めしばな刑事タチバナの51巻、
- ハードボイルドな尊さ
- 百合的な尊さ
- おじさん同士の尊さ
尊さの三重奏を味わえる巻になっていてかんたんしました。
ハードボイルドな尊さ
私の好きなルノアール好きの「社長」。
喫茶店のプリン、あるいは家で食べるプリンを語るためになんと4話連続登場。
これはちょっとした事件であります。
この社長と語らっているときのタチバナさんは日ごろの5割増しくらいで渋く、ハードボイルド味が激増するのが好き。
語らっているのはたいていスイーツなネタなんですけれども。
「オッサンの人生の中に「プリン」の3文字が入ってくるとどうやっても“愛嬌”ぐらいじゃごまかせない瞬間もちょくちょく出てくる……
進むほどにどんどん後戻りできなくなっていくからな……」
「この俺に“覚悟”を問うてるのか?」
「プリンの道だ」
「プリンの道……」
「いまだ俺もひたすら歩き続けてる」
「……」
「家プリンの話をしよう……」
「食いつきがいいな……」
「俺は 人前で幸せそうな顔を晒すのは“リスク”と捉える……」
「ここは「店プリン」よりさらに奥深いぞ……」
「……もっと荒っぽいやり方もあるぞ
確実に出てくるから容器に張り付きそうなタイプはむしろ最初からこっちだな……
容器とプリンの隙間に竹串を差し込んでグリっと動かすんだ」
「竹串なんてせっかくのプリンにキズが付くだろ」
「プリンってのは皿に出してみると実に表情豊かで串の痕は意外と気にならない」
「プリンの……表情」
「……そう 手にしたプリンは一期一会だからな」
名言が多すぎてヤバい。
ハードボイルドなコマ割りと表情と文法でプリントークし続けているのがギャグとしてもグルメ漫画としても面白すぎますよね。
二人とも本業の大事な用事をすっ飛ばして、いま、ここの時間をすべて相手とのプリントークに注ぎ込んでいるのが尊すぎるのです。
影響されて私もスーパーで喫茶店風かためプリン買ってみました。
とてもおいしかっただす。
百合的な尊さ
詳しい描写の紹介は控えますが、いつもの二人のいつも以上な百合要素が尊すぎて参ります。
コマ単位で切り取ったら完全にそういう事前事後のやつ。
めしばな刑事タチバナ特有の、ソフトタッチ愛撫的な百合描写がとても好き。
リアルなベッドシーンとか交際要素とかはまっったく求めていませんので、これからもこういう触れてそうで触れてないような関係性を描き続けてほしいものです。
おじさん同士の尊さ
これも詳しい描写の紹介は避けますけれども、いつもはちょいちょい喧嘩したりいがみあったりもしている刑事課のおじさんたちが「やり慣れてない気遣い」をしているのが、マジでしみます。
「私という人間そのものを表現」したタルトが、本来の報われ方をするラストシーンも超好き。
職場の仲間、そして家族。人生の二大人間関係における良き場面を連打されて尊みもひとしおです。
話のなかで、ローソンがかつて展開していた調理パンブランド「小麦畑からの伝言」の「コーンマヨパン」のソリッドなうまさに触れてくれていたのも感動点が高い。
まさかこんなネタが最近発行された漫画に載ってるとは思わないから、不意打ちな嬉しさでした。
タチバナもとうとう50巻を超え、面白さはまったく色あせず。
素晴らしい食漫画シリーズです。
作品のポテンシャルとしては100巻が視野に入るクオリティだと思いますし、あと10年も続けばこち亀同様一種の時代記録的な価値が出てくる気もしますので、クオリティ雑誌アサヒ芸能が休刊することなく連載が続いていきますように。