陰陽師シリーズを順番に読み進めていましたら、「瘤取り晴明」に続いて村上豊さんの挿絵を思う存分楽しめる絵物語が再び登場してくれてかんたんしました。
昨年お亡くなりになったところなのでしみじみとした気持ちになりつつ、村上豊さんの描く魑魅魍魎はどこかユーモラスでかわいらしいところもあって心が開かれた感じになりますね。
こちらの村上豊さんのインタビューがとてもいいので読んでみてください。
言い得て妙。
「大人の絵本」と聞いていかがわしいテレビ番組を思い起こす方がいたら古株の関西人でありましょう。
インタビュアーさんが「陰陽師に出てくる鬼はラテン系」と話されているのが正鵠を射すぎていて素敵です。
根明で情けも風流を楽しむ心もある物の怪の描写と、安倍晴明・源博雅のコンビと、村上豊さんのイラスト。ええマリアージュですわほんまに。
今作の「首」は竜笛ノ巻に収録されていたやつですね。
小説「陰陽師 龍笛ノ巻 感想 最後の"飛仙”がとんでもない」夢枕獏さん(文春文庫) - 肝胆ブログ
以前読んだときも「怖い」という感想を抱いたものでしたが、再び読んでみるとやっぱり怖かったです。
マジあなや。
空飛ぶ首が人を殺害するシーンも、空飛ぶ首が生まれた経緯も、いずれも陰惨で非常にぞくぞくするものがあります。
その陰惨さや怖さをずるずる引っ張らないで、村上豊さんの挿絵が緊迫感を中和してくれて、安倍晴明さんや賀茂保憲さんがスッと展開を進めてくれる流れの快さを味わえるのもまたいいですね。
怖いシーンを読んでいるときは間違いなく怖いのですけど、怖さだけが読後感に残る感じではないのがいいの。これは確かに、絵物語にしたことで作品としての厚みが増した感じがしますわ。
なにか重たい仕事だったり趣味だったりしたあと、こういう「大人の絵本」を読んでみるのはなかなかいいものですね。
読み終えてみれば、なんか心がニュートラルになった感じがします。
村上豊さんのご逝去はまことに残念ですが、これからも既刊の陰陽師シリーズ等を通じて氏の挿絵の魅力が多くの人に伝わっていきますように。
小説「陰陽師 瀧夜叉姫 上下 感想 信長の野望20XX平安編の元ネタはこれか?」夢枕獏さん(文春文庫) - 肝胆ブログ
「陰陽師 夜光杯の巻 感想 定番の面白さ、そして浄蔵の恋にときめく」夢枕獏さん(文春文庫) - 肝胆ブログ