肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「じゃりン子チエ 文庫版4巻感想 ヨシ江はんの実力」はるき悦巳先生(双葉文庫)

 

じゃりン子チエ文庫版4巻、おかあはんのヨシ江はんのキャラが大変掘り下げられてきていてかんたんしました。

5巻も来月発売されるそうです。

堅調に売れているなら何よりですね。

 

www.futabasha.co.jp

 

f:id:trillion-3934p:20200126011815j:plain

 

 

4巻に収録されている話は次のとおりです。

 

  • ああ イデンの巻
  • 父兄運動会①の巻
  • 父兄運動会②の巻
  • 父兄運動会③の巻
  • イヤンなったテツの巻
  • おみやげ おみやげの巻
  • 泳げない二人の巻
  • 泳げない一人の巻
  • みんなで海への巻
  • テツじゃ の往復ハガキの巻
  • 往復ハガキの返信の巻
  • 鑑別所同窓会の巻
  • テツは大モン…の巻
  • 無敵な特別コーチの巻
  • 刺激的なチャリの巻
  • 恐怖の電話の巻
  • ボクサー・テツの初仕事の巻
  • ピーピーのテツの巻
  • ヒラメちゃんのプレゼントの巻
  • 傑作の題が決まらない…の巻
  • テツとヨシ江はんが!!の巻
  • 夢見がちな男たち…の巻
  • それぞれの悩み…の巻
  • ヒラメちゃんの表彰式の巻

 

父兄運動会、海水浴、テツの鑑別所同窓会、ボクシング篇……等々が収められつつ、チエちゃんを取り巻くそれぞれの人物がかなりスゴイ実力を発揮している巻になります。

 

以下、ネタバレ含みで各登場人物の活躍と好きなセリフをご紹介です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チエちゃん

「遺伝」という概念を知ってしまい、自分がテツに似ているんじゃないかと悩むチエちゃんが最高にかわいい。

「やっぱりイデンの話はホンマやろか

 ウチは大人になったらテツみたいになるんやろか

 今日もカッとして下駄ぶつけてしもたしなあ

 テツは足は速いし野球も…相撲も…

 ウチのええとこは全部テツに似たんかなあ

 ああウチは日本一とりかえしのつかん少女や」

 

テツの鑑別所同窓会についていって、思いの外なテツの人気に驚くチエちゃんもいいですね。親の知らない面を垣間見るという経験は大事。

ひょっとしたらテツは大人に人気があるのとちゃうやろか

そうゆうたら花井のオッちゃんもミツルのオッちゃんもお好み焼き屋の…カルメラの…みんな迷惑してるのにテツに会いに来る

 

両親のデートを目撃した場面も同様にイイですね。

なんの話をしてたのか聞こえへんかったけど

時々見えるお母はんの顔はいつも笑うてた

お母はんがあんなによう笑うとはウチは今まで知らんかった

それより時々笑うテツの顔がものすごかった

 

デート目撃の後、母と娘でウソ八百の会話をしながらごはんを食べるのも好き。

 

 

ヨシ江

異常に足が速いことが判明、

コケザルやヒラメちゃんにナイスフォロー、

テツを上手くリードして久しぶりのデートに持ち込む等、

彼女特有の強さがいよいよ現れてきた感があります。

 

「まあちょっと座りませんか」

 

の一言でテツをコントロールできるのがスゴい。

 

「わたし今でも雷蔵から来た手紙だいじにとってありますんや」

 

と、何となく今後の展開が想像できる殺し文句をシレっと吐いて完全にテツを手玉に取っているのが好き。

それにしても市川雷蔵好きとは。気が合いそうです。

 

 

テツ

ヨシ江はんにはやられつつも、相変わらずケンカは強いテツ。

元ランク1位のウェルター級ボクサーを一撃でノックアウトするというとんでもない活躍(営業妨害)をしているのに唖然です。

「キャ~殺して~」

 

ヒラメちゃんに甘え始めるのもウケます。

「とにかくワシおまえと居るとすごく素直になれるねん」

 

海水浴で、テツとカルメラが地元ヤクザとケンカしているのを、チエちゃんや花井のオッちゃんが笑いながら眺めている遠景も好き。

 

 

ヒラメちゃん

得意の絵でテツを描いてコンクールで表彰されるという栄誉に浴しました。

テツのお腹が冷えないよう、腹巻きも描いてあげたという彼女ならではの優しさがいいんですよね。

 

水泳で、いままで息継ぎなしで泳ぎ続けていたというのも彼女らしくて好き。

「チエちゃんのゆうとおり横に顔上げたら急に息が出来てん」

 

 

小鉄&アントニオジュニア

二匹でひょうたん池で泳いで、変な病気もらってきて全身痒くなるのがかわいい。

飲食店には入れられませんけど。

 

小鉄は、遺伝で悩むチエちゃんを眺めながら

ワシのことは分からんけどチエちゃんがどっちに似たのかはわかる

チエちゃんの横顔はお母はんにそっくりや

 

と、飼い主より先に正解に辿りついているのがいいんですよね。

 

その際、チエちゃんから小鉄はどっち似かと聞かれて

きびしいこときくなあ

どっちに似てるゆわれてもワシの場合目が開いたらダンボール箱に乗って河の上を流れとったもんなあ

猫にも捨てられた痛みはあるのさ

 

と深刻な身の上をひとり思い返しているのも男前。

 

 

ジュニアはお好み焼き屋に居座るオバはんらに、ソース塗ったお好み焼きをぶつけまくって顔に青ノリまでかけて撃退したというのが、バクチ屋の用心棒だった父親を彷彿とさせて好き。

 

 

 

 

まこと、一人ひとりのキャラが立ちまくっているのがさすがですね。

 

それにしても本当にストーリーを覚えていない。

原作もアニメも当時かなり見たはずなんだけどなあ。

 

5巻以降も登場人物たちの魅力掘り下げが続いて楽しませていただけますように。

 

 

 

「じゃりン子チエ 文庫版3巻感想」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ

「じゃりン子チエ 文庫版5巻感想」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ

 

 

大河ドラマ 麒麟がくる「衣装五行思想からの畿内戦国史展開予想」(続 1話視聴時点の妄想)

 

麒麟がくるのオフィシャルHPを観てみたら、演出家の大原拓さんが大胆なネタバレ要素を披露してくださっていてかんたんしました。

普通に公式で明言されているので、もしかしたら既に多くの人が気づいていて展開予想とかされているんですかね?

 

www.nhk.or.jp

 

 

 

五行思想というものがあります。

相生とか相剋とか聞いたことありませんか。

 

演出インタビューによれば、

青は黄色を倒し、白は青を倒す……。

明智家の家紋は水色桔梗です。光秀が青(水色)なら、信長は黄色、藤吉郎は白といった具合にキャラクターを色分けし、衣装の裏テーマとして「五行相剋」を取り入れました。

 

とのこと。

ほうほう。

 

※参考画像:wiki五行思想」より引用

f:id:trillion-3934p:20200123011926p:plain

 

 

※そういえば昔、「アガペイズ」という風水野球ゲイ漫画がありましたね。

 

 

 

 

そこで、みんな何色やったっけと登場人物紹介ページを見てみたところ。

www.nhk.or.jp

 

 

木(青・緑)

 明智光秀三好長慶細川藤孝

 

火(赤)

 斎藤高政(義龍)、松永久秀徳川家康

 

土(黄)

 織田信長細川晴元

 

金(白)

 藤吉郎

 

水(黒)

 斎藤道三(利政)、足利義昭

 

木(緑)のような金(白)のような

 三淵藤英

 

木(青)と火(赤)のあいだ?(紫)

 足利義輝

 

 

 

……ということになりましょうか。

 

 

明智光秀さん(青)は織田信長さん(黄)を倒し、藤吉郎さん(白)に倒される。

明智光秀さん(青)は斎藤道三さん(黒)に育てられ、斎藤義龍さん(赤)を励ます。
(そして斎藤道三さんと斎藤義龍さんは相剋の関係)

織田信長さん(黄)は藤吉郎さん(白)を育て、藤吉郎さんは徳川家康さん(赤)に家を滅ぼされる。

そして、三好長慶さん(緑)が燃えると松永久秀さん(赤)が生まれる。

 

おお、確かにそんな感じになっていますね。

 

 

 

ということは、明智光秀さんと三好長慶さんは同じグループということで。

 

てっきり「明智光秀織田信長」の関係と「松永久秀三好長慶」の関係がこれから対比されていくのかなあと思っていたのですが。

 

もしかすると、

明智光秀織田信長」と「三好長慶細川晴元

読み解く方がドラマの展開的に正しいのかもしれません。

 

 

こうなると再び色々妄想がはかどるところがありますので、せっかくですので今後の展開予想をもう少し書いてみたくなりました。

 

※予想①~⑨↓

大河ドラマ 麒麟がくる「三好長慶と松永久秀の役割、そして解釈違いの予想」(1話視聴後時点の妄想) - 肝胆ブログ

 

 

 

予想⑩:明智光秀三好長慶細川藤孝が結託

青色チームということで素直に考えるとこうなるのでは。

木属性が集まって大樹(足利将軍のこと)を支えるならキレイな姿ですね。

 

 

予想⑪:細川晴元畿内混迷の主因扱い、足利義輝はセーフ

黄色い細川晴元さんが色んなことを全部負うかたちになりそう。

そうなったら気の毒過ぎますが……。

 

紫の足利義輝さんは綺麗な神輿のままで、大きくサゲられることはないのでは。

なんせ向井理さんですし。

 

 

予想⑫:駒の命の恩人は三好長慶

1話で言及された、駒さんの命の恩人。

その事件が10年くらい前として、天文六年(1537年)頃に京にいそうな人、

かつ明智光秀さんと似通い先行モデル的な役柄を担える人となると……

 

登場人物の中では三好長慶さんくらいしかいなくないですか。

当時は15歳くらい。

親を亡くしたり細川晴元さんに頭を下げざるを得なかったり天文法華の乱で京が大炎上したりして、1話の明智光秀さん同様、どうしたら世の中がもっとよくなるのだろうと考えていそうなタイミング。

ていうか本当に天文法華の乱で駒さんも火災に遭ったのかもしれない。

駒さんは医師助手なので、後に晩年(40代)の三好長慶さんを往診して、脈を取ろうとしたりする際に「この手は……」となる展開とかどうです。

 

もしかしたら木沢長政さんという既に亡き英傑が助けてくれたという線もあり得るかもしれませんけどね。

 

 

予想⑬:畿内戦国史にミニバブルが訪れる

こうして大河ドラマでにわかに畿内史や三好長慶さんが注目されると。

家庭内で歴史通ぶっていたお爺ちゃんの面目が潰される懸念が出てきます。

孫に畿内史関係のことを質問されても

「おかしい……ワシの愛読している●●●●では、織田信長が上洛するまで畿内はダラダラしょうもない争いを続けていた、たいした人物は出なかった、三好? 下剋上して下剋上された残念な人だよ、としか書いていなかったのに……」

になっちゃうじゃないですか。

 

そうなると出版社等も商機およびクレーム予防で、急に畿内史特集を組んだりし始めると思うんですよね。

 

ただ、この界隈を上手く説明できてなおかつギャラの安いライターさんなんて少ないでしょうから、かなりの粗製乱造が起こることもあるでしょう。

反対に、クオリティの高い畿内史関係創作の供給が増えてくれたりしたらいいんだけどなあ。20XXのライターさんのような方が良く遇されるようになると嬉しい。

 

 

予想⑭:足利義昭明智光秀の生き方を強力に縛る

黒色→青色の相生関係から。

長慶・義輝時代を入念に描いて、その中で明智光秀さんが目標や志を具体化していって、そして後半に義昭さんが登場して光秀さんは彼とともに天下静謐を次こそ実現するために……と。

その中で、光秀さんが義昭さんを動かすというより、義昭さん主導で光秀さんを動かすような、義昭さんが相当目立つ活躍をするのかもしれませんね。

 

 

予想⑮:明智光秀徳川家康に何かを託す

天海僧正になれとは言いませんけど。

徳川家康さんを赤にしているのは、明智光秀徳川家康という相生関係も意識しているのかもしれません。

さすれば、山崎の戦いで本人はバッドエンドを迎えても、何かしら光秀さんの遺志は家康さんを通じて江戸時代の天下泰平に繋がったんだよ、的な救いになりますよね。

 

 

 

 

以上、予想の続きでした。

 

当たるとはまったく思っておりませんが、どうせなら予想や期待を大きく上回るほどの傑作になっておられますように。

 

 

麒麟がくる「第六回 三好長慶襲撃計画 感想とウルトラセブン」 - 肝胆ブログ

 

麒麟がくる「最終話 本能寺の変 感想 世を平らかにする覚悟に果てなし」 - 肝胆ブログ

 

 

 

大河ドラマ 麒麟がくる「三好長慶と松永久秀の役割、そして解釈違いの予想」(1話視聴後時点の妄想)

 

麒麟がくる、のっけから面白いですね。

畿内戦国史をがっつーり描いてくださる気配にかんたんしました。

 

www.nhk.or.jp

 

 

物語は天文十六年(1547年)から始まりましたね。

米の刈入れが終わっていましたので、季節は晩秋ごろでしょうか。

 

畿内史的に1547年秋といえば舎利寺の大戦が終結したタイミング。

細川氏綱さんの反乱が三好四兄弟に粉砕され。

足利義晴・義輝父子は細川晴元さん・六角定頼さん・三好長慶さんという畿内の大物全員から睨まれて身の置き所がちょうどなくなったところです。
(将軍就任直後だった少年義輝さんの屈辱は察して余りあります)

 

この後、1548年に三好長慶さんが細川晴元さんへ謀反。

1549年に三好長慶さん大勝利。

1550年には細川晴元さんに味方した足利義輝さんをも京から追放し、三好長慶さん中心に時代が回っていくことになります。

 

 

ドラマでは鉄砲も出てきました。

史料で確認できる鉄砲初戦果は1550年の中尾城の戦いで足利・細川・六角軍が三好家の侍を鉄砲で撃ち殺したというものですが、この時点で足利義輝さんが籠る中尾城には対鉄砲用の防壁が備えられていたみたいですから、たぶん1549年の江口の戦いかその以前頃から三好家では鉄砲を実践投入していたのでしょう。

 

 

そして、主人公の明智光秀さんが京に近づけば、やたら数の多い三好家の侍たち。

三階菱紋の幟を掲げ、阿波藍由来か薄藍色の着物を着てきびきび行進する姿にタダゴトじゃない集団の雰囲気があってよございましたね。

同様に治安の悪い京で浅葱色の隊服を着て活躍した幕末田舎侍集団オマージュ感もあって嬉しく思ったり。

 

 

松永久秀さん(吉田鋼太郎さん)もさっそく大活躍で何よりです。

このドラマでは三好家・足利家がかなり濃厚に取り上げられそうでとても嬉しい。

大河ドラマ明智光秀」とくれば、下手したら「第1話:永禄の変」とかになってもおかしくないのに。

もしかしたら中盤まで三好家のドラマを引っ張ってくれるんですかね、マジですか。

 

 

 

嬉しさのあまり、2秒で妄想した今後の展開予想を以下に書いておきます。

三好家ファンの痛い願望に過ぎないので一笑に付していただければと存じます。

最終話まで見た後、予想が何個当たったか振り返ってみようかな。

 

 

 

予想①:三好長慶さんは相当アゲられる

三好長慶さん(山路和弘)さん、もの凄く悪そうで老練そうなキービジュアルになってございますが。

三好長慶/山路和弘 | 登場人物 | 『麒麟がくる』

 

これは、実は表面上の態度は悪辣系であったとしても、やることなすこと全てが光の戦士となる前フリじゃないでしょうか。

第1話で、(もしかしたら実態以上に)荒廃した京の都を見せてくれましたよね。

あれ、どう考えても「三好政権による京の治安回復」の絵をこれから際立たせたいからだと思うんですよ。そもそも1話時点で三好家の侍だけは近代軍隊みたいな行進をしていて、明らかに躾が行き届いていますよね。

山路和弘さんの卓越した演技力&イケボイス、三好長慶さんの史実で成した功績&魅力、それらを視聴者に次々とサプライズギフトしてくださったら嬉しいな。

「三好長慶とは」分かりやすい最近の研究とかの解説 - 肝胆ブログ

 

 

予想②:松永久秀さんはグチを吐きつつ長慶さん大好き

松永久秀さんの明智光秀さん対応を見るに。

相応に久秀さんも長慶さんへのグチを溜めてると予想しています。長慶さん、久秀使いが荒いですからね。

ただ、明智光秀さんも心から斎藤道三さんを嫌いでないのと同じように。

久秀さんも長慶さんのことを「ムカつく。でも、好きぃ……」というおっさんずラブなんじゃないすかね。

 

次点予想としては、成り上がり梟雄野心を前面に出して、何なら従来説通りに三好家に酷いことするんだけど、ドラマ後半で織田信長さん時代になってから「やっぱり長慶様の頃が良かったよぉ~~」と泣いてくれるだけで全三好主従ファンに逆転ホームラン打つことになる吉田鋼太郎さんでもいいのよ。

もう吉田鋼太郎さんなら何をしてもズルい、かわいい、になることが約束された気がしますので、伸び伸び楽しく演じてくれたらいいなと思っています。

 

 

予想③:明智光秀さんは三好長慶さんに麒麟味を見出す

長慶さんによる京の単独支配、復興していく京の様子、繁栄する畿内の様子、名門守護勢力を次々に撃退する武威等を見るにつけ、ピュアな光秀さんは「ほぁぁ……しゅごい……」となると思われます。

そもそも松永久秀さんに対して既に好感を抱いておりますしね。

 

 

予想④:明智光秀さんは足利家が大事、故に三好愛に葛藤

光秀さんはインテリで、四書五経読んで育っていて、土岐氏・源氏の貴い血と誇りを受け継いだという自意識も持っておりますので。

頭で考えたら幕府は貴い、足利将軍は貴い、身分の上下は必要、という常識をけっこう強力に持っていると思うんですよね。

ドラマの足利家関係者、かなり魅力的な布陣になっていますし。

 

そうなると、頭では足利家大事と思いながら、身体(体感)は三好家イイじゃんになってしまっている光秀さんとしては、長慶さんがやること義輝さんが遭うことの狭間で葛藤しちゃうわけですね。

すなわち久秀さんから「口ではそんなこと言いながら身体は正直だな」とか言われてしまう光秀さんが期待されるのです。

 

 

予想⑤:明智光秀さんが三好家・足利家の和睦(1558)に貢献

大河ドラマですからね。

ここは明智光秀さんが六角義賢さんの手柄を奪う局面ではないでしょうか。

 

主人公ならではの活躍で三好家に貸しをつくって、和睦を促し。

主人公ならではの活躍で足利家に貸しをつくって、和睦を促し。

 

たぶん儒教マインドを持っている人からすれば、1558年の足利-三好体制って理想像だと思うんですよね。

四書五経って家格マインドガチガチと思われがちですけど、「天下のために人を得る者、之れを仁と謂う」(孟子みたいに、イケてる君主が有能な人物を登用することこそが真の仁! みたいな考え方も持ってますからね。

寛恕の心を以て三好長慶さんと手を結んだ足利義輝さんはまさにそういう仁の持ち主ですよね的なアゲ方ができるんじゃないでしょうか。

 

要するに、足利家が貴いという理想はそのままに、真の実力者が足利家を支えることで世に静謐が訪れ麒麟も踊り出す的な理想を光秀さんが持つに至ると予想しますよ。

 

 

予想⑥:長慶愛をこじらせた光秀さんが三好残党絶許マンに

そんな風に足利-三好体制に理想を見出した光秀さんですから。

三好一族連続死亡事件にたいへん胸を痛め。

三好義継さん・三好三人衆による永禄の変に対してはそりゃもう激怒も激怒、もちろん松永久秀さんに味方しつつ、「お前ら長慶さんのことが全然分かってない」とか吐きながら長慶さん亡き三好家なんて存在しない方がマシと断じるようなこじらせ外野アンチになるんじゃないですかね。

もちろん四国政策では長宗我部家推しになって三好家を徹底的に嫌がらせ。

 

 

予想⑦:光秀「長慶再び主義」と、信長「長慶反省主義」

久秀さんが年下の長慶さんに尽くしたように。

光秀さんもやがて年下の信長さんに仕えることになります。

信長さんも大変な実力者ですし、足利義昭さんを立てて上洛し新政権を開くのに貢献されますから、光秀さんは信長さんに新たな麒麟の到来を感じてドキドキしますと。

 

しかし、だんだん色々起こって、結果、光秀さんが理想主義者として長慶さんのように足利家を繋ぎとめようとするんですけど、信長さんは現実主義者として「これからは自分でやるしかない、三好長慶と同じ轍は踏まない、というか三好長慶も本音は現実主義者だから俺と同じ判断するはず」的な解釈違いを起こすのではないかなあと。

思い浮かぶ未来がだんだんズレ始めて、光秀さんが再び葛藤しだす……的な。

 

もちろん信長さんが長慶さんに劣るみたいな陳腐なアレではなくて、異なる二つの正義、信長さんだけが持っている君主の責任感使命感、みたいな大人のドラマになっていくことを期待です。

 

 

予想⑧:久秀さんは「信長と長慶の違い」を指摘し爆ぜ散る

光秀さんと仲の良い久秀さんがとうとうお亡くなりになるにあたり。

ドラマの前半中盤後半を通して関わってきた久秀さんが、長慶さんと信長さんの決定的な違いを語るような、光秀さんにとっては呪いにしかならないような指摘を遺して爆発するんじゃないでしょうか。

まあ爆発はしなくてもいいんですけど、せっかくだからウルトラマンタイガのOPくらいの勢いで爆発してほしいような思いもあります。

 

 

予想⑨:本能寺の変三好長慶解釈違い原因説

そう、ここまで来たらエンディングはひとつですね。

本能寺の変とは三好長慶さんの解釈違い論争から起こった悲劇だったのです。

これにはザ・マンさんも苦笑い。

 

 

 

 

 

 

以上、

麒麟がくるの話に見せかけて実は全く関係のない話をたくさん書いてしまいました。

最後まで読んでしまった方がいるのなら本当にこんな内容で申し訳ありません。

 

 

麒麟がくるについてはもちろん三好家の活躍を楽しみにしておりますが、実はそれ以上に「直虎」のときの寿桂尼さん(浅丘ルリ子さん)や榊原康政さん(尾美としのりさん)のような、そのドラマならではの輝きを放ってくださる方に出会えることを心待ちにしています。

尾美としのりさん、今回も土岐頼芸さん役で登場してくださるみたいですし、楽しみですね。

 

なんか色々大変とのことですけど、役者方やスタッフ方が実力を存分に発揮し、事故なくクランクアップを迎えられますように。

 

 

↓続き

大河ドラマ 麒麟がくる「衣装五行思想からの畿内戦国史展開予想」(続 1話視聴時点の妄想) - 肝胆ブログ

 

麒麟がくる「最終話 本能寺の変 感想 世を平らかにする覚悟に果てなし」 - 肝胆ブログ

 

 

 

 

吉村昭さんの短編集「海馬」と「石堂淑朗さんの解説」(新潮文庫)

 

吉村昭さんの動物を題材にした短編集「海馬(トド)」が場景が思い浮かぶような心地よい面白さだったのですが、小説に負けないくらい巻末の石堂淑朗さんの解説も素晴らしい内容でかんたんしました。

 

www.shinchosha.co.jp

 

f:id:trillion-3934p:20200119230359j:plain

 

 

収められている小説は7編。

 

  1. 闇にひらめく(鰻)
  2. 研がれた角(闘牛)
  3. 蛍の舞い(蛍)
  4. 鴨(鴨)
  5. 銃を置く(羆)
  6. 凍った眼(錦鯉)
  7. 海馬(トド)

 

いずれも動物そのものではなく、題材となる動物を飼育したり狩猟したりしている男性が主人公です。

 

以下、ネタバレを含みますのでご留意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

短編それぞれの内容はかなり構成が共通しており(「銃を置く」を除く)、

 

 女性関係に鬱屈したり不器用だったりする男性

   ↓

 動物の飼育や狩猟の中で発揮される男性の魅力なり人間らしさなり

   ↓

 事情持ちの女性登場人物が男性に惹かれていく

 

といったパターンが多いです。

基本的には救いがある展開ですからご安心ください。

「闇にひらめく」なんて「仮釈放」のifルートな感じがしてちょっと嬉しかったり。
(それにしても吉村昭作品は寝取られモノが多い笑)

「仮釈放 感想」吉村昭さん(新潮文庫) - 肝胆ブログ

 

 

 

そうした登場人物の幸いをあらすじとしつつ、見どころは題材となるそれぞれの動物関係シーンでしてね。

 

本当に息を呑んで闇に潜むうなぎを追っている気になりますし、

本当に闘う牛とともに汗を流している気になりますし、

本当に闇夜に浮かぶ蛍のまたたきを目撃した気になって心を動かされますし……

 

と、吉村昭作品らしい一つひとつの場景の迫真味が相変わらずお見事で、派手な動きも爆発もないのに大きな熱量を感じることができて、いい小説だなあと思うのです。

物語の本筋となる男女の幸いは現代から見ればクラシックな描写に思えるところもあるのですが、そこは本筋なんだけどある意味ではオマケというかね。

電車の窓から見える景色を楽しむ気分と似ていて、目的地に着くことよりも過程で味わう気持ちが大事なんだ感を抱くことができます。

 

 

短編それぞれの優劣は難しいのですけど、

いちばん目に浮かぶ景色が好きなのは「闇にひらめく(鰻)」、

いちばん好きな登場人物は「海馬(トド)」のお爺ちゃん、

いちばん感じの悪さがリアルな登場人物は「凍った眼(錦鯉)」のご遺族、

いちばん老いと引退の感覚がリアルなのは「銃を置く(羆)」、

といった印象が強く残っています。

 

「銃を置く」は「羆嵐」の後日談でもあるので要チェックですよ。

「羆嵐」吉村昭さん - 肝胆ブログ

 

 

 

 

さて、この短編集に解説を書いてくださっているのがウルトラマン好きとしても見逃せない石堂淑朗さんなんですけどね。

この方の吉村昭作品評が「まさに!」というもので感動したのですよ。

 

人生の動を静謐のうちに描く

私自身かつて持ち、今は使わぬ故に退化しつつある五感の回復が如実に感じられて心のバランスが癒される

淡々たる語り口は山場を山場と意識させない
(略)
自然と人事を一体化させ、劇的な山場をさり気なく隠す吉村さんの表現

 

読者がホワァと抱いていた吉村昭作品の魅力を、このように端的に言い表してくれることにですね、非常に深い感銘を受けるのであります。

これは素晴らしい解説。

ぜひ新潮文庫版で呼んでいただいて、本編とともに満喫すべき代物でございますよ。

 

 

 

短編集でサラッと読めますし解説が最高ですし550円(税別)ですし、満足度の高い一冊でございました。

うなぎ食べたくなりますし。

 

人と動物の営みがこれからもある種の信頼関係と節度を保ったものでありますように。

 

 

 

 

信長の野望20XX「2章攻略&年末年始の育成」

 

20XXのストーリーが2章に入ってグッと面白みを増していてかんたんしました。

こうやって平安メンバーや20XX仕様に愛着が増していくといいですね。

 

↓2章リリース時のリリース

nobu201x.gamecity.ne.jp

 

 

第2章「平安海賊王」は、藤原純友さんの反乱を舞台になぜか小野小町さんや安倍晴明さんや戦国武将も絡んでいくような物語になっております。

 

 

一通りクリアしてみましたが、ベリーハードは1章ほど難しくありませんでした。

油断していたらやはり高敏捷・高攻撃力で殴られますけどね。

f:id:trillion-3934p:20200118004159p:plain

 

 

新しい敵の怪獅子さん。

f:id:trillion-3934p:20200118004229p:plain

f:id:trillion-3934p:20200118004258p:plain

 

1%というささやかな攻撃反射をしてくることと、兵器が効きにくいことが特徴です。

こういう兵器や無属性攻撃のメリットを封じてくる敵は憎たらしいですね。

攻撃反射は通常だと気にならない程度のダメージしか喰らいませんが、一度芦屋道満さんが本気で攻撃したら撤退させられてしまいました。薬術師アタッカーや呪術師アタッカーを育てている人は気をつけましょう。

 

 

ボスの海坊主さん。ステータスはベリーハード魔窟のもの。

f:id:trillion-3934p:20200118004610p:plain

 

やっかいな特性はもっていませんし生命力も敏捷もそれなりですしなので、兵器なり強い武将で殴るなりすれば普通に倒せると思います。ありがたい。

 

 

 

 

ストーリー的に気に入ったところを取り上げますと。

(少しネタバレを含みます)

 

 

 

 

 

 

 

かさねさんがずっと船酔いしていたのが印象的。

f:id:trillion-3934p:20200118004858p:plain

 

真面目に頑張ってる面と微妙に頼りない面とのギャップでかわいい後輩感を出してきはりますね。

このゲームは妙齢ユーザーも多そうなので案外ウケるかもしれない。

 

 

 

相変わらず黒田官兵衛さんの強引なストーリー展開力が目立っていたり。

f:id:trillion-3934p:20200118005458p:plain

 

無理のあるロジックをイケメン力と実力者力で強引に押し通すのがすごい。

 

 

 

九鬼嘉隆さんが藤原純友さんに出会って感激している姿もいいですね。

f:id:trillion-3934p:20200118005418p:plain

 

 

九鬼嘉隆さんのこのセリフはちょっと気になっています。

f:id:trillion-3934p:20200118005701p:plain

 

まだプロローグでしか戦国時代で活動していないのに?

201X世界と20XX世界の繋がりに関わる、何らかの伏線だったりして。

というか伊賀越えの徳川家は人格がリセットされていたっぽいですけど、三好家の面々や上杉謙信さんや大友宗麟さんや奥州の濃いおじさんたちも皆キャラリセットされちゃってるのかなあ。

 

 

 

平安時代メンバーの中では、相変わらず藤原道長さんの口説き方が下品でいいですね。

f:id:trillion-3934p:20200118010127p:plain

 

 

道長さんの「朝廷が肥えればそのうち民も肥えるやろ理論」は、資本力の偏重や労働者需要の逓減や所得再分配機能の行き詰まりや世代を超えた格差の再生産等が指摘される現代世相を投影しているような気がしないでもありません。

f:id:trillion-3934p:20200118010956p:plain

f:id:trillion-3934p:20200118011007p:plain

f:id:trillion-3934p:20200118011021p:plain

 

実際に道長さんや平安貴族がこのような考え方に立っていたかどうかはともかく、人の上に立つ人がどこまで様々な立場の人の状況や感情を想像できているか対策を打てているか、一方で庶民は上に立つ人にどこまでの機能発揮を期待するかというのは難しいテーマですね。

平安時代まで遡ると、限られた情報で下手な政治判断を行うよりは、立派なお寺を建ててひたすら信心をバラまく方が庶民の納得感が高かった可能性もありますし。

 

 

 

脱サラして一緒に起業しようぜ! という藤原純友さんに力強い魅力と可能性を感じるのも現代に通じるものが。

f:id:trillion-3934p:20200118012056p:plain

 

 

 

そんな風に平安時代の人々がシリアスな話をしている中、安倍晴明さん界隈だけは

f:id:trillion-3934p:20200118012333p:plain

 

芦屋道満安倍晴明源博雅→笛という非インタラクティブな関係性を着々と発展させているのが薫り高くてイイですね。

「小説 陰陽師」の「安倍晴明&源博雅ぐりとぐら感がすごい、愛しい」夢枕獏さん(文春文庫) - 肝胆ブログ

 

 

 

あと、ドロップ武将で手に入るこの人、本当に星2でいいんでしょうか……

f:id:trillion-3934p:20200118012914p:plain

 

こんな超大物文化人がぽろぽろドロップして次々とバイバイするの、失礼過ぎてゲームとはいえドキドキしちゃう笑

 

 

 

 

かように色々と充実した2章攻略の合間に、年末年始の諸イベントを利用して、私にしてはたくさんの武将を育ててみましたよ。

いままではほぼ固定メンバーで攻略していましたが、20XX仕様も踏まえ、少しは陣容を厚くしないとなあと。

 

 

目玉育成武将その①。体脂肪率57%三好之長さん。

f:id:trillion-3934p:20200118013716p:plain

 

シンプルに強くしてみましたが、2章は機の敵が出てこないので何の役にも立ちませんでした。いつかきっと何かしら活躍してくれたらいいな。

 

 

 

目玉育成武将その②。爽風の大志鍋島直茂さん。

f:id:trillion-3934p:20200118013934p:plain

 

屍特化仕様に変えるとともにセクシーな眼差しを開いていただきました。

いざ屍特化に切り替えてみたら異常に便利で、2章攻略MVPの一人です。

我が部隊のやんわりバフでも1000万ダメージ以上を叩き出して屍を確実排除してくださります。屍が得意なのは武芸者だけですし、これからも長く活躍してくれそう。

 

 

 

三好之長さん開眼の副産物、芦屋道満さん。

f:id:trillion-3934p:20200118014406p:plain

 

強いわこの人、さすが星5。2章攻略MVPのもう一人として即戦力になりました。

早く陰陽師を読み進めて、彼に愛着を抱ける域にならねば。

 

 

 

状態異常対策持ちバッファー。クリスマス松永久秀さん。

f:id:trillion-3934p:20200118014704p:plain

 

 

同じく陽泰院さん。

f:id:trillion-3934p:20200118014757p:plain

 

 

前からこういう武将が欲しかったんですよね。嫌らしい状態異常からパーティを守りつつ、強力なカウンターにも繋げられる人。有能バッファーをベースに育ててみたかったのです。

昔レギュラーを張っていた寿桂尼さんとあわせて万劫の守護持ちも3人揃いましたし、これからはもう少し攻略方法に幅を持たせられそうです。

 

 

 

 

だんだん20XXにも慣れてきた気がします。

これからも戦闘バランスの調整とかあるんだとは思いますけど、どうかしばらくは20XXリリース後の育成努力が無駄になりませんように。

 

 

信長の野望20XX「1章攻略&12/24バランス調整」 - 肝胆ブログ

信長の野望20XX「3章および源頼光&四天王絵巻 攻略の感想」 - 肝胆ブログ

 

 

 

「小説 陰陽師」の「安倍晴明&源博雅ぐりとぐら感がすごい、愛しい」夢枕獏さん(文春文庫)

 

信長の野望20XXというゲームで安倍晴明源博雅コンビが気になったので、そういえばちゃんと読んだことないなと思って小説「陰陽師」を購入してみたところ、想像以上の両者の仲良し描写っぷりに悶絶せざるを得なくてかんたんしました。

 

なぜ信長の野望安倍晴明が出てくるんだと思う方もいるかもしれませんが、そういう何でもありな面白いゲームがあるんです。

 

books.bunshun.jp

 

f:id:trillion-3934p:20200114223208j:plain



 

陰陽師」シリーズは、平安京を舞台に安倍晴明さんが相棒の源博雅さんと怪異事件を解決していく筋立ての作品です。

漫画化や映画化もされているので、触れたことがある方も多いかもしれませんね。

 

この第一作「陰陽師」は短編集で、全部で6編の作品が収められています。

基本的には源博雅さんが酒のつまみ片手に事件を知らせにやってきて、二人でお酒を飲んで、それから解決に向かう感じ。

ミステリのような構成でもありますし、鬼平犯科帳剣客商売のような時代小説らしい構成にも感じます。

要はたいへん読みやすい構成です。

夢枕獏さんの文章は改行が多いのでなおのこと読みやすくていいですね。

 

物語のネタバレはしませんが、私は「鬼のみちゆき」という作品がいちばん平安時代の怪異物語っぽくて好きです。

 

以下、キャラ的なネタバレは含みます。

ちなみに芦屋道満さんは登場しません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

期待通りといいますか、主人公の安倍晴明さんがたいへんイケメンで色気があって明晰で実力者で飄々としていて闇に浮いた雲のようなお方でして、これは安倍晴明ガチ勢の女子を大量に生み出したのもさもありなんという感じだったんですが。

 

 

それ以上にですね、源博雅さんの朴訥としていながら大事なところをしっかりと押さえている魅力がですね、たまらないの。

これは安倍晴明ならずとも彼に夢中にならざるを得ませんの。

 

管弦に造詣が深くて、蝉丸法師のもとへ通い詰めて秘曲「流泉」「啄木」を聴かせてもらったようなエピソードも実にイイのですけど、何よりも安倍晴明さんに対するセリフの一つひとつが実にイキイキと誠実で正直で素直でね。

こんな友達いたら好きになりすぎて困るよね、嬉しいよね、というのがヒシヒシと伝わるのですよ。

 

 

特に好きなのは短編「蟇」での、百鬼夜行異世界に突入したさなかのやり取り。

安倍晴明さんにタチの悪いからかいを受けた博雅さんが……

「だからさ、晴明よ、おまえ、頼むからあんな風におれをからかわないでくれ。おれは時々、冗談がわからない時があってな。本気になってしまうのだよ。おれは晴明が好きなんだ。たとえ、おまえが、妖物であってもだよ。だから、おまえに刃なんか向けたくない。しかし、突然、今のようにされると、どうしていいかわからなくなって、つい、太刀に手がのびてしまいそうになるんだよ――」

「ふうん――」

「だから晴明、おまえが妖物であるにしてもだよ、おれに正体を明かす時にはだな、ゆっくりと、驚かさないようにやってもらいたいんだよ。そうしてくれるんなら、おれは大丈夫だ」

博雅は、訥々と言った。

真剣な口調であった。

「わかったよ、博雅。悪かったな――」

晴明が言った。

しばらくの沈黙があった。

輪が土を踏んでゆく音が、静かに響いていた。

ふいに、口をつぐんでいた博雅が、また闇の中で口を開いた。

「いいか、晴明――」

実直な声であった。

「――たとえ晴明が妖物であっても、この博雅は、晴明の味方だぞ」

低いが、はっきりとした口調であった。

「よい漢だな、博雅は――」

ぽつんと、晴明がつぶやいた。

また、牛車の音だけになった。

 

 

この、やり取りよ!

博雅さんの真っすぐさ、晴明さんの嬉しそうさ!!

暗闇と静寂に覆われた異世界にあって二人の関係性だけはキラッキラというねもうオイ。

 

「ゆっくりと教えてくれればお前がどんな妖物でもおれは大丈夫、お前のことが好き」なんて言われてえよ誰でもこの野郎ですよ本当にもう博雅さん最高。好き。

 

 

 

 

 

更にこうした二人の山場的やり取り以外にもですね。

山場的なやり取り以外にもですよ。

 

 

二人で怪異事件を解決しにいくときの

「ゆこう」

「ゆこう」

 

ですとか!

 

 

お酒を飲むときの

「飲もう」

「飲もう」

 

ですとか!

 

 

お互いに酒を杯に注がれるたびの

「うむ」

「うむ」

 

ですとか!

 

 

謎解きしてるときの

「たぶんな」

「たぶんか」

 

ですとか!

 

 

雪を観ているときの

「静かな雪だな……」

「幽かな雪だな」 

 

ですとか!

 

 

なんかもういちいちお前ら仲良すぎだろ、

ぐりとぐらかよ的セリフ追い重ねっぷりがですね!!

 

ウグググ

読んでいて脳髄に響くのでありますよ。

 

 

 

 

こういうダイレクトにアツい関係性をぶつけられる作品、それでいて読み味は風雅・流麗にして格調をふわり保っているというね……

 

すごい。 

さすが名高い小説「陰陽師」でありました。

 

もちろん取り上げていませんが一つひとつの物語の完成度もさすがでしてね。

こりゃあそりゃあ人気シリーズになるわと納得しきりでございましたよ。

 

 

面白かったので続編にも手を出してみようと思います。

同じようにいまから陰陽師沼に堕ちていく道連れが増えますように。

 

(こうした出会いに繋がったので信長の野望20XXにも感謝です)

 

 

小説「陰陽師 飛天ノ巻 感想 止まらない晴明と作者の源博雅アゲ」夢枕獏さん(文春文庫) - 肝胆ブログ

 

 

 

「人類の歴史を作った船の本 感想」ヒサ クニヒコさん(子どもの未来社)

 

子どもの絵本コーナーにあった「船の切り口から説明する世界史」本が極めてハイクオリティでかんたんしました。

これは、中学校や高校時代に副読本として欲しかったなあ。

 

comirai.shop12.makeshop.jp

 

f:id:trillion-3934p:20200113221308j:plain

 

 

 

皆さん、船は好きですか。

私は大好きです。

 

こちらの絵本はですね、人類にとっていかに船が大事な存在であったか、いかに船が素晴らしい進化を遂げてきたか、そして船を軸として人類がどのような歴史をたどってきたかを、50ページ程度のボリュームでバッチリ知らしめてくれる素敵本なのであります。

 

著者であるヒサクニヒコさんのイラストが非常に分かりやすくてですね。

歴史の理解という意味でも、船の構造のイメージアップという意味でも、めちゃくちゃはかどるんですよ。

船が絡むコンテンツを創作する方にとっても非常に参考になると思います。

 

 

少しだけ絵本の中身を引用させていただくと……

 

 

ローマ船からLNG船までをずらっと見せてくれる序論のページ。

f:id:trillion-3934p:20200113221913j:plain

 

 

船は現物が残らないので、史実解明が難しいということを諭してくれるページ。

f:id:trillion-3934p:20200113222055j:plain

 

 

日本(戦国時代)の安宅船

f:id:trillion-3934p:20200113222147j:plain

 

 

快速帆船! ティーレース!! この過剰な帆の数よ!!! たまらん……。

f:id:trillion-3934p:20200113222455j:plain

 

 

 

このように正確かつ美麗かつ簡明なイラストの数々にですね、よだれ出る訳です。

他にもそもそもの船の構造紹介や大航海時代船や蒸気船や第二次大戦軍艦とかも豊富ですからね、何がしか船の歴史に心揺さぶられたことのあるあなたは手に取ってみると幸せになれると思いますよ。

 

 

歴史本としてもですね、

  • ピラミッドは船が作った
  • 船でひとつになった地中海
  • 大航海前夜の世界の海
  • 鄭和の大航海
  • 鎖国と内航の時代(日本)
  • ヨーロッパの大航海時代
  • 帆船と大砲の時代
  • 大きな鉄の船の時代
  • 第2次世界大戦と船
  • 日本と太平洋戦争
  • 海は資源の宝庫(現代)
  • 海のルールと安全(現代)

等々、いったい何歳児を想定読者に置いて作成されたのか分かりませんけど※、少なくとも中学生・高校生、あるいは社会人の復習としても充分満足できる世界史概論になっておりますから、広くおすすめしたいドキドキ本になっております。

この本を幼児や小学生に独占させていてはもったいないですよ。

 

上記※の件、普通に「徐福」「漢」「壊血病」「十字軍」「朱印船」「ドレイク」「三角貿易」「トラファルガーの海戦」「スエズ運河パナマ運河」「アヘン」「ヒトラー」「南極条約」「メタンハイドレード」「戦略ミサイル」みたいな用語が出て来ますからね。

 

絵本だからといってレベルをいたずらに下げないスタイルが好きだぜ!

 

 

 

子どもの絵本コーナー、たまにとんでもない大人もびっくりな逸品が眠っているから楽しいですね。

こうした良本との出会いをきっかけに歴史好きや船好きの少年少女が増えていきますように。