肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

ジルオールの「エリス、セルモノー、ゼネテスについて」

 

青空文庫織田作之助さんの「夫婦善哉」を読んでかんたんいたしまして、ジルオールのエリスさんとセルモノーさんの夫婦関係についてあれこれ書いてみたくなりました。

 

 

以下、ジルオールのネタバレをふんだんに含みますのでご留意くださいまし。

 

 

 

 

 

ジルオールに登場する、ロストール王国の王妃エリスさん。

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夫のセルモノーさんも実兄の大貴族ノヴィン・ファーロスさんもさっぱり頼りにならないので、大国ロストールを実質一人で取り仕切っていることで知られています。

 

彼女は国と家族を守るために懸命に励んでいる訳なのですが、ロストールは昔ながらの貴族主義国家のために女性である彼女が前に出ることを快く思わない者が多く、妖艶な外見も災いして、「ファーロスの女狐」というあだ名で呼ばれているという。

 

実際に彼女は有能な諜報集団を子飼いにしていたり、謀略が得意であったり、毒に詳しかったり、何より政治判断が卓越していたりしますので、周囲から畏怖されるのは仕方ないところがあるのですが……。

 

 

 

本来の彼女は情に厚く、家族ファーストなお気持ちと才能を持っていたりします。

 

 

 

実兄のノヴィンさんが戦死して悲しむエリスさん。

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甥のゼネテスさんを気に掛けるエリスさん。

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ちなみにエリスさんのうしろに控える侍女はタッチストーンさんというフリントさんの姪っ子で、やはり有能な諜報員だそうです。

リューガの変でアトレイアさんを救いに向かうも、行方不明になってしまったそうで……(闇の王女の手にかかったか)

 

 

 

娘のティアナさんをいつも心配しているエリスさん。

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アトレイアさんを救うために毒にも詳しくなってしまうエリスさん。

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エリスさんは非常に集中力が高いという裏設定があり、集中し過ぎて大陸でいちばん毒に詳しくなってしまったそうです。スゲェ。

 

 

 

集中力を発揮して料理も縫い物もバッチリなエリスさん。

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集中力を発揮して政も謀略も極めてしまうエリスさん。そういうとこよ。

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……と、プレイヤー視点で見るとエリスさんは非常に魅力的な女性でして、私情を漏らせばジルオールでいちばん好きな人物は彼女だと言い切れるくらいなのですが、ジルオール世界の皆さま目線では……

 

 

 

娘からは、親の夫婦仲がよくないので自分の本当の父親は別にいるんじゃねーのと疑われていたり。

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どうせ自分に優しくするのもウラがあるんだろ? と思われていたり。

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そして、エリスさんが尽くしている夫のセルモノーさんからは……

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と、愛してもらえない、構ってもらえないどころか、毒殺すら疑われてせっかくつくった料理にも一度も口をつけてもらえないという。

 

 

 

この夫の仕打ちには、本来善良な娘っ子であるエリスさんもマジ悲哀(ピエン)であります。

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…………。

 

 

 

挙句の果て、セルモノーさんはゲーム終盤の政変時に妻の処刑を了承してしまい。

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エリスさんはすべてに納得して運命を受け容れるという……。

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夫と娘を愛する故に実権を握ったものの、

それ故に夫と娘から愛されることはなく、

果ては夫(と娘)の了承のもと命を落とす。

最後まで夫と娘を愛したまま…………。

(しかもストーリー展開によっては夫と娘の行きつく先も……という救いのなさ)

 

 

ジルオール世界でも屈指の実力者ながら、まったく現世の幸せにあずかれなかった彼女は、いったい何をどうすればよかったというのでしょう。

 

 

 

 

と、長年にわたってエリスさんというキャラクターが意識の底に沈殿している感じだったところ。

 

さいきん青空文庫夫婦善哉を再読しまして、「ああ、エリスさんとセルモノーさんにこんな面があったらな」と感じたんですよね。

www.aozora.gr.jp

 

 

 

夫婦善哉のストーリーについて詳しい紹介はいたしませんが、平たく言えばクズな夫としっかり者の妻の夫婦がなんやかんやで仲がいいやつです。

 

 

 

エリスさんは、セルモノーさんからの仕打ちにひたすら耐えたり自分磨きしたりするだけじゃなく、遠慮なくセルモノーさんを折檻すれば良かったんじゃないか。

 

夫婦善哉の夫のように、

 

「く、く、く、るしい、苦しい、おばはん、何すんねん」

「どうぞ、かんにんしてくれ」

 

と悲鳴を上げてしまうまで、

 

締めつけ締めつけ、打つ、撲る

 

と、思う存分セルモノーさんに感情をぶつければよかったのではないか。

 

 

 

なんて想像してしまいました。

 

まあ、無限のソウルの持ち主である主人公がいてもそういうストーリー分岐が出てこないあたり、庶民的な感情のぶつけ方ができない、そんな発想すらないところがエリスさんの魅力なので、こんなことを考えてもせんない話ではあるんですけど。

 

 

 

 

庶民的な夫婦相和のコツという意味では、世情に通じたゼネテスさんなんかが上手くアドバイスできたんじゃないのと思わなくはないのですが。

 

 

ゼネテスさんはゼネテスさんで理想の叔母貴像をつくりすぎていてエリスさんのイメージが崩れるアドバイスなんてできなさそうですし、心情的にも夫と仲良くなるような方向のアドバイスはできなさそうですし。

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そもそもゼネテスさん、世情に通じている風な面をしていますが女性心理にはまったく鈍感だという公式の裏設定もありますので、

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夫婦関係改善に向けてエリスさんに手を差し伸べられるような者はロストールにはいなかった、というのが動かぬ事実なのでしょう。

 

 

 

なお、それでも、私はゼネテスさんのこのセリフ

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「愛する誰かのために一生懸命な人間は天国に行くんだよ、叔母貴」

 

は、ジルオール屈指の名ゼリフであり、エリスさんの棺に入れるにこれほど相応しいセリフもないとも思います。

ゼネテスさんは、主人公にかけてくれる数々の頼もしいセリフ・行動よりも、エリスさんに対するあたたかいセリフ・行動の方に惚れたね私は。

 

 

 

 

あれこれ述べはしましたが。

 

エリスさんの死後、セルモノーさんも闇からちょっと抜け出ていましたので。

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二世の縁、来世ではエリスさんとセルモノーさんが仲睦まじい夫婦になって、お母さん大好きなティアナさんが生まれてきますように。

 

 

 

上でも書きましたが、無限のソウルの持ち主である主人公がいても、エリスさん生存ルートが生まれないところがインフィニット版の解釈一致な魅力だと思っています。

 

生存ルートが生まれて魅力の幅が広がったフレアさんと本当に対照的。

ジルオールの「フレアとゾフォル」インフィニット版エンサイクロペディアより - 肝胆ブログ

 

 

ジルオールの初心者向け「エンディング有キャラの紹介(一部)」 - 肝胆ブログ

ジルオールの「セラとベルゼーヴァ」 - 肝胆ブログ

 

 

大相撲2022初場所感想「最近は幕内下位の争いが面白いと思う」

 

2022年初場所、御嶽海関が念願の優勝&大関昇進を決めたことでおおいに盛り上がりましたが、個人的には幕内下位の争いがさいきん見応えあってかんたんしてしまうなと印象に残った場所でございました。

 

www.sumo.or.jp

 

www3.nhk.or.jp

 

 

 

初場所で勝ち越した幕内力士は次の方々です。

 

 13勝 御嶽海(優勝・技能賞)

 12勝 阿炎(殊勲賞)

 11勝 照ノ富士、豊昇龍、石浦
       琴ノ若(敢闘賞)

 10勝 阿武咲

   9勝 若隆景、宝富士、若元春 

   8勝 宇良、逸ノ城玉鷲佐田の海
       碧山、琴恵光

 

誠におめでとうございます。

 

 

 

御嶽海関はよかったですね。

相撲や稽古のイメージは全く違いますけど、かつて豪栄道関が大関に昇進した時の空気感を思い出しました。

どうか大関昇進をゴールにせず、稽古に励んで出足の強さを強化したり安定感を増したりしていただきたいと思います。

それにしても御嶽海関は表情がひたすらかわいくて、頑張っている姿が妙に父性・母性をくすぐってくるのがずるいっす。

 

 

阿炎関もいよいよ実力に見合った地位・実績まで戻ってきた感があります。

あの伸びのよい突っ張りと前進力は、相手からすると分かっていても対策しづらいんでしょうね。

御嶽海関同様、この結果をゴールにしないで励み続けてほしい……と願ってやみません。先場所よりも引く場面が増えていた気もしますし。

 

 

照ノ富士関は……おおっぴらに明らかになることはないと思いますが、膝の調子がいかにも悪そう……心配です。

あの膝で横綱相撲のひとつの理想を体現してくださっていること自体が奇跡的なのですけど、相撲ファンとしてはこの奇跡をこれからも長く見ていたい。

そのためにもどうか無理をしないでほしい……ひとり横綱だから無理せざるを得ないとはいえ……。

 

 

 

さて、このメンバー+若隆景関、宇良関、阿武咲関あたりが上位陣として盛り上げてくださった場所でしたが、この次元の争いとは別軸で、さいきん幕内下位も個性的でよくないですか。

 

勝ち越した力士だけでも、

敢闘賞を取った琴ノ若関、あるいは躍進著しい豊昇龍関などはもう幕内下位に留まる存在ではありませんし、

さいきん再び地力を高めている感じのするベテラン宝富士関、

全霊のこもった取り口が清々しい佐田の海関と琴恵光関、

ここにきて肉体と技の多様性を更に高めている感のある石浦関、

新入幕ながらきっぷのよい相撲を取る若元春関、

等々非常に見応えがございます。

 

負け越した方々ももとより実力者揃いですから、幕内上位に上がろうとする者、幕内に留まろうとする者、十両から駆け上がろうと挑んでくる者、同部屋の他力士の動向を受けてモチベーションを高めている者と、それぞれの意気込みを感じる好取組が地味に多くなってきている印象があります。

昔よりも千秋楽で7勝同士の勝負が多く組まれるようになってきていますし。

 

新入幕の王鵬関なんてあれだけスケールの大きな取り口をするのに、惜しくも負け越してしまいましたからね。

王鵬関には評判通りのポテンシャルを感じましたので、いずれ幕内に定着して、カムバックしてきた朝乃山関あたりと見応えのある熱戦を見せてくれるようになったらいいなと思います。

 

 

場所が始まったとたんに違法賭博問題の続報がなくなったのが気になりつつ……

 

今年も大相撲が熱気にあふれ、かつ、後ろ暗いことなく発展していきますように。

 

 

 

 

 

ところで、推している十両筆頭の武将山関が……

2勝13敗という結果に終わってしまいました。

 

でも、千秋楽の勝利は「らしさ」が出ていてとてもよかったと思いますの。

 

どうかこのハードな経験を糧にして、盛り返していただきたいと思います!

 

 

 

 

「じゃりン子チエ 文庫版24巻 感想 サッちゃんとの別れ」はるき悦巳先生(双葉文庫)

 

じゃりン子チエ文庫版24巻、前巻で仲良くなった米谷サッちゃんとの別れが訪れ、チエちゃん、ヒラメちゃん、サッちゃんそれぞれの様子にかんたんして泣いてしまいました。

子どもたちの出会いと別れ、いいものですね。

 

www.futabasha.co.jp

 

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24巻に収録されている話は次の通りです。

 

  • なんだか変な この頃
  • 雨の日はテッちゃんと一緒
  • テツの出前保健所
  • アルバイトが見つかった
  • 気になるアルバイト
  • やっぱり変なアルバイト
  • アルバイトの正体
  • ピンチの時の切り札
  • 切り札の切り札
  • 引っ越しの真相
  • 料理コンテスト
  • 輝くトリオ
  • 空振り ひょうたん池
  • 怪しいランドセル
  • 危険地帯をうごめく者
  • サッちゃんの言えなかったこと
  • カメラを持つヒラメ
  • みんなの写真がほしい
  • 写真の意味
  • サッちゃん君を盛り上げよう
  • ヒラメちゃんの来れない訳
  • 「さようなら……」サッちゃん

 

1巻まるごとサッちゃん編でして、チエちゃんヒラメちゃんサッちゃんのトリオ形成からサッちゃんの引っ越しまで。

前巻がサッちゃんとの出会い編でしたので、2冊まるごとサッちゃん編。

サッちゃんはじゃりン子チエの中でも屈指の重要人物なのであります。

 

 

以下、ネタバレを含みつつ各キャラクターの名ゼリフを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テツ

「危険や……

 親の目をかすめて勝手なこと

 やり出すのは不良の始まりや」

「そやけど親の目かすめ出した時に

 グチャグチャゆうたら

 ワシの経験からますます親と

 仲悪るなるからな」

 

チエちゃんがサッちゃんと遊ぶようになり、娘に構ってもらえなくて寂しいテツ。

親と子どもの関係について、的確な理解はしているところが侮れないですね。

 

 

 

サッちゃん

「わたしチエちゃんもヒラメちゃんも好きなの」

「だからいつまでも友達でいたいの」

「わたし……引っ越しするかもしれないの」

 

お父さんが引っ越しを検討し始めているのを察したサッちゃん。

こうしたセリフをかけること自体、前巻のよそよそしい関係性からの大きな変化を感じますね。登場時点のサッちゃん、かなり無口でしたし。

 

当初無口だったのは、父親が銀行員なので、これまで何度も転校して友達と別れてきた経験があるからなんでしょうね。

 

 

 

サッちゃんのお父さん

「今度のチエちゃんとヒラメちゃんは……

 里子には特別の友達のようなんですよね」

「今の仕事を続けていればそのうちまた転勤です」

「楽しそうにしている里子を見れば見るほど

 もうこれっきりにしたいと思うようになったんです」

 

銀行を辞め、郷里の岡山に戻って実家の料理店を継ぐことを決心したサッちゃんのお父さん。社宅を出て、お好み焼屋のオッちゃんの家に間借りし、カルメラ兄弟のラーメン屋で修業します。

 

昭和期の大企業は現在よりもずっとワークライフバランスの概念がなかったことで知られますが、当時のお父さんたちもじっさいは家族と仕事との関係で悩んでいたことが察せられますね。

子どもの生活が極力変わらないよう、単身赴任を選んで心身の負担を受け入れる父親がいまも多い訳ですから、そういうお父さんの下で育ったお子様方はいずれ大きくなったら親の気持ちを理解できるようになってあげてくださいまし。

 

 

 

マサル

「あいつら休み時間も放課後も

 なんかとりつかれたみたいに遊んでるやないか」

「チエやヒラメはともかく

 おまえ米谷ヤケクソになってるように思わんか」

「なんか分からんけど

 ヤケクソになってるモンに勝っても

 オレなんともうれしないやんけ」

 

引っ越しを控えたサッちゃんの微妙な変化を察するマサル

(この時点で、子どもたちはサッちゃんの転校が決まったことを知りません)

学業で張りあいながら、ベストパフォーマンスではないサッちゃんに勝っても意味がないと感じるマサル

 

マサル、えらいやん……!

米谷サッちゃんが登場してからのマサルは、男として一枚成長したような感じがしてとても愛らしいです。

これも一種のボーイミーツガールよな。

 

 

ところで、今回マサルが料理コンテストでオマール海老を使ったフランス料理を出そうとした際、

「用意してあったエビ

 朝お父さんが食べてしもたんや」

「子供の作る料理にこんなエビ使うの

 馬鹿げてるゆうて……」

「お母はんえらいおこって朝からモメて……

 そやけどオレお父はんの感じ分かるんや」

「そやけどお母はんこの料理するように

 用意してくれてたし……

 オレの立場むずかしいんやど」

 

というマサル両親のエピソードが出てきました。

 

どうもマサルの父親は(母親と違って)世間常識に通じている方なようです。

その上で、父・母双方に気を配っているマサルがえらいですね。

 

結果、オマール海老が入手できずに料理コンテストであえなく敗退するのは気の毒でなりませんが。

 

 

 

カルメラ兄弟&お好み焼屋のオッちゃん(百合根)

「オヤジ……」

「…………」

「二階……

 電気ついてないど……」

「電気がついても……

 当分心は停電や」

 

お好み焼屋のオッちゃんに促されたサッちゃんが、二階でチエちゃんとヒラメちゃんに転校の事実を告げます。

漫画内では余計な説明セリフは出てこず、時間が経過して日が落ちても部屋に電気がつかないことで三人の心情を十二分に表現しているのが切なくて好き。

 

 

 

チエちゃん&ヨシ江はん

「サッちゃんが引っ越しのこと

 ウチらにゆえんかったん

 分かるような気がするわ」

「そんなこと考えるのも

 ちょっとつらかったんと違いますか」

「……………

 そやけどいつかはゆわんとあかんもんな……」

 

お母はんとひょうたん池のボートに乗りながら、サッちゃんの心情に立って引っ越しのショックを受け入れ始めるチエちゃん。

ほんまにえらい子です。

 

 

 

チエちゃん&サッちゃん

「わたしチエちゃんのお父さんの感じ分かるの

 だってチエちゃんのお父さんは

 チエちゃんのお母さんが選んだ人なんだもの」

「んなっ」

 

「選んだなんてゆうたら

 ウチのお母はんの見る目がその……

 結婚てその……

 意外とカン違いとか

 もののはずみってことが多いんじゃないかしら」

「え…!?」

「わたしたちも気をつけましょうね」

「…………」

 

話のはずみで、なんか妙に現実味のある話をする小学生二人。

確かに、チエちゃんもサッちゃんもしっかり者なだけにかえってもののはずみでけったいな男と結婚してしまいそうなところがありますが。

 

 

 

サッちゃん&テツ

「前にオジさんがわたしに言ったこと

 覚えてます……?」

「前にて……

 ワシなんかゆうた?」

「だからわたしにカブを教えてやるって」

「カブ!!

 よーしまかしとけ

 サッちゃん君のために大々的に

 カブ大会やったる~~~」

 

いよいよサッちゃんの引っ越しが近づいた中、この漫画的に鉄板のカブで盛り上げようという展開。

カブ大会で「んほぉ~この展開あったけぇ……」となるこの漫画すげぇよ。

 

 

 

ヒラメちゃん

「ウチその……

 描くの遅いのに

 みんなも絵の中に入れたかったから」

 

新大阪の新幹線ホームに遅れて駆けつけ、サッちゃんに登場人物集合絵をプレゼントするヒラメちゃん。

 

サッちゃんの転校までのラスト1カ月、ヒラメちゃんはサッちゃんと遊ぶ時間をあえて取らず、絵の完成にすべての時間を費やしたという。

ヒラメちゃんの透徹した善意にサッちゃんの涙腺もわたしの涙腺も決壊です。

 

 

 

チエちゃん&ヒラメちゃん&サッちゃん

「ヒラメちゃん

 サッちゃんがありがとうて……」

「サ…サッちゃん………」

「ありがとう……

 みんなありがとう」

「サッちゃん……」

「サッちゃんさようなら………」

 

多くのものをチエちゃんとヒラメちゃんに残し、去っていくサッちゃん。

彼女たちそれぞれの成長に繋がるであろうとはいえ、別れはあまりにも悲しい、大きいものがあります……。

 

 

 

小鉄&アントニオジュニア

小鉄……」

「ワシらも絵の中に居ったな」

 

エピソードを締めくくる二匹のセリフも好き。

この巻の猫たちは基本的に傍観者ですが、小鉄はチエちゃんとヒラメちゃんに、サッちゃんの飼い猫ロックはサッちゃんに、それぞれ心情面で寄り添っているのがいいの。

 

 

 

 

 

この巻のエピソードは、登場人物全員の善意が、極めて高いレベルで発揮されていて本当に好きです。

チエちゃんが住む西萩の町の良いところが出まくっていると思う。

全編通しても傑作の巻だと言っていいんじゃないでしょうか。

 

 

生きていく上で別れは避けがたいものでありますが、どうか子どもたちが出会う別れには傷心を癒やす善意であったり、振り返って後で分かるような成長であったりが伴っていますように。

 

 

「じゃりン子チエ 文庫版23巻 感想 チエちゃん VS 米谷さん」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ

「じゃりン子チエ 文庫版25巻 感想 物語の時代設定」 - 肝胆ブログ

 

 

 

 

 

「エンダーリリーズ 攻略した感想④ 白巫女の歴史、穢れの王の考察」(Binary Haze Interactive)

 

「ENDER LILIES QUIETUS OF THE KNIGHTS(エンダーリリーズ、あるいはエンダーリリィズ)」が面白すぎてかんたんしたので、物語の舞台に起こった歴史を色々考察してみました。

 

大きくは自分用のメモです。

ゲーム内で明言されている内容は黒字、私の勝手考察は青字にしておきます。

 

 

「エンダーリリーズ 攻略した感想、およびユリウス・王の軽い考察」(Binary Haze Interactive) - 肝胆ブログ

「エンダーリリーズ 攻略した感想➁ 奥義、レリック、ウルヴイケメン説等」(Binary Haze Interactive) - 肝胆ブログ

「エンダーリリーズ 攻略した感想③ NG+ 敵が強くてニューゲーム」(Binary Haze Interactive) - 肝胆ブログ

 

 

以下、ネタバレを躊躇していませんのでお含みおきください。

 

 

 

 

 

 

(白)巫女の歴史

①古き民 vs 魔の種族の時代

かつて古き民は魔の種族を滅ぼし、古代呪術を以て世界を支配したそうです。

 

「切り裂く巫女」リコリースさんは明確にこの時代に活躍した最初期の巫女でありましょう。

同様に「射殺す巫女」アウラさんも、物騒な二つ名的にこの時代に活躍した方なのかもしれません。

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リコリースさんが近接攻撃キャラ、アウラさんが遠距離攻撃キャラっぽいので、もしかしたら二人はバディや姉妹だったのかも。

この二人由来のレリックは効果も強力なので、そうとうな実力者だったのは間違いなさそうです。

 

「魂は戦地に舞う」「穢れと共に」という文言から、この頃から巫女さんは「召魂」の技を有していて、本編のリリィさんのような活躍をしていたのでしょう。

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➁古き民が栄えた時代~初代王に滅ぼされた時代

古き民の時代、巫女さんは一定人数が存在していて、穢れを浄化したり、不死の騎士を召魂したりして活躍していました。

 

詳細な前後関係は不明ですが、この時代の巫女さんとしては

「導きの巫女」キルティスさん、

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特に二つ名がない巫女のカリヴィアさん、

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がいらっしゃいます。

 

 

その後、古き民時代の末期に初代王たちが攻め寄せてきまして、巫女エルドレッドさんは命を落とし、黒衣の騎士フェリンさんは魔術で封印されます。

なお、エルドレッドさん以外にも複数の巫女がいて、いずれも落命したことがフェリンさんの友人の記憶から伺えます。

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この他、巫女なのかどうか分からない古の民マニサさんという方もいらしゃいます。

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他の巫女たち同様花の名前の持ち主ということで、彼女も巫女なのかもしれません。

(「マニサ」という百合の花があります)

 

 

 

③「暁の白巫女」ニンフェリアさんの時代

エルドレッドさんの娘であるニンフェリアさんは、初代王に保護され、やがて果ての国にて唯一穢れを浄化できる存在として人々の崇敬を得るに至ります。

父親は、素直に考えればフェリンさんなのでしょう。子どもができてから不死契約を結んで肉体を失った、という流れでしょうか。そうなると、リリィさんからすると黒衣の騎士さんはひいひい爺ちゃんということになりますが。

 

ニンフェリアさんがどのような生涯を送ったかの描写はありません。

ただ、本編のAエンドでは黒衣の騎士さんがリリィさんについていけない、Cエンドでは黒衣の騎士さんがリリィさんとずっと一緒にいられるということから、ゲーム開始時点での不死契約紋章持ちはリリィさんとフリーティアさんのみということで、少なくともニンフェリアさんは亡くなってはいるのでしょう。

 

私個人の価値観としては、「白教」という白巫女を崇める宗教ができあがったことからして、ニンフェリアさんは穢れ浄化のご負担で命を落とし、白の教区に葬られたのではないかなと想像しています。

強力な信仰を生んだということは、穢れ浄化という現世御利益だけでなく、人々の穢れを背負って命を失ったという「献身」ですとか、「聖遺骸」の周りに人々が集って嘆き感謝するというプロセスですとかがあったんじゃないかなと。

 

 

 

④「風の白巫女」さんの時代

風の白巫女さん(名称不明)はニンフェリアさんの娘さんとして生まれ、白巫女の役割を継承いたします。

ゲルロッドさんたちと一緒に穢者と戦い、双子城砦設立に尽力。果ての国の防衛力を飛躍的に向上させました。

 

ただ……最後は自ら命を断ったことが明言されています。

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白巫女さんは生まれた地にちなんで二つ名をつけられるそうなので、風の白巫女さんは王城の風の間で生まれたんでしょうか。

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ということは、ニンフェリアさんは王城勤めの騎士さんあたりと結婚したのかもしれませんね。

巫女さんは代々騎士好きなんでしょうし。

なお、初代王や王族と結婚した……ということはなさそうです。王族の血を引いていたら歴代白巫女さんの扱われ方がもっと変わっていると思いますので。

 

 

また、風の白巫女さんの死因ですが、個人的には守り人の長やフリーティアさんが想像する「穢れ浄化に伴う苦しみ」ではなく、「母親ニンフェリアさんの出生の秘密を知り、自分に流れる血や宿命と、果ての国との関係に苦しんだ」「自分の代で過去に決着をつけ、娘フリーティアさんを果ての国に根づかせるために証拠もろとも自死した」という説を推したいところです。

 

双子城砦の先、東の果ての泉手前に、破られた初代王の手記やニンフェリアさんの指輪が意味深な感じに落ちていますので、風の白巫女さん、自ら築いた双子城砦(果ての国の平和の象徴)と穢土(滅ぼされた古き民の象徴)の境目の地点で身投げしたんじゃないかなあと。

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破かれた初代王の手記がある隠し部屋の穢者、もしかしたら風の白巫女さんの関係者(従者とか夫とか)なのかもしれませんね。

果ての泉周辺の浄化が進んでいるのも、風の白巫女さんの残滓というか残浄化力が漂っているからだと思うとエモい。

 

 

スタート地点で風の白巫女さんの像が崩れているのは、

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風の白巫女さんが自死した(献身的に穢れを引き受けるべき白教の教えにそぐわない)ことを受けてのものなのかなあと。

はじめは暁の白巫女ニンフェリアさん生存説とかも考えたんですけど。

 

 

 

⑤「泉の白巫女」フリーティアさんの時代

風の白巫女さんの娘、フリーティアさん。

趣味はお絵描き。

 

二つ名やその他TIPS的に、果ての地の泉で生まれ、崖の村で育ったようです。

(④の考察通り、風の白巫女さんが果ての地の泉に思い入れを持っていたのだとしたら果ての地の泉で生まれたというのも重くて良くないですか)

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(風の白巫女さん、フリーティアさんが王城で過ごすと古き民の記録に出会ってしまう可能性を案じていたのかもしれません。ラストの描写から、フリーティアさんは古の民関係の歴史はご存じなさそうでしたし)

 

フリーティアさんは特に強い浄化の力を有しており。

果ての国の皆さまと信頼関係を築き。

双子城砦に攻め寄せてきた穢れの王と穢者の大群を撃退・浄化いたします。

 

ただ、その戦いで護りの宝具が砕け散り、ご本人の浄化キャパも限界を迎えてしまい、ゲーム本編に至る悲劇が……という。

 

 

ところで、フリーティアさんの指輪をつけるだけでリリィさんがお守り結界でパリィ可能となりますので、

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察するにフリーティアさんはパリィの名手だったのでしょう。

双子城砦での穢れの王との戦いはさながら十尾 vs ヒアシ様のような感じだったに違いありません。

風の白巫女さんもパリィ上手な騎士と結婚したんですかね。

 

 

 

⑥9人のリリーズ

フリーティアさんが限界を迎えたため、王の命令でファーデンさんがフリーティアさんのクローン的な8人の白巫女チルドレンを誕生させます。

ゲルロッドさんの記憶等から、白巫女チルドレン誕生後もしばらくはフリーティアさんは子連れで出歩けていたようですが……。

 

フリーティアさんが最深部で動けなくなり、更に、フリーティアさんとファーデンさんが王の命令に背いて8人の白巫女チルドレンへの穢れ移管を拒否したことを受け、白巫女チルドレンは散り散りになります。

 

  1. 最初に生まれた白巫女は王の手元に(王城)
  2. ひとりは禁域で実験材料に。もしかしたらファーデンさんが善意で保護していただけなのかもしれませんが……
  3. ひとりはウルヴさんとユリウスさんの保護下に(双子城砦)
  4. ひとりはイレイェンさんの保護下に(魔術協会)
  5. ひとりはゲルロッドさんの保護下に(崖の村)
  6. 本当のリリィさんはシーグリッドさんの保護下に(白の教区)
  7. ひとりは堕ちた弓使いさんの保護下に(カタコンベ
  8. 最後までフリーティアさんのそばにいたひとりはヘニールさんと暗部の手で脱出を試みるも……

 

3~8の白巫女さんたちは、順不同ながら禁域から逃げ出した模様です。

(3の白巫女は早いうちに逃げ、8の白巫女は最後の方に逃げたと思われる)

 

主要登場人物のうち、禁域に踏み込んだと描写されているのはイレイェンさん、シルヴァさん、ヘニールさん、ファーデンさんなので、

フリーティアさんとファーデンさんからの依頼を受け、イレイェンさん、シルヴァさん、ヘニールさんが手引きして逃がしたのでしょうか。

ヘニールさんは記憶の描写的に8の白巫女さんのみ、

7の白巫女さんはシルヴァさん本人が禁域から逃げる際に一緒に連れてって、自身ないし同僚の兄である弓使いさんに預け、

3~6の白巫女さんはもう少し前にイレイェンさんの差配で各地の有力者に預けた……とかかなあ。イレイェンさん、双子城砦にも行ったことあるし、シーグリッドさんとも面識あるし。

 

 

ゲーム本編の主人公リリィさんは最後に目覚めたので、上記8人のリリーズとは出会っていない模様です。

ただ、本当のリリィさんが目覚めを心待ちにしていたり、フリーティアさんが髪飾りを贈ったり、イレイェンさんがお守りを贈ったりしているので、存在は認知されていた模様。

おそらくはファーデンさんとイレイェンさんが護りの宝具修復装置と一緒に用意したけど、目覚めも修復も間に合わなかった……ということなのでしょう。

 

主人公リリィさんは、攻撃関係は黒衣の騎士さんの影響で召魂スキルが身についた訳なのですが、それとは別に卓越したヘッドスライディングやよじ登りやジャンプや着地の力を有していますので、もしかしたら基礎体力が強化された(だから目覚めが遅れた)白巫女なのかもしれません。

 

 

 

穢れの王の正体

最後に、穢れの王と白巫女さんたちの関係について。

 

本編のラスボスがフリーティアさんと一体化しているためか、穢れの王の正体について風の白巫女さんや暁の白巫女さんの成れの果て説があるそうなのですが。

 

個人的には、穢れの王はあくまでTIPSでの描写通り「古き民の怨嗟が形をなした」存在なんだろうと解釈しています。

 

ニンフェリアさんや風の白巫女さんの死に対する私見は上で書いた通りなのですけど、仮に穢れの王の主体がニンフェリアさんや風の白巫女さんの魂なのであれば、ニンフェリアさんだったら本編で黒衣の騎士さんが、風の白巫女さんだったら双子城砦の戦いでフリーティアさんやゲルロッドさんが、それぞれ反応を示すはずだと思うんですよね。

 

ので、フリーティアさんと一体化する以前、双子城砦に攻め寄せてきた穢れの王は、あくまで穢者の集合体なのであろうと。

穢者って、融合する性質がもともとあるようですし。

 

想像をたくましくすれば、かつてリコリースさんたちが滅ぼした魔の種族が残した呪いこそが「穢れ」であり、リコリースさんに切り裂かれた魔の種族四天王のひとりが古き民の怨嗟パワーを吸い上げて復活した姿こそが穢れの王だったのだ……みたいなネタがあったりするのかもしれませんけど。

 

 

 

 

 

かようにつらつら書きましたが、要はそれだけエンダーリリーズが面白かったということであります。文芸関係が優れたゲームって大好き。

読み返すと風の白巫女さんに関する描写が妙に長くて妄想が過ぎる気もいたしますが御寛恕くださいませ。

 

 

エンダーリリーズに触れたプレイヤーさんの心から穢れが浄化され、現実世界が果ての国よりはましな感じで展開していきますように。

 

 

 

 

「エンダーリリーズ 攻略した感想③ NG+ 敵が強くてニューゲーム」(Binary Haze Interactive)

 

「ENDER LILIES QUIETUS OF THE KNIGHTS(エンダーリリーズ、あるいはエンダーリリィズ)」が面白すぎてかんたんしたので、高難易度周回のNG+モードを、更に敵の攻撃力を2倍にしてプレイしてみました。

 

「エンダーリリーズ 攻略した感想、およびユリウス・王の軽い考察」(Binary Haze Interactive) - 肝胆ブログ

「エンダーリリーズ 攻略した感想➁ 奥義、レリック、ウルヴイケメン説等」(Binary Haze Interactive) - 肝胆ブログ

「エンダーリリーズ 攻略した感想④ 白巫女の歴史、穢れの王の考察」(Binary Haze Interactive) - 肝胆ブログ

 

 

このゲームは、一度クリアすると難易度を調整可能になります。

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とりあえず敵の攻撃力と接触ダメージを2倍にしてみました。

もともとのNG+の時点で敵の攻撃を数回喰らうとパリーンしてしまう感じでしたので、攻撃力を2倍にしたら1~2発でパリーンする仕様になります。

敵の大技は1発でパリーン、小技は2発でパリーン、接触は3回くらいでパリーン。

 

 

 

 

実際にプレイしてみたら、かなり歯ごたえのある展開になりました。

 

 

代表的なパリーン集をご紹介しますと……

 

ケルトンさんのぶんぶん攻撃にうっかり突入してパリーン(即死)。

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ゲルロッドさんの衝撃波にうっかり足が当たってパリーン(即死)。

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イレイェンさんの竜巻にうっかりタッチしてパリーン(即死)。

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爆発スケルトンさんにうっかり巻き込まれてパリーン(即死)。

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カタコンベの石板エリアでパリーン(即死)。

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敵攻撃力2倍モードでいちばん絶望感があったのがここです。

 

 

 

斧にうっかりかすってパリーン(即死)。

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ウニにうっかり触ってパリーン(即死)。

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ユリウスビームのノックバックに接触してパリーン(中途半端に痛い)。

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ビターンでパリーン(即死)。

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ミーリエルさんのネイル研ぎに使われてパリーン(即死)。

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そして、毎度毎度ベンチで復活するリリィさん。

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描写的に、パリーンは夢オチという整理なんですかね。

 

 

 

一見理不尽なモードになりはしましたが、もともとのゲームデザインの優秀さ、デスペナルティのなさに助けられて、頑張ってクリアすることができました。

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必須でなくてもマップを100%埋めてしまうプレイヤーです。

エンダーリリーズ、うろうろしているだけで楽しいですからね。

 

 

 

今回のスキルセットとレリック。

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スキルは畳みかけ用の近接セットと遠距離フルセット。

レリックはワンミスパリーンを楽しむべく防御系・HP系をあえて装着しませんでした。

 

 

 

ボス・中ボスとの激闘をかんたんに振り返りますと。

 

 

シーグリッドさん。

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一発接触ダメージを受けただけで倒せました。

 

 

 

守り人の長さん。

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火柱一発で瀕死にされましたが、慌てなければ大丈夫ですね。

 

 

 

崖の村の少年さん。

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ファーデンさんの凶悪奥義で成仏いただきました。

どちらかというと道中の方が既につらくなってきています。

 

 

 

首なしの騎士さん。

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こういう動きが遅いタイプの敵は、ウルヴさん、シーグリッドさん、花の魔女さんでの重層攻撃で楽勝です。

むしろ道中の雑魚敵の方が略。

 

 

 

西の商人さん。

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シーグリッドさんと花の魔女さんは対空面でも大活躍です。

 

 

 

ゲルロッドさん。

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見かけと違ってNG+のゲルロッドさんはめっちゃ機敏ですので、隙の少ないヘニールさんが重宝します。

ヘニールさんはNG+のボス戦でこそ輝くなあと実感し始めました。

 

 

 

崖の村の村長さん。

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こういう大きくて鈍い敵はハメやすくてありがたいです。

 

 

 

菌の魔術師さん。

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瞬間移動してきますが、出てきたところをヘニールさんでざくざくに。

 

 

 

花の魔女さん。

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あまり動かないタイプの敵なので近接セットで楽勝です。

 

 

 

イレイェンさん。

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明確な隙をつくってくれるタイプの敵ですので、実は通常技・奥義ともにファーデンさんを当てやすい相手です。

 

 

 

古き墓守さん。

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遠距離攻撃で削ると楽です。

この辺から道中の難易度が更にやばいことに。

 

 

 

堕ちた弓使いさん。

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こちらは背後を取って近接攻撃で攻めるのが楽です。

守り人の妹がいるそうですが、あんがいシルヴァさんやシーグリッドさんのお兄ちゃんだったりするんでしょうか。だったらシルヴァさん経由で白巫女を預かったのかもですが。

 

 

 

シルヴァさん。

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素早いので接近戦は分が悪いっす。

ヘニールさんで削ってファーデンさんの奥義、という流れがいいと思います。

 

 

 

なれ果ての衛兵さん。

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いちおう初回で倒しましたが、けっこう苦戦しました。

このボスに限らず、双子城砦の剣衛兵・槍衛兵はどうも苦手です。

 

 

 

腐竜の孤児さん。

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あえての接近戦・空中戦で挑むと楽しいボスです。

たぶんイレイェンさんあたりで戦う方が楽だと思いますが。

この子のテキストを読む限り、王にはユリウスさん以外にもたくさんの子どもがいたということなのでしょう。どの子のことで王がキレたのかはよく分かりませんけど。

 

 

 

ウルヴさん。

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イレイェンさん同様、この方も明確に隙を見せてくれるボスなので、意外とファーデンさんを当てやすかったりします。

 

 

 

隠れ潜む実験体さん。

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普通にウルヴさんたちで倒せますが、道中難易度がますますますます高まってきていて出会うまでが大変です。

 

 

 

暗部の執行人さん。

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道中含め強敵です。

攻撃スピードが速いので回避を優先、合間にヘニールさんで削って倒しました。

 

 

 

ヘニールさん。

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ウルヴさんやイレイェンさんで周辺の雑魚敵を排除した後、ヘニールさん本体は同キャラ対戦&ファーデンさん奥義で戦うとスムーズでした。

 

 

 

城下の娘さん。

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ウルヴさんで介錯しました……。

 

 

 

隻眼の王の盾さん。

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振り向き攻撃にだけ注意しながら、接近戦で一気にカタをつけるのがいいでしょう。

 

 

 

ユリウスさん。

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第一段階はウルヴさん、第二・第三段階はヘニールさん&ファーデンさん奥義で戦うのがいいと思います。

素早いボスはとにかくヘニールさんが便利。

 

 

 

なりそこないの罪人さん(ひどいネーミングだ)。

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水中でもシーグリッドさんと花の魔女さんは便利。

タックル攻撃は上下に回避するとかわしやすいですよ。

 

 

 

禁域の戦士さん。

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素早い敵にはヘニールさん、という鉄則通りに攻略しました。

 

 

 

ミーリエルさん。

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イレイェンさんと接近戦で削り、スタンさせたらイレイェンさん奥義を全弾当てて一気にHPを削ります。

イレイェンさんは対ミーリエルさんが得意で、ファーデンさんは対イレイェンさんが得意なあたりに因縁を感じますね(個人の感想です)。

 

 

 

穢れの王さん。

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金魚弾一発でパリーンなので困りました。

第三段階のメテオも一発パリーンで、しかも意外とかわしにくくて困ります。

やることはウルヴさんたちで削りまくるだけなのですが、即死性を高めるとさすがラスボス感が強まりますね。

ラスボス戦の「Mother」も名曲なので、リトライが苦にならないのは嬉しい。

 

 

 

 

こんな感じで、やってみたら敵攻撃力2倍モードも楽しくて何とかなりますね。

また他のプレイ方法でも考えてみようかしら。

 

 

エンダーリリーズ、たいへん売れているみたいで何よりです。

プレイヤーの多くが無事にCエンドへ辿り着き、物語を堪能してくださいますように。

 

「善の研究 感想」西田幾多郎さん(岩波文庫)

 

西田幾多郎さんの「善の研究」を読んでみましたら、めちゃくちゃ難しくて笑いましたが書いてある内容は善意が溢れていてかんたんしました。

 

www.iwanami.co.jp

 

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真の実在とは何か,善とは何か,宗教とは,神とは何か――.主観と客観が分かたれる前の「純粋経験」を手がかりに,人間存在に関する根本的な問いを考え抜いた西田幾多郎(1870-1945).東洋の伝統を踏まえ,西洋的思考の枠組自体をも考察対象とした本書は,以後百余年,日本の哲学の座標軸であり続ける.改版(注解・解説=藤田正勝)

 

 

西田幾多郎さんは有名な哲学者ですが、関西人的には哲学の道とか京都学派という響き(詳しくは知りません)だとか「人は人 吾は吾なり とにかくに 吾が行く道を 吾は行くなり」とかで知られている方ですね。

 

 

若い頃に著作を読んだことがあって、その時も「難しいこと考える人やなあ」という印象を抱きまして、年とってから読んだら何か印象変わるやろかと思ってあらためて当著を読んでみたところやっぱり難しかったです。

 

この本は全部で四編構成になっていまして、

第一編 純粋経験

第二編 実在

第三編 善

第四編 宗教

 

という流れなのですが、先へ進むほど日本語が分かりやすくなっていくので、実は第四編から逆に読み進めた方が分かりやすくておすすめという著者公認の攻略法が知られているという点でも有名な本であります。

昔の難しい本はさいきんのゲームみたいに攻略法という概念があるのが素敵ですね。

 

ある程度年をとっていて、西田幾多郎さんや鈴木大拙さんの文章を読んだことがある方であれば、第一編から読んでいってもなんとなく理解はできると思います。あくまでなんとなく。

 

 

 

本の内容としましては、古今東西("東"が入っているところに西田幾多郎さんの哲学史における画期があるのでしょう)の哲学者や宗教者のお考えを適宜引用しつつ、西田幾多郎さん独自のお考えとして

  • 「自分」「他者」という意識や区分が表れる前の段階に、「純粋経験」という共有データベース的なものがある

  • 純粋経験は「自分」と「世界や宇宙」が一体となっている

  • 「実在」というものを突き詰めて考えれば、自分という意識の実在と世界や宇宙の実在はイコールである

  • 「善」とは、そういう純粋経験に立ち返って、自分の知識や意志を、世界や宇宙と一体化させることである(主客合一)

  • そうなれば、自分を愛することと他者を愛することはイコールになる

  • 要するに「愛」とは実在の本体を捕捉する力であり、知の極点である

  • 「宗教」は、自己愛と他者愛の合一、主観と客観の合一、人と神の合一を図ろうとする生命そのものの要求なんよ

 

的なことを解いてくださっている気がします。

(素人理解です)

 

 

明治時代にこの本が出たときは、日本初の本格的な哲学書(とされる)で、しかも西洋の著名な哲学者の説に対して「ほんまか」「せやろか」と直球の反論・批判をしまくっていて、しかも西洋にはない東洋哲学・宗教のエッセンスを踏まえた意見を述べているので、それらが痛快だと喜ばれた部分もあったのかもしれません。

 

とはいえ、個人的な印象としましては、この本の主題はタイトル通り「善」を論じて奨励するもの、個々人の「実在」に世界と通じる意義を与えるもの、「宗教」や「信仰」に現代的な意義をもたらすもの、ではないかなあと思います。

伝統的な道徳・宗教の教えをリブートした感があるといいますか。

 

文章がやったら難しいだけで、内容としましては善意に溢れている気がしますので、めっちゃ難しいけれどもトライしてみる値打ちがふんだんにある本だと言えましょう。

 

 

私自身、自分と世間様が一体であるように感じた経験なんてほとんどありませんが、徳を積み重ねていずれはそういう域の立派な人格に至ることができますように。

 

 

 

備忘を兼ねて、幾つか気に入った文章を引用しておきます。

 

純粋経験説の立場より見れば、こは実に主客合一、知意融合の状態である。物我相忘じ、物が我を動かすのでもなく、我が物を動かすのでもない、ただ一の世界、一の光景あるのみである。

 

純主観的では何事も成すことはできない。意志はただ客観的自然に従うに由ってのみ実現し得るのである。水を動かすのは水の性に従うのである、人を支配するのは人の性に従うのである、自分を支配するのは自分の性に従うのである、我々の意志が客観的となるだけそれだけ有力となるのである。釈迦、基督が千歳の後にも万人を動かす力を有するのは、実に彼らの精神が能く客観的であった故である。我なき者即ち自己を滅せる者は最も偉大なる者である。

 

人は個人主義と共同主義と相反対する様にいうが、余はこの両者は一致するものであると考える。一社会の中に居る個人が各充分に活動して天分を発揮してこそ、始めて社会が進歩するのである。個人を無視した社会は決して健全な社会といわれぬ。

 

愛は知の極点である。

 

 

 

 

小説感想「戦国バディーーーーズ!! ~三好長慶と松永久秀、たった二人から始める復讐と天下制覇の物語~」既読さん(小説家になろう)

 

あけましておめでとうございます。

みなさま本年もよろしくお願いいたします。

 

 

今年は三好長慶生誕500周年ですね。

年末年始に関係情報を検索していたら、三好長慶松永久秀主従が主役、しかも面白さという点でも最新研究の反映という点でも素晴らしい小説がアップされていてかんたんしました。

 

 

↓作品トップページリンク

https://ncode.syosetu.com/n4615hh/

 

戦国時代、最初の天下人といわれる三好長慶
彼を天下人にまで押し上げたのは、のちに天下の大悪人と呼ばれる松永弾正久秀だった。

物語のはじまりは、わずか10歳の長慶を突然襲った父の死。
父・元長が、友であり主君であったはずの細川六郎に裏切られ、謀殺されたのである。
主だった家臣はみな父とともに殺され、滅亡を目前にする長慶と三好家。
長慶は武士ですらない松永久秀をたった一人の友として、復讐を心に誓う。

一方、人生に何の意味も見いだせないまま22歳になるまで遊んで暮らしてきた久秀は、長慶と出会い、世にもまれな自分の才能と、命をかけて守るべき主君とを、同時に発見する。
長慶を守ること、そして彼を天下人にすることが、久秀の人生の目標となった。

天下人の子として生まれながらすべてを奪われた貴公子と、奇妙な才能をもつ身分のない男。
二人は「絶対に裏切らない友」という最強の武器を手にして、天下への道を駆け上っていく。

 

 

小説家になろう」収録作品ではありますが、異世界転生とか不自然な主人公無双とかの要素はなく、史実ベースのクオリティ高い歴史小説になっています。

(もちろん小説としての創作要素もあるものの、歴史小説として違和感のない範囲の描写に抑えられています。このバランス感が好き)

 

物語は、三好長慶さんの生涯を描き切り、エピローグとして永禄の変や東大寺大仏殿の戦いを経て終了するという流れ。

完結時点で松永久秀さんは生存しておりますが、あくまで主役は三好主従、主君が亡くなった段階で物語が閉じられるというのは納得感が高いものがあります。

 

 

感想として、最新歴史研究の反映、歴史小説としての純粋な面白さ、の2点にかんたんしましたので、それぞれの推したいポイントをかんたんに紹介させていただきます。

 

 

最新歴史研究の反映

三好家や畿内戦国史の研究は、近年著しく進展していることで知られます。

毎年のように新たな要素が発見・発表されるので、実はつぶさに最新研究を反映しようとするとかえって難易度が高くなっているような状況だと思うのですが笑、こちらの作品では(私が把握している限りの)最新研究を広範に正確にきっちりと反映されていて、作者さんの造詣の深さに驚きました。

 

パッと思い浮かぶだけでも、

  • 三好康長さんの年齢
  • 細川”氏之”さん
  • 木沢長政さんの評価
  • 六角定頼さんの評価
  • 細川晴国さんの奮闘
  • 細川氏綱さんの評価
  • 河内畠山家と遊佐長教さんの関係性
  • 蓮淳さんや天文法華の乱の描写
  • 足利幕府や家格秩序の重み

 

等々、さいきん注目されている要素が惜しげもなく投入されていて、しかも歴史小説としての完成度向上に繋がっているのが素晴らしいなあと。

 

なお、物語前半部分は細川晴元さんや本願寺や細川晴国さんや六角定頼さん周辺の描写が厚いので、予備知識がない方からすると複雑で分かりにくいような印象を受けるかもしれません。

一般的な「小説家になろう」作品では序盤から主人公が活躍しまくるのが定石だろうと思いますけど、この作品では史実ベースなので三好主従が大活躍するのは中盤から、まずは三好主従が相対する畿内戦国界のややこしさ難しさ面倒くささ恐ろしさを味わってくださいということでご理解いただくといいんじゃないかなと思います。

 

 

この他、最新研究で評されている文脈にとどまらず、作者さんとしての歴史解釈があちこちで見られるのもいいですね。

小説として各登場人物の動機がクリアになりますし、「なるほど」感もあって、読んでいて楽しいです。

 

その意味で個人的に推したいのが、三好長慶さん死後の安宅冬康さんおよび安宅家の立ち位置描写。

三好一族各位から安宅家がどのように映っているかという考察がとても興味深く、さいきん言われる「三好義継さんへの権力集中のために安宅冬康さんを成敗した」にとどまっていないのがお見事だなと感じ入りました。

 

 

 

 

歴史小説としての純粋な面白さ

続いて、歴史小説として、純粋にかんたんした箇所を。

 

全編通して各登場人物のキャラクターがよく造形されていて、薄っぺらい悪役ですとか舞台装置みたいな人物ですとかがいないのがまず嬉しいです。

敵には敵の美学や動機、味方は味方で一人ひとりが人間として生きている感じの小説っていいですよね。

各登場人物が魅力的なので、全81話の充分な長編小説ではあるのですけど、私としては各人の描写を増補しまくった文字数5割増し版が読みたくなったくらいです。

 

物語構成の盛り上げっぷりも巧みで、とりわけ舎利寺の戦い、江口の戦い、教興寺の戦いといった大戦の、敵味方それぞれのボルテージがだんだん上がっていくような描かれっぷりがごっつう素敵。

一つひとつの場面だけでなく、流れも楽しいのが悦ばしいのです。

 

 

最後に、特に感銘を受けた箇所を2点ほど。

ともに松永久秀さんの描写なのですが、エモ過ぎて死ぬと思いました。

 

 

以下、重大なネタバレを含みますので、作品未読の方はよくよくご留意ください。

物語を一話から読んだ上で出会った方がぜったい心震えますので。

 

 

 

 

 

 

 

 

一つ目は「第五十七話 広橋保子」より。

 

母親の病気に心痛めた松永久秀さんが、これまで知らなかった己の脆さ、不幸な予感に出会ってしまうシーン。

 

「母者が、死ぬのが怖いと申しましてな」

 

 そして、胸に詰まったものを吐き出すように続ける。

 

「死ぬのは怖い。当然のことだ。しかし、随分と長い間、おれはあえてそれを見ぬようにしていたような気がするのです」

 

 保子は穏やかな眼差しを向けたまま、久秀の言葉を聞いている。

 

「そう思うと、どうしても死なせたくない、なんとかして救けたい。居ても立っても居られなくなってしまった。これまで戦で殺した者たちを思えば、勝手なことだとは思うのだが、そう思えば思うほど、なおさら……」

 

 言葉に詰まる久秀に、保子が問う。

 

「死が、怖くなりましたか」

 

 それは、久秀の心の奥を、やさしく掬い上げるような声であった。

 久秀は思わず、その心情を吐き出してしまう。

 

「……そうだ。おれは、死が怖くなった。おれが死ぬのはいい。戦場で、長慶のために死ぬ。ずっとそう思っていた。だが、死はおれを直撃せず、おれの周りから、人を奪っていくのかもしれない。そう思ったら……」

 

 手で顔を覆う久秀の肩に、ふと保子の指が触れた。

 

「かなしい人。あなたも、誰かのためにしか生きられないのですね」

 

 しばしの間、柔らかな沈黙があった。

 

 

 

二つ目は「最終話 東大寺大仏殿の戦い」より。

 

炎上する東大寺大仏殿を眺めながら……。

 

「世の噂にいわく、松永弾正は主・三好長慶を毒殺し、将軍・足利義輝を弑逆したという。これに東大寺の大仏を焼いたとなりゃあ、おれは天下の大悪人だ。百年、いや千年残る汚名かもしれん」

 

 そして、赤く燃え立つ夜空を見上げて言う。

 

「それでいいさ。汚名であろうと悪名であろうと、おれの名が残るなら、人はその向こうに三好長慶の存在を知るだろう。醜かろうが、恰好悪かろうが、おれはとことん生き抜くぞ。長慶の生涯を、無かったことにはさせやしねえ」

 

 久秀が笑う。

 もの悲しい哄笑が、夜に響いた。

 

 

最高かよ。

 

 

三好主従という一大叙事詩松永久秀さんの宿命を象徴するかのようなセリフ。

 

 

この文章に出会うことができてよかった。

作者さんに心からの賛辞と謝意をお贈りしたい!

 

 

 

 

 

 

 

正月早々、三好主従を扱った名作を読むことができて幸せです。

 

ますます高まる畿内戦国史への注目。

この作品のように、才あるクリエイターがますます集まり素晴らしいコンテンツをますます生み出していってくださいますように。