肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

信長の野望201X「木沢長政さん登場」&「全体攻撃バフのロマン」

 

あけましておめでとうございます。

 

信長の野望201X、去年のお正月は三好元長さんが登場して驚いたものですが、今年のお正月は木沢長政さんが登場していて再度驚きました。

この201Xスタッフさん方の粋?なお計らいにはかんたんするばかりです。

 

↓木沢長政さんが登場する「新春の宴~華~」ガチャのリリース。

お知らせ

 

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ジャンジャン横丁のおっさんがコスプレして日本橋に迷い込んだ色。

華やかな浅井三姉妹とのギャップが激しすぎて混ぜるな危険感がすごい。

 

手にしているのはブーメランなんでしょうか。彼の生涯を具現化……?

(入手してみましたが全身図がなかったので詳細不明です)

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人物紹介

木沢長政さんについては何度か取り上げたことがあります。

信長の野望・大志の「木沢長政」 - 肝胆ブログ

「南近畿の戦国時代 躍動する武士・寺社・民衆」編:小谷利明さん・弓倉弘年さん(戎光祥出版) - 肝胆ブログ

「戦国期細川権力の研究」馬部隆弘さん(吉川弘文館) - 肝胆ブログ

 

 

あらためてかんたんに彼を紹介しますと、

  • 元々は畠山総州家の奉行人の家(の庶流)出身
  • 畠山総州家と細川晴元家の両方に属す二股特性持ち
  • 足利義晴さんに接近して「守護並み」というグレー肩書を標榜し勢力拡大
  • 畠山総州家を下克上し、畠山尾州家を下克上した遊佐長教さんと河内を二分
  • 大和にも進出し、柳生家等、興福寺に反目しそうな国人衆を配下に
  • 細川高国さんとは本気で戦わず勢力を温存
  • 細川晴元家の一向一揆法華一揆扇動を主導(諸説あり)
  • 細川晴元家でライバルだった三好元長さんを謀殺(諸説あり)
  • 飯盛山城や信貴山城の元々の主であり、居城を次々と移動
  • 最終的には自立して独立勢力となるも、足利義晴さんには見放され、遊佐長教さんには裏切られ、三好長慶さんと三好宗三さんには危険視され、皆から攻撃されて滅んでしまう

 

……という、なかなかハードコアな生涯を送ったことで知られている方ですね。

スキル名の「法難の底意」とは、京に応仁の乱以上のダメージをもたらしたという一連の宗教一揆の背後に木沢長政さんがいたんじゃないの説から来ているのでしょう。

 

 

伝統的な三好長慶さんの物語では「父の仇」として素晴らしい悪役となります。

主家を簒奪し、細川晴元さんを陰で操り、三好元長さんを罠に嵌め、混沌たる畿内で頭角を現すも、光り輝く貴公子三好長慶さんに見事な仇討ちを遂げられてしまうという。

ヤクザ映画かよというくらいの悪役嵌まりっぷりであります。

 

一方、さいきんの研究では

  • 細川晴元さんを操っていたのは可竹軒周聡さんあたりではないか
    (木沢長政冤罪説)
  • 足利義晴さんから見れば木沢長政さんは一貫して忠臣だったのではないか
    足利義晴無節操説)
  • 木沢長政さんの成り上がりっぷりは積極的に評価すべきではないか
    (木沢長政=三好長慶の先駆者説)

などのフォローの声も出てきており。

 

いずれにせよ畿内史周辺ではカルトな人気を誇るお方なんですよ。

知名度は乏しくとも星3化されるだけの実績は充分あると言えるでしょう。

 

 

 

ところで木沢長政さんの所属は正しく「畠山家」となっておりますが。

 

そうなるとこの方はいったい……

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他の遊佐信教さんや安見直政さんは畠山家所属なので尾州家だけがハブられている訳ではなさそうです。

どうやら201Xの世界線では畠山高政・昭高兄弟は傀儡にすらなれずに家から追放されているらしい……お気の毒。

 

 

 

全体攻撃バフのロマン

201Xのゲーム仕様では、全体攻撃バフは効果がほんのりなので使い勝手が良いとは言えません。邪魔にもなりませんけどね。

(一方、全体防御バフは強敵の攻撃を凌ぐのにとても役立ちます)

 

そんな中、畿内史界隈の主要人物に全体攻撃バフの使い手がやたら多いのは、何らかの製作者のメッセージを感じずにはいられないと思いませんか。

  • 三好長慶:全体攻撃バフ+35%、自身防御バフ+40%
  • 三好義賢:全体攻撃バフ+40%(自軍ピンチ度に応じて増加、最大70%)
  • 六角定頼:全体攻撃バフ+40%、自身防御デバフ▲20%
  • 木沢長政:全体攻撃バフ+35%(後列時は+45%)

 

ここで読み解くべきなのは、
ゲーム内の実利ではなく、畿内史解釈というロマン
だと私は思い始めたのです。

 

すなわち。

全体攻撃バフというあまり役立たないスキルを「家中、他大名、国人衆、公家、寺社、町衆、惣村……という多種多様な畿内社会を統率する能力」だと脳内変換すれば!

 

純粋な統率力

三好実休(義賢)さんこそガチンコポテンシャルNo.1(+40%over)。

裏(後列)で暗躍している時の木沢長政さん(+45%)もさすが。

 

年代別に実力を並べると

 1532年(三好元長死亡)
  暗躍木沢長政(45%)>六角定頼(40%)>三好千熊丸(35%)

 1542年(木沢長政死亡)
  六角定頼(40%)>表に出てきた木沢長政(35%)=三好長慶(35%)

 1546-47年(細川氏綱の乱全盛期)
  自軍大ピンチ三好実休(70%)>六角定頼(40%)>三好長慶(35%)

 

となんだか絶妙にリアル極まりない感じに。

 

六角家の役割

足利家や細川家を後見する、皆から一目置かれる(+40%)実力者。

但し、足下では家中の綻び(自身防▲20%)も予見されるのでは……

他家に介入すればするほど自家が弱っていく悲しい六角家。

 

生存能力

三好長慶さんのスゴさは純粋な統率力(+35%……)だけでなく、魑魅魍魎うごめく畿内争乱を生き抜いた(自身防+40%)ところにあるよね!

(なおメンタルに防バフはかからない模様)

 

 

などなど、ゲームに活かせないところで充分に楽しむことができる!

 

かもしれません。

 

 

美大方?

阿菊御料人?

あんな紹介状何枚積んでも来てくれないお高くとまった女なんか知らんもん。

 

 

古来から様々なゲームで縛りプレイや二次創作が楽しまれてきたように。

ピュアな攻略効率以外のところでも楽しめるのは幸せなことだと!

やけくそ気味に思う今日この頃です。

 

そろそろ長慶さんにスキル鍛錬こないかなあ。

 

↓来ました('19/3/5)

信長の野望201X「三好長慶スキル鍛錬」 - 肝胆ブログ

 

 

 

以上、正月からしょうもないたわごとでございました。

 

ところで、201Xの年末年始ご挨拶のところで

お知らせ

来年はいよいよ2020年へのカウントダウンが始まります。『信長の野望 201X』も新たなステージに進められるようコンテンツの強化を図ってまいりますので、引き続きユーザーの皆様にはご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

とありましたが、201Xは2019年で一区切りなんですかね?

201Xが202Xにバージョンアップして、これまで集めた武将たちが引き継げなくなったり引き継げても戦力的には微妙になったりとかあるんでしょうか。

 

愛さえあれば、これまで育ててきた初期武将たちを引続き使うことも可能な、従来のゲームバランスの思想を保ってくれたり。

201Xのシナリオが好きなので、シナリオの連続性を保ってくれたり。

 

してくださったらいいなあ。

そうあれかし。

2019年後半の課金離れを防ぐためにも、早めに方針を示してくださいますように。

 

個人的には、多少のインフレならば、その分新規参入の人が気軽に201Xシナリオを楽しめるようになるでしょうから、その辺は好意的に受け入れたい派です。

 

 

 

 

「戦国期細川権力の研究」馬部隆弘さん(吉川弘文館)

 

遂に発売された馬部隆弘さんの「戦国期細川権力の研究」。

細川家や三好家や波多野兄弟(特に柳本賢治さん)や木沢長政さんなどの事績について勉強になったことはもちろん、戦国期の畿内社会が少しずつ変容していく様をクリアにイメージできるようになる、めっぽう充実した内容にかんたんいたしました。

 

www.yoshikawa-k.co.jp

 

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ものすごく簡素なかたちで各章の内容を紹介したり感想を呟いたりします。

補論はあえて紹介を省きます。

私のバイアスが入ってもよくないので、詳しくは読んでみよう!
(なお800ページ・20000円)

 

 

※2021/10/18追記

当著に興味があるけど値段・ボリューム的に取っつきづらいという方は、とりあえず「戦国乱世の都 京都の中世史⑥(吉川弘文館)尾下成敏/馬部隆弘/谷徹也」の一~三章を読むといいと思いますよ。

 

 

 

 

序章 問題の所在と本書の構成

この冒頭のメッセージが当著全体をよく表しています。

統一権力は、京都を掌握した三好長慶織田信長豊臣秀吉といった権力者の交代を重ねた末に成立した。阿波や尾張を出身地とする彼らには、必ずしも身分が高くないという点が共通する。では、身分秩序の厳しい京都において、彼らはなぜ支配者として次々と台頭し得たのだろうか。その疑問に対しては、彼らが優れた政治力を有していたから、あるいは幕府や朝廷の権威が失墜していたから、という漠然とした答えしか用意されていないように思われる。これでは、下剋上の世であったからという一点張りで説明しているのと、さほど変わらない。そこで本書では、下位身分の者が上に立つ諸条件が歴史的に調っていく過程について、具体的な私案を提示する。いわば、統一権力成立の前提を説明することが本書の主たる目的となる。

身分秩序が厳しいということは、見方を変えると先例が重視される社会ともいえる。つまり、信長以後の権力については、前代の先例に倣ったというおよその見通しは立つ。したがって、長慶を生み出した環境こそが、まずは問われるべきであろう。長慶が細川京兆家の内衆出身であることから、本書の主たる対象も、自ずと戦国期の畿内政治史と京兆家になる。

 

要するに、

なぜ三好長慶さんのような人が誕生したのか?

なぜ柳本賢治さんや木沢長政さんや三好元長さんは三好長慶さんになれなかったのか?

これらを解くためにも細川時代を研究する必要があるよね!

ということです。

 

 

第一部 細川権力の基本構造と高国期の変容

第一章 奉行人奉書にみる細川京兆家の政治姿勢――勝元期から政元期にかけてを中心に――

細川家の発給文書が、応仁の乱等を受け、徐々に室町幕府が従来担っていた役割を帯びるようになっていく過程を示してくださっている章です。

ポイントは、細川家が能動的にそうしたというより、寺社等受益者の期待・要請に応える形でそうなっていったということかと思います。

 

第二章 細川高国の近習とその構成――「十念寺念仏講衆」の紹介と分析――

細川家、名門守護、というと厳格な身分秩序が貫徹されているイメージがありますが、高国さんくらいの時代から雑多な出自(有力国人等)の者を「近習」として登用していた、但し彼ら新興層は守護代等既存の有力配下との軋轢を生むことも、という章です。

例えば丹波の波多野兄弟(波多野元清、柳本賢治、香西元盛)ですね。

 

第三章 細川高国の近習と内衆の再編

引続き高国さんが波多野兄弟等の新興近習を重用しつつ、宿老たちとの関係配慮もかなりバランスよく統治していた、それでも高国権力は自壊に進んでいった……という章になります。

波多野兄弟の勢力伸長が、従来の身分秩序ではどうしても整理・吸収できないほどの勢いだったため……結果として波多野兄弟は離反していった……という印象。

 

第四章 摂津守護代薬師寺氏の寄子編成

細川京兆家の被官が、守護代に寄子としてつけられていた。

守護代は寄子と直接主従関係を結ぶ(戦国領主化)ことを必ずしも志向するのではなく、寄子の「京兆家被官」という家格の高さを活かして地域統治に役立てていた

これを細川家・畿内独特の戦国大名スタイルと評することもできようし、後の三好長慶時代の細川氏綱被官の活用にも繋がっていくのである、という章です。

この章はもっと世に知られてほしい内容ですね。

 

 

 

第二部 澄元・晴元派の興隆

第一章 細川澄元陣営の再編と上洛戦

細川澄元さん(細川讃州家=阿波細川家出身)について。

後の晴元さんも含め、京兆家当主と讃州家は一体で活動しているように思われがちですが、実際の両者の権限はかなり厳密に区分されていたと。

その中で、両家を軍事的に結びつけるためには、京兆家・讃州家双方に属している三好家の両属特性が重要だったのではないか、という章です。

木沢長政さんなんかも細川家・畠山総州家の両属特性持ちですね。

両属ですからね、両性愛ではありませんからね。念のため。

 

若年の澄元さんや晴元さん、および細川持隆さんを支える「意見者」として、讃州家出身かもしれない僧「光勝院周適」さん、「可竹軒周聡」さんが暗躍活躍していたという記述も印象的です。

さいきんは可竹軒周聡さん、堺公方期の混乱の元凶みたいな感じで注目されていますもんね、木沢長政さんに続くスケープゴートとして笑。

 

第二章 「堺公方」期の京都支配と松井宗信

堺公方の人々、細川晴元さんを盛り立てようでは一致しているものの、

 将軍は義晴派:柳本賢治・松井宗信

 将軍は義維派:三好元長(しかも晴元さんと高国さんを和睦させようと)

で対立があったことを紹介してくださっている章です。

ちなみに松井宗信さんとは堺公方府の京都統治を主導した丹波出身の人です。

 

第三章 「堺公方」期の京都支配と柳本賢治

堺公方府期の柳本賢治さんの、元細川高国近習としての特性を発揮して京・山崎(・奈良)の都市支配を進めたり、実は朝廷とも親しくしていたり、その過程で京都の下位身分の者を抜擢して配下にしたり、という活躍を紹介してくださる章です。

早世されたのが惜しまれますね。

柳本賢治さんは木沢長政さんや三好長慶さんのように細川家からの自立へは向かいませんでしたが、それは彼の寿命的にも地下層の期待的にも機が熟していなかったからだろうと私は思います。

むしろ、柳本賢治さんが着手した、低い家格の者による京都統治の芽生えが、後の細川国慶さんや三好長慶さんに継承されていったかもしれないと思えば天晴れです。

 

第四章 三好元長の下山城郡代

元長さんの下山城統治スタイルとして、畿内の人間を使わず、仲のいい阿波の国人を郡代として配置して、一種の軍政のようなことをしていたことを紹介いただく章です。

三好家自慢の阿波ヤクザ武将を引き連れて都会を支配しようとする元長さん。

軍事的にはかなり効果があったようですが、畿内の人から見ると郡代制の仕組み自体が分かりにくく、民政的には軋轢も多かったようです。

後の三好長慶さんが阿波・畿内双方の人材をバランスよく使い、カッチリした郡代制などは採用せず、柔軟に地域との融和に努めたのと対照的ですね、と結ばれています。(結果論な気もしますが)

 

第五章 畠山家における奉書の展開と木沢家の出自

乏しい木沢家の史料を丹念に検証された結果、木沢家の家格は一貫して奉行人であり、守護代層とは明らかに区別されるべき存在、しかも木沢長政さんは更にその庶流出身であろう、という内容を教えてくださる章です。

 

第六章 木沢長政の政治的立場と軍事編成

以前も当ブログで取り上げたことのある論文です。

「南近畿の戦国時代 躍動する武士・寺社・民衆」編:小谷利明さん・弓倉弘年さん(戎光祥出版) - 肝胆ブログ

 

第五章の通り、木沢長政さんは家格的にはそんなに上位ではないものの。

細川家・畠山総州家両属に加え、足利義晴さんと直接関係を結んで「守護並み」の権限行使の黙認を得、自立化の道を拓いたり(波多野秀忠さん同様)。

細川家守護代同様、寄子を活用して軍事編成を進めたり。

新興勢力として、遊佐長教さんたちと競合しない河内・大和の境界線上で勢力を拡大したり(赤沢朝経さんに倣ったか)。

次々と居城を移すスタイルを確立したりと。

後の三好長慶さんたちへ繋がるモノを多く残されたことが取り上げられています。

 

第七章 細川晴元の取次と内衆の対立構造

これまでの章や、細川晴元配下の取次ルート検証を通じて。

細川晴元さんは、京兆家の伝統的権威を継承しつつも、内実は三好長慶さん、三好政長さん、木沢長政さん等の新興内衆の台頭が著しい、新興勢力に等しかったと。

しかも、家格秩序回復に向けたカウンター、あるいは純粋な権勢争いとして、内衆同士の対立も激しく、実際に木沢長政さんは三好長慶さん・三好政長さんの計略で排除されてしまったのだと。

このように、晴元権力は従来の細川京兆家とは内実面で家格秩序が崩れている点で決定的に違いがあった。この環境こそが三好長慶さん誕生の格好の土壌だったのだ、と結ばれています。

 

木沢長政さんの反乱を、三好長慶さん&三好政長さんが仕掛けた謀略のように扱っている点が人目を引きます。

しかも三好政長さんは木沢長政さんの死を悼んでいることに触れ、あたかも三好長慶さんのエゲツナイ面が出たんじゃないの的な文脈になっているのが面白いです笑。

この辺りは解釈の幅を広げられるので、断定は避けたいところですけどね。

 

第八章 細川晴元に対する交渉と取次

畿内の地域社会からすれば、細川晴元さんと交渉するにあたって、窓口となる大身取次の三好長慶さん、三好政長さん、木沢長政さんの意向に左右されるところが大きかった。

結果として、地域社会の期待は細川晴元さん本人ではなく、三好長慶さんたち大身取次の方に集まっていく……という流れを説いてくださる章です。

各地域で守護代等が実権を得ていくのと似ていますし、納得感がありますね。

 

 

第三部 高国派残党の蜂起

第一章 細川晴国・氏綱の出自と関係――「長府細川系図」の史料批判を兼ねて――

高国残党としてひとまとめにされがちな晴国さん・氏綱さんについて、史料検証の結果、両者の間には連続性がない、それどころか軋轢さえ確認できることを教えてくださる章です。

その上で、なぜ細川家の家督争いはこうも長く続くのか? という課題提起をしてくださるのがいいいですね。

 

第二章 細川晴国陣営の再編と崩壊――発給文書の年次比定を踏まえて――

大物崩れにより壊滅的な被害を受けた高国方を、晴国さんが丹波を拠点にして勢力を再興していく……だけならよかったのですが、結局は内藤国貞さん、波多野秀忠さん、三宅国村さん(バックに本願寺あり)たちが順次晴元方に寝返っていき、晴国さんは遂に自刃に追い込まれてしまう……という経緯を説明してくださいます。

しかも、寝返った方々は順調に勢力や地位を向上させているという。

すなわち、細川家の争いが容易に収束しないのは、上の対立を利用して立身出世を図ろうとする領主層の動きに下支えされている面もあるのでは、という鋭い指摘をされているのですね。

その究極が晴元方から氏綱方に転じた三好長慶さんだとも。

私はこの考え方好きですね。プロスポーツ選手もサラリーマンも、属するチームが他のチームと競争しているからこそ年俸が上がっていくのであって、独占企業内では待遇は上がらないのであります。(競争がコスト競争になって年俸が下がっていくのは×)

 

第三章 細川国慶の出自と同族関係

細川遠州家、玄蕃頭家の系図を明らかにされた上で、細川国慶さんの事績を紹介してくださる章です。

柳本賢治さんとの交流や、三好長慶さんに先立つ京都支配等。

「細川国慶さんが"町”に当てた最古の禁制を発給していたことがニュースに……」産経WESTより - 肝胆ブログ

 

個人的には、著者も憶測と断りつつですが、若くして父を失った国慶さんは祖父元治さんに後見され、晴元方への徹底抗戦を刷り込まれながら育っていったのでは、という文章がエモーショナルで気に入りました。

 

第四章 細川国慶の上洛戦と京都支配

引続き細川国慶さんの活躍です。

国慶さんが柳本賢治さん段階の京都支配を一層進め、今村慶満さんなど地下の者を積極的に登用し、都市社会の実態を知る者による統治体制を構築したことを特筆。

今村慶満さんたちは三好長慶さんの抜擢と誤解を受けやすいのですが、実は国慶さんが見出した者たちを長慶さんが引き継いだんですよ、と。

もちろん、彼らを上手く生かしたのは長慶さんの器量ですけどね。

 

第五章 細川京兆家の内訌と京都の土豪――今村家の動向を中心に――

大名や国人だけでなく、今村家など土豪層も対立や分裂を繰り返していたことを教えてくださいます。

おおきくは京都の土豪が高国派、京都郊外の土豪が晴元派についたりして、それぞれの権益確保・拡大を図っていた。その中で今村家も慶満さんは高国・氏綱派、弟の政次さんは晴元派に立って上手く生き残ろうとされていたのだとか。

上の三部二章と同様、土豪層も上位権力の争いの中で選別され、成長していく。上の争いをある意味で活用する。そして三好長慶さんが各層の対立を止揚していく。そんな読後感を楽しめる章になっています。

 

第六章 内衆から見た細川氏綱三好長慶の関係

細川氏綱さんの内衆構成を概観した上で、江口の戦い以後、いきなり長慶さんが氏綱さんを傀儡にしたのではなく、当初は両者の共同統治であったこと、そこから段階的に長慶さんの権威・権力拡大が進んでいくこと、等を説明してくださいます。

いよいよ長かったこの本もフィナーレ、三好長慶さんの君臨まで辿り着きましたね。
細川ファンも三好ファンも目を通されるといいと思います。

 

一点、著者さんの思いがこもっている箇所が。
(著者の馬部隆弘さんは細川氏綱さんの書状に出会って畿内史研究を始めたそうです)

実権を握る者と傀儡の間には、得てして軋轢が生じやすいが、国貞没後の茨木長隆奉書と氏綱直書の時差を除けば、それ以外で氏綱と長慶の間で意見が衝突した形跡は認められない。氏綱が長頼の要請に従って直状を発給するなど、むしろ氏綱は長慶方に協力的であった。氏綱は、長慶方との協調を模索しており、そのために自発的に一線から退いたとしか思えないのである。

氏綱がその思惑を吐露した史料は残されていないので推測に留まるが、自らでは畿内の治安維持が不可能と察した氏綱は、その役割を長慶に委ねたのではなかろうか。あるいは、氏綱が後継者を立てた形跡がないことから、晴元と長慶が対立する現状に鑑み、細川家の内訌を終息させるため、昭元に晴元派と高国派の融合を委ねたという見方もできる。従来は、長慶方からの視点に偏っていたため、自ずと将軍家や京兆家などの旧体制は克服すべき対象とされがちであったが、見直す必要があるだろう。

 

なるほどと思いつつ、この本では一貫して長慶さん誕生の背景を「国人・土豪・町衆・寺社など受益者からの要請」「身分秩序と、受益者からの要請に応え得る実力者との乖離・摩擦」の環境的、ボトムアップ的視点から説明されてきているので、ここだけ氏綱さんの主体的判断が入ってくるのは氏綱さん贔屓だろうとどうしても映ります。

そんな馬部隆弘さんの文章が好き。

天野忠幸さんであれ今谷明さんであれ、歴史学者さんもどこか人間味が入っている文章ほど読者の胸に残ってしまうのはお互い人間だから仕方ないですね。

科学的な学問に徹するのって難しい。

 

 

終章 戦国期畿内政治史と細川権力の展開

まとめの章なので紹介は省略します。

 

個人的に強調しておきたいのは、著者の馬部先生が、細川であれ、三好であれ、段階的に権力や統治体制を変容させていったことを重んじておられること。

これは当たり前と言えば当たり前ですが、中世史や戦国時代を十把一絡げにして初期段階の人と中期段階の人と後期段階の人を単純比較したりしがちな素人には、胸に刻んでおきたい視点だなあとあらためて思いました。

 

 

 

 

以上、「戦国期細川権力の研究」のご紹介でした。

本当にいい本ですよ。

三好長慶さんなど個人の資質の高さを否定せず、その上で前史や環境やボトムアップの観点から歴史にアプローチいただく姿勢、私は大好きです。

 

たびたび申していますが、近年の畿内史研究の進展は素晴らしいですね。

次々と知識や情報がアップデートされていく。

そもそも世間様には三好長慶さんの名前すら知れ渡っていない中、学界ではこれだけの論争や蓄積が進んでいるという。

どこかで閾値を超えれば一気にこの界隈が知れ渡っちゃうかも。と新年への希望を。

 

 

めっちゃ長い記事になってしまいました。

最後まで読んでくださった方には感謝申し上げます。

また、今年も当ブログにお付き合いくださり本当にありがとうございます。

 

2019年も素晴らしい一年になりますように!

 

 

 

滋賀県栗東市「鈎の陣跡」と草津市「うばがもち」

 

六角氏の風を受けている気分だったので滋賀県草津栗東を訪れ、六角高頼さんが活躍した鈎の陣跡地と六角義賢さん由来のうばがもちを初体験し、いい年末だなあという気分になってかんたんしました。

 

www.ritto-kanko.com

 

www.ubagamochiya.jp

 

 

鈎の陣跡

草津駅から1号線をひたすら歩いて45分くらいのところにあります。

手原駅とかバスとか使えばもう少し楽に行けるのですが、せっかくなので東海道を歩いてみようかと。

 

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1分ですべてを見渡せるような、ささやかな史跡です。

でも、六角家や足利義尚さんに多少なりとも興味がある人ならばジーンと感慨に耽ることもできると思います。

 

鈎の陣とは。

15世紀後半、応仁の乱後。

近江で寺社領を押領したりして調子に乗っていた六角高頼さんを、室町9代将軍の足利義尚さん率いる室町オールスターズが征伐しに行った出来事であります。

そして、この地こそ足利義尚さんが陣を構えていた場所なんですね。

 

細川政元さん、斯波義寛さん、畠山(尾州家)政長さん等、錚々たるメンツに攻められて困った六角高頼さんは、観音寺城を放棄して山中に潜伏、甲賀忍者を駆使してゲリラ的嫌がらせを展開。

一方の足利義尚さんは陣中で歌会や政務をこなす等、それなりに滋賀ライフを楽しんでいたようですが、在陣が長期に亘るうちに病気になって陣没してしまうという。

結果だけ見れば気の長い釣り野伏をしかけて現職将軍の命を奪ってしまうという、非常にロックな六角家の事績でございます。

 

ちなみに、足利義尚さん陣没後に再度六角家を征伐しに行かはったのが「1年かけて大河ドラマ化しても視聴者がその生涯を理解できなさそうな征夷大将軍ナンバー1」こと室町10代将軍足利義材(義稙)さんなんですよ。

 

鈎の陣は、後の戦国時代に繋がる出来事としても、

等々を評することができるのではないでしょうか。

足利義尚さんの死因だって、純粋な病気の他、甲賀忍者による暗殺やの毒殺やの色仕掛けやののロマンシングな想像をすることも可能ですし、実に奥深い事件です。

 

……こうして書くと、六角家もたいがい戦国時代を招いた原因に思えてきますね笑。

ちなみに六角高頼さん、信長の野望・蒼天録では策戦「混乱」「破壊」を使いこなす有能人材なので初期シナリオでプレイする際はオススメですよ。

 

 

鈎の陣跡地では、足利義尚さんの歌がかわいいフォントで石碑となっております。

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中納言さんの「早く帰っておいでよ」という歌がストレートでいいですね。

 

 

この史跡、遺構はほとんど残っていないのですが、実際に現地へ行ってみると地勢がよく分かって楽しいです。

 

国道1号線、すなわち旧東海道のすぐそばに陣地がございまして。

古来から交通の要衝であったこの地、大津や石山や草津が近く、六角氏の本拠観音寺城までは程よい距離。

六角高頼さんの都方面への物流を邪魔しつつ、足利義尚さん的には政務や文化的交流がしやすいロケーション。陣中でもワークライフバランスを保ちやすそうです。

 

滋賀県の平野部なので、周囲の見晴らしもよく、逆に六角高頼さんからすれば奇襲を仕掛けるのは難しそうな印象でした。

甲賀忍者による襲撃伝説、事実なのだとしたら闇夜や嵐に紛れて実行したのかしら。

あるいは内通者の手引きとかがないとしんどいんじゃないかな。

 

 

草津宿はその後もずっと交通の要衝として栄えましたし、現代でも日清食品さんの滋賀工場があったりしますし、本当に交通の便がよい、優れた土地ですねえ。

陣にしても城にしても工場にしても立地はまこと大事であります。

 

 

 

うばがもち

存在を知ってからずっと食べてみたいと思っていたうばがもち。

「六角義賢と滋賀県草津市のうばがもち」 - 肝胆ブログ

 

やっと本店を訪れ、ゲットすることができました。

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パッケージが東海道中山道を結ぶ草津らしいデザインで素敵。

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六角義賢さんにちなむ由緒。(見づらくてすみません)

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おもちとご対面。

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あんこの中は、非常になめらか柔らかい羽二重もちになっております。

一口サイズの赤福で、あんこがもう少し軽くサラサラとなった感じの食べ味。

あんこ、丁寧に漉しているんだろうな。おいしいな。

 

1万歩以上歩いた身体に優しい。

一口サイズなのが本当に嬉しい。

これ、食卓に置いてたら絶対家族が幸せになるやつや。

つまみ食いもついで食いも乳母はんが慈悲の心で受け入れてくれるやつや。

 

いい名物ですね。

草津駅でも売っていたのでおすすめですよ。

 

なお、非常に柔らかい食感、そして乳母の乳を模したというビジュアルで。

脳内で漫画太郎のババァが「タトゥーー!!」と叫び出しそうになるのに困りました。

食べものは予備知識や連想がない方がいいことも多いかと思います。

 

 

 

草津宿の散歩

江戸時代の草津宿の史跡がいろいろと残っていて、散歩が楽しかったです。

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本陣は年末で閉まっていて残念でした。また今度ですね。

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デビルマン終盤の美樹ちゃんみたいな像があったり。

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企業のSDGsアピールも目にする機会が増えてきましたね。

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以上、草津、そして滋賀はいいなあという感想でした。

滋賀の歴史はディープで膨大なのでなかなか手を付けられていませんが、引続きちょくちょく訪れてみたいですね。

 

 

鈎の陣界隈や六角氏の視点で深掘りした中世史論文がどんどん出てきますように。

もっと勉強してみたい。
 

 

「六角定頼 感想」村井祐樹さん(ミネルヴァ書房) - 肝胆ブログ

 

 

「新鋭女流花便り寄席」@お江戸上野広小路亭

 

東京は江戸風の寄席に生まれて初めて行ってみたら女性出演者限定の公演をやっていて、それがまた一つひとつとても面白くてかんたんしました。

 

「お江戸上野広小路亭」::日本有数の繁華街上野で落語・講談・古典芸能を楽しむ

 

 

↓行った日のプログラム(オフィシャルHPより引用)

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歴史好きなもので、伝統的創作コンテンツ「講談(講釈)」もけっこう好きです。

「島抜け」吉村昭さん(新潮文庫) - 肝胆ブログ

 

関西の寄席は何度か行ったことがありますが、本場お江戸の寄席は行ったことがなかったので前から行ってみたかったんですよね。

 

上野というアクセス良い土地で、3時間2000円で楽しめると思えばイイ娯楽。

あっという間に満席になっておりましたし、確かな人気に支えられているようです。

客層は大半が後期高齢者でしたが、意外と若い人もちらほらいらっしゃいましたよ。

 

 

講談というのは、歴史上の有名人の逸話(真偽が怪しいのはご愛敬)を独特のリズムで面白おかしく語っていただくタイプの話芸です。

正確な定義は存じませんが、落語が笑い重視で講談が説明重視という感じでしょうか。

小説・映画・テレビ・ゲームの普及前、庶民は講談を通して昔の人物の活躍に触れていたのでありましょう。

 

 

本日のプログラム。

 

まず、一龍斎貞奈さん(美人)が話してくれたのが「木村又造 鎧の着逃げ」という元六角家牢人ものだったのにかんたんしました。

最近六角義賢さんの顔グラに萌えていた私にとってタイムリー。謎の縁を感じます。

前座の持ち時間は15分しかないので、いいところで「続きはまた今度」となるのがいかにも講談的、現代で言えば週刊少年漫画のヒキ的でさっそく楽しい。

 

続いて神田こなぎさんの水戸光圀公もの、神田真紅さんの赤塚不二夫先生もの(こういう最近の偉人を講談化しているのも楽しい)と着実に会場の熱が上がっていき。

 

一旦講談を離れ、スージィーさんの見事な腹話術芸に笑わされて会場の空気がリフレッシュ。

 

一龍斎貞寿さんの清水次郎長伝成立の物語と相成って公演前半が盛り上がりのピークに達します。

この清水次郎長伝の講談、筋という点では私一番のお気に入りでした。

明治時代の講談師「京伝」さんと「三代目神田伯山」さんのエピソードなんですが、実にいい人情ものでね、ツボに入って感動してしまいましたよ。

聞けてよかったです。

 

 

10分の休憩を挟んだ後。

 

後半、まずは鳳舞衣子さんの浪曲「八重と藤吉郎」。

木下藤吉郎豊臣秀吉)さんが八重さん(たぶんねねさんのこと)を前田犬千代(利家)さんと取り合う筋で、浪曲の伸び伸びした声・調子と相まって心地よかったです。

実際、鳳舞衣子さんは人気のある出演者のようで、場内のあちこちから「待ってました」の声が上がっておりました。

 

その次の紙切り芸は代役の三遊亭絵馬さんでした。

パンダ、猪、力士、宝船、観客の似顔絵等、次々と見事なハサミさばきで魅せてくださり、非常に満足度が高い演目でしたよ。

腹話術や紙切りは素人や子どもにも凄さが分かりやすくてありがたいですね。

 

最後に神田阿久鯉さんの忠臣蔵もの「赤垣源蔵 徳利の別れ」。

年末に忠臣蔵ものを聞けたのは思わぬ僥倖でした。

何より、神田阿久鯉さんの名演に圧倒され、感動してしまいました。

さすがトリを飾る人は素晴らしい実力の持ち主なんだなあと。これが話芸なんだなあと。腑に落ちること落ちること、あらためて2000円でこの3時間、幸福だったなあと。

 

 

以上、初めてのお江戸の寄席での講談体験、超楽しかったという話でした。

また機会を見つけて再訪したいものです。

 

講談という素敵な文化がこれからも続いていきますように。

ちょっと習ってみたい気持ちになった。

 

 

 

「お城EXPO2018でウキウキ」@パシフィコ横浜

 

横浜まで行ってお城EXPOなるイベントに参加してみたところ、ウッキウキにかんたんしました。

 

www.shiroexpo.jp

 

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(クリスマスにこんなことして楽しんでいる人たちがいるんだなあ)

と思わずにはいられない看板。自分もその一人ですが。

お城EXPOの来客者は男性6割、女性2割、家族連れ2割くらいで、何千人単位でお客さんが来ていたんじゃないでしょうか。

ちびっ子連れの家族が意外と多くて驚きました。

子どももお城好きなんですね。

 

 

 

お城EXPOでかんたんしたコンテンツを紹介していきます。

 

厳選プログラム(講演会)

時間の都合がよかった24日の朝と午後イチのプログラムに参加してみました。

 

24日朝は「関東戦国史と城郭攻防戦」by伊東潤さん。

長尾景春の乱~豊臣秀吉の小田原攻めまでの関東戦国史を通して説明しはって、その中で城郭ネットワークを活用した戦が定着していく流れを教えてくださる内容でした。

長尾景春さん&太田道灌さん関係にたくさん時間を使ってくれたのが個人的に嬉しかったり。

伊東潤さんは有名な作家さんなので、ファンの方が多く参加している印象でした。

 

24日午後イチは戦国大名の生き残り戦略――小田原北条氏と武田氏の城から考える――」というテーマで、諏訪間順さんと平山優さんが対談されるというもの。

それぞれ北条家と武田家を代表する識者さんで、30分ずつそれぞれのお家の歴史や城郭を説明しはって、その上でお二人が対談という流れで。

北条・武田は同盟・断絶を何度か繰り返していますが、その過程で国境の城を破却したり築城したりとお城の配置のあり方が外交状況と連動しているというエピソードが印象的でした。

また、北条家と武田家の魅力や欠点についてかなり明け透けに話されていて、流れ弾が上杉家に飛んでいたのが聴衆にウケてました。

 

 

麒麟から悉く―信長と秀吉の天下統一―

信長さんや秀吉さんの書状・禁制などが展示されているコーナー。

筒井順慶さんの書状が、腰が低い文章で好印象でした。
ご無沙汰していてごめんね、悪気はないんです、鮒ずし贈るね、みたいなやつ。

パネル解説で「三好政権」という言葉が多用されていたのもマジか感があって驚き。

 

 

城めぐり観光情報ゾーン

城郭関係の諸団体が日本中から集まってきていて、観光アピールブースが乱立しているコーナーです。

古河城バルーンプロジェクトインパクトありました。

田丸城も地味ながらよございました。北畠親房さん好きとしては行ってみたい。

飯盛城ブースが一所懸命三好長慶さんのことをアピールしている隣で、岸和田城ブースが松浦守さんや十河一存さんに触れることなく明智光秀さんアピールに励んでいるのがテメェこの野郎感があって面白かったです。

明智光秀さんの唯一の肖像画岸和田市にあるのだそうです。オイシイですね)

 

 

センゴク宮下英樹さん)大原画展

これはファンにはたまらないですね。

センゴクでは羽柴秀吉さん、上杉謙信さんが好きです。

番外編ながら、毛利元就さんもときめきました

 

 

日本100名城&続日本100名城パネル展

各城の紹介と写真展示です。

丹波の黒井城(続日本100名城・163番)の写真がとてもよかったです。
丹波霧の中に浮かぶ赤鬼の館的なやつ。イイ。

ここでも飯盛城と芥川山城が三好アピールに励んでいる横で岸和田城がテメェこの略。

 

 

物販

いろんな戦国グッズが売られていました。

個人的な目玉は戎光祥出版」「吉川弘文館」の書籍が2割引きで売られていたことです。

マジか。こんなお得情報、先に知っておけば……!

 

 

城の自由研究コンテスト優秀作品展

これ。

これですよ、一番かんたんしたのは。

これは隠れ目玉コンテンツ。

 

全国の小中学生がお城関係の自由研究を発表している場なんですけどね。

キレが半端ないの。

 

 

すげぇ……

すげぇよ……感動したよ。ウッキウキで見させてもらったよ。

こんな子たちに使われるなら、私は税金だろうが融資だろうが喜んで払うね。

 

一見の価値ありまくりなので、来年以降お城EXPOに参加される方は絶対見逃してはダメですよほんまに。

 

 

その他食事関係

施設内でお弁当を食べられるコーナーがありますし、お弁当も売っています。

私は知らずに外で食べてしまいましたが、クリスマスシーズンで混んでいるので、中で食べた方が賢明だったやもしれません。

 

あと、クリスマスだったので、隣のヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル(長い)で「ノエル オ フレーズ」というホールのショートケーキを買って食べてみましたがめっちゃ美味しかったです。

ホテルグルメ | ホテルオリジナルギフト | ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル

 

 

 

 

 

 

以上、いいイベントだなあとかんたんした次第です。

実行委員会の方々お疲れさまでした。そしてありがとうございました。

 

お城や歴史を楽しむファンがしみじみと増えていきますように。

 

 

 

↓甲冑を着た恐竜もいました。

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「進化は万能である 人類・テクノロジー・宇宙の未来」マット・リドレー / 訳:太田直子・鍛原多惠子・柴田裕之・吉田三知世(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

表題の科学系な本が知的好奇心を刺激する内容で、よく考えると「せやろか」と思う部分も多いのですが「とはいえ全体として面白かったからいい本やな」と頷ける感じにかんたんしました。


www.hayakawa-online.co.jp

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本の裏側に書いてある説明が、中身をよく要約してはると思います。

創造主があらゆる生物を創りだしたとする説を退けたダーウィンの進化論は、人間社会にも当てはめることができる。戦争や経済改革など、少数の権力者によるトップダウンの統制は多くが失敗に終わっている。一方、世界的な所得の増加、感染症発生の減少、宗教の普及、通貨の流通、インターネットの発展などは、計画や設計とはかかわりなく自然発生的に起こっているのだ。社会の変化を進化論で説くボトムアップ世界の説明書

 

 

雑に言えば、政治家や経営者や発明者の“偉人性”の価値をあまり認めず、世の中は技術や文化が一定水準に達した段階で必ず次の時代に移るイノベーションを生み出すものだ、特定個人の企画やデザインなんかよりも自然発生的な世界の改善を当てにしようぜ人類の未来は明るいなハッハッハYEAH的な感じの本になります。

創発」(ググってみよう)という近年じわじわ流行っている気がするキーワードが著者に愛されていたり、同じく古代ローマの「ルクレティウス」さんが著者から熱烈なラブを送られていたりしまして楽しいですよ。

 

 

当著で扱われているテーマは大変広いです。

宇宙、道徳、生物、遺伝子、文化、経済、テクノロジー、心、人格、教育、人口、リーダーシップ、政府、宗教、通貨、インターネット。これらすべてを、ボトムアップ、自然発生・あるいは自然淘汰的なロジックで説明してみるよ、という構成。

人類の文化を「進化」という観点で俯瞰してみせるという意気込みを感じますね。

 

本の全体を通じて

私たちは、人々や組織や機関がつねに主導権を握っているかのように、世の中の事柄を記述するが、多くの場合、実はそうではない。

進化は遺伝のシステムだけに限られてはおらず、道徳からテクノロジー、金銭から宗教まで、人間の文化に見られる事実上すべてのものの変化の仕方を、進化によって説明できる。人間文化のこれらの細流の流れは緩やかで漸進的で、何者の指示も仰いでおらず、創発的で、競合するアイデア間の自然淘汰に駆り立てられている。人々は、意図されていない変化の張本人というより、その変化に巻き込まれる犠牲者であることの方が多い。そして、文化の進化は、目的など頭にない者の、それでも数々の問題に対する実用的で巧妙な解決法を生み出す。

良いことは徐々に起こる。悪いことは突発する。そして何より、良いことは進化する。

 

といったスタンスで語られていますので、政治家や官僚や経営者や科学者や芸術家など、自らの力で世の中を変えている自信や意気込みや実績をお持ちの方が読んだら憤慨したり傷ついたりするかもしれません。

あらかじめそういう覚悟をもって読み進めるようにいたしましょう。

 

 

個人的には、文化、人口、宗教、通貨あたりの進化を語るパートが面白かったです。

文化、音楽などのアートの世界は進化論っぽく語りやすいので分かりやすいですね。前世代の音楽の進化があればこそ次の世代の音楽が生まれる。オルタナティブフュージョンという概念自体が進化論的ですし。

人口のパートはいわゆる人口抑制政策や優生学的政策の愚かさを論じており、政治家などがイキッて特定の人を減らそうとするより世の中全体の食料や衛生の進化的改善を待った方が賢明だ的な内容です。科学的な説得力よりも共感力が高い章になります。

宗教のパートは正直進化論で充分説明できているようには見受けられなかったのですが、こうした独自の切り口で宗教論や迷信論を語ってはる方は少ないので読んでいて面白かったですね。

通貨のパートも同様に、進化論関係なく、イギリスにおける民営通貨の歴史解説が純粋に興味深かったです。

 

 

あれ、こうやって書きながら振り返っていると私あんまりこの本に納得できていないように思えてきたな。

全体としてはけっこう気が合うところも多かった印象なんだけど。

 

どの章、という訳ではないのですが、人類の歴史・発展を、特定の偉人のおかげではなく、状況や技術の積み重ねが先にあって、ちょうどよいタイミングでいわゆる英雄的な人がたまたま現れただけ、その人がいなくてもいずれ他の人が同じ偉業を成し遂げていただろう……的な感覚で読み取るの自体はけっこう好きですね。

政治家や宗教家の偉業は世論や世情が先にあってこそ、イノベーションは個々の基礎研究や技術発展の蓄積があってこそ、という。

こういう書き方をするとシニカルすぎるか。

 

私的には、マクロで世の中を見たらそうかもしれないんだけど、一方で時代の変わり目に火中の栗を拾ったような政治家や、確かにその時代の民衆の心を照らした宗教家や、多大な熱意を以て経営や研究やアートに取り組んだ方のことも好きなので、マクロな進化論だけで世の中を語っちゃうとやっぱり「せやろか」感が出ちゃうのかな。

人類全体の進化、自然淘汰をもたらすものはやっぱり個々人の試行錯誤の積み重ねがあってこそですし、その試行錯誤を生むのは個々人のミクロな気持ちがあってこそですからね。

 

書いてはる通り、人類全体の進化に力や希望を感じる。大きくはその通りだ。

一方で、個人個人の夢や熱や思いや苦悩を進化の過程の一パーツみたいに扱って捨象しちゃうと、結局は人類の進化を遅らせることになっちゃうんじゃないの、というところでしょうか。

特に根拠もない粗い感想ですけど。

 

 

そういう訳で、書いてあることを手放しに丸々受け入れるのには抵抗があるんですが、書いてあること自体は非常に面白く、頭の色んな部分を刺激されるので、楽しい本でございましたよ。

読んでいると著者さんとディスカッションしているみたいで純粋に楽しかった。

何より、著者さんの世の中を前向きに見ているスタンスが素敵ですし好き。

 

訳もよかったです。(表題は人数が多いので敬称略)

原文を読んだ訳ではないのですが、この本が読みやすいのは訳者さんが上手だからなんだろうな、と思い込めましたもの。

著者さんに負けず劣らずのご尽力に敬意を表します。

 

 

 

素人ながら、たまに科学っぽい本を読むと賢くなったっぽい気分になれていいですね。

そのうち、もう少しちゃんと勉強して、もう少しちゃんと賢くなれますように。

 

 

 

ジョナサンの「オクラのオーブン焼き(250円)」

 

関東圏のファミレス、ジョナサンのアペタイザーメニュー「オクラのオーブン焼き」が安くてうまい、よいツマミ&おかずでかんたんしました。

 

www.skylark.co.jp

 

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(画像はオフィシャルHPより引用)

 

 

さいきんのファミレスはチョイ飲み需要への対応に熱心で、お酒メニューの他、安めの小皿メニューを充実させてはる印象がありますね。

 

 

何人かでジョナサンを訪れた際、それぞれのメインの食事の他に、みんなでつまめるようにと頼んだ小皿のひとつがこのオクラのオーブン焼き。

 

見るからにシンプルな料理で、オクラとベーコンを、ニンニクとバターと醤油と出汁で仕上げたような感じです。

全体的に水気が多い調理になっていて、オーブン要素はよく分かりませんが、オクラもベーコンもジューシィにクタッとなっているのが私好み。

オクラやベーコンってのは本気で取り組むと火入れが難しい食材だと思うのですが、香ばしさ等を割り切って、水気たっぷりに柔らかくクタクタな一皿に仕上げるとこれがまあ間違いなくうまいよね、嬉しいよね、となるのです。

 

ベーコンとニンニクのおかげで、ビールにもハイボールにも合う。

このままご飯に乗せてオクラベーコン丼にしてもよさげだと思うの。

こういうメニュー、ありがたいです。

近所にジョナサンがあったら毎回頼むんだろうな。

 

なんせ値段が250円。

安い。

一品追加してもこれなら後悔しない。

昨今のファミレスは実質賃金上昇率以上のペースで値上げしていることに定評がありますが、こうした良心的なメニューがあると消費者としても「しゃーない」という気分になってしまいます。

 

オクラが手軽に食べれるってのもいいですよね。

外食で、アクセスしやすいオクラというと……てんやくらいしか思いつかないですし。

疲れた時にも美容にもオクラは強い味方なのであります。

 

 

ファミレスはメニュー数が多い分、その中でお気に入りの一皿を見つけると妙に嬉しくなりますね。

これからもジョナサンのアペタイザーメニューにオクラのオーブン焼きがこの味このお値段で残り続けますように。