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絵物語「陰陽師 瘤取り晴明 感想 源博雅無双」文:夢枕獏さん / 絵:村上豊さん(文春文庫)

 

陰陽師シリーズの絵物語「瘤取り晴明」を読みましたら、昔話の瘤取り爺さんアレンジで面白いなあと思っていたところに終盤はひたすらの源博雅さんの笛が無双していてかんたんしました。

このシリーズの源博雅さん、もはや存在がデウスエクスマキナ過ぎて尊いですね。

 

books.bunshun.jp

 

最近、都で名を馳せる薬師(くすし)、平大成(たいらのおおなり)・中成(なかなり)兄弟は頬に一つずつ瘤がある。秋も深まってきたある日、薬草を採りに山へ入る。大成は道に迷い、鬼達の百鬼遊宴に遭遇してしまう。命がけで舞い踊った大成に鬼達は大喜び、ほうびに瘤を取ってやる。半日後、今度は中成が瘤を取ってもらおうと山へ向かうが……。シリーズ初の絵本登場。

 

 

この巻はいつもの小説形式ではなく、村上豊さんの絵が等分に入った絵本、絵物語形式になっています。

その分、お話は「瘤取り晴明」の1話だけで、他の短編は収録されていません。

 

村上豊さんの味のある絵をたくさん見れるのがいいですね。

個人的には桃の絵が好きです。

 

 

お話は有名な「瘤取り爺さん」でして、爺ちゃん①が鬼に瘤を取ってもらう、爺ちゃん②も瘤を取ってもらおうと思ったら失敗して瘤2つにされてしまう。

そこから安倍晴明さん登場……という流れ。

 

ネタバレとかそういう話ではない気もしますが、以下、ネタバレを含みますのでご留意ください。

 

 

 

 

 

夢枕獏さん、陰陽師シリーズならではの雰囲気を絵とともに楽しめる作品です。

 

 

好きな場面としては、酒盛りしている百鬼夜行たちの、品のないガヤ。

「それ、尻をもっと振らぬか」

「前、後に振れい」

「気をやらぬか」

「気をやらぬか」

 

非常に野趣あふれていていいですね。

「気をやらぬか」=「イッちまいなよ」という直球の囃し立てがほんと鬼。

 

 

終盤、こんな猥雑な雰囲気を、一発で神妙で清浄で静謐に変えてしまう源博雅さんの笛も好き。

鬼たちが、手で頬の涙をぬぐっている。

博雅が笛を吹くのをやめても、鬼たちは声をたてなかった。

博雅の笛の音が、天地の間に感応して、森や、樹や石や風の中に、その余韻が喨々として響きわたっていたからである。

わずかでも音をたてると、その余韻が消え去ってしまいそうであったからだ。

 

 

そして、シリーズ最序盤で「葉双」を朱雀門にて源博雅さんにくれた朱吞童子さんが再登場するサプライズも好きです。

 

陰陽師シリーズ、話の積み重ねを活かしてくれるのがファン的に嬉しいですね。

今回のお話は「百鬼夜行」だけに、朱吞童子さんだけでなく、シリーズに登場した鬼のエピソードが多数意識されているのが素敵なんですよ。

 

 

こういう、短時間でスッと読めて、シリーズの魅力が凝縮されていて、なおかつ日ごろは表紙だけの村上豊さんの挿絵がふんだんに楽しめる仕立て、いいですね。

陰陽師シリーズに限らず、絵物語形式の小説が増えていきますように。

ジュブナイルライトノベルだけの専売特許にしていたらもったいないですよね。

 

 

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