肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

信長の野望20XX「2章攻略&年末年始の育成」

 

20XXのストーリーが2章に入ってグッと面白みを増していてかんたんしました。

こうやって平安メンバーや20XX仕様に愛着が増していくといいですね。

 

↓2章リリース時のリリース

nobu201x.gamecity.ne.jp

 

 

第2章「平安海賊王」は、藤原純友さんの反乱を舞台になぜか小野小町さんや安倍晴明さんや戦国武将も絡んでいくような物語になっております。

 

 

一通りクリアしてみましたが、ベリーハードは1章ほど難しくありませんでした。

油断していたらやはり高敏捷・高攻撃力で殴られますけどね。

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新しい敵の怪獅子さん。

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1%というささやかな攻撃反射をしてくることと、兵器が効きにくいことが特徴です。

こういう兵器や無属性攻撃のメリットを封じてくる敵は憎たらしいですね。

攻撃反射は通常だと気にならない程度のダメージしか喰らいませんが、一度芦屋道満さんが本気で攻撃したら撤退させられてしまいました。薬術師アタッカーや呪術師アタッカーを育てている人は気をつけましょう。

 

 

ボスの海坊主さん。ステータスはベリーハード魔窟のもの。

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やっかいな特性はもっていませんし生命力も敏捷もそれなりですしなので、兵器なり強い武将で殴るなりすれば普通に倒せると思います。ありがたい。

 

 

 

 

ストーリー的に気に入ったところを取り上げますと。

(少しネタバレを含みます)

 

 

 

 

 

 

 

かさねさんがずっと船酔いしていたのが印象的。

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真面目に頑張ってる面と微妙に頼りない面とのギャップでかわいい後輩感を出してきはりますね。

このゲームは妙齢ユーザーも多そうなので案外ウケるかもしれない。

 

 

 

相変わらず黒田官兵衛さんの強引なストーリー展開力が目立っていたり。

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無理のあるロジックをイケメン力と実力者力で強引に押し通すのがすごい。

 

 

 

九鬼嘉隆さんが藤原純友さんに出会って感激している姿もいいですね。

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九鬼嘉隆さんのこのセリフはちょっと気になっています。

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まだプロローグでしか戦国時代で活動していないのに?

201X世界と20XX世界の繋がりに関わる、何らかの伏線だったりして。

というか伊賀越えの徳川家は人格がリセットされていたっぽいですけど、三好家の面々や上杉謙信さんや大友宗麟さんや奥州の濃いおじさんたちも皆キャラリセットされちゃってるのかなあ。

 

 

 

平安時代メンバーの中では、相変わらず藤原道長さんの口説き方が下品でいいですね。

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道長さんの「朝廷が肥えればそのうち民も肥えるやろ理論」は、資本力の偏重や労働者需要の逓減や所得再分配機能の行き詰まりや世代を超えた格差の再生産等が指摘される現代世相を投影しているような気がしないでもありません。

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実際に道長さんや平安貴族がこのような考え方に立っていたかどうかはともかく、人の上に立つ人がどこまで様々な立場の人の状況や感情を想像できているか対策を打てているか、一方で庶民は上に立つ人にどこまでの機能発揮を期待するかというのは難しいテーマですね。

平安時代まで遡ると、限られた情報で下手な政治判断を行うよりは、立派なお寺を建ててひたすら信心をバラまく方が庶民の納得感が高かった可能性もありますし。

 

 

 

脱サラして一緒に起業しようぜ! という藤原純友さんに力強い魅力と可能性を感じるのも現代に通じるものが。

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そんな風に平安時代の人々がシリアスな話をしている中、安倍晴明さん界隈だけは

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芦屋道満安倍晴明源博雅→笛という非インタラクティブな関係性を着々と発展させているのが薫り高くてイイですね。

「小説 陰陽師」の「安倍晴明&源博雅ぐりとぐら感がすごい、愛しい」夢枕獏さん(文春文庫) - 肝胆ブログ

 

 

 

あと、ドロップ武将で手に入るこの人、本当に星2でいいんでしょうか……

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こんな超大物文化人がぽろぽろドロップして次々とバイバイするの、失礼過ぎてゲームとはいえドキドキしちゃう笑

 

 

 

 

かように色々と充実した2章攻略の合間に、年末年始の諸イベントを利用して、私にしてはたくさんの武将を育ててみましたよ。

いままではほぼ固定メンバーで攻略していましたが、20XX仕様も踏まえ、少しは陣容を厚くしないとなあと。

 

 

目玉育成武将その①。体脂肪率57%三好之長さん。

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シンプルに強くしてみましたが、2章は機の敵が出てこないので何の役にも立ちませんでした。いつかきっと何かしら活躍してくれたらいいな。

 

 

 

目玉育成武将その②。爽風の大志鍋島直茂さん。

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屍特化仕様に変えるとともにセクシーな眼差しを開いていただきました。

いざ屍特化に切り替えてみたら異常に便利で、2章攻略MVPの一人です。

我が部隊のやんわりバフでも1000万ダメージ以上を叩き出して屍を確実排除してくださります。屍が得意なのは武芸者だけですし、これからも長く活躍してくれそう。

 

 

 

三好之長さん開眼の副産物、芦屋道満さん。

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強いわこの人、さすが星5。2章攻略MVPのもう一人として即戦力になりました。

早く陰陽師を読み進めて、彼に愛着を抱ける域にならねば。

 

 

 

状態異常対策持ちバッファー。クリスマス松永久秀さん。

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同じく陽泰院さん。

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前からこういう武将が欲しかったんですよね。嫌らしい状態異常からパーティを守りつつ、強力なカウンターにも繋げられる人。有能バッファーをベースに育ててみたかったのです。

昔レギュラーを張っていた寿桂尼さんとあわせて万劫の守護持ちも3人揃いましたし、これからはもう少し攻略方法に幅を持たせられそうです。

 

 

 

 

だんだん20XXにも慣れてきた気がします。

これからも戦闘バランスの調整とかあるんだとは思いますけど、どうかしばらくは20XXリリース後の育成努力が無駄になりませんように。

 

 

信長の野望20XX「1章攻略&12/24バランス調整」 - 肝胆ブログ

信長の野望20XX「3章および源頼光&四天王絵巻 攻略の感想」 - 肝胆ブログ

 

 

 

「小説 陰陽師」の「安倍晴明&源博雅ぐりとぐら感がすごい、愛しい」夢枕獏さん(文春文庫)

 

信長の野望20XXというゲームで安倍晴明源博雅コンビが気になったので、そういえばちゃんと読んだことないなと思って小説「陰陽師」を購入してみたところ、想像以上の両者の仲良し描写っぷりに悶絶せざるを得なくてかんたんしました。

 

なぜ信長の野望安倍晴明が出てくるんだと思う方もいるかもしれませんが、そういう何でもありな面白いゲームがあるんです。

 

books.bunshun.jp

 

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陰陽師」シリーズは、平安京を舞台に安倍晴明さんが相棒の源博雅さんと怪異事件を解決していく筋立ての作品です。

漫画化や映画化もされているので、触れたことがある方も多いかもしれませんね。

 

この第一作「陰陽師」は短編集で、全部で6編の作品が収められています。

基本的には源博雅さんが酒のつまみ片手に事件を知らせにやってきて、二人でお酒を飲んで、それから解決に向かう感じ。

ミステリのような構成でもありますし、鬼平犯科帳剣客商売のような時代小説らしい構成にも感じます。

要はたいへん読みやすい構成です。

夢枕獏さんの文章は改行が多いのでなおのこと読みやすくていいですね。

 

物語のネタバレはしませんが、私は「鬼のみちゆき」という作品がいちばん平安時代の怪異物語っぽくて好きです。

 

以下、キャラ的なネタバレは含みます。

ちなみに芦屋道満さんは登場しません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

期待通りといいますか、主人公の安倍晴明さんがたいへんイケメンで色気があって明晰で実力者で飄々としていて闇に浮いた雲のようなお方でして、これは安倍晴明ガチ勢の女子を大量に生み出したのもさもありなんという感じだったんですが。

 

 

それ以上にですね、源博雅さんの朴訥としていながら大事なところをしっかりと押さえている魅力がですね、たまらないの。

これは安倍晴明ならずとも彼に夢中にならざるを得ませんの。

 

管弦に造詣が深くて、蝉丸法師のもとへ通い詰めて秘曲「流泉」「啄木」を聴かせてもらったようなエピソードも実にイイのですけど、何よりも安倍晴明さんに対するセリフの一つひとつが実にイキイキと誠実で正直で素直でね。

こんな友達いたら好きになりすぎて困るよね、嬉しいよね、というのがヒシヒシと伝わるのですよ。

 

 

特に好きなのは短編「蟇」での、百鬼夜行異世界に突入したさなかのやり取り。

安倍晴明さんにタチの悪いからかいを受けた博雅さんが……

「だからさ、晴明よ、おまえ、頼むからあんな風におれをからかわないでくれ。おれは時々、冗談がわからない時があってな。本気になってしまうのだよ。おれは晴明が好きなんだ。たとえ、おまえが、妖物であってもだよ。だから、おまえに刃なんか向けたくない。しかし、突然、今のようにされると、どうしていいかわからなくなって、つい、太刀に手がのびてしまいそうになるんだよ――」

「ふうん――」

「だから晴明、おまえが妖物であるにしてもだよ、おれに正体を明かす時にはだな、ゆっくりと、驚かさないようにやってもらいたいんだよ。そうしてくれるんなら、おれは大丈夫だ」

博雅は、訥々と言った。

真剣な口調であった。

「わかったよ、博雅。悪かったな――」

晴明が言った。

しばらくの沈黙があった。

輪が土を踏んでゆく音が、静かに響いていた。

ふいに、口をつぐんでいた博雅が、また闇の中で口を開いた。

「いいか、晴明――」

実直な声であった。

「――たとえ晴明が妖物であっても、この博雅は、晴明の味方だぞ」

低いが、はっきりとした口調であった。

「よい漢だな、博雅は――」

ぽつんと、晴明がつぶやいた。

また、牛車の音だけになった。

 

 

この、やり取りよ!

博雅さんの真っすぐさ、晴明さんの嬉しそうさ!!

暗闇と静寂に覆われた異世界にあって二人の関係性だけはキラッキラというねもうオイ。

 

「ゆっくりと教えてくれればお前がどんな妖物でもおれは大丈夫、お前のことが好き」なんて言われてえよ誰でもこの野郎ですよ本当にもう博雅さん最高。好き。

 

 

 

 

 

更にこうした二人の山場的やり取り以外にもですね。

山場的なやり取り以外にもですよ。

 

 

二人で怪異事件を解決しにいくときの

「ゆこう」

「ゆこう」

 

ですとか!

 

 

お酒を飲むときの

「飲もう」

「飲もう」

 

ですとか!

 

 

お互いに酒を杯に注がれるたびの

「うむ」

「うむ」

 

ですとか!

 

 

謎解きしてるときの

「たぶんな」

「たぶんか」

 

ですとか!

 

 

雪を観ているときの

「静かな雪だな……」

「幽かな雪だな」 

 

ですとか!

 

 

なんかもういちいちお前ら仲良すぎだろ、

ぐりとぐらかよ的セリフ追い重ねっぷりがですね!!

 

ウグググ

読んでいて脳髄に響くのでありますよ。

 

 

 

 

こういうダイレクトにアツい関係性をぶつけられる作品、それでいて読み味は風雅・流麗にして格調をふわり保っているというね……

 

すごい。 

さすが名高い小説「陰陽師」でありました。

 

もちろん取り上げていませんが一つひとつの物語の完成度もさすがでしてね。

こりゃあそりゃあ人気シリーズになるわと納得しきりでございましたよ。

 

 

面白かったので続編にも手を出してみようと思います。

同じようにいまから陰陽師沼に堕ちていく道連れが増えますように。

 

(こうした出会いに繋がったので信長の野望20XXにも感謝です)

 

 

小説「陰陽師 飛天ノ巻 感想 止まらない晴明と作者の源博雅アゲ」夢枕獏さん(文春文庫) - 肝胆ブログ

 

 

 

「人類の歴史を作った船の本 感想」ヒサ クニヒコさん(子どもの未来社)

 

子どもの絵本コーナーにあった「船の切り口から説明する世界史」本が極めてハイクオリティでかんたんしました。

これは、中学校や高校時代に副読本として欲しかったなあ。

 

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皆さん、船は好きですか。

私は大好きです。

 

こちらの絵本はですね、人類にとっていかに船が大事な存在であったか、いかに船が素晴らしい進化を遂げてきたか、そして船を軸として人類がどのような歴史をたどってきたかを、50ページ程度のボリュームでバッチリ知らしめてくれる素敵本なのであります。

 

著者であるヒサクニヒコさんのイラストが非常に分かりやすくてですね。

歴史の理解という意味でも、船の構造のイメージアップという意味でも、めちゃくちゃはかどるんですよ。

船が絡むコンテンツを創作する方にとっても非常に参考になると思います。

 

 

少しだけ絵本の中身を引用させていただくと……

 

 

ローマ船からLNG船までをずらっと見せてくれる序論のページ。

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船は現物が残らないので、史実解明が難しいということを諭してくれるページ。

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日本(戦国時代)の安宅船

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快速帆船! ティーレース!! この過剰な帆の数よ!!! たまらん……。

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このように正確かつ美麗かつ簡明なイラストの数々にですね、よだれ出る訳です。

他にもそもそもの船の構造紹介や大航海時代船や蒸気船や第二次大戦軍艦とかも豊富ですからね、何がしか船の歴史に心揺さぶられたことのあるあなたは手に取ってみると幸せになれると思いますよ。

 

 

歴史本としてもですね、

  • ピラミッドは船が作った
  • 船でひとつになった地中海
  • 大航海前夜の世界の海
  • 鄭和の大航海
  • 鎖国と内航の時代(日本)
  • ヨーロッパの大航海時代
  • 帆船と大砲の時代
  • 大きな鉄の船の時代
  • 第2次世界大戦と船
  • 日本と太平洋戦争
  • 海は資源の宝庫(現代)
  • 海のルールと安全(現代)

等々、いったい何歳児を想定読者に置いて作成されたのか分かりませんけど※、少なくとも中学生・高校生、あるいは社会人の復習としても充分満足できる世界史概論になっておりますから、広くおすすめしたいドキドキ本になっております。

この本を幼児や小学生に独占させていてはもったいないですよ。

 

上記※の件、普通に「徐福」「漢」「壊血病」「十字軍」「朱印船」「ドレイク」「三角貿易」「トラファルガーの海戦」「スエズ運河パナマ運河」「アヘン」「ヒトラー」「南極条約」「メタンハイドレード」「戦略ミサイル」みたいな用語が出て来ますからね。

 

絵本だからといってレベルをいたずらに下げないスタイルが好きだぜ!

 

 

 

子どもの絵本コーナー、たまにとんでもない大人もびっくりな逸品が眠っているから楽しいですね。

こうした良本との出会いをきっかけに歴史好きや船好きの少年少女が増えていきますように。

 

 

 

 

「ミスター味っ子幕末編4巻(最終巻) 感想」寺沢大介先生(朝日新聞出版)

ミスター味っ子幕末編が寺沢大介先生のやりたい放題に描き切って大団円を迎えていてかんたんしました。

とりあえず、ミスター味っ子将太の寿司が好きな方は読んだ方がいいです。

 

publications.asahi.com

 

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(後ろの若い切島傀さんみたいなのは明治天皇です)

 

 

以下、ネタバレをふんだんに含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

味吉陽一さんや堺一馬さんの活躍もあり、物語は幕末クライマックスを迎えます。

 

戊辰戦争は起こりません。

代わりに天皇料理祭(すめらみことにたきまつり)という名の天皇GP料理対決で日本の舵取りを誰が担うか決めることになりました。

 

ラスボスは明治天皇with味皇様(先祖)です。

味っ子界からは劉虎峰さん(先祖)や下仲基之さん(本人)も登場します。

西郷隆盛さん(本人)も料理します。

 

審判は山岡鉄舟さん(大年寺三郎太さん)が務めます。

 

 

 

 

……悪ノリが過ぎるような流れですが、こうなってくると寺沢大介先生の筆はノリにノッていて料理漫画としても寺沢大介作品としても非常にレベルの高い作品にまとめあがっております。

このままリイド社あたりに移籍して類似作を発表してほしいくらい。

 

 

 

話の展開として、

「皇室で一番大事な行事は新嘗祭

  ↓

「だから料理勝負で一番大事なことを決める」

という強引なロジックが飛び出すのが大好き。

これこそ漫画力というものですね。

 

 

 

山岡鉄舟さん(大年寺三郎太さん)が暴れ牛にブレーンバスターをかけるシーンも大好き。

これこそ寺沢大介作品ならではの悪ノリというものですね。

 

 

 

現代から下仲基之さんが転移してくる際、

「そのすべてを滅ぼす……力が欲しいか……?」

と料理漫画らしからぬセリフを吐きながら徳川慶喜さんの前に現れるのも大好き。

 

 

 

この作品の西郷隆盛さんは手段を選ばない実力派悪党として描かれているのも大好き。

「封印を……解き放つ時が来もした……!!!」

と不穏なセリフを吐きながら解き放った封印=ハンバーグというのがたまらない。

 

 

他にもツッコミどころや笑いどころがたくさんあるのですが、というか料理勝負としても幕末物語としてもネタとしても山岡鉄舟さん(大年寺三郎太さん)が美味しいところを持っていくのですが、最終的にはハッピーな感じになって、更には味っ子Ⅱに続くようなラストを迎えたのが私としては嬉しゅうございました。

初代味っ子将太の寿司ほど知られていない気もしますが、みんなもっと味っ子Ⅱを好きになりましょう。面白いから。みんな大好き大年寺三郎太さんも出るよ。

 

 

 

土山しげる先生も亡きいま、寺沢大介先生がこれからも健康なままで、悪ノリ含め楽しい料理漫画をたくさん発表してくださりますように。

読切含め寺沢大介先生の時代劇ものはかなり面白いので、本当にリイド社あたりで連載を持ってもらいたいものです。

 

 

 

「ミスター味っ子 幕末編 2巻」寺沢大介先生(朝日新聞出版) - 肝胆ブログ

 

 

「ブラックティガー 第14話 禍福あざなえる西部開拓 感想」秋元治先生(グランドジャンプ2020 3号)

 

ブラックティガーの最新話が大好きな「幌馬車」「オレゴントレイル」ものでかんたんしました。

 

grandjump.shueisha.co.jp

 

 

いいですよね、幌馬車。

アメリカ開拓時代ならではの乗り物、舞台装置、意外と広くてめっちゃ機能的。

「大きな森の小さな家」「大草原の小さな家」なんかで憧れた元ちびっ子も多いと思うんですよね。

 

いいですよね、オレゴントレイル。

そんな素敵な幌馬車の大群が一心不乱に西を目指すグレートジャーニー。

「ビッグ・トレイル(1930)」の現代では再現不可能ちゃうかと思える幌馬車の群れ、渡河や谷下りの惜しみない撮影チャレンジっぷりなんかに憧れた元ちびっ子も多いと思うんですよね。

 

 

以下、一部ネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このたびのブラックティガーは幌馬車トレイルものの鉄板要素が満載で最高でしたね。

  • オレゴントレイルというワクワクワードの解説
  • 泥濘や渡河に難儀する幌馬車
  • 「4頭立て」「幌や車軸の改良」といった幌馬車カスタマイズ要素
  • 秋元治作品ならではの幌馬車構造、煮炊きシーン等の考証・描写の確かさ
  • 胡散臭い行商オヤジや胡散臭いガイドリーダー
  • 襲撃に備えて円陣で休息をとる幌馬車たち

 

などなど、万雷の拍手で讃えたい贅沢場面の連続であります。

まさか21世紀にオレゴントレイルものの西部劇漫画が読めると思いませんでした笑。

 

 

 

ブラックティガーという作品自体も安定安心の面白さが続いていますしね。

今回はティガーさんの珍しい慌て顔が出ていてよございました。

日頃は無表情で悪人を何十人も始末しているのに、幼子の前では無垢な表情を見せてくれるというのが往年の時代劇スター味があってイイんです。

しかも今回はアクション・殺陣のシーンも往年の時代劇シーン味がありましてね。

 

ブラックティガーはあの頃のアクション娯楽映画好きには本当に堪らないんですよ。

楽しんで描いておられるのがめちゃくちゃ伝わってきます。

 

 

 

そういう訳で、西部劇の中でも幌馬車ものはメジャージャンルとは言えないかもしれませんけど、実はロマンとワクワクに富んでいて刺さる人にはうんごい刺さりますから、皆さん今回のブラックティガーをまずは読みましょうと言いたいのであります。

 

西部劇自体も現代では忘れられかけている文化ではありますが、時代劇同様、根強い支持をもとにキラリと光る後継作品が増えたり、あるいはかつての名作にアクセスしやすい環境が整ったりが進んでいきますように。

 

 

今号のグランドジャンプでは、「王様の仕立て屋」の渋谷文化考察もよかったですね。

渋谷、10回くらいしか行ったことないですけど。

こういう真っ当で応援したくなる依頼人の回、好きだなあ。

 

 

 

映画「大いなる幻影 感想」ジャン・ルノワール監督

 

あけましておめでとうございます。

年末年始に積んでいた映画を何本か観てみたところ、「大いなる幻影」という古い戦争もの映画があたたかい傑作でかんたんいたしました。

 

↓映画館で観た訳ではないのですが、参考になるリンクを貼っておきます。

kac-cinema.jp

 

 

あらすじとしては、

第一次世界大戦中、ドイツ軍に捕虜になってしまったフランス軍の面々が、なんとか収容所から脱出しようぜという物語になります。

 

監督はジャン・ルノワール監督。

画家のルノワールさんの次男ということでも有名ですね。

私はこの作品以外には「ゲームの規則」というフランス社交界の映画しか観たことありませんが、あの作品もかなり面白い作品でありました。狩りのシーンがとてもよく。

 

出演者はジャン・ギャバンさんやエリッヒ・フォン・シュトロハイムさんなど、往年の大物俳優が多く出演されております。

 

 

以下、結末含みのネタバレを含みますのでご留意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一次世界大戦もの」「脱出もの」と聞くと、悲劇・惨劇・残酷・拷問・裏切り・血と死……みたいな言葉をつい連想してしまいますよね。

 

 

私もそんな先入観を抱きながらこの映画を観始めたのですけど……

 

 

ところがどっこい、実際の内容は、そんな優しいファンタジー存在しねえよ! と言いたくなるくらい、あらまほしきヒューマンな「情け」「矜持」に富んだポカポカでかんたんしたんです。

 

大いなる幻影」というタイトルはまさにその通り

幻影なんだけど、あってほしい幻影、こうだったらいいのにと胸を打つ幻影なんです。

 

 

  • 捕虜に相当な自由裁量を与えてくれるドイツ軍
  • 家格差を乗り越えて友情と信頼を育んでいくフランス軍将校たち
  • 逆に、かつての軍事貴族という家格を同じくする者同士で矜持を共有するフランス軍将校とドイツ軍将校
  • 夫を戦争で失いながら、敵国の将校に情けをかけるドイツの民間人主婦
  • 脱出したフランス軍捕虜を追跡しながらも、最後に情けをかけるドイツ軍

 

 

などなど、ひとつ塩梅を間違えれば悲劇待ったなしの場面ばかりなのに、見せてくれるのはあたたかい名場面ばかりでしてね。

 

とりわけ上で挙げた、軍事貴族同士、国を超えた矜持を分かち合う二人、フランスのド・ボアルデュー大尉(ピエール・フレネーさん)とドイツのラウフェンシュタイン大尉(エリッヒ・フォン・シュトロハイムさん)の関係性は最高です。

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左が仏のド・ボアルデュー大尉、右が独のラウフェンシュタイン大尉。

収容所における会話シーンなんですが、そもそも左のボアルデュー大尉、ぜんぜん捕虜っぽい扱いされてないですよね。

 

終盤、この二人はそれぞれの信念と職務に基づいて行動し、関係性としてはつらい結末を迎えるのですが、それでもなお、互いの気持ちをしかと分かち合えていてまこと貴いのですよ。

尊いではなくて貴い。貴い幻影であります。

 

 

胸がたいへんあたたかくなるので、冬場に観る映画としてもおすすめですよ。

(逆に戦争の酸鼻を期待していた方には期待外れになるかもです)

 

 

現実の方はともすれば第三次世界大戦みたいなワードが飛び交う世相でもありますが、どうか2020年は平和であたたかな一年になりますように。

 

 

 

 

「足利義輝・義昭 天下諸侍、御主に候」山田康弘さん(ミネルヴァ書房)

 

ミネルヴァの「足利義輝・義昭」を読んでみたところ、戦国時代の「足利将軍固有の価値」「足利将軍はけっして傀儡ではないよ」という点は非常に分かりやすい一方、「知れば知るほど三好長慶さん・織田信長さん・毛利輝元さんに迷惑かけ過ぎじゃね?」感も満載な内容でかんたんしました。

 

www.minervashobo.co.jp

 

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足利義晴さんとその子どもたち、足利義輝・義昭兄弟の生涯を解きほぐした書籍となっておりまして、これから大河ドラマ等でも彼ら兄弟は注目されるでしょうからこういう本で事績が知られやすくなるのは非常にいいですね。

 

松永久秀さん、摂津国人衆、そして足利将軍家と、徐々に畿内戦国史織田信長史の接続が進んできているのがとても嬉しいです。

 

 

 

本の感想

 

本著の特徴は、序章で「戦国時代はどんな時代だったか」「戦国大名はどういう価値観で行動・判断していたか」の見取り図を解説いただけるところにあります。

とりわけ、戦国時代とはいえ「正しいことか否か」「主従関係は大事だ」という倫理的価値観の影響は強かった、という点が足利将軍を語る上で大事なファクターで。

 

こうした学術書で序章に戦国時代観を語るのは珍しい構成ではあるんですが、足利公方というイレギュラーな存在の値打ちを広く知らしめるためには、こうした総論・スタンスをあらかじめ説明しておく必要があったのでしょう。

著者さんのバイアスが多少混じっているとはいえ、初学者にとっては分かりやすい構成になっていると思います。

 

一方、以降の足利義輝さん・義昭さんの事績を解釈する上で、史料の実証による解釈よりも、こうした戦国時代観的解釈「戦国大名はこういう判断をする生き物なのでこういう行動を取ったのだろう」に偏っているきらいもございますので、各人物や各家の研究に詳しい方からすれば物足りない面もあるかもしれません。

また、畿内史関係の最近の研究で提示されている成果や論点がスルーされているところもありますのでその点はあらかじめご留意いただいといた方がいいと思います。

(波多野"稙通"、永禄改元スルー等々)

 

 

 

この本は足利義輝さん・義昭さんの生涯を詳細に描写しつつ、その過程で「戦国時代の足利将軍は無力だった、傀儡だった」という誤解を払拭することに重きを置いておられます。

 

小早川隆景さんの談話

「公方様(義昭)が毛利のもとに下ってきたことで、これまで毛利を知らなかった遠国の大名たちまでが、毛利に挨拶するようになった」

 

がよく足利将軍のメリットを表していると思いますが、戦国時代において、足利将軍を抱えることは

  1. 主君(将軍家)に忠義を尽くす戦いというスローガンを掲示可能
  2. 大名たちの間での知名度向上
  3. 人脈豊富な足利将軍家スタッフを活用可能
  4. 他の大名に言いにくいことも足利将軍に代弁してもらえる
  5. 足利将軍家ルートで手に入る様々な情報
  6. 味方諸将の士気高揚

 

等のメリットがある、という点がよく伝わってまいります。

 

 

一方、デメリットとして、

  1. 足利将軍家を養うコスト
  2. 足利将軍家に軍事作戦や裁判に色々口出される煩わしさ
    (しかも足利義輝さんは頑固特性、足利義昭さんは依怙贔屓特性をお持ち)
  3. 家臣が殿を飛び越えて足利将軍家と主従関係を結ぶリスク
  4. 足利将軍家の敵(三好長慶さんや織田信長さん)を敵に回してしまうリスク

 

等もありまして、とりわけ4のリスクは甚大、ノーアポで鞆に飛び込んで来た・住み着いた足利義昭さんをどう処遇するかに毛利家が悶絶したというエピソードが涙を誘います。

足利義昭さん目線で見れば毛利家に駆け込んだのは「死中に活」という格好いい判断だとは思うのですが、毛利家目線で見れば驚愕すべきアクシデントだったことでしょう。

まあ確かに足利義昭さんのおかげで毛利家の武名は更に高まったのでしょうけど。

 

 

かように、足利義輝さん期・義昭さん期を通して、足利将軍家の「スローガン的・外交的価値の高さ」を学ぶことができる点がいいですね。

こうした点は戦国時代ビギナーにはまるで未知の領域だと思いますから、広く一読をおすすめできる本だと思います。

 

足利将軍の価値の高さが周知されれば、彼らを敵に回した三好長慶さん・織田信長さんの苦難も一層理解されやすくなるでしょうし。

この本を読めば、足利将軍のライバルたる三好長慶さん・三好三人衆織田信長さんの有能さもよく伝わってきますから、彼らのファンにもおすすめですよ。

 

 

 

というかですね、この本、基本的に足利将軍家をアゲる本なんですが、読めば読むほど三好長慶さん・織田信長さんが気の毒になってくるのですよ。

確かに「足利将軍は無力・傀儡」という誤解は充分解けるとは思うんですけど、三好長慶さん・織田信長さんに迷惑かけてばかりだったよね?」という最近の風評被害はまるで払拭できていない、むしろ強化されているじゃないか! という。

 

足利義輝さんの三好長慶さん裏切りの一件(1553)なんて「この時の義輝さんは若かったからしゃーない。いや、義輝さんは英主になる素質はあったんやで? でもほら、この時は若かったし。三好が細川に取って代わる端境期やったし。こらあ判断間違ってもしゃーないわ、うん」みたいな感じですからね。

 

足利義昭さんの織田信長さん見限りの一件(1573)も「信長さん三方原で負けたやん? 武田来るやん? 朝倉も来るやん? 京都危ないやん?」みたいな感じですし。

この本では「勝ち馬へのバンドワゴニング効果」といった感じでそれらしく説明はしてくれていて、確かに実際そうなのかもしれませんが、もう少し史学的深掘りも読みたいなあという気持ちになります。

 

この辺りは足利将軍家の研究も過渡期だからやむを得ないのでしょうね。

現時点の成果を素直に披露すると、結果として足利義輝・義昭兄弟があたかも未熟・狭量だったかのような記述になってしまうのは仕方ないのでしょう。

今後、足利将軍たちがそうした判断を下すに至った背景、例えば奉公衆的視点からのアプローチとか、彼らの権益構造からのアプローチとか……が深まっていくといいなあと思います。

さすれば足利義輝・義昭兄弟の新たな実像や魅力も形成されていくでしょうし。

 

  • ちなみに、この本では足利義晴さんは「策士」として高く評価・キャラ付けされています。細川国慶さんとのプロレスを興行した説まで出ていてウケました。

 

 

個人的には、三好長慶さん・織田信長さんがどうすれば足利将軍家ともっと上手くやっていけたのか? も想像したいんですよね。

長慶さんが長生きする、信長さんが一切負けない、というシンプルな答えだけではなくて、異なる価値観や利害や家格を有する両者が和合できた可能性があったらならそれを知りたいの。

 

 

 

三好家関係の雑談(永禄の変・本圀寺の変)

 

足利義輝・義昭兄弟の本ですから、この本では永禄の変、本圀寺の変も当然しっかり記述されています。

 

まず永禄の変ですが、著者の意見は「御所巻きからのうっかり弑逆説」

  1. 主君たる将軍を殺害すれば、世間を敵に回し、大きな不利益を受けることは明白
  2. 三好義継さんが義輝偏諱(義)を賜った直後でタイミングも最悪
  3. 永禄の変時、「訴訟したいことがある」と三好家が称していたという記録
  4. 事後、三好家は義輝さんの悪事アピールもしていないし、義輝葬儀の邪魔もしていない。むしろ義輝仏事に寄進すらしている

 

と論拠を挙げてくださっています。

 

私もこの説には賛成で、三好家は足利義輝さん本人ではなく、その側近(進士晴舎さんや小侍従さん辺り)の排除を企図していたんじゃないかなあと考えていますが。

ただ、「三好義継さんが実父譲りの後先をまったく考えない殺りたいときに殺るんだ精神を発揮した」という説も面白いので選択肢には残しておきたいと思っています笑

 

 

 

そして、三好三人衆足利義昭さんを襲撃した本圀寺の変なんですけどね。

この本圀寺の変って、永禄の変や本能寺の変と違って、容疑者たる三好三人衆の動機がまったく考察されていないことに定評がありますよね。

(これも三好三人衆人気の低さによる悲哀なのかなあ……)

 

たぶん世間イメージでは、三好三人衆足利義昭さんのSATSUGAIを狙っていたということになっていると思いますが、基本的に常識人で理性的な三好長逸さんたちが、本当にそんなこと狙っていたんでしょうか? と私は言いたいのです。

そもそも三好三人衆、永禄の変でも義輝さんをSATSUGAIしてるじゃないですか。

さすがに二人も征夷大将軍を弑逆するってのは……普通はしないと思うんですよね。

 

ので、私としては、本圀寺の変は三好三人衆による足利義昭さん拉致未遂事件と解釈した方がいいんじゃないかなと思ってましてね。

 

永禄の変でうっかり義輝さん弑逆

→反省

→本圀寺の変ではゆっくり本圀寺を攻める(義昭さんに自害されても困るし)

→ゆっくりしてたら明智光秀さんや三好義継さんや池田勝正さんたちが集まってきた

ひでぶ

 

というのが実際の流れだったんじゃないのと。

 

 

その上であくまで妄想、ifのたぐいなんですが、

もし本圀寺の変でも三好三人衆足利義昭さんをうっかり殺めてしまっていたら。

 

こうなれば歴史は大変なことになりますよ。

三好三人衆はガチ魔王として畿内に君臨することになり。

織田信長さん@岐阜は面目丸つぶれで勢力後退してしまって。

足利義栄さんや義昭さんの遺子は幼くて権威として未成熟だしい。

いったい誰がこの混乱を収束させてくれるんだ状態になりますよね。

 

余命を振り絞って三好政権を復活させた大魔王NAGAYASUというのも魅力的ではあるんですが、往年を知る松永久秀さんやあの世の長慶さんたちからは「ええ……」とドン引きされてしまいそうなのがどこまでいっても長逸さんの報われなさで悲しいです。

 

 

 

 

いろいろ書きましたが、かように畿内戦国史の研究が進んで、よく知られた織田信長さん界隈の歴史に繋がってきているのは誠に喜ばしいことだと思います。

新年に向けてよい希望を抱けました。

 

引続き研究が進展して、足利将軍や三好三人衆の魅力が掘り下げられていきますように。

大河ドラマでもいい感じに畿内史関係者が扱われますように。

 

 

皆様、本年もありがとうございました。

良いお年をお迎えくださいませ。