肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

埼玉県「大里郡寄居町の鉢形城(長尾景春&北条氏邦)」と「深谷市の畠山重忠公史跡公園」

 

ゴールデンウィークということで埼玉県を旅してきました。

かねて行きたかった長尾景春さん&北条氏邦さんゆかりの「鉢形城」と、馬を背負う銅像で有名な「畠山重忠像」を見ることができ予想以上に素敵でかんたんしました。

 

鉢形城公園案内 - 寄居町公式ホームページ

畠山重忠公史跡公園 | 埼玉県公式観光サイト ちょこたび埼玉

 

 

鉢形城

埼玉県大飯郡寄居町にあります。

 

 

 

荒川と深沢川に挟まれた絶壁の上にある山城でございまして、文明8年(1476年)に長尾景春さんが築城しはったとのことです。

 

長尾景春さんはこの城を拠点に山内上杉家に対して反乱を起こしますが、残念ながらあの有名な太田道灌さんに敗れて追い落とされてしまいます。

負けたとはいえ長尾景春さんの乱は長期に亘り、ただでさえ享徳の乱などで弱っていた関東秩序はこれでますます崩れていき、やがて北条早雲(伊勢宗瑞)さんたち北条家の台頭を招くことになっていく訳ですね。

 

後に鉢形城には北条氏邦さんが入り、武田信玄さんや上杉謙信さんの侵略への備えとなったり、豊臣秀吉さんによる小田原攻めの際には前田利家さん、上杉景勝さん、真田昌幸さん、本多忠勝さんなどの豪華メンバーに包囲されたりというドラマが繰り広げられます。

北条氏邦さんは五万人の豊臣軍を相手に三千五百名で一か月半も粘り、最後は城兵の助命を条件に降伏したそうです。晩年は加賀前田家預かりになったそうで。

 

(参考:信長の野望・大志のイケメン氏邦さん)

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(強い)

 

ちなみに奥方は「大福御前」という親近感の湧くお名前であります。

 

 

 

 

そうした様々な逸話にまつわるお城ですし、日本百名城にも選ばれているしということで一度訪れてみたかったのです。

 

距離は東京から2時間ほどです。

池袋から東武東上線小川町駅まで行き、更に八高線折原駅へ。折原駅から20分ほどぷらぷら歩いたら到着しました。

 

城の入り口。左手には鉢形城歴史館がございます。

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かなりきれいに整備されていました。

撮影はできませんが、歴史館では城の歴史や見どころを分かりやすく教えていただけるのでありがたかったです。

全体的に北条家推しで、長尾景春さん要素は薄いですけど(やむなし)。

 

北条家って関東ではやっぱりすごく人気あるんですね。

大河ドラマ化されていないのは、五代に亘ってそれぞれの時代や人物が魅力的すぎて一つの物語として構成しにくいからなんでしょうか。

さいきんの大河ドラマを見ていると、むしろ史実ネタが適度に「少ない」方がドラマをつくりやすいのかなと思っています。

 

 

 

城の全容。

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かなり広いです。

訪れる際は歩き回る覚悟をしっかり決めてきましょう。

 

 

 

外曲輪から本曲輪方面に向かいます。

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以前訪れた山中城と同じく、芝生がきれい……だけでなく、土塁がまさに殺人的な高さです。静岡と埼玉で距離は離れていますが、やっぱり同じ北条家の城なんやなと思ってしまいますね。

北条家の名城「山中城」と三島市の「美観」 - 肝胆ブログ

 

 

 

本曲輪界隈。北条氏邦さんの御殿もこの付近にあったそうです。

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本曲輪から荒川を望む。

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ゴールデンウィークだけあって大勢の人が楽し気に遊んではります。

一方、鉢形城には人がほとんどいませんでした(笑)。

 

 

 

搦め手の笹曲輪。

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もうすぐ「寄居北条まつり」があるとのこと。

第57回寄居北條まつり5月13日(日曜日)開催‼ - 寄居町公式ホームページ

 

北条家と豊臣家の合戦を再現したり、北条家ゆかりの各地の食べ物が楽しめたりするそうですよ。

 

 

この辺りには石垣もありますが、徳川時代になってからのものかもしれないそうです。

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西側に足を延ばして二の曲輪、三の曲輪方面。

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写真ではわかりにくいのですが、堀にはうっすらと畝もありました。

どこの堀・土塁も高低差がすごくて、「攻めたくないなあ」と攻撃側の士気が下がること間違いなしです。

 

 

 

みんな大好き馬出・虎口の解説。

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鉢形城には馬出がたくさんあります。

この穏やかな芝生に秘められた殺意を偲びましょう。

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荒川にかかる正喜橋から鉢形城を望む。

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左手の木がいっぱい生えている辺りが鉢形城の本曲輪です。

荒川を背にした断崖絶壁の上にある訳です。

長尾景春さんの好適地を選ぶセンスにかんたんしてしまいます。

 

それにしても、荒川って東京で見るのと全然印象が違いますね。

 

 

 

以上、鉢形城でした。

 

マイホームや商売テナントと同様、築城も立地が大事だなあということがよく分かる城で見応えがありましたよ。

そして、好立地の堅城を更に人の手で強固にしていく北条家の執念染みた築城術にも恐れおののいてしまいます。

 

 

 

 

畠山重忠公史跡公園

続いて深谷市に移動します。

鉢形城から徒歩ニ十分で寄居駅秩父鉄道永田駅まで十分、更に公園まで徒歩ニ十分。たぶん人生で一番埼玉県を歩いた日です。

 

 

 

公園近くになると、なんと「重忠橋」の名が。

畠山重忠さん、地元ではいまも慕われているんだなあ。

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まったく知らなかったんですが、この「重忠橋」は「六堰頭首工」という巨大な治水・利水施設を有していてびっくりしました。

六堰頭首工 - 埼玉県

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巨大建造物好きとしてはサプライズな嬉しさがありました。

 

荒川を堰き止めて近隣の農業用水に活用しているそうです。

ルーツは徳川家臣の伊奈忠次さんによる治水事業とのこと。
内政で有名な方ですが、この辺りでも功績をあげてはったんですね。

 

 

 

治水のおかげか、道々では麦がよく実っていました。

埼玉県は麦栽培が盛んなんですね。

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さあいよいよ畠山重忠公史跡公園ですよ。

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畠山重忠さんは源平合戦の頃に活躍した武将さんです。

平家物語なんかにも登場してくるのでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

 

大力・武勇に優れただけでなく、とにかく人物が素晴らしかったと様々な記録に残されていることで知られています。

看板にも書いていますが、「鎌倉武士の鏡」「坂東武士の鑑」とも評されますね。

曾我兄弟などの鎌倉系物語でも「畠山重忠さんが助けてくれた」みたいなエピソードがしばしば登場して参ります。

 

源頼朝さんの死去後は鎌倉幕府名物の内部粛清でお亡くなりになるのですが、粛清された側なのに「人柄最高」と史書などに記されているのはそれはつまり本当にそういうことだったのでありましょう。

(同時に、重忠さん粛清後の御家人憎悪を上手く捌き切った北条家の辣腕もすごいなと思います)

 

 

重忠さんの死後、畠山家は足利氏から養子を迎えてお家を保ちます。

そうして足利一門の管領家として室町時代にはブイブイいわせていたのですが、後に家督争いなどで衰えて戦国時代には三好長慶さん、上杉謙信さん、伊達政宗さんなどの有名人にしてやられていきます。

それでも重忠さん以来の家名は多くの武士の憧憬を集め続け、畠山氏は江戸時代も高家としてお家を保つことができた訳です。

 

家格や血統を素晴らしいものと言いすぎるのもアレなのですけど、畠山重忠さんの名前を出されてしまうとやっぱり畠山氏を粗略には扱えない……というのは多くの武士の本音だったんじゃないでしょうか。

だって当時の武士の教科書って源平や太平記の軍記ものですよ。どの教科書にも畠山は出てくるんですよ。そりゃその子孫が目の前にいたらハワワってなっちゃいますよ。

 

 

 

公園はそんなに広くありませんが、畠山重忠さんを愛する有志の方々の石碑記念碑があちこちに建立されていて、今に続く遺徳の大きさを感じさせられます。

 

なかでも目玉は「馬を背負う畠山重忠公の像」。

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有名な源義経さんの「鵯越(ひよどりごえ)」の際、みんなが崖を騎乗で下りていく中、優しい畠山重忠さんは馬が足を痛めぬよう逆に馬を背負って崖を駆け下りたというパワー系ハートフルエピソードを銅像にしてくださっているのです。

 

……こうやって冷静に実写化するとスゴイ迫力です。

馬ってポニーサイズでも軽く100kg超えるそうですから、畠山重忠さんの剛力ハンパなしであります。

 

史実かどうかはともかく、とりあえずJRAあたりに教えて差し上げたくなる話ですね。

 

 

 

公園内には畠山重忠さんのお墓や産湯の井戸なんかもありますよ。

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本当にいまも慕われているようで、訪問客が絶えない様子でした。

道沿いにあってアクセスがいいのも大きいのかもしれませんが、子連れのお父さんなんかが「畠山重忠かあ、ちょっと見ていこう」などと言ってはるのを耳にするとなんだか嬉しくなっちゃいますね。

 

埼玉県比企郡嵐山町「菅谷館(続日本百名城)と嵐山史跡の博物館」 - 肝胆ブログ

 

 

 

 

埼玉の旅、よかったです。

 

ゴールデンウィークだけど人が少なくて余裕で電車に座れたし。

都心部の方は、連休とかの際は埼玉を攻めてみるのもいいのではないでしょうか。

 

帰りには人生初の十万石まんじゅうも買えたし、土産お渡し先で相伴させてもらうのがいまから楽しみです。

 

 

明日も明後日もいい天気になって連休最後をみんなハッピーに過ごせますように。

 

 

 

「ウルトラマンオーブクロニクル(年代記) エピソード10構想」ウルトラマンオーブ完全超全集より(小学館てれびくんデラックス)

 

オーブ熱やジャグジャグ熱が高まってきて、ついに超全集を買ってしまいました。

映像化されていないウルトラマンオーブの物語「エピソード10構想」や各監督インタビュー、クレナイガイ&ジャグラスジャグラーなりきりフェイスマスクなどなど異常に豊富なコンテンツの数々にめっちゃかんたんです。

 

 

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定価2,800円。

内容が濃いので後悔していません。

 

 

まずは付録のガイさんマスクとジャグジャグマスク。

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このマスクで、みんなでジャグジャグしよう!

ガイとケンカはダメだよ!

★マスクをしたまま、外で遊ばないでね!

 

とのことであります。

ウルトラマンや魔人態ではなく石黒英雄さん、青柳尊哉さんの生顔お面てのがすごい。

 

ほら、欲しくなってきたでしょう?(笑)

 

 

 

超全集の主な内容は次のとおり。

 

 ・『太平風土記』再現縮刷版

 ・ストーリー・キャラクター・怪獣紹介(劇場版、THE ORIGIN SAGA含む)

 ・石黒英雄×青柳尊哉クロストーク

 ・監督インタビュー
   -田口清隆監督
   -アベユーイチ監督
   -市野龍一監督
   -冨田卓監督
   -武居正能監督
   -坂本浩一監督
   -小中和哉監督
   -おかひでき監督

 ・スペシャル企画 ウルトラマンオーブクロニクル<年代記
  田口清隆×中野貴雄 エピソード10構想を語る

 ・ウルトラマンオーブ「1908年のできごと」第二稿

 ・オーブ用語辞典

 ・放送・スタッフ・キャストリスト

 ・影絵ギャラリー

 ・THE ART OF ウルトラマンオーブ

 ・ウルトライベント2016~2017

 

 

どれもこれも密度と熱気が高くて素晴らしいのです。

 

 

とりわけ注目したいのは、ここでしか明らかにされていない「エピソード10構想」。

ウルトラマンオーブのオリジンサーガやTV放送や劇場版は、この10個のエピソードの一部でしかないという位置づけなんですよ。

 

記事によりますと、ウルトラマンオーブクロニクル<年代記>とは

 

 第1章「命の木」編ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA)

 第2章「俺は銀河の渡り鳥」編……ガイさんが4つのエレメントを得る物語

 第3章「ブラックホールを盗んだ男」編……オーブリングとダークリング登場

 第4章「激闘!イシュタール文明」編……オーブとマガタノゾーアの戦い

 第5章「ルサールカより愛をこめて」編……オーブとナターシャの物語

 第6章「さすらいの太陽」ウルトラマンオーブTVシリーズ

 第7章「宇宙魔女賊ムルナウの逆襲・サデスの帰還」(劇場版)

 第8章「超空大凶獣デザストロ」……オーブ・ゼロ・Xとデザストロの戦い

 第9章「冥府魔道の使者」ウルトラファイトオーブ)

 第10章「渡り鳥、宇宙(そら)を行く」……ガイ、ジャグラーの物語は続く

 

という構成なのだそうです。

未映像化の章もそれぞれ興味深いですね。

 

この本では、それぞれの章のあらましがかなり詳しく掲載されていますので気になる方はぜひチェックしてみてください。

ちなみに劇場版のムルナウさんやサデスさんは第2章で初登場します。

ムルナウさんは恐竜戦車を操って悪さしていたようで、恐竜戦車好きとしては嬉しい。

 

 

個人的には、第4章のオーブとマガタノゾーアの戦いが気になります。

絵コンテも一緒に載っているのですが、

「地上を驀進するマガタノゾーア
 地面を突き破りつぎつぎ触手が伸びる」

「次々来る触手をオーブカリバーで斬り走るオーブ
 TB」

「大ロング
 建物を崩して出てくる触手
 互いに進撃するオーブとマガタノゾーア」

「走り込み、飛ぶオーブ
 カメラ振り上げつつT-up

 飛ぶオーブへつぎつぎ伸びる触手
 “サーカス”状態の空中戦へ

 オーブ、空中でオーブスプリーム発射姿勢へ」

 

なる一連の流れにとてもワクワクさせられました。

オーブの触手プレイ板野サーカス、ぜったい興奮すると思うのです。

 

 

ほかにもガイさんをストーカーするジャグラーさんをストーカーする美少女「ビランキ」さんの存在。

そんな人がいたのか。

「夜明けのコーヒー、一緒に飲むか?」とジャグラーはビランキに語りかける。

喜んでジャグラーの入れてくれたコーヒーを飲むビランキ。

その意識がフッと遠のく。

異郷の惑星、荒野の真ん中で目覚めたビランキ。

「俺についてくるな J」と書き残されたメモを手にしている。

ジャグラー様の馬鹿! 私、絶対あきらめないから! 私の愛は永遠なんだから!」

ビランキの叫びが荒野にこだまする。

(第5章ー2「空飛ぶ円盤の謎を追え!」より)

 

これは映像化したらジャグジャグファンのお姉さま方が発狂してしまいそうですね。

 

この5章ー2ではガイさんが某秘密機関の軍人からレザージャケットを譲り受けていたりして、こちらも注目度高いです。

 

 

第3章では、自身に懐いていた少年「ショーティー」さんをジャグラーさんの陰謀で失ったガイさんがブチ切れてジャグラーさんを殴り殺そうとするシーンがいい。

殴られてなお嬉しそうなジャグラーさんもいい。

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脳波怪獣ギャンゴさんが出てきたりするのも嬉しいのですが、何よりこのジャグジャグ笑顔のインパクトは強すぎです。

「黄金の銀河に浮かぶオーロラ」という例のワードなんかも出てきますよ。

 

 

 

 

エピソード10以外のコンテンツでは、監督方へのインタビューがよございました。

とりわけ、青柳尊哉さんの怪演への評価が一様に高くてここでもジャグジャグ成分豊富なのには唸りましたね。

 

「青柳さんがノリノリで、マガジャッパのカードの匂いを怪しくかぐシーンが、あまりにアブナイ感じになってしまって、さすがにそれはダメって(笑)。でも、すごいいい意味での悪ノリがジャグラーにはありましたね。」

「女性スタッフのウケが非常によくて、彼は男たちには分からないフェロモンを出してるんだろうなんて言ってました(笑)。」

(田口清隆監督)

 

「病院ではジャグラーも変態モード全開。あそこはなぜ白衣だったのか?とよく聞かれますが、答えは「ただ気持ち悪いから」。青柳さんは変態芝居を付けると面白がって演じてくれるんでこっちも調子に乗ってしまうんですよね。」

市野龍一監督)

 

――20話(メトロン回)はラストのジャグラーの熱演もすごいですね。

「ラストのジャグラーは目いっぱい気持ち悪くやってもらいました。何というか、笑いすぎてうまく言葉が出てこないっていうのをやりたかったんですね。あのシーンは残念ながらアフレコになってしまったんですけど、アフレコの時は青柳くんは「THE ORIGIN SAGA」でキレイなジャグラーをやってた頃なので、「オレ、気持ち悪いの忘れてるわ」って言ってましたね。それで気持ち悪いのを思い出してって(笑)。」

(冨田卓監督)

 

 

 

……なんかだんだん超全集というかジャグジャグさん個人を取り上げる記事みたいになってきましたが、せっかくなので石黒英雄さんと青柳尊哉さんのクロストークの一部も引用しておきます。

 

――なるほど、石黒さんは常に全体も含めて考えていらして。

石黒・いやいや口うるさい空っぽな役者なだけですよ。

青柳・空っぽか…空っぽなのはいいよね。あんまり詰め込み過ぎてるとうまく飛べないし。

石黒・あのさ、ちょいちょいポエム入れるのやめてくれない?お前のツイッターじゃないんだからさ(笑)。

青柳・オレ140文字で勝負してるからさ(笑)。

石黒・放送中は僕、ジャグラーツイッターを助けてたんですよ。ジャグラーの後ろから副音声みたいに、「本物ってなんだろう、それを求めながら、自分は四葉のクローバーを探してる…」ってつぶやいて。

青柳・お、それ書くわ(笑)

石黒・それでずっと遊んでましたね。

 

 

 

あと、「ウルトラマンオーブ用語辞典」にはこんな用語も載っていました。

 

【あん くー どう ふーどる】

Un coup de foudre

仏語で“雷の一撃”。出会い頭のひとめぼれを意味する言葉。ナオミと初めて出会ったジャグラーが発した言葉。(1話)

 

ためになりますね。

 

 

 

こんな感じでとても充実した仕上がりのウルトラマンオーブ完全超全集。

オーブ好きには必読レベルにおすすめでありますよ。

 

なんか’18.7から始まるウルトラマンR/Bにもオーブが出てくるみたいですし、これからもオーブの物語がなんらかの形で続いていくといいですね。

いつか機会があればエピソード10の残りも映像化されますように。

 

「ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA 感想 ピュアなガイ、ナイーブなジャグラー、イケてるガイア・アグル」 - 肝胆ブログ

ウルトラマンZ「最終回後のジャグラスジャグラー/ヘビクラ隊長 考察」 - 肝胆ブログ

「ジャグラスジャグラークロニクル ジャの道は蛇&写真集 感想」 - 肝胆ブログ

 

「遺留捜査(2022)第5話 感想 会社の資金と個人情報、(無断で)お借りします!」テレ朝 - 肝胆ブログ

 

 

 

なお。

超全集によれば、ゾフィーさんが封印したのはマガオロチの「卵(マガ魂)」だったそうです。

 

ゾフィー対マガタノオロチなんてなかったのか……残念。

卵でも充分すごいはずなんですけど。

 

【願望】「ゾフィーとマガオロチの戦い(ウルトラ戦士vs魔王獣)を映像化してほしいなあ」(ウルトラマンオーブ前史) - 肝胆ブログ

 

 

 

「アクタージュ 1巻感想……なぜにこの漫画をおすすめするのか」原作:マツキタツヤ先生 / 漫画:宇佐崎しろ先生(週刊少年ジャンプ)

 

待ち望んでいたアクタージュの単行本1巻が満足度の高い内容でかんたんしました。

 

www.shonenjump.com

 

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以前も紹介しましたが、

「アクタージュ 1話感想」原作:マツキタツヤ先生 / 漫画:宇佐崎しろ先生(週刊少年ジャンプ'18年8号) - 肝胆ブログ

 

この「アクタージュ」は演技・役者という少年漫画ウケしなさそうな題材を扱いつつ、内容は少年ジャンプらしい「友情・努力・勝利」感に満ちた期待大の作品であります。

 

主人公「夜凪景」さんが女優として天才性を発揮していく王道のストーリー。

ひと捻りある奥深い原作とテキスト表現。

一枚絵を中心に人を惹きつける魅力的なイラスト。

 

夜凪景さんと一緒に作者のお二人もこれからますます伸びていくビジョンが具体的にイメージできる傑作だと思うのです。

 

 

もっとも、題材がジャンプっぽくないせいで、せっかくの「友情・努力・勝利」要素が分かりにくいんですけどね。

 

友情……デスアイランド編から顕著になっていきます。

努力……ものすごく丁寧に描写いただいているのに、丁寧すぎて分かりにくいという。

勝利……基本夜凪景さんは失敗ばかりなので勝利要素はいまのところ薄いか。
    実質では勝っているんですけどね。

 

そう、本質的な努力要素は他の連載陣に勝るとも劣らない内容(現実世界の話だし)だと思うのですが、いかんせん題材が「演技」なので読者に伝わりにくいのかなと感じます。

加えて、夜凪景さんは天才であるが故にかんたんに勝利させる訳にもいかないから、彼女の努力・成長を促すためにも失敗し続けさせざるを得ない感。

この辺り一般読者ウケしなさそうな要素がビンビンなのですけれども。

 

 

更に、作者のお二人がお若い、デビュー直後ということもあってか、細かな粗や粗雑さはどうしても目に付く訳で。

舞台が現実の映画撮影現場ということもあり、共演者やスタッフに迷惑をかけるような描写に眉をひそめる読者も一定いるのだろうなと。

「いいじゃん、現実の芸能界の方が粗だらけなんだから」「勝新太郎って知ってる?」などと思わなくもないのですけど、倫理意識や品質意識の高い現代読者にウケるかはやはり懸念せざるを得ません……。

 

 

実際、ジャンプ本誌では低空飛行を続けていて不安でいっぱいです。

アウターゾーン枠でもいいので、ストーリーのまとまりのよいところまで続いてほしいものであります。

続いていけば原作も作画もぐんぐん洗練されていくだろうし。

 

 

 

 

この1巻、通して読むと更に面白いんですよ。

まずは夜凪景さんの天才性と危うさを掘り下げ、そこからライバルの「天使」百城千世子さんの登場や、友情要素満載のデスアイランド編に展開していく流れが。

 

芝居という特性上、夜凪景さんの様々な衣装スタイルを楽しめるのも満足度高いです。

制服姿から、料理姿、着物姿などを満喫できますからね。

デスアイランド編後の題材がどんなものになるのかも楽しみです。

 

 

あらためて夜凪景さんの父親が失踪した際のコマを見てみると、酒瓶のほかに紙(原稿用紙?)が散らばっているのも気になります。

家に古いビデオがたくさんあることといい、お父さん実は脚本家とかなんでしょうか。

主人公同様に危ういお人のようですけど。

 

 

 

コミックスおまけの各キャラクター設定解説も興味深い。

 

例えば夜凪景さんは

●好きな映画

ローマの休日」「カサブランカ」「風と共に去りぬ

意外にラブロマンス好き

 

と設定されていて、ひょっとしたら将来恋愛体質になってしまったりするんだべかなどと思えて大変いかがわしいです。

恋愛映画の役になり切って、さらに映画と現実の境目があいまいになってしまったらえらいこっちゃですね。

 

 

個人的には星アキラさんの

●好きな映画

スパイダーマン2」「ダークナイト

キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー

2作目が好きな様子。

 

が好感度高い……。

作中の彼の役割を投影するかのような設定が巧みだと思います。

 

 

あと、柊雪さんのガチで作画したらたいそう美人な感じもいいっすね。

 

 

 

 

今更ですが、別にこの作品のことを「分かる人には分かる」みたいな高尚な代物扱いしたい訳ではないんですよ。

題材のレアさや見かけのデビュー直後特有な稚拙さに惑わされず、素直に読んだら実は少年漫画の王道を歩んでいる作品でしかも面白いんだよ今後が楽しみなんだよ女性にもおすすめだよと声を大にして言いたいだけなんです。

 

 

なんでこの漫画をこんなに推すのかというと「夜凪景さんや百城千世子さんがかわいいからでしょう?」と聞かれれば「YES!」ではあるんですが、それ以上に「連載が続くとスゲェ化けそう」な可能性をこの作品、作者に感じるからなんですよね。

 

現時点のクオリティよりも数年後のクオリティに投資したい的な気持ち。

 

 

 

てな訳でほんまになんとか連載がしばらく続きますように。

色んな伏線がありますが夜凪景さんがおおきくは幸せになりますように。

 

 

「アクタージュ2巻感想、ていうか売ってねえ」原作:マツキタツヤ先生 / 漫画:宇佐崎しろ先生(ジャンプ) - 肝胆ブログ

 

 

「名経営者との対話 コーポレートガバナンスの実践と理論」牛島信さん(日経BP社)

 

コーポレートガバナンス関係で有名な弁護士「牛島信」さんと、実績ある名経営者の方々との対話を収録した当著が面白くてかんたんしました。

 

www.nikkeibp.co.jp

 

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二部構成で、2/3くらいがコーポレートガバナンスをテーマにした対談集、1/3くらいがコーポレートガバナンスの直近の理論・概況を解説いただける内容になっています。

 

 

ある程度この手の話題に興味がある方向けの本かと思いますが、「コーポレートガバナンスってよく分からんけどなんとなく読んでみたい」という人は後半を先に読んでみたら分かりやすいのではないでしょうか。

 

先に後半の目次を引用しますと、

【第二部】 理論篇

 ・企業の内部留保をどうはき出させるか

 ・社外取締役の時代が到来した

 ・コーポレートガバナンス・コードとは何か

 ・日本企業の経営者は米国並みの高額報酬に?

 ・激変する「株式持ち合い」「内部昇進者中心の取締役会」

 ・内部通報制度はカイゼン活動

 ・トヨタの種類株式と「重要なパートナー」の確保

 ・ROEとコーポレートガバナンス

 ・取締役会の機能を向上させる具体的な方策

 ・「お手盛り」ではないインセンティブ報酬の在り方

 

という風になっておりまして、なんとなくニュースや日経新聞なんかで見たことあるような見出しでございましょう?

 

この第二部理論編は100ページほどのコンパクトなボリュームで分かりやすくこうしたトピックスを説明してくださいますので、コーポレートガバナンスの気安い入門書としてもおすすめですよ。

 

単に「●●●とは×××である」みたいな教科書的解説になっていなくて、「安倍政権が成長戦略の目玉として掲げたからこんなけ急に盛り上がった」「内部通報を受けた際の、大阪ガスカナデン帝人の対処は見事だった」「トヨタによる中長期保有志向株主の形成チャレンジ(AA型種類株式の発行)」「企業役員の報酬は今後上がっていく方向なのだろう」などなど、印象的というか記憶に残りやすい話題をたくさん散りばめてくださっていますのでとてもためになります。

コーポレートガバナンスは業界問わずさいきん重要なので、ビジネスパーソンの方はこうした内容をサラッとでも一読しておくといいんじゃないかと。

 

 

 

そうした世の中の流れを踏まえた前半の対談集ですが。

 

対談相手のメンツがすこぶる豪華なんですよね。

 

【第一部】 対談篇

 坂根正弘氏 コマツ相談役

 伊東信一郎氏 ANAホールディングス会長

 鈴木茂晴氏 大和証券グループ本社会長

 長島 徹氏 帝人相談役

 佐藤茂雄氏 大阪商工会議所会頭、京阪電気鉄道最高顧問

 斉藤 惇氏 KKRジャパン会長

 岩田喜美枝氏 公益財団法人21世紀職業財団会長

 松本 晃氏 カルビー会長兼CEO

 樋口武男氏 大和ハウス工業会長・CEO

 但木敬一氏 弁護士、元検事総長

 冨山和彦氏 経営共創基盤(IGPI)CEO

 松井忠三氏 松井オフィス代表、良品計画名誉顧問

 森口隆宏氏 JPモルガン証券シニアアドバイザー

 ビル・トッテン氏 アシスト会長

 丹羽宇一郎氏 伊藤忠商事元社長

 宮内義彦氏 オリックス シニア・チェアマン

 金成憲道氏 ドイツ証券会長

 岩沙弘道氏 三井不動産会長

 

 

どうでしょうこの納得せざるを得ない面々。

 

個人的な感覚を申し上げますと、企業経営者モノというとついつい「伝説の創業者」とか「革新的な成功者」とかの逸話に目が向いてしまいますが、「よく知られた現実の大組織で、上司部下お客様取引先株主などなど多くの人々から支持を集めて頂点まで上り詰めた」、いわゆる出世レースの勝者的人物の地に足の着いたお言葉も勉強になるものだと思っています。

 

あんまり派手さはないですし、出世した人というと通常どうしても距離を置きたい本能的反応をしてしまいがちではあるのですけれども。

 

やっぱり落ち着いて考えたら、こうした方々は純粋な実力の裏打ちあってこそ高みに至っている訳ですし、大半の人同様に「元は組織の一兵卒」からキャリアを始めている訳ですから、何かと参考にもなるんですよね。

突き抜けた個性というより、キャリアを通じて得た集合知が結晶化したかのような判断力・バランス感が実に魅力的です。

 

 

 

 

対談では、社外取締役や株主や雇用や後継者選びや社会的責任などのテーマについて、経営者方と牛島信さんがそれぞれ個性的な意見を仰っていてとてもインタラクティブでした。

企業の意義を「雇用」に求める牛島信さんの一貫したスタンスがいいんですよ。

 

 

どの経営者の方のお話も面白いので多くの方に目を通していただきたいのですが、私の好みは伊藤忠商事の元社長である「丹羽宇一郎」さんのお言葉遣い。

経営者は最大の資産である人を大事にして、人をどう育成していくかを考えなければいけません。経営者は公人として、その振る舞いが社員を含めたすべてのステークホルダーに見られているという意識を持つ必要があります。

社員は社長の前に立つときは演技をします。一方、社員からは社長の背中がいつも見えている。正面の顔は演技ができますが、背中は演技が出来ません。日常の振る舞いなんです。「クリーン」「オネスト「ビューティフル」は、経営者の三大原則です。

現在、コーポレートガバナンス・コードが叫ばれているのは、アメリカ式に従っていればいいという考えからきていて、積極的なものではないと感じます。「知の衰退」と言ってもいい。コーポレートガバナンス・コードについても、肯定的な意見ばかりが採り上げられているのではないかと感じています。

このままならいずれ日本と日本企業は駄目になります。コーポレートガバナンス・コードもきちんと検証していく必要がある。経営は、結果がすべてです。コーポレートガバナンス・コードはデータで検証されていない。この点が大きな問題です。

 

 

また、元検事総長で、さいきんでは相撲の暴力問題再発防止検討委員長も務める「但木敬一」さんの次のお言葉にも深く首肯いたしました。

日本人は小集団の利益と大きな集団の利益を比較したとき、小集団の利益を優先する傾向があるんです。その一例として、談合があります。今、談合してほしいなんて考える経営者なんていない。

ところが、目の前の小さな仕事、自分の属する課や部の利益を会社全体の利益よりも優先してしまうことがあります。日本でコンプライアンスを考えるなら、この点をクリアできるかがポイントです。

今は外国人主体で市場が動いていて、国内企業の株式保有率を見ても30%は外国のファンドが持っています。そうなると、日本企業はグローバルな視点で行動しなければならないのは当たり前です。

ただ、ここで工夫しなければならない。大昔、日本は中国から律令制度を取り入れました。しかし、同じく古代中国の代表的な制度である科挙制度、宦官制度は取り入れませんでした。それは日本の風土に合わないからです。ガバナンスには取り組まなければなりませんが、一方で日本的な特性をなくさずにどうやって生き残っていくかが大事なんです。ただ、外国が教えてくれることもあります。

 

 

面白いでしょう。

コーポレートガバナンスについて扱う本なのに、「海外や政府の言う通りにコーポレートガバナンス・コードを諾々と受け入れるのはアホである」と言わんばかりなお言葉が次々と出てまいりますよ。

 

その上で、「自社にとって、日本社会にとって、あるべきガバナンスのあり方とは」ということをご自身の頭でトコトン考えているのが伝わってくるのが素晴らしいのです。

 

 

コーポレートガバナンスをテーマにしつつも、人の上に立つものかくあるべし、万事に通じる姿勢を学べる対談かと思います。

 

こういう点でもビジネスパーソンには広くおすすめしたい本ですよ。

どの経営者の方々も魅力的ですし、それぞれ違いもありますし、読者一人ひとりが自分の肌に合う経営センスを発見できるのではないでしょうか。

 

 

 

こうした名経営者方のマインドがしっかりと次世代に受け継がれて、これからも日本経済が力強く発展していきますように。

本の中でも言及されていますが、株式会社というのは人類の英知のひとつで、世の中に偉大な商品やサービスをもたらし、多くの雇用と暮らしを支えている存在ですからね。

企業が健康でないと世の中も健康になれないというものです。

 

 

 

「映画マイ・インターンに見る起業とコーポレートガバナンス」ナンシー・マイヤーズ監督

 

マイ・インターン」という映画を観てみたらとても面白かったうえに「最近っぽい起業とコーポレートガバナンスの感覚」をサラッと実感できていい映画だなあとかんたんしました。

 

wwws.warnerbros.co.jp

 

 

 

 

 

以下、ネタバレを含みますのでご留意ください。

 

 

おおまかなあらすじとしては、Webで服を売る先進的な急成長企業が社会貢献アピール目的でお年寄りのインターンを募ってみたところ、かつて電話帳製作会社で働いていたという70歳のロバート・デ・ニーロさんが応募してきたような次第になります。

美人で有能な社長のアン・ハサウェイさん付きの雑用係としてロバート・デ・ニーロさんが配置されて、しばらくは何の仕事もなくヒマしていたんですが、徐々に穏やかで誠実でスマートな人柄とパフォーマンスが評価されてアン・ハサウェイさんたちの信頼を得ていく……ちゃっかり会社のマッサージ師を口説き落として彼女までゲットしてしまう……という話。

 

ロバート・デ・ニーロさんが穏やかでキュートで有能なお爺ちゃんという、ちょっと男性陣はみんなこれ見習った方がいいんじゃないかというくらい魅力的な存在に描かれておりますので、そういう意味ではリアリティに欠けるんですけれども。

 

「職場にこんなサポーターがいてくれたらいいのになあ……」とふん詰まった気持ちを抱えている働く女性たちにとってはたとえ幻想であってもいっときの安寧に浸らせていただけるありがたい映画になっているのですよ。

仕事と家庭の両立に苦労してはる女性は素直に楽しむのが吉かと存じます。

一方でサラリーマン諸氏はこういう映画を観て定年退職後のライフプランを鮮やかに具体化いたしましょう。

 

 

 

 

 

映画の見どころは、いまほど申し上げたロバート・デ・ニーロさんのシニアな魅力と、ラストシーンで胸の前で拳を握りしめながら涙ぐんでいるアン・ハサウェイさんの圧倒的なかわいさなんですが、個人的にはもう一点、「今日的な成功した起業家あるある……企業の成長ステージに合わせた経営体制の構築」という現実的な課題を分かりやすく視聴者にお伝えいただける点も見逃せないなと思いました。

 

 

と申しますのも、この映画の舞台となる企業はアン・ハサウェイさんが短期間でゼロから築き上げたんですが、成長に組織が追いついておらず、アン・ハサウェイさんの超人的な才覚・努力でなんとか組織が回っている状況でございまして。

創業者頼みの組織力のまま、先に会社の規模だけがどんどんデカくなってしまっているというステータス、これってヤバいですよね。

 

起業直後に求められる能力……ビジネスの仕組みを創り出す段階と、組織拡大後に求められる能力……仕組みの洗練と権限・組織のデザインが求められる段階。

創業者のトップがどっちも上手いことできるケースは実際のところ稀なのです。

 

起業して、組織の成長段階に合わせて創業者もまた成長していかねば、部下を育てていかねばならないのですが……。

 

アン・ハサウェイさんもそこんところでやはりつまずいている模様です。

 

 

ほいで、アン・ハサウェイさんの右腕っぽい部下が遠慮気味に投資家からのメッセージを伝えてくるんですよ。

 

アン・ハサウェイさんは実務に専念して、経営は外からCEOを招聘すべし」

 

という。

 

 

この辺の相場観はさすがアメリカという感じもするんですが、いまの世の中はだんだん社長というものが「創業者」や「出世レースの果て」というものだけではなくなってきていて、「いろんな会社を渡り歩く経営のプロ」という人材もひとつの有力な候補になってきているんですね。

 

しかも、これはまさにアメリカ的なのですが、「社長を選ぶのは現社長ではなく、株主(投資家)……正確に言えば株主の信認を得た社外取締役たちである」というね。

 

どれだけアン・ハサウェイさんが有能であっても経営のプロじゃないでしょ、だったら外からCEOを呼んできた方が組織も上手く回るし株価も上がるよね……というド正論を、彼女の気持ちなんてお構いなしに投資家さんたちは仰ってくるのであります。

 

こんなんゼロから会社を育て上げてきた創業者からしたら憤懣やるかたないですよね。

 

映画の中ではこんな重たい経営課題(+旦那の浮気)を背負ったアン・ハサウェイさんが、ロバート・デ・ニーロさんのあたたかなサポートを受けながらなんとか課題を一つひとつ乗り越えていくような美しい展開なんですけれども。

その難題の一つとして「投資家からのCEO交代プレッシャー」が採用されているのがたいへん現代的でアメリカ的でいいなあと思ったのです。

 

 

なにがいいなあって、やっぱりアメリカ人であってもいきなり外からCEO連れてこられるのはすんなり受け止められない、消化できない、超ストレスフル、というのは変わらないんだなというのが(笑)。

 

日本よりはるかに進んだ(もしかしたら行き過ぎた)ガバナンスの仕組みを持っていても、中で働いている人間の気持ちはあまり日本人と変わらないんだな、そりゃそうだにんげんだものと共感できたのがこの映画のサブメロディ的によかったんでございます。

 

 

さらに良かったのが、アン・ハサウェイさんが自分の会社の服を自分で注文して、届いた品の梱包のイケてなさをチェックして、会社の物流センターに直行して現場のスタッフさんたちに改善の指示を手本見せながらやっているところ。

しかも彼女の説明がハートフルだからか、現場のスタッフさんたちもモチベーション上がって笑顔で従っているところ。

 

作中でロバート・デ・ニーロさんにも称賛されていた場面なんですが、こんな細部にまで心を込めた仕事をしているアン・ハサウェイさんの姿はシンプルに美しいです。

ジェンダーどうこうでなく、やっぱり一仕事人として頑張っている人が報われてほしいなあという気持ちになりました。

 

 

 

長々と小難しいことを書きましたが、映画はコメディタッチのライトな演出ですから大変観やすい内容になっています。

ハリウッド系でたまにはいい話が観たい、あんまり重たい話ではなく、というニーズにぴったりですよ。

 

 

邦画洋画を問わず、お仕事がんばっている人を勇気づけるような作品がこれからも定期的に登場してくださいますように。

 

 

 

「古本屋台」Q.B.B……作:久住昌之、画:久住卓也(集英社)

 

兄弟ユニット「Q.B.B」の漫画「古本屋台」が特定の層にだけめっちゃ突き刺さる作品になっていてかんたんしました。

 

古本屋台| Q.B.B./久住 昌之/久住 卓也| まんが単行本|BOOKNAVI|集英社

 

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原作が久住昌之さんで、作画が弟の久住卓也さんになります。

久住昌之さんはいまやすっかり有名人ですが、テレビ的な明るい世界だけでなく、いまもこうしたニッチなサブカルチャーな世界でも素晴らしい仕事をされているのが本当にすごいですね。

 

 

内容としましては、タイトル通り「古本の屋台」……基本は古本屋なんだけど、1杯だけ白波のお湯割り/ロックを100円で飲むことも可能……というファンタジーなお店を舞台にした情景を描いている作品になります。

 

1杯しか飲めないお酒をゆーっくり飲みながら、気難しいオヤジさんや常連客と古本などの話題を語り合う……ような話が2ページ1話でたくさん収められておりますよ。

オヤジの人物造形が最高でしてね、はしゃぎ過ぎると「帰んな」とか言われて追い払われてしまうんですが、その独特の緊張感もまた楽しそうでいいんです。

他の日に行ってみたらオヤジがバイオリン弾いていたり、ときにはオヤジの方が酔っぱらってしまっていたり、屁をこいたりしていてね、パーフェクトに近いけどパーフェクト過ぎないオヤジの存在感にみんな引き寄せられてしまう訳です。

 

 

古本を屋台で……しかも飲み屋機能、サークル機能付き……となったらそれはもう特定層の願望そのものですよ。

よくこんなファンタジーを漫画にしてしまったものだ。

 

中には古本屋台のオヤジがふらっと消えたと思ったら、どこぞのお金持ちに誘われて浅間高原の別荘客相手に屋台出してきたみたいな話があったりして。

小学生の「学校に侵入してきた悪者をボクが格好良くやっつける」みたいな妄想の、これぞまさしく中高齢インキャ版やなあ! とでもいうべき愛おしさに満ちてございます。

 

 

オヤジ以外の話でも、主人公のおっさんが旅に出て

「おそい夏 海辺の安ホテルにひとり逗留…」

「厳選してきた五冊の文庫本を読みふける二泊三日…」

「長年の夢 遂に実現!!」 

からの

「って明日の朝チェックアウトだけど一冊も読んじゃいないや
 ダラダラしただけで…」

「あー楽」

 

みたいな空気感の話が多くてすごい共感できるんです。

これぞ分かりみが深いというやつですね。

 

 

ラスト間近のエピソードで、主人公のおっさんが古本屋台のオヤジの今後について夜中に一人考え始めてしまって寝付けなくなって、

「どうするつもりだろ…」

「この先…」

「俺が考えても仕方ないんだけど」

 

(目が冴えちゃった)

(…俺が)

(継ぐか)

(なんてな…)

 

と一人で夜酒やり始めるのもいいんですよ。

実にいい。

ほんまいい。

 

 

古本屋台というだけあっていかにも古本ファンが好きそうな本がたくさん出てきますが(つげ義春さんネタが多かったり吉村昭さんの本も出ていたりしてちょっと嬉しい)、それ以上に元文学青年が老後に渇望してしまうような“場”を具現化しているという点が秀逸な作品だと思います。

馴れ合いになり過ぎないで、一定の緊張感や距離感や秘密感が保たれているところまで含めて。

 

 

私は人見知りなので古本好きな人たちの集まり(古本屋に行くとよく店主と常連が楽し気に話していたりしますよね、周りの一見客にも気軽に声をかけたりしながら)には入っていけない方なんですが、入ったら入ったですごく楽しいんだろうなあと思ってしまいました。

 

出会いって、人と人との一対一な出会いも大事ですけど、楽しい“場”との出会いも大切ですよね。

たぶんボケ防止とか幸せな老後とかのためにも超重要だと思うのです。

 

 

孤独な大人たちにこそよい縁がありますように。

 

 

 

 

 

信長の野望・大志「長宗我部元親言行録」

 

大志の長宗我部家が能力も顔グラも優遇されていてめっちゃ強いのにストーリーは中途半端なところで終わっていてかんたんしました。

201Xといい、コーエー社は長宗我部家の物語づくりに苦戦しているのでしょうか。

 

 

大志ver.の長宗我部元親さん。いつもながら超強いし顔グラも渋くて素敵です。

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こちらは志「西海の主」。以前も触れましたが極めて優秀なオススメ志です。

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こちらはパパ親こと国親さん。やはり能力も志も優遇されています。

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元親さんの優秀な弟たち。能力も顔グラも上等な扱いです。

ずっと顔グラが変わっていない実休さん冬康さんは泣いていいと思います。

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ここからは元親さんの言行録を紹介して参ります。

 

 

1560年川中島シナリオなどで元親さんを連れて出陣すると発生する姫若子イベント。

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有名な逸話ですね。

この段階では家中も元親さんの器量に疑いを持っていたような演出になっています。

貼りませんが合間合間に入る秦泉寺さんのぼやきが面白いですよ。
秦泉寺さんもそのまま元親さんとずっと上手くやっていければよかったんですけどね。

 

 

 

続いて「天罰恐るるに足らず」。1567年天下布武で開始するといいと思います。

条件は本山家・安芸家を滅ぼすだけ。兵力は互角でも、元親さんが強いのでかんたんに決戦勝利可能です。

ちなみに残りの言行録も全部この流れで見ることができますよ。

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一条家やっちまおうぜ! 的なイベントになります。

会話の内容よりも、政治家モードの元親さんの姿のベーシックな格好良さに目がいってしまいますね。

 

 

 

こうして一条家に宣戦布告する長宗我部家。

一条家の城を残りひとつにすると気の毒な一条兼定さんが追放されます。

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そして、その1か月後には大友宗麟さんの支援を受けて復讐戦を仕掛けてきはります。

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ほんま、大志では大友宗麟さんの外交達者な一面が存分に味わえていいですね。

 

 

いよいよ四万十川の戦いです。

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宗麟さんの宣戦セリフは楽しいんですが

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あっさり蹴散らされて捕縛される兼定さん。

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宗麟さんも「マジか」という気持ちだったんでしょうか。
それともこの結果も含めて宗麟さんの想定内だったんでしょうかね。

戸次川の戦い前には元親さんと宗麟さんで思い出話とかしていたりして。

 

 

 

この兼定さん追放と四万十川の戦いの合間には、「名前を書こう」という言行録も発生します。

 

散らかった部屋を見た元親さんが。

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こうした日常の心得的な逸話は楽しいですね。

小早川隆景さんの「急いでいる時ほどゆっくり書け(焦ってミスるな)」とか。

 

 

 

土佐を統一したので、後は信長さんの後見を得て、阿波に襲いかかる流れです。

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まずは信長さんに外交で繋がりをつくります。

 

天下布武」シナリオだと信長さんの侵攻が進んでいなくて、自然体だと距離が遠すぎで外交できないことがあります。
仕方ないので、私は三好家と短期同盟を結んで河内畠山家を滅ぼし畿内に領地を得て、無理やり信長さんとお近づきになりました。

 

発生するイベントは有名な「鳥なき島の蝙蝠」。

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光秀さん大河ドラマ化おめでとうございます。

前半でまさかの進士晴舎さんの息子説が採用されたりしないかなあ(笑)。

 

大志では長宗我部ー明智ラインに触れて本能寺四国政策起因説的な前フリにするのかと思いきや、光秀さんの長宗我部家を見る目が存外冷たくて驚きました。

信親さんに「信」の字(名前の上の字の方が格が高いとされる)を与えることにイラっとしてはりましたし、この大志光秀さんなら長宗我部家のために本能寺を起こすことはなさそうです。

 

 

 

元親さんのラスト言行録は「四国の蓋」。

三好家の白地城を落とすだけなので発生させるのはかんたんです。

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……このイベント自体はいいんですけど、やっぱりここで言行録が終わっているのは尻切れトンボというか打ち切り漫画感というかがございます。

本能寺後の秀吉さんのイベントも収録されていないので、元親さんの対秀吉さんや戸次川がないのはまあ仕方ないんですが。

 

コーエー社の元親さんイベントは「周りは元親さんを舐めている」「でも実は元親さんの器量ってすごいんだぜ」というのが基軸だと思うので、もう少し元親さんが活躍する言行録が充実しないと「実はすごいんだぜ」感が目立たないんですよね。

このままPKで四国征伐と戸次川だけが実装されたら、「実はすごい」感が更に薄れて「やっぱり鳥なき島の蝙蝠やったね」みたいに映ってしまいそうでちょっと不安です。

 

三好家ファンとしては長宗我部家の人気を妬むだけではよくなくて、長宗我部は長宗我部でしっかり評価されていただいて、その長宗我部を苦しめた三好康長さんや十河存保さんもしっかり評価してもらうというのがおいしいストーリーだと思っています。
(個人的な意見です)

 

 

 

なんにせよ、PKで長宗我部家の物語に魅力的な結末が付加されますように。

哀しい内容なのは仕方なくても、美しさや共感が残るようなのが見たいです。