして明神阿良也さんのパンフコメントが完全にアウトな代物で、予備知識なしに客が読むと「百城千世子ワキガ説」とか出かねないような内容なのが酷い。

スタッフはチェックしていないのかこの野郎レベルでウケますから、一見の価値ありますよ。

 

 

 

「アクタージュ9巻 感想 ああ腹が立つ腹が立つ」原作:マツキタツヤ先生 / 漫画:宇佐崎しろ先生(ジャンプ) - 肝胆ブログ

「アクタージュ11巻 感想 羅刹女編は単行本でまとめ読みがいいね」原作:マツキタツヤ先生 / 漫画:宇佐崎しろ先生(ジャンプ) - 肝胆ブログ

 

「IQ2 感想」ジョー・イデさん / 訳:熊谷千寿さん(ハヤカワ文庫)

 

アメリカの黒人探偵小説「IQ」の楽しい続編が発売されていてかんたんしました。

 

www.hayakawa-online.co.jp

 

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↓前作「IQ」の感想

「IQ 感想」ジョーイデさん / 訳:熊谷千寿さん(早川書房) - 肝胆ブログ

 

 

ロサンゼルスの下層社会で探偵業を営む「アイゼイア・クィンターベイ」さんの活躍を描いたシリーズになります。

黒人系、アジア系、メキシコ系のギャングやストリートカルチャーがふんだんに登場してきますので現代アメリカの一面を記した小説としてもクオリティ高いですよ。

 

「暗黒街のホームズ」といったキャッチコピーがついているシリーズでもありますが、個人的にはシャーロック・ホームズ感はそこまで抱かないかなあ。

探偵もの、バディもの、高い知性と品性と運動神経……といった点は共通していますけど、主人公「IQ」の葛藤多き黒人青年ぶりが他の小説とはそうとう異なった個性をお持ちですので。

 

1作目との比較では、引続きアメリカ下層社会特有のネトネトした頽廃文学味は残しつつ、よりアクション映画的な爽快感が増したような印象です。

文学的な深い内面描写は1作目の方が上、娯楽小説として完成度が高いのはこちら、という感じかなあ。

 

 

 

あらすじは次のとおりです。

亡き兄の恋人だった女性から、高利貸しに追われる妹ジャニーンを助けてほしいと頼まれた探偵"IQ"。

腐れ縁のドッドソンを伴い、彼女が住むラスベガスに赴くが、事態は予想よりも深刻だった。

ジャニーンは中国系ギャングの顧客情報に手を出し、命を狙われていたのだ。待望のシリーズ第二作。

解説/丸屋九兵衛

 

 

小説の構成としては

 

 ・ジャニーンさんを救うため中国系ギャングに対抗するパート(現在)

 ・亡き兄の死因を探るパート(数日前)

 

が交互に展開していく書き方になっていまして、前者はアイゼイアさんが恋心に揺れつつ相棒ドッドソンさんと痛快な活躍をするのがメイン、後者はアイゼイアさんの復讐心に沿った追跡と葛藤がメイン、という感じになっています。

前者がガン・アクション、後者がドロドロネトネトですね。

終盤では両方の要素が見事に合流して、(死人が大量に出つつも)物語的にはハッピーエンドを上手く迎える運びになりますので安心してお読みください。

 

 

見どころは色々ありますが、今回は暴力とPTSDの関係がけっこうリアルに描かれていたのがよかったですね。

被害者は当然悲惨で、加えて加害者サイドのPTSDも迫真味がありまして。

「ミゲル、マテオ、エステバン。みんなライム病か何かにかかったと思ってるが、実のところはストレス何とかだ。業(カルマ)みたいなもんだろ? ひでえことすれば、そのつけがあとでケツに噛みついてくる。ああ、くそ、そうなら自殺したほうがましかもな」

 

暴力の後悔から逃れるために暴力やドラッグや死に場所を求める男たち。

そういう男たちがゴロゴロいるロスの暗黒街。

そんな街で活躍せざるを得ない探偵IQ。

 

こういう物語設定の時点で、やはりこの作品はオリジナリティの高い面白さがあるなあと思います。

 

 

そんなネトネトした暗さとは別に、1作目から打って変わって恋心に揺れ動いて幼さをひけらかすアイゼイアさんがかわいい。とてもかわいい。

「ありがとう、アイゼイア。ほんとに感謝してる。電話してね、お願いよ?」

「ああ」アイゼイアはいった。そして、さよならもいわずに電話を切った。ばっちりだ。どじでまぬけなやつみたいな話しぶりでなかったのはたしかだ。

 

 

そんなアイゼイアさんをからかう相棒ドッドソンさんもかわいい。

「ちょこっとアドバイスをくれてやる。女には芝居しないことだ。等身大の自分でいろ。よくわからねえなら、わかったふりはするな。どのみち、向こうのほうがはるかにうわてだ。何をしたって、女はいずれこっちの本心をつかむ」 

 

今作ではドッドソンさんがきちんと人生の足場を固め始めていたり、アイゼイアさんに推理面で張り合おうとしたり、やはり要所要所でキッチリと活躍したりと、いっそうドッドソン愛を掻き立てられる内容になっているのが実にいいですね。

相棒もののバディが魅力的だとその作品の価値はハネ上がると思いますの。

 

 

他にも、ネタバレになるので詳しくは言えませんが、登場する敵役はみんな人間臭いクセがあって惹きつけられますし、更なる続編に繋がりそうな意味ありげ人物も登場しますし、二作目ながら完成度には既に信頼を置ける作家さんになっていますよジョー・イデさん。

 

「IQ3」もとくとく邦訳されて発売されますように。

ふだんアメリカドラマを観る習慣はないんですが、この作品が映像化されたら実写でも是非観てみたいなあ。音楽パートや食べものパートにリキが入っていると嬉しい。

 

 

 

 

信長の野望20XX「肥前アナザー攻略(龍造寺家)」

 

20XXの職業相性仕様も相まって、思いの外スムーズに肥前アナザーを攻略することができてかんたんしました。

 

肥前アナザー魔窟実装時のリリース(だいぶ前)

nobu201x.gamecity.ne.jp

 

 

無事に全部攻略できました。

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肥前アナザー攻略における難関は、

神(淤縢山津見さん)と戦うことになる須古城と、

龍造寺家オンリーで攻略することになる魔窟でしょうか。

 

 

 

須古城ラスト。

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龍造寺家以外のメンバーを入れられるので、比較的やりやすいですね。

 

 

私の手持ち龍造寺メンバーだと淤縢山津見さんの相手は面倒そうだったので、兵器特化の波多野おじさんにやっつけてもらいました。

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何もさせずに神様ご退場。

兵器特化&連携ジャベリンというのは便利な代物であります。

'20/2/1現在だとジャベリンも勾玉全武将交換もできますし、お好みの星4戦術家武将を開眼(開眼させるほど兵器威力が上がります)させて兵器特化(雑賀孫一さん・島津日新斎さんの特性および匠の心技・参で充分です)にしておくと便利ですよ。

星5の戦術家か覇道者でつくることができればなお強いのでしょうけど……。


 

 

 

続いて魔窟攻略。

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龍造寺家オンリー、同職業2人までという縛りになります。

 

 

ラストステージのボス戦はこんな感じ。

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肥前のステージはボス戦も含め屍6体で敵が構成されています。

私の場合は、爽風の鍋島直茂さんで4体は確殺、のこりを龍造寺隆信さんと江里口信常さんで倒すというやり方で順調に攻略できました。

 

 

大志鍋島直茂さん。無事に顔のよさを+7%できて嬉しい。

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この方の登場と職業相性の導入とで難易度は大きく下がったと言ってよいでしょう。

極論、フレンドさんもこの大志直茂さんをお持ちで、二枚目二枚パーティを組むことができれば、肥前アナザーは楽勝だろうと思います。 

 

 

 

龍造寺隆信さん。

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スタンダードに強い単体アタッカーなので、もう少し掘り下げて育ててみたいと思っています。

いずれはお寿司を食べて神様と殴り合うような不死熊役割を担ってもらうのかなあ。
 

 

 

陽泰院さん。

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福袋武将ながら優れたスペックの持ち主ですね。

今後は状態異常がいやらしい敵への対策で活躍してもらおうと思っています。

 

 

 

 

江里口信常さん。

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龍造寺家の貴重な範囲アタッカー。属性は水。

これくらいのステータスと特性で、肥前アナザーの雑魚屍は充分掃討可能です。

 

 

 

なお、肥前アナザーで活躍してくれたわけではないのですが、龍造寺四天王は他にも見どころがある武将がいるので、もっと活躍させられないかなあと構想しています。

 

 

円城寺信胤さん。属性は水。

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射撃手の防バフ持ち。倍率が+45%とかなり高く。

機耐性の特性が集まったら、この方を機壁にしてみようかしら。

 

 

 

木下昌直さん。属性は地。

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この方も高い防バフ(自身+45%)持ち。マスずらし無効も有能ですね。

警戒・四をお持ちですし、私は術壁武将を持っていないので、そのうち木下さんをそういう風にしようかなあと考えています。

 

 

 

以上、龍造寺アナザーの攻略でした。

 

龍造寺家も触っていて楽しい武将が多くていいですね。

そのうち肥前ガチャ2倍が行われて、まだ見ぬ龍造寺家兼さんと慶誾尼さんが訪れてくださいますように。

 

龍造寺異聞も来てほしいんですけど、どの戦いを題材にしたら一番みんなが幸せになるのかなあ。

やはり島津家と一緒に沖田畷の戦いで、超強いニュー家久さんが登場しつつ隆信様が哀れなお姿になられない展開が待ち望まれている感じでしょうかね。

 

※2020/3/24追記

えらいのが来ました。

信長の野望20XX「沖田畷異聞 感想」 - 肝胆ブログ

 

 

あるいは、次回のぶニャがコラボが龍造寺家ならいっそいいのかもしれない。

龍造寺本家が元気なのになぜか猫に悩まされる鍋島直茂さんとか最高じゃないか。

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「ハマスホイとデンマーク絵画 展の感想」東京都美術館

 

楽しみにしていたハマスホイ展を見に行ってみたところ、心をニュートラルにしてくれる静かな作品の数々にかんたんいたしました。

 

artexhibition.jp

 

www.tobikan.jp

 

 

'20/1/28現在は東京都美術館で開催されています。

4月以降は山口県立美術館に移るそうなので、東京ないし山口にお越しの際は寄ってみるといいと思いますよ。

 

 

 

ハマスホイさん(1864-1916)はデンマークの画家さんで、薄暗い灰色でアパートの室内を描写した作品で有名な方です。

ものすごく地味なモチーフなんですけど、見ていると落ち着くというか、精神的にニュートラルにしてくれるというか、日本で言うところの禅、坪庭、枯山水などに共通するような気分を与えてくれる作品でして。

そうか、緑がかった灰色が人間にとってニュートラルな色なんだね、と思えるような。

デンマークでは「ヒュゲ」とも言うらしいんですけど、ハマスホイさんの作品は、一般的によく使われるヒュゲという言葉よりはもう少し暗め・テンション低めな落ち着きを孕んでいる印象です。

 

 

美術展では、19世紀のデンマーク絵画の流れをたっぷり堪能させていただいた上で、なお異彩を放つハマスホイさんの作品をシメに魅せつけてくださる流れになっています。

 

以下、個人的に気に入った作品を。

 

 

 

 

 

1.日常礼賛――デンマーク絵画の黄金期

・13 フレズレクスボー城の棟――湖と町、森を望む風景
 (クレステン・クプゲ)

  お城からの遠景を描いた作品。

  なんでもない景色を切り抜いたような構図が好き。

 

・14 ブランスー島のドルメン
 (ダンクヴァト・ドライア)

  巨石記念物を主題にした風景画。

  自然の広大さ、巨石の大きさと極小な人・海鳥の対比。

 

・15 シェラン島、ロズスコウの小作地
 (ヨハン・トマス・ロンビュー)

  収穫期の農場の風景。

  描き加えられたというツバメの躍動感よ。

 

 

2.スケーイン派と北欧の光

・22 漁網を繕うクリストファ
・29 朝食――画家とその妻マリーイ、作家のオト・ベンソン
・30 詩人ホルガ・ドラクマンの肖像
・31 スケーイン南海岸の夏の夕べ、アナ・アンガとマリーイ・クロイア
 (いずれもピーザ・スィヴェリーン・クロイア)

  当美術展でハマスホイさんの次に印象的だったのがクロイアさん。

  スケーイン派というそうですが、光の当たり方が実に好みです。 

 

・26 台所の片隅、花を生ける画家の妻
 (ヴィゴ・ヨハンスン)

  地味ながら日常の幸福を切り取ったようで感じ入ります。

 

・28 スケーインの北の野原で花を摘む少女と子供たち
 (ミケール・アンガ)

  子どもたちと控えめに華やかな草花の構図が好き。

 

 

3.19世紀末のデンマーク絵画――国際化と室内画の隆盛

・32 晩秋のデューアヘーヴェン森林公園
 (ティーオド・フィリプスン)

  ゴーガン(ゴーギャン)さんの影響を受けたという秋の木々。

  印象派風の色彩がたいへん美しいです。

 

・37 画家クレスチャン・サートマンの肖像
 (ヨハン・ローゼ)

  抑えた色調、力強い線、溢れ出る無骨感に好感度が高まります。

 

・42 遅めの朝食、新聞を読む画家の妻
 (ラウリツ・アナスン・レング)

  安心感のあるあたたかい光と、妻の部屋着の質感がいいですね。

 

・46 縫物をする少女
 (ピーダ・イルステズ)

  少女がいなくても完成度が高い室内風景画。

  行儀良さそうな少女が加わってなんとも妙味あるヒュゲ感が。

 

・49 飴色のライティング・ビューロー
 (ギーオウ・エーケン)

  これも完成度の高い室内風景+少女の絵。

  存在感ある家具の飴色、少女の服の深緑色が地味ながら美しい。

 

 

4.ヴィルヘルム・ハマスホイ――首都の静寂の中で

・54 古いストーブのある室内
・56 自画像
・66 農場の家屋、レスネス
・69 若いブナの森、フレズレクスヴェアク
・70 室内
・73 背を向けた若い女性のいる室内
・80 室内――開いた扉、ストランゲーゼ30番地

  といったところが私の好みです。

  めったに観れない作家さんですし、
  現代人からの人気は今後ますます高まりそうですから、
  機会がある人はぜひ。

 

 

 

 

非常に楽しめる、静かな作品ながら深い情動を得られるような美術展でした。

 

東京都美術館は、子どもたちに「せんせい」のようなお絵かきボードを貸してくれて、好きな絵を模写してみましょうみたいなことしているのも素晴らしいですね。

「はじめてのびじゅつてん」で、気にいった絵を選びましょう、まねっこしてみましょう、その過程でよく観てみましょう、ってやるのスゴくいいと思いますの。

 

 

鑑賞した方々がハマスホイさんとデンマーク絵画に気持ちをリラックスさせてもらって日々の多忙やお疲れが少しでも紛れますように。

 

 

 

 

 

大相撲'20初場所感想「白鵬幕府崩壊からの徳勝龍下剋上・戦国時代到来」

 

大相撲初場所大河ドラマ麒麟がくる」に負けず劣らず従来秩序が崩壊して混沌とした戦国時代を迎えていてかんたんしました。

私、なんだかんだで白鵬関(と鶴竜関)のこと好きなんですけど、これはもういよいよ時代の変化を認めて受け入れ新たな楽しみを見出していく時が来たんですねと得心した気持ちです。。

 

www.sumo.or.jp

 

 

白鵬関・鶴竜関の二横綱が全くいいところなく休場。

かつて全勝優勝も成し遂げた豪栄道関が大関陥落。

そして高安関の大関復帰失敗。

 

 

もう本当に千秋楽当日の北の富士さんコラムの通り、

www.chunichi.co.jp

 

白鵬が休場すると、誰が優勝するかわからない。皆にチャンスがある。幕尻と大関が戦って、看板の大関が負けた。横綱を目指す力士が平幕に敗れる。いったい番付って何だ! ということになりはしまいか。私には人が言うほど新旧交代が進んでいるとは思えない。去年も初めて優勝した力士が何人もいたが、白鵬不在の場所が多い。しっかりした、実力通りの横綱大関がいて、それを倒し優勝を争うのが大相撲の本来の姿ではなかろうか。

 

室町時代の家格秩序ならぬ「番付秩序」の崩壊といっても過言ではないように思えます。

 

 

ただ、延々と繰り返される白鵬関批判のネットニュース&コメントにもいい加減倦んできていたこともあり、こうしたいまの状況下、相撲の面白さが削がれてきたなあと思っていたら。

 

まさかの徳勝龍関優勝というリアル下剋上を目撃することになってしまい、従来の大相撲の面白さとはまた違う、戦国時代的エンターテインメントの時代が到来したような潮目変化感にワクワクしちゃいましたね。

 

 

 

あらためて、今場所の幕内勝ち越し者は次のとおりです。

 

 14勝 徳勝龍(優勝・殊勲賞・敢闘賞)

 13勝 正代(敢闘賞)

 11勝 貴景勝北勝富士(技能賞)、豊山、霧馬山(敢闘賞)

 10勝 朝乃山、竜電、輝

   9勝 遠藤(殊勲賞)、阿武咲、栃煌山

   8勝 隠岐の海、炎鵬、勢、照強

 

皆様おめでとうございます!!

 

 

徳勝龍関、正代関の今場所のよさはもはやコメントすることもありませんね。

終盤戦を両者が実力で引っ張ってくれて、観客としてはただただ満足・感謝するばかりであります。

彼らと、今場所の監督に捧げる勝利を見ていると、相撲ファンはもういつまでも「大学出」に偏見を持たなくてもいいんじゃないかなあ、とあらためて思いましたがどうでしょう。

 

貴景勝関はただ一人、若き大関として踏ん張ってくださいました。

朝乃山関が上がってくるまでは、しばらく孤独な責任感を負うことになりそうです。

朝乃山関は辛うじて10勝、ここから星を積み重ねてほしいところですね。

 

北勝富士関、豊山関、輝関の仕上がりのよさも今場所は目を引かれました。

彼らも、いつビッグな栄誉を得ても不思議でない段階にまで来ている気がします。

 

遠藤関もいよいよポテンシャルを開花させてきておられます。

序盤戦の連続殊勲星は主人公感アリアリでしたね。

 

 

ここに、惜しくも負け越しましたが、大栄翔関や御嶽海関もいますから。
(大栄翔関、負け越したけど内容はどれもよかったので心配していません!)

 

まさしく大相撲戦国時代。

 

今場所はまさに大和の松永久秀的なジャイアント成り上がりが見られましたが、来場所以降の覇者もまったく予想が出来ません。

いずれ朝乃山関は大関になると思いますが、いずれにせよ朝青龍関・白鵬関による長い長い蒙古幕府(言葉矛盾)は崩壊しかかっていると言わざるを得ないでしょうし、朝青龍関・白鵬関に続く大横綱候補もまたいまだ見つかっていないと考えざるを得ません。

そう、「誰も勝者を予想できない」という、実は相撲ファンがもう十年以上も経験していない、新たな楽しさが目の前に現れつつあるのです。

 

ちなみに。
朝乃山関は富山だから神保氏……
貴景勝関は名前から上杉氏……
これは、現代大相撲を舞台に上杉VS神保の再戦が執り行われることになってしまうのでしょうか。

 

 

とりあえず黄昏の白鵬関や鶴竜関、凋落しつつもまだまだ長く活躍を見たい豪栄道関や栃ノ心関、しっかり幕内に残ってくれそうな琴奨菊関なども引続き応援しつつ。

朝乃山関や大栄翔関、更には隆の勝関や幕内復帰目前の照ノ富士関等々、個人的に響く若い世代も応援してこの混沌の時代を楽しんでいこうと思います。

 

※'20/1/27夕刻追記

  あああ豪栄道関……

  お疲れさまでございました涙

 

※'20/3/22追記

  私が間違っていました。

大相撲'20春場所感想「相撲協会の底力」 - 肝胆ブログ

 

しばらくは相撲ファンも勝手が違って混乱が続くと思いますが、多様化した楽しみ方も丸ごと呑み込んで大相撲が引続き隆盛でありますように。

バキ道の相撲篇もなんとかまともな内容に着地しますように。

 

 

 

 

 

 

 

定点観測

 若隆景(十両五枚目) 9勝6敗

 若元春(幕下筆頭)  6勝1敗

 若隆元(幕下十七枚目)4勝3敗