あらためてウルトラマンXを通して見ていて、ギンガとともにニュージェネレーション作劇の基礎を築いた功績に敬意を表しつつ、縦糸としての「親から子どもへ」が大人向けなドラマ感に富んでいることを実感してかんたんしました。
以下、ネタバレを含みますのでご留意ください。
要はウルトラマンエックス視聴2回目の、特に印象に残った点の感想です。
ウルトラマンXは
- エックスさんのサイバーな格好良さやゴモラアーマーを始めとした鎧装備のインパクト、
- 主人公大空大地さん(高橋健介さん)の爽やかなイケメンっぷり、
- ラスボス グリーザの生理的にくる恐ろしさ、
- 「激撮!Xio密着24時」
等々が話題になることが多い気がいたしますが、あらためて全話一気視聴しますと、「親子の絆」を非常に細やかに描いていることに気づかされます。
しかも、主人公大空大地さん(父母がともに行方不明)を始めとして、ベリーハードな親子関係ばかりで。
大空大地さんは両親との絆から虹色の光を見出してエクスラッガーを入手したり最終回に臨んだりといい感じの展開を見せていくことになる訳ですが、
あらためて観ていると、主人公の親子関係を描いていくためのサブストーリーとして、主人公所属部隊「Xio」の神木隊長および橘副隊長の親子ドラマがすごく良くて、これは土曜の朝からお父さんお母さんが泣いてしまうやつやなあとほれぼれしたのですよ。
まずは15話「戦士の背中」にて。
神木隊長が、娘が幼い頃(そして妻は重病)から、家族よりも仕事を優先せざるを得ない状況がずっと続いたため、娘との関係は冷え切ってしまい、娘の結婚式に出るか否かで逡巡する……というお話なのですが。
妻と娘を置いて出動する若き日の神木隊長の迷いをはらんだ表情と、
それをジッと見上げてくる幼い娘の眼差しが、
もう親的にはものすごく胸に来るものがございます。
とりわけ、成長して結婚を控えた娘が、父の役目が「家族よりも優先すべき仕事」「父が行かねば、大勢の人々が犠牲になる」ことを理解はしつつも、
「頭では分かってるんだけど……でも、実際にそれをされると……つらいんだよね」
と剛速球を父にぶつけるシーンは、子どもと一緒にウルトラマンXを見ている善良な親御さんの脳を破壊するには充分過ぎる威力です。
こんなん、警察消防自衛隊から船乗りからSEから海外勤務者から管理監督者まで、緊急で職場に呼び出されたり長期間家から離れたりする親は、頭をブン殴られたようなショックですよ。
分かってるんや……
親かて頭ではわかってるけど親も実際のところつらいんや……
でも仕事にも意味があるし誰かがやらんと世の中まわらんのや……
的な。
もちろんこうしたおつらい導入の後、神木隊長は大変男前な奮闘とファイティングスタイルで魅せてくださいますので、お子様の心に穏やかでないものが残ることはないと思います。
しかしながら、神木隊長が大変男前なだけに、父母問わず、親御さんは自分の背中が神木隊長と比べてどの程度のものなのか深く内省せずにはいられなくなるのです。
続く第16話「激撮!Xio密着24時」では、ラストシーンにて橘副隊長が娘二人から動画メッセージを受け取る様が描かれます。
前話に続き、橘副隊長もまたかわいい娘っ子と離れて暮らしている、でもオンラインを活用する等の努力により良好な関係を維持している、ということが一瞬で伝わってくる、大変現代的な良いシーンなんです。
これもまた、子どもと一緒にウルトラマンXを観ている親御さんの気持ちをドキッとさせるには充分です。身近過ぎるその努力。
そして。
最終話直前の第20話「絆 -Unite-」。
この回は、結論から言えば橘副隊長がウルトラマンネクサスに変身するという衝撃的なエピソードで著名なのですが。
そこに至るまでの過程として、
- 16話で登場した橘副隊長の娘さん二人が、夫と一緒に現在はカナダで暮らしていること
- スペースビーストが突如出現して、演出も何となくウルトラマンネクサスっぽくなってくること
- 橘副隊長が日本でスペースビーストと戦っている同時刻、カナダの湖で娘二人がベムラーに襲われること
が丁寧に描写されてまいります。
「ネクサス」風の演出で、「子どもが襲われる」と来ると、ネクサス視聴経験のある親としてはもう気が気でありません。
とりわけ、15話に続いて子役さんの演技がやたら良すぎて、ベムラーを前に絶望して「お母さーん! お父さーん!」と泣き叫び続ける娘さんの姿は非常にショッキングでして、ネクサス視聴経験のある親としては「マジやめて」となること間違いなしなのであります。
15話以降、HPを削られ続けてきた親視聴者としてはここでメンタルの限界を迎えそうになること必至です。
なので、ドラマ的にも親的にもギリギリなこの状況で、
- 橘副隊長の前に突如エボルトラスターが降臨し、
- ネクサスっぽい鼓動音が響き、
- 橘副隊長がネクサスに変身、スペースビーストを鉄拳粉砕し、
- ネクサスのポーズで空に飛び立ち、
- カナダまで高速飛行、
- 娘さんをベムラーから守り、
- 娘さん、夫(しかも川久保拓司さん)と視線を交わす。
- 「諦めるな……!!」
の一連の演出を摂取すると、絶望から希望への振れ幅がデカすぎて頭と胸がクラッシュするのです。
Xのネクサス客演回を名作たらしめているのは、20話単体での演出の良さもさることながら、15話から、更には1話から続いている親と子の絆の物語があってこそだと私は強く主張したい。
それにしても、親子の絆を描く上で、最終話直前にネクサス客演を持ってきたのはスゴイ。スゴ過ぎる。あらためて強くそう思いました。
「悲劇を防ぐネクサス」
「土曜の朝に相応しいネクサス」
「ネクサス好きが見てみたかったネクサス」
申し分のない幸せ!!
ネクサス本編の陰惨な視聴経験があるからこそ、ネクサス最終話で巨大なカタルシスを得られるのだし、エックス客演回で歓喜することができるのだ。
みんなも(精神的体力が充分あるときに)観ようウルトラマンネクサス!!
そういえば帰ってきたウルトラマンでも鍵っ子が登場していた記憶がありますし、ウルトラシリーズはちょいちょい親の精神を攻めてまいりますね。
ウルトラシリーズ、既に2-3世代がともに視聴する作品として確立している訳ですし、メインは当然お子様向けに作成いただきつつ、たまには大人にこそ刺さるような作品も引続き飛び出してきますように。