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漫画「食の軍師とは 概要と力石」泉昌之先生(週刊漫画ゴラク)

 

漫画「食の軍師」、いつまでたってもゴラクに掲載されないし単行本も出ないもんだと思っていたら8巻で連載終了していたことに今さら気づき、あらためて全巻読み返してみたら力石さんあっての食の軍師やなということをひしひしと再認識できてかんたんしました。

 

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ドラマ化もしていたのでご存知の方も多いかもしれませんが、食の軍師はトレンチコートのおっさん「本郷さん」が、一人で脳内軍師(諸葛亮=蜀の軍師)と喋りながら格好よく食事しようとするも、たいていメニュー選びにミスったり、同じ店で出くわす「力石さん」の方が格好よく食事を楽しんでいたりして敗北を喫する※という漫画です。

 

※例

 蕎麦屋で大量のアテ・蕎麦・酒を注文して長居する本郷さんと、
 板わさ&ビール、天ざる&燗酒でサッと引き上げる力石さん

 

 

もともと料理漫画だけを集めた漫画雑誌「食漫」で連載していたのですが、雑誌が休刊する運びとなり、週刊漫画ゴラク本誌に移管して連載が継続したという経緯があります。

それだけ「食漫」の中でも人気・完成度が高くて、ドラマ化されるのも分らんでもないというコアな盛り上がりがあったんですよね。

 

一般的には「食漫」で掲載されていた時期にあたる1巻がずば抜けて完成度が高く、2巻以降は迷走感を含めて楽しもうという感じに評されることが多い気もしますけれども、あらためて読み返してみたら2巻以降もしばしばスマッシュな面白さを放っておられて、作者方の地力にかんたんしました。

 

 

全8巻の構成と力石戦は次のとおりです。

  1. 力石激闘編。
    おでん、もつ焼き、寿司、蕎麦、とんかつ、餃子、焼肉、シウマイ弁当で力石さんと戦うも、基本的に全敗。餃子だけは両者ノックアウト気味ですけど。
    なにげにシウマイ弁当編では力石さんと二人で新幹線に乗ってお出かけしており、二人の関係が急速に進展していることが伺えるという。

  2. 地方遠征編。
    本誌移管に伴い、本郷さんが各地方に遠征して一人で食事するスタイルに。
    力石さんは横浜中華街編、埼玉東松山編だけに登場し、颯爽と本郷さんを悔しがらせます。
    ちなみに力石さんは埼玉県出身とのことで(現在は中央線沿線在住ぽい)。

  3. 名城攻略編。
    都内各地の名店に本郷さんが突撃。
    読者要望の高まりか話の作りやすさか、再び力石さんの登場機会が増加。
    松茸編、新宿駅ベルク、森下魚三酒場、浅草神谷バー銀座ライオン日本橋たいめいけん、デリー銀座支店、神保町いもや、で本郷さんが力石さんと遭遇し、全敗。
    本郷さんは終始悔しがっていますが、力石さんは本郷さんに舌を出してアピールしたりスープを味見させたりと憎からず思っている様子なのがエモい。

  4. 寺社参拝編。
    有名な寺社仏閣に参拝しつつ、近隣で食事を楽しむ流れです。
    力石さんとは王子稲荷神社、小網神社、町屋稲荷、増上寺(後日談)、上野寛永寺、花園神社、新井薬師門前仲町で遭遇し、本郷さん全敗。
    力石さん、上野では西洋人の友人を連れて登場し、国際派な一面を見せてくれます。


  5. 東京で地方飯を喰らう編。
    本郷さんが都内の各地方料理の名店を攻めることで各地方を制した気になるという展開です。
    力石さんとは佐渡料理、秋田料理、佐賀料理、秩父料理(後の缶詰バー)、岩手料理、大阪料理(串カツ)、土佐料理、薩摩料理、愛媛料理、岡山料理、北海道料理、どぜう丸鍋で勝負し、やはり本郷さん全敗。というか力石さんの登場頻度がどんどん上がってますね。
    力石さん、串カツ屋では初手「エビ、ウインナー、紅生姜……色味を赤に統一した海の幸・陸の幸・地中の幸という"水、陸、土中  赤三形の陣"」を放ったり、土佐料理屋では酔いつぶれた本郷さんのために「彼が起きたらアイスクリンを」と注文し会計を済ませて先に帰るというイケメンっぷりを見せつけたりと、男ぶりがストップ高で手がつけられなくなってきています。

  6. 大衆食堂編。
    いまも町に残る大衆食堂を愛でる章になります。
    力石さんは板橋区役所前、田端、野方、高尾、京成高砂、押上、淀橋、千住魚市場、清澄白河、川越に登場。もちろん本郷さんは全敗。
    力石さんは各店のオバちゃんとスッと打ち解けたり、高尾では山ガールと意気投合していたりと、ここにきてモテ属性をこれでもかと出してきはります。

  7. 朝食編。
    朝から食べられたり飲めたりするお店を愛でる章となります。
    力石さんは綾瀬、築地、羽田空港、神田、三鷹、桜台、武蔵小山(幻影)、浦安、橋本に登場し、毎度のことながら本郷さんに全勝して去って行かれます。
    この巻でも力石さんが美女を連れて登場したりしますが、それ以上に、朝食という特殊な状況下でこれだけ遭遇率が高いとなると力石さん実は本郷さんを追跡してるんじゃないかと勘繰りたくもなりますね。

  8. 最終巻は昼食編。
    ランチを楽しむ章で、ますます力石さんの登場頻度が増加。
    銀座、赤坂、汐留、新宿三丁目、神泉、有楽町、御徒町、日比谷、池上、本川越、鶯谷、前橋、川崎、吉祥寺にて本郷さんと激突し、全てに勝利されます。
    ますます力石さんの女連れ率が上がりそっちでも本郷さんを悔しがらせるのですが、一方で前橋(群馬県)でも遭遇したり、川崎や吉祥寺では初めから二人で出かけていたりして、やはり連れの女性はカモフラージュで本命は本郷さんなんだろうなと思ったりもします。
    前橋で「やっぱりいたか…そろそろ現れるんじゃないかと思っていたのさ」と登場したときはマジかと驚愕しましたね。

 

 

と、各巻それぞれで角度の異なる食レポを楽しめる上に、本郷さんと力石さんの関係性にどきどきすることもできる、異色のグルメ漫画に仕上がっているんですよね。

泉昌之作品は基本的にサブカルチャーだと思うんですけど、力石さんという稀有なキャラクターが導入されたことで、グッとメジャーシーンに馴染んだ感じがします。

 

力石さん、最終8巻では妙にまつ毛が伸びていたり、かわいい顔を見せたりして、色気がマシているのもズルい。

 

ちくわ天そばをこんなにセクシーに食べるキャラはいないと思う。

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菓子パンを食べるとき、幼い笑顔を見せるのも卑怯だぞ。

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この二人の関係性いいなあ。

こういう食のライバル 兼 友達がいたら、さぞ楽しかろうと思います。

 

 

いったん連載終了を受け止めつつ、そのうちシレッと続編が始まりますように。

まだまだ本郷さんと力石さんの組み合わせを見ていたいです。

 

 

 

「とんかつの食べ方(食の軍師1巻by泉昌之先生より)」 - 肝胆ブログ