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「じゃりン子チエ 文庫版5巻感想 お好み焼の焼き方」はるき悦巳先生(双葉文庫)

 

じゃりン子チエ文庫版の5巻が名場面の連続でかんたんしました。

 

www.futabasha.co.jp

 

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5巻に収録されている話は次のとおりです。

 

  • 楽しい正月のむかえ方…?の巻
  • 雷蔵の手紙の巻
  • ドロボーのおみやげの巻
  • キツーイ取り調べの巻
  • おいしいお好み焼の作り方の巻
  • オケラのテツの巻
  • とことんオケラのテツの巻
  • ソムデン・ポチョムキッドvs.マッドドッグテツの巻
  • 天丼パーティーの巻
  • レディー・幕ごはんの夢①の巻
  • レディー・幕ごはんの夢②の巻
  • レディー・幕ごはんの夢③の巻
  • ツイてる男とツイてないみんなの巻
  • ラクタ市に向かっての巻
  • それぞれのガラクタ市の巻
  • ラクタ(人間)市の巻
  • おとこマルタ君の巻
  • 変装の効用の巻
  • テツはどこに…?の巻
  • 人間の戦いの巻
  • センセのデートの巻
  • 『中学生の友』の巻
  • いい相談相手を見つけようの巻
  • 恋する二人の巻

 

 

以下、ネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

じゃりン子チエの各キャラクターを掘り下げていくうえで、重要なファクターが続出ですよ。

 

テツとヨシ江はんの過去、「市川雷蔵名義のラブレター」の行方。

ボクシング東洋チャンピオンと互角以上に戦い、単純なパワー勝負ならおバァはんにも負けないことが判明したテツ。

渉先生の恋愛と、恋愛面では圧倒的上位存在として君臨するヨシ江はん。

ひらがなとカタカナを読める小鉄

春になるとノイローゼになるアントニオジュニア。

赤福を仲良く分け合う大阪下町の家族。

百合根オッちゃんのお好み焼講座。

 

いずれも必読性が高いものになっておりますよ。

 

 

 

チエちゃん

渉先生の恋愛に、少し背伸びして関心を示すのがかわいらしいです。

初めて覚えた恋愛という概念を、赤福を食べながら家族に問題を出すのがいい。

そうやみんな集まってるからウチちょっと問題出そかなぁ

この赤福がノドにつまったら苦しいやろ

そやけどこうゆうので苦しいのはとれたらすぐ治るやろ

ほんならノドにつまるもんもないのに苦しいのはどんな時でしょうか

それは楽しいねんけど

楽しいのんと同ンなじ位苦しいねんな

 

そんなチエちゃんをにこにこ見守っているヨシ江はんやおバァはんもいい。

「それ首つり自殺とちゃうか」と答えてしまうおジィはんもいい。

 

 

テツ

ワシなんでお母はんに勝ったんや

あれがもしマグレやったら勝てる思て今度お母はんに抵抗したらワシえらい目にあうもんな

とにかくそこらへんをはっきりせんことにはワシ危なぁてお母はんに会うわけにはいかんのや

 

……と、(変装していた)おバァはんにケンカで勝ってしもたものの、なんで勝ったのかが分からずに混乱して身を隠すテツがかわいいのです。

そのあとキッチリおバァはんと花井先生にカタにハメられるところも、刃牙のアライJr.感があってかわいい。

 

おバァはんの旧友の女詐欺師や、渉先生の彼女等、出会う女性陣から基本的にモテてしまうところも含めて本当にズルい男であります。

 

 

ヨシ江はん

かつてテツにもらった市川雷蔵名義のラブレターを燃やすシーン、

そやけど女はアホやね

こんな手紙長いこと大事に持ってるんやから

なんでか……

お母はんそう思いましたわ

こうゆうもんは持ってない方がええんですわ

 

渉先生を柔らかく諭すシーン、

でもわたしは女の味方をしますよ

いってもらわない方がいい時もありますしどんなことでも知りたいとゆう時も…

でもそうゆうことを考えなくてすむようになるには時間がかかるんじゃないですか

恋愛をしてる間は無理ですよ

 

と、感情に揺れ惑うキャラクターがおおいじゃりン子チエ界にあって、ひとり上位次元で安定しているヨシ江はんが素晴らしいです。

彼女は、連載開始時の家出を克服してから、本当に強くてしなやかですね。

 

花井先生の

ヨシ江はんは簡単に男の立場になって考えるようなアホやないよ

という評も実に鋭い。

 

こうした、ハッキリした物言いからは遠く、されど味わいや響きがあるような言葉の使い方、小津安二郎映画みたいで好き。

 

 

あと、侵入してきた泥棒を棍棒でぶん殴って始末するヨシ江&チエ母娘も好き。

 

 

小鉄

ひらがなカタカナを読めることまで判明したチート猫の小鉄さん。

 

そんな小鉄さんが

ワシ チエちゃんと遊ぼ

チエちゃんと居ると気持ちがスカッとするからな

 

と、飼い主の前で逆立ちしてアピールに努めているのに、チエちゃんにつれなくされて転んでいるところが実に愛しい。

人間以上に人間のことをよく理解しているにもかかわらず、人間の物語に介入はできないという小鉄さんのポジションいいですね。

 

 

アントニオジュニア

おまえ考えたことないんか

なんでオレらは猫やねん……

 

春になるとノイローゼというか、空虚な哲学者になるジュニアさん。

なんでオレらは猫やねん……ってごっつうパワーの強いワードに驚きます。

 

ヒラメちゃんの歌で元気になった後は、小鉄さんに鬱陶しいくらいテンション高く絡んでいくところも手のかかる弟感があって愛くるしい。

 

 

百合根(お好み焼き屋のオッちゃん)

1話まるごとお好み焼の作り方を語る回が必見ですよ。

 

特に

キャベツはちょっと多いかなと思うくらいが良い

つまりそのスルメをカンナでけずったような

そのスルメの糸切りみたいなの…

「最近のお好み焼はこれが入ってないどー」

それを全体に軽くばらまく

このスルメが鉄板で焼かれた時の香ばしいにおいがいやが上にも食欲をケダモノにするのだ!!

次に紅しょうがのミジン切りを全体にばらまく

とたんにお好み焼がカラフルになるど~~

 

のくだりが好き。

(個人的には、スルメは味が強いのでちょっとでいい派です)

 

 

 

 

 

そんなこんなで、ますます登場人物の群像劇が充実してきた5巻でした。

じゃりン子チエにこんな情緒深い恋愛要素あったんやなあ。

 

次巻以降の展開もまったく覚えていないので楽しみです。

各キャラの彩りがいっそう豊かになって笑わせてくださいますように。

 

 

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「じゃりン子チエ 文庫版6巻感想 百合根の哀愁」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ