肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「エンダーリリーズ 攻略した感想➁ 奥義、レリック、ウルヴイケメン説等」(Binary Haze Interactive)

 

「ENDER LILIES QUIETUS OF THE KNIGHTS(エンダーリリーズ、あるいはエンダーリリィズ)」が面白すぎてかんたんしたので、高難易度周回をもう1周、更に新規スタートで1周クリアしてみました。

 

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動かすのが楽しくて、マップを歩くたびに発見があって、BGMと雰囲気がめちゃくちゃ良くて油断するとすぐ死ぬゲーム本当に好き。

 

周回していると砦と王城のBGMや雰囲気がどんどん好きになったり、シーグリッド戦のBGM「Rosary」やシルヴァ戦の「Bible」の良さを再認識できたりして幸せです。

 

 

 

3週目からは奥義使用を自分の中で解禁することにしました。

この手の高難易度アクションゲームでは、奥義に頼り過ぎると攻略パターンづくりが雑になったりもしますので、1-2週目プレイでは使用を控えていたのです。

 

 

で、各キャラの奥義を試してみたら……

奥義、強いし格好いいし、使うと更に楽しくなりますね。

 

 

各キャラ奥義の使用感を軽く振り返りますと。

 

黒衣の騎士さん。

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正面の敵をブッた斬る技です。

威力、使い勝手ともに良好で極めて使いやすいですね。

黒衣の騎士さんはお人柄もスキルも奥義もまっすぐ誠実なのが素敵。

 

 

 

ゲルロッドさん。

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絶叫して周囲の敵全体にダメージを与えます。

威力は控えめなので、ボス戦というより雑魚敵に囲まれた時に輝く感じ。本人通常スキルのスキの多さを上手くカバーしていて噛み合っています。

吹き飛ばし効果がついているっぽいので、空中の敵をまとめて落とせるのが便利。

 

 

 

イレイェンさん。

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周囲に高威力の魔法弾をバラまきます。シューティングのボム感がありますね。

一発ずつの威力がやたら高く、接近して数発当てると硬い敵も瞬殺。

ただ、個人的には「接近してまとめて当てる」にこだわり過ぎるとアクションの立ち回りが不安定になる気もするので、上級者向けの奥義かなとも思います。

なお、発動するとリリィさんがお祈りポーズするのがかわいいです。

 

 

 

シルヴァさん。

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周囲に魔法の火柱的なものを上げて、多段ヒットさせます。

雑魚戦でもボス戦でも、困ったらぶっ放せる感じ。

演出=無敵時間が長いので、ボス戦で使用すると頭を落ち着かせる時間が得られていいですね。

 

 

 

ウルヴさん。

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正面を大爪でブッた斬る、黒衣の騎士さんと似たような使い勝手の奥義です。

威力は黒衣の騎士さんに劣る気がしますが、発動スピードだとか奥義ゲージの回収だとかが優れている感じがあり、通常攻撃に混ぜて気軽に使っていけます。

個人的には、高難易度アクションゲームにおいて、クセやスキが少なく通常攻撃の攻略パターンにそのまま混ぜ込めるというのは大きな強みだと思うんですよね。

 

 

 

ヘニールさん。

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短剣を前方に連発します。全部当てると結構な威力。

悪魔城シリーズのサウザンドエッジですとか、烈海王のドイル戦ですとかが好きな私のようなプレイヤーにはグッとくるものがあります。

 

 

 

ユリウスさん。

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前方にビームをブッ放します。

分かりやすい技なので使い勝手がよく、威力面も問題なし。ボス戦でも雑魚戦でも活躍します。

技の見た目がいい上に、リリィさんが珍しく格好いいキメポーズをしてくれるのもかわいらしくてよございますね。

 

 

 

ファーデンさん。

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周囲を揺らした後、彼女さんを召喚して敵の足元から巨大爪で攻撃する技です。

当てるのがかんたんな上、雑なほど威力が高い。

空中の敵には当たりませんが、それを補って余りある威力です。

ファーデンさんは通常技も複数発当てると強いキャラですし、この奥義もありますので、スキルセットの中にとりあえず入れておくのも手だと思います。

こういう恋人を自慢するような奥義を使う点も含め、ファーデンさんの周囲の目の気にしなさだとか美意識のズレだとかがイレイェンさんたちをイラっとさせるのでしょう。

 

 

 

奥義は威力に目が向きがちですが、使い勝手まで含めると各キャラで極端な差はない印象です。お好みのキャラの奥義をぜひ活用してみてくださいませ。

 

 

 

 

続いて、合計4周プレイした結果、お気に入りのスキルセットは次の通りとなりました。(個人の感想です)

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セット①はウルヴさん、花の魔女さん、シーグリッドさん。

ウルヴさんはリーチが短いものの、スキの少なさ、タメ攻撃の楽しさ・気持ちよさが優れていて大好きになりました。自分でスキの大きさを選べたり溜めたりできたりするプレイ、大人っぽくてよいと思いませんか。

加えて、花の魔女さんとシーグリッドさんは耐空性をフォローできる上、二人でがりがりとスタン値を削ってくれるのでウルヴさんとともに相手を重厚にたたき伏せることができて気持ちいいです。

 

セット➁はヘニールさんに、首なしの騎士さん、隠れ潜む実験体さん。

こっちのセットは遠距離攻撃&防御カウンター型で、セット①が苦手な遠距離の敵を攻撃したり、敵に囲まれた時にカウンターして反撃の起点にしたりする役割です。

遠距離役のメインはスキの少ないヘニールさんか、追尾弾が便利なイレイェンさんか、あるいは中距離キャラのユリウスさんかで悩みましたが、チクチク攻撃が楽しいのでいったんヘニールさんを採用しています。

 

 

 

 

その上で、選択したレリックは次の品々。

周回した結果、現在は攻撃型の選択にしていますが、初めてプレイするときは防御型・回復型の組み合わせの方がいいと思います。敵の攻撃をあまり喰らわなくなったら攻撃型に切り替えていく感じがいいんじゃないでしょうか。

 

 

個人的に外せないのは機動力。

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攻撃力を底上げしてくれる品々。

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敵をよろめかせやすくなる王冠。

ユリウスさんに見られたらもう一回捨てられそう。

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攻撃ヒット数に応じて回復できる不死騎士の証。

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回復系レリックはこれ一本で。

ウルヴさん・ヘニールさんと相性が良いのも大きいです。

 

 

 

奥義系のレリック。

奥義を使うようになると、これらレリックの価値もハネ上がりました。

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古き民 vs 魔の種族の顛末も気になりますね。

エンダーリリーズ、前日談を描いた続編も期待したいところです。リコリースさん主役の、切り裂く巫女プレイが楽しめるようなやつ。

 

 

スキルやレリックも、極端な有利不利はないので、気に入ったやつを好きに選んでいけるゲームバランスが嬉しいです。

 

 

 

 

さて、エンダーリリーズ、マップを歩いていると新たな気づきや発見に出会えるのも大きな魅力ですね。

 

例えばウルヴさんのお部屋には、泉の白巫女が描いたと思わしきウルヴさん肖像画が。

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よく見ると、赤髪のイケメンのような印象です。

仮面を外すとウルヴさんイケメンなんでしょうか。風流を解するイケメン残虐超人……これは人気が出るやつ……!

現ウルヴさんの背中の赤いやつ、朽ちたマントだと思っていたのですが、これは赤髪ロン毛だったんですね。

 

 

 

泉の白巫女によるお絵描きシリーズですと、

親友のイレイェンさんのお部屋にも肖像画があったり、

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自室にはリリィズの絵が飾ってあったりするのにも心動かされます。

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心動かされたという点では、シルヴァさんから妹シーグリッドさんへの贈り物。

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「妹は一度もそれを身につけることはなかった」ということで、姉妹関係本当によくなかったんだな、そもそもシスターに贈るにはデザインが派手過ぎまいか、等と思っていたんですが。

 

 

あらためて新規スタートして、シーグリッドさんの私室らしき場所、ベッドの上でこの羽飾りを発見してみると。

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身につけはしなかったけど、シーグリッドさんはいつも就寝時に羽飾りを眺めてお姉ちゃんのことを思い出したりしていたんじゃなかんべか、等と想像できて尊い気持ちになりました。

誰かの王冠とは扱いが違うぜ。

 

 

 

新規スタートだと、リリィさんの懸命な滑り込みに再会できるのもいいですね。

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ほか、歩いていて気になったものと言えば。

 

いかがわしいきのこが天井から生えていたり。

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雑魚敵には珍しく、金魚さんが水陸両用だったり。

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ミーリエルさん、どうやら蝶から芋虫に逆変態した様子だったり。

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もしかしたら、リリィさんがファーデンさんに迫ったのを感じて、今まさにさなぎから孵化したところだったのかもしれない。

 

 

 

プレイするたびに、新たな発見とか、新たな攻略パターンとかに出会えて、まだまだやりつくした感がないですね。

敵の攻撃力2倍モードとかで、もう1周してみようかなあ。

 

そういう気持ちになれるくらい、エンダーリリーズは楽しいゲームです。

 

値段も安いことですし、年末年始に手に取る方が増えて、メトロイドヴァニアなゲームの楽しさに気づく方が増えていきますように。

 

 

 

 

「呪われた部分 全般経済学試論*蕩尽 感想 溜めすぎは良くない、適度に出して世界平和」ジョルジュ・バタイユさん / 訳:酒井健さん(ちくま学芸文庫)

 

バタイユさんの経済? 書「呪われた部分」が、難解ながらも個性ある文章展開に読み惹かれ、なおかつ通常の哲学や経済学や各種オピニオンとはちょっと違った視点を与えてくれる楽しい内容で、かんたんしました。

バタイユさん、「エロい」ということしか知りませんでしたが、読んでみるとめっちゃ面白いですね。他の本も買ってみようと思います。

 

www.chikumashobo.co.jp

 

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バタイユさんは1897~1962年を生きた思想家でして、この本は1949年に刊行されたものとなります。

時代的な古さがある上に難解な文章ではあるのですが、酒井健さんの邦訳・解説がめちゃくちゃ良質で、思ったよりは取っつきやすくて助かりました。

 

 

本の概要と目次は次の通りです。

「“全般経済学”とは、生産よりも富の“消費”(つまり“蕩尽”)のほうを、重要な対象とする経済学のことである。」経済合理性の範疇に収まらない蕩尽・祝祭・宗教・エロス・芸術は、人間の喜びの本質が有用性の原理に拠って立つ生産・蓄積過程にあるのではなく、消費・蕩尽にあることを示す。本書は人間が不可避的に内包せざるを得なかった「過剰」を考察の対象にして人間存在の根源に迫り、生を真に充実させるために、蕩尽・神聖・恍惚に代表されるこの「呪われた部分」の再考を鋭く強く促す。意識の「コペルニクス的転回」に賭けたバタイユ作品の新訳。巻末に先駆的重要論文「消費の概念」を収録。

 

第1部 理論の導入
第2部 歴史のデータ1 蕩尽の社会
第3部 歴史のデータ2 軍事企画社会と宗教企画社会
第4部 歴史のデータ3 産業社会
第5部 現代のデータ
補遺 消費の概念

 

 

第1部が主論部(主に言いたいこと)になっていまして、その時点でけっこう難しいので、第2部以降に入る前に補遺「消費の概念」を先に読んだ方がかえって分かりやすいかもしれないです。

 

 

バタイユさんの主な主張としては、

  • 人間は合理性や有用性のために生きているのではない。むしろ、本来はエロいことや宗教やアートやエロいこと等、気持ちよくなるため(至高性のため)に生きているのである。

  • 合理性や有用性だけを考えて富や資本の蓄積、成長に向けた投資ばかりをし続けると、人間社会にエネルギーが溜まりすぎてしまって、戦争のようなエネルギーの「消費(蕩尽)」が生じてしまう。

  • 普通の経済学は個人や企業や国家等の「個別の部分」しか捉えられていないが、もっと人間全体での「全般的」な視点を捉えた議論をするべきだ。

  • 歴史を紐解けば、アステカの供犠、インディアンのポトラッチ(贈与文化)、カトリックの大聖堂建設等々、人間は上手くエネルギーを消費(蕩尽)することができていた。
    しかし、規律的で真面目なイスラム教やプロテスタント、資本主義や社会主義が普及してからは、エネルギーを蓄積して戦争や投資をすることばかりに目が向けられるようになってしまった。

  • (1949年当時)このままだとアメリカとソ連で第3次世界大戦が勃発しかねない。みんなもっと消費(蕩尽)に目を向けようぜ。そろそろ「消費(蕩尽)はよくない」という呪いを解くことにしようぜ!
    その点、アメリカの「マーシャル・プラン」はいいね。このプランも今後どうなっていくのか分からないけど、アメリカ一国の国益なんて考えないで、「全般的」な視点に立って見返りを求めずひたすらマネーをつぎ込み続けると人類にとっていいと思うよ。

 

という感じでしょうか。(私の素人意訳です)

「消費」というワードは、現代だと「浪費」でもいいかもしれません。

 

直言はしていないんですけど、バタイユさんが第3次世界大戦の可能性を憂いている点、世界平和を祈っている点が文脈から伝わってくるのが好感度高いんですよ。

 

 

なお、この本の内容を突き詰めると「溜めすぎは良くない」「溜めるために生きてるんじゃないだろ?」「四の五の言わずにセックスとマスターベーションに励もうぜ!」と言われているような気持ちにもなります。

実は経済とか社会思想とかの皮をかぶった猥談なんじゃないか。(私の素人意訳です)

 

 

 

素朴な感想としましては、なかなか日ごろ意識しない視線から人類社会を論じてくれているので「シンプルに面白い」ですし、

  • 人間は必ずしもゲーム理論的に動く訳ではない。
    行動経済学だとか消費者心理だとかナラティブだとかに目を向けるべきだ。

  • 各企業が生き残りのために資本を蓄積し、コストや人件費を抑制することは正しい。しかし、社会全体で見れば、コストや人件費が減らされたことで消費や投資が弱体化し、結果として景気全体を押し下げてしまう「合成の無謬」が生じてしまう。

  • イケてるビジネスパーソンとして、単純な合理性の追求はいずれAIの仕事なのだから、もっとアートだとか社会貢献だとかのアンテナを磨こうぜ。

 

等々の最近のオピニオン、あるいは富をため込んでいるお金持ちへの単純な反発心、にも通じる気がします。

 

 

万人ウケするような本ではないと思いますが、人間という生きものに興味がある方、ちょっと視点を変えたオピニオンに触れてみたい方、レベルの高いエロスを追及している方などにはいいんじゃないかなあ。

なお、ガチ経済学の人が論争するつもりでこの本を読むことはおすすめしません笑。

 

 

 

わたしの素人感想はこの辺にして、本文(補遺含む)の中から印象に残った文章を少し引用しておきます。

高尚とか有用性とかの視点ではなく、フレーズの面白さで選んでいます。

いやあバタイユさんの文章面白いわ。

 

時間のなかの性行為は空間のなかの虎と同じになる

 

明日への配慮が取り除かれるとすぐに、この無益な蕩尽が、私を快適にするものになる

 

生産活動、仕事場あるいはパンにまさって、無為、ピラミッド、アルコールは、資源を使用しながら、その資源を見返りなしに――利益なしに――蕩尽するという利点を持っている。それら無為、ピラミッド、アルコールは単純に我々に快意を与える。それらは必要性なき選択に応えており、じっさい我々はそれらを必要のないまま選んでいるのだ。

 

一人の人間にとって大切なのは一個の物であるだけでなく、至高に存在することでもある

 

いったい誰が、芸術作品や詩を消滅させるなどと語るだろうか。

 

無意識において宝石は、排泄物と同様に、傷口から流れでる呪われた物質なのである。

 

精神分析が描きだすような無意識の形態において贈与は、排泄行為を象徴している。そして排泄行為は、肛門性愛とサディズムの根本的結合に応じて死に関係している

 

 

 

あと、訳者の酒井健さんが、日本の中世文化が好きそうで好き。

以下は訳者あとがきより。

我々もまた古都を訪れて中世の神社や仏閣、庭園や木造を眺めては、しみじみとした思いに浸る。これも余剰が巧みに蕩尽されて、宗派の教義など超えた生の雰囲気が、奥深い境内から、高木の木立から、大胆な襖絵から、静謐な池の水面から、今なお醸し出されているからなのだろう。現代とはまったく違う価値観、まったく異なる経済感覚が時代を支配していたのだ。しかしそれでも現代の我々は大切な何かを感受できる。内奥において中世の人々とどこかで交わることができる。

 

室町時代の庭園をそぞろ歩きながら新緑の樹葉の豊饒で透明な気配におそわれたときに、あるいはまた、愛する相手の熱い呼気を肌に浴び、高まる心の動きをじかに感じたときに、それが自分の内部の生の在りようだと意識してほしい。バタイユはそう願っている。

 

めっちゃ名文だと思います。

いちど公開ゼミでも聴いてみたいものですね。

 

 

 

年末年始、時には合理性や有用性から離れて物思いに耽ってみるのもいいですね。

 

個人も企業も政府も外交関係も、皆さま溜めすぎることなく適度にエクスタシーな内奥に至ることができますように。

 

 

「エロティシズム 感想 エロと神秘の相似性」ジョルジュ・バタイユさん / 訳:酒井健さん(ちくま学芸文庫) - 肝胆ブログ

 

 

 

小説「陰陽師 太極ノ巻 感想 職場恋愛的匂わせの凄み」夢枕獏さん(文春文庫)

 

小説「陰陽師 太極ノ巻」を読んでいましたら、安倍晴明さんの人前での源博雅さんへの態度が職場恋愛的匂わせ・逆匂わせに富み過ぎていて、凄みにかんたんしました。

 

books.bunshun.jp

 

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以下、ネタバレはほとんど含みません。

 

 

 

「太極ノ巻」に収められているお話は次の通りです。

 

  • 二百六十二匹の黄金虫
    虫愛ずる露子姫再登場。
    夜な夜な現れる二百六十二匹の黄金虫の正体を追うお話。
    「二百六十二」でピンときた方もいるかもしれません。
    幻想的で美しい内容です。

  • 鬼小槌
    蘆屋道満さん登場。
    「猿叫」という謎の病の謎を追うお話。
    薩摩の示現流は関係ありません。
    源博雅さんが雪を見ながら白比丘尼さんを思い出すシーンがとても好き。

  • 棗坊主
    比叡山に現れた謎の僧の正体を追うお話。
    オープニングの安倍晴明さんと源博雅さんの会話が好き。

  • 東国より上る人、鬼にあうこと
    東国から上京してきた人が鬼に襲われたので助けよう、というお話。
    久しぶりにホラーテイストです。


  • 有名な妖怪「サトリ」と対決するお話。
    安倍晴明さんやっぱパネェ~となれます。

  • 針魔童子
    蘆屋道満さん登場。
    蜂のような虫に襲われる人が何人も出てきまして、その事件を解決しようというお話。
    ここでのオープニング会話も好き。

 

いずれも手堅くまとまっておりまして、強烈なインパクトだったり、蘆屋道満さんとの派手な対決だったりという要素はありませんが、味わい深いお話をかろやかに楽しめる一冊になっていますので満足度は高い感じです。

 

 

 

個人的に面白かったのが、安倍晴明さんの、人前での源博雅さんへの態度。

 

 

天丼気味に、二編続いて

「いえ、博雅様。わかっていると申しあげたのではありません。見当はつけていると申しあげたのです」

他人がいる時、博雅に対する晴明の口のきき方は丁寧なものになる。

 

「ごらん下され、博雅さま」

晴明が言った。

他人がいる時には、博雅に対する晴明の口調は丁寧になる。

 

と、日頃はフランクに仲良く喋っているのに人前では「わたしたち、単なる仕事上の関係しかありませんけど?」みたいな逆匂わせに励む安倍晴明さんがもうなんかズルい。

 

 

 

更に、同じく源博雅さんのことが大好きな蘆屋道満さんを前にしては。

「博雅は、なかなかに酒が早うござりますれば――」

「負けぬように飲む」

道満が笑った。

「おい晴明、それではまるで、おれが酒にいじきたないように聴こえるではないか」

「聴こえたか」

「聴こえた」

 

と、恋のライバルの前では先んじて「わたし、あなたの知らない彼の一面知ってますけど? 何なら目の前で親密さアピールしますけど?」みたいな堂々たる匂わせに励む安倍晴明さんがもうなんかスゴい。

 

 

ヤバくないですか?(語彙力)

 

こんなヤバい安倍晴明さんが、美青年で超実力者という畳みかけ。

本当に陰陽師シリーズは底なし沼だぜひゃっほう。

 

 

 

そういう訳で、読者の期待?にしっかり応えてくれるプロフェッショナルなお仕事っぷりに参るねしてしまった巻でございました。

 

魑魅魍魎うごめく平安京なればこそ、関係性の尊さが激しく引き立ちますね。

もしかしたら魑魅魍魎うごめく闇系大企業を舞台にピュアラブ小説とか書いたら面白いのかもしれない。

 

職場とかサークルとかクラスとかで秘匿性のある関係を楽しんでいる方々が、なにとぞ幸せで清潔なゴールを迎えられますように。

 

 

小説「陰陽師 龍笛ノ巻 感想 最後の"飛仙”がとんでもない」夢枕獏さん(文春文庫) - 肝胆ブログ

絵物語「陰陽師 瘤取り晴明 感想 源博雅無双」文:夢枕獏さん / 絵:村上豊さん(文春文庫) - 肝胆ブログ

 

 

 

 

「地獄たんてい織田信長 クラスメイトは戦国武将!? 感想」作:りょくち真太 / 絵:金林洋(角川つばさ文庫)

 

タイトルのアクが強い児童文学「地獄たんてい織田信長」がアクの強いギャグ&歴史小ネタがまんさいでかんたんしました。

歴史好きのパパママが子どもと一緒に読んであげるといいかもしれない。たぶん。

 

tsubasabunko.jp

 

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内容としましては、

 

小学六年生の男の子「横山情也」さんが、

クラスメイトの歴史好き女の子「果報」さん、

地獄から転校してきた織田信長さん(肖像画立体化)、

同じく地獄から転校してきた豊臣秀吉さん(猿)とともに、

地獄を抜け出して悪事を企む戦国武将3名を追跡する……

 

というお話です。

 

 

内容も絵面もたいへんアクが強くて素敵ですね。

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約200ページで、大人なら20分くらいで読めるくらいの文章量です。

全体的にさいきんの児童文学らしいギャグ&ツッコミ多めの内容ですから、小学生なら中学年くらいから楽しんで読むことができるのではないでしょうか。

イラストも小学生が笑いそうな圧強めでいい感じですね。

テイストとしてはコロコロのマトモくんのような、主人公がツッコミ役で周囲はひたすらボケまくるような感じの作品です。

 

 

 

 

戦国時代の小ネタを散りばめているのも、小学生の歴史趣味への導線になっていていいなあと思います。

 

 

詳しいネタバレはいたしませんが、例えば初めて出会う敵は今川義元さんでして。

 

今川義元さんがノリノリで

「地獄闘法! 寄親寄子制の術!」

 

と怪しい技を繰り出してくださいますし(術の詳細は伏せます)、

 

 

クラスメイトの果報さんも

「あれは上下関係を親子関係に見立てて、今川義元が兵を動員するときとかに使った軍事システムだよ!」

 

 

などと対象年齢を間違ってそうな解説をしてくださるのがウケますね。

 

(ちなみに桶狭間の戦いについて、今川義元さんの上洛説がシレっと否定されていたりもします)

 

 

 

個人的に一番笑ったのは、中盤から後半にかけて、織田信長さんが主人公横山情也さんの見えている地雷を思いきり踏み抜き、離反されてしまうシーン。

 

さいきんネタにされがちな「織田信長さんは家臣や同盟相手の地雷を踏み抜く」を、まさか小学生相手にやってくれるとは。

 

もちろん(史実もそうなのかもしれませんが)信長さんには信長さんなりの深謀遠慮があって地雷を踏み抜いたのであり、最終的には和解・共闘に至るのですけれども。

 

 

 

どんなジャンルも子どもや若者が入ってこないと衰退してしまいますので、こういう最近の研究ネタもある程度取り入れた、楽しい子ども向けコンテンツが出てくるのは喜ばしいことだと思います。

出版業界の中で、児童向け書籍のマーケットは例外的に好調みたいですしね。

 

戦国時代に限らず、歴史ネタを活かしたイケてる児童文学が増えていきますように。

 

 

 

 

「じゃりン子チエ 文庫版23巻 感想 チエちゃん VS 米谷さん」はるき悦巳先生(双葉文庫)

 

じゃりン子チエの文庫版23巻、新キャラの小学生「米谷さん」がまことに傑物でございまして、彼女の存在がチエちゃんやアントニオジュニアやマサルのポテンシャルを更に引き出していてかんたんしました。

 

出木杉さん的な存在がレギュラーキャラの魅力を引き上げてくれる展開いいですよね。

 

www.futabasha.co.jp

 

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23巻に収録されている話は次の通りです。

 

  • 石の首飾り
  • 首飾りの持ち主
  • 転校生のあの子
  • 被害者がいっぱい
  • 首飾りの石が一つ足りない
  • 石の波紋
  • 割れた石の復元
  • 小鉄の荒療治
  • お別れは足を振って
  • 消えた二匹(テツも一緒です)
  • さえない日の耐寒マラソン
  • 第45部、ダイジェスト
  • 走る米谷さん
  • 米谷さんへの手紙
  • 本日 休養日
  • ひょうたん池一周マラソン
  • 和解の日
  • 迷えるロック
  • ロックとの再会
  • 秋田県事件始末①
  • 秋田県事件始末➁
  • 秋田県事件始末③

 

1冊まるごと米谷さんとその飼い猫「ロック」を巡るエピソードになります。

 

チエちゃんのクラスに転校してきた米谷里子さんは、美人で勉強も運動も大得意。彼女と仲良くなりたいチエちゃんだったが、小さな行き違いから一方的にライバル視されてしまう。そして迎えた校内マラソン大会の日、ついに二人の勝負が始まった!

 

 

以下、ネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

米谷さんという転校生は、頭も人柄も運動神経も優秀で、しかも努力家という素晴らしい少女なのですが。

 

彼女が拾った猫「ロック」が、その昔小鉄といろいろありまして。

 

ロックと小鉄・アントニオジュニア、そこにテツが加わり、話がややこしくなって、その余波で米谷さんとチエちゃんが誤解に基づく対立をしてしまう。

 

二人の少女は小学校のマラソン大会で雌雄を決し、アントニオジュニアとお好み焼屋のオッちゃんの尽力もあって無事に和解に至る……

 

 

という長編エピソードでございます。

暴力性やハチャメチャ性は少ないものの、ストーリー展開の味わい良さはさすがはるき悦巳先生やなというクオリティですよ。

 

 

以下、各キャラクターの名台詞を。

 

 

 

テツ&チエちゃん

「……ワシ ボケて来たんかな」

「ボケてて……

 一回もさえたことない内にボケてどぉすんねん」

 

のっけからチエちゃんが辛辣で素敵です笑

 

 

 

米谷さん

「もういいから

 わたしにもロックにも近づかないで」

 

誤解(主にテツのせい)で、チエちゃんと最悪のかたちで出会ってしまう米谷さん。

 

 

 

アントニオジュニア

「気のきかん奴ちゃなぁ

 猫舌ゆう言葉知らんのか

 オレにはサイダーでも出さんかい」

 

テツから熱い茶を出されて。

……サイダー飲める猫というのもたいがいだと思いますが。

 

 

 

チエちゃん&ヒラメちゃん

「そやけど猫のやったことやから

 とにかく米谷さんはなんも知らんと思うよ」

「ほんならちゃんと米谷さんと

 そぉゆう話したほうが」

 

米谷さんとギクシャクするも、チエちゃんの方は誤解やろから……と人柄の良さが出ています。チエちゃんはたまにこういう人間性の清らかさが見えるのがいいですね。

 

 

 

マサル

「トップを走り続ける人間のつらさは

 一ぺんでもトップに立ったことのある

 人間しか分からんのや」

「あかん~~もうあかん~~

 このままやとオレ米谷に殺されてしまう~~」

 

米谷さんにテストで敗れ、ドッジボールではKOさせられ、おおいにショックを受けているマサル

徹夜で勉強する等、本筋と離れたところであがいているマサルもかわいいもんです。

 

 

 

米谷さん

「まぁかわいい猫

 ほんとにかわいいわねぇ

 おしゃれなマフラーまでしちゃって

 なんてかわいいんでしょう」

 

アントニオジュニアをかわいがる米谷さん。

米谷さんは普段クール系の少女ですが、猫に対してはデレてくれるのが魅力的です。

 

 

 

チエちゃん

「あんたそこでそのまま固まって

 お地蔵さんにでもなり」

 

米谷さんとのギクシャクの原因が猫同士の因縁、しかも小鉄が主因らしいと察したチエちゃん。小鉄に対してはどこまでも辛辣な言葉を吐くところに、小鉄との関係の深さがかえって伺えますね。

 

 

 

ロック

「サッちゃん……

 長い間どうもありがとう

 オレ ロックとゆう名前好きでした

 サッちゃんのつけてくれた

 ロックとゆう名前で

 生き返れた気がしました

 本当にありがとう」

 

一方のロックも、米谷さんのもとを去り、小鉄と決着をつけようとします。

米谷さんはなぜロックがいなくなったのか分からず、動揺しまくるのが不憫です。

 

 

 

チエちゃん&周センセ

「そやからさっきからゆうてるやろ

 足くじいてから色々あって

 とぉとぉ足がノイローゼに」

「テツの子にノイローゼないね」

「ど…どうゆう意味や」

「とにかくテツの子の足単純明解

 ハリ打ってもダメね」

「なんでもええから早よ治してくれんと」

「大丈夫わたしにまかせて

 こうゆう足のツボはここをこうね」

クリッ

「んなっ」

「さぁよくなった

 もう大丈夫ね」

「エッ

 も…もぉて

 ん?! あれっ」

「ほ…ほれよくなったね」

「あ……ほんまや

 ほんまに足……」

「(やっぱり……)」

「おおきにオッちゃん

 ウチ バッチリや」

「(やっぱりテツの子ね………

 わたし適当に足をひねっただけね)」

「調子ええ

 なんも考えんと今度のマラソン

 思い切り走るど~~」

 

米谷さんとのあれこれで足が不調だったのですが、周センセの適当な治療ですっかりモヤモヤが晴れたチエちゃん。

何も考えずに突っ走っているときのチエちゃんが最強、というこの漫画の原点を思い出させてくれる展開で大好き。

 

 

 

おバァはん

「しかし勉強もえらい

 運動もええなんて

 なかなか図々しい子やおまへんか

 とにかくチエ本気出して頑張りなはれや

 チエが負けたりしたら

 世の中の運動が良うて勉強あかん子に

 申し訳ありまへんで

 

チエちゃんにはっぱをかけてくれるおバァはん。

励まし方がなんかズレてるのが庶民的でいいですね。

 

 

 

お好み焼屋のオッちゃん(百合根)&アントニオジュニア

「おまえまさかワシに手紙書かしとるんやないやろな」

「な…い…今頃気がついたんか」

 

オッちゃんに本を朗読させて、目当ての字のところでジュニアが机をたたく、オッちゃんはその字を便せんに書く、という無茶な手段で手紙を作成する二人。

アントニオジュニアが集めた事件の真相を米谷さんに届けようとする訳で、この二人の活躍はたいしたものなのですが、この猫と飼い主マジすげぇよ。

 

 

 

ここから、物語はチエちゃんと米谷さんのマラソン大会で盛り上がり、小鉄とロックが過去の因縁に決着をつけ、大団円を迎える感じです。

それぞれもおおいに改善して何より。

チエちゃんと米谷さんを主軸に、輻輳的にドラマが進んで満足度の高い巻でした。

 

 

米谷さんは銀行員の父のもとで転校を繰り返している、母親を早くに亡くしている、天国の母親のためにも勉強や運動を頑張っている、というえらい子ですし、どこかチエちゃんと似ているところもあると思います。

 

現代ではだんだん減ってきているような気もいたしますが、銀行員の子とホルモン焼屋(ほぼ無職)の子とがめぐり逢い、互いに刺激を与えあってよい友達になれるような環境が今後も下町のどこかで残っていきますように。

 

 

「じゃりン子チエ 文庫版22巻 感想 アントニオ再び、からのおバァはん無双」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ

「じゃりン子チエ 文庫版24巻 感想 サッちゃんとの別れ」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ

 

 

 

漫画「大相撲令嬢~前世に相撲部だった私が捨て猫王子と はぁどすこいどすこい~ 感想 娯楽フォーマットの新時代を感じる」原作:川獺右端・村上ゆいち/漫画:影崎由那(EARTH STAR)

 

漫画「大相撲令嬢」が漫画の面白さと相撲の面白さを両立している快作で、もしかしたら今後相撲が娯楽フォーマットとして人気を博すこともできるんじゃないかと幻覚を見ることができてかんたんしました。

 

www.comic-earthstar.jp

 

 

 

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かんたんなあらすじとしては、女子相撲部の大学生が、乙女ゲーム世界の悪役令嬢に転生し、乙女ゲーム攻略対象の男性陣を相撲でなぎ倒しながらショタ美少年を保護するという作品になります。

 

「お、おう」と口に出してしまいそうな内容ですが、これが漫画として非常に面白いんですよね。

原作の力技なストーリー展開、漫画のイケてる画力・コマ割りが組み合わさって、なんだか絶妙な面白さに仕上がっている気がいたします。

 

たぶん作者方も楽しんで描いているんだろうと思う。

 

よし

四股にはアンチマジックの効果があるようだ

 

相撲は神聖な儀式なのよ

負けたものがすぐ再戦などは出来ないわ

次の場所まで待ちなさい

 

番付表オープン

 

土俵召喚(コールスモウリング)

 

等々、セリフもイカレていて大好き。

 

 

  • ゴブリンやドラゴンと相撲で戦う訳ではなく、異世界のイケメン連中と相撲で勝負するという潔さ
  • 土俵を召喚し、相撲ルールでの勝負を強制する
  • 対戦相手の実力は番付表で確認できる
  • 相撲で負けた相手は力と邪気が抜ける
  • 相撲で勝つと報奨金を得る

 

という世界設定も実によく噛み合っていると思います。

骨格や筋肉がよく分からなかったり意思疎通が難しかったりする怪物と戦うより、相撲はやはり対人戦の方が盛り上がりますね。

 

 

この空気感は一種の発明と言えるでしょう。

続編はもちろん、もしかしたら模倣作も今後出てくるかもしれません。

娯楽コンテンツのフォーマットとして、時代劇やヤクザがかつてほどの勢いを失いつつある中、「相撲」と「異世界転生」がこんなにハモッている作品に出会うと一種の希望を感じてしまいます。

 

当作品がヒットして、相撲という素材が持つポテンシャルが注目されますように。

 

 

 

ところで、作中では「乙女ゲーム内でショタ王子は攻略対象外のキャラだったためゲーム会社にクレームが殺到した」という妙にリアルな背景が語られていました。

お姉さま方の気持ちは分からないでもありませんけど、未成熟な少年少女を恋愛対象にするのはやはり不健全だと思いますので、個人的には作中ゲーム会社の判断を支持しておきたいところです。

 

一方、作品内で登場してくる「ユスチン・スヴォロフ」さんなるレスリング師範、筋肉ダルマだけど優しい瞳をしているおじさんなんですが、この方もゲームでは攻略対象外だったそうです。

解せぬ。

そもそも主人公は相撲にハマるような女性なのだから、むしろユスチンさんを推しにしてゲーム会社に要望を出すべきではないのか。

私はユスチンさんこそもっと愛でるべきだと主張したい。

 

 

 

 

映画「悪魔が夜来る 感想 良い中世ファンタジー」マルセル・カルネ監督

 

フランス映画「悪魔が夜来る」を鑑賞してみましたら、日本人ウケしそうな中世ヨーロッパファンタジーな舞台で人間模様がしっかり描かれている作品でかんたんしました。

 

 

↓映画の予告編

 

 

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以下、あらすじレベルでお話を紹介します。

結末などの重大なネタバレはいたしません。

 

 

 

 

 

 

1485年。

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悪魔さんが人間を絶望させようと、二人の悪魔の使いをお城に送り込みます。

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悪魔の使いは美男美女。

リュートをかついだ吟遊詩人という時点で、wizardry#6-8好きとしては心躍るものがあります。

 

 

 

悪魔の使い(美男)は甘い顔面と甘い歌声でお城のお姫様を誘惑します。

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お姫様が正統派の美人でよろしいですね。

 

 

 

一方、悪魔の使い(美女)も淫靡な視線と脚線美でお城の領主とお姫様のお婿さんを虜にしていきます。

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悪魔の使い(美女)さんの悪魔的な蠱惑演技がたいへん見どころあります。

 

 

 

こんな感じで人間関係をしっちゃかめっちゃかにして、心弱き人間たちを絶望させてやろうという悪魔的作戦だったようなのですが。

 

 

 

悪魔の使い(美男)の方が、お城のお姫様にうっかりマジ恋してしまうのです。

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すっかり心を通い合わせてしまうふたり。

 

 

 

この思わぬ展開にご立腹の悪魔さんも、人間に化けて直接お城に乗り込んできまして。

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この悪魔さんの悪魔的演技が憎たらしくて楽しいんですよ。

 

 

 

色々あって、おおきくは悪魔パワーに人間たちがやられてしまうのですが、それでも人間の魂はけっして悪魔になんて屈しないぞ絶望なんてしてやらねえぜ的にお話が展開していくのです。

 

一説には、こうしたお話の筋について、ナチスドイツに占領されている中でフランス人の魂は決して屈しないぜというメッセージが巧みに秘められているのだ……的な解説もあるそうです。

とはいえ、ドイツ人もこの映画を見たら一目瞭然でそういうメッセージ性が込められていることには気づくでしょうから、検閲をくぐり抜けたというよりは、単に作品としてよくできているからお咎めがなかったんじゃないのとも思いますね。

 

 

 

個人的には、悪魔パワーによってかき乱される人間たちの心情面もさることながら、宴のシーン、狩りのシーン、お城や中庭のしつらえ、決闘のシーン等々、過度に装飾的でない、殺伐とした世界の中で中世なりの貴族趣味を演出している塩梅がとても気に入りました。

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CG等の最近の技術がなくて派手ではないんだけど、実物っぽいものをたくさん使ってリアリティがある画面になっている、ってのも古い映画の楽しさですね。

 

中世ファンタジーものの作品が好きな方にはおすすめできると思います。

 

 

 

いつの時代も悪魔に魂を売るような人が少ない世の中でありますように。